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第14話

翌日、用務員から工具を借りてきてくれた藤本は俺の足の鎖を壊しながら学校の様子を教えてくれた。 俺は相変わらず篠宮の部屋で自習していることになっているらしいこと。そして茅原が家庭の事情により暫く学校を休むことになったらしいこと…。 それを聞いて真っ先に思い出したのは昨日最後に聞いた茅原の怒号であった。 「俺…、寮に戻って茅原の様子を確認したい。」 「だめだよ。佐伯くんと茅原くんの部屋なんて篠宮くんが最も警戒して見張ってるとこじゃない。絶対に行くべきじゃない。」 藤本の冷静な返しに言葉が出ない。 茅原の性格からするに、篠宮と殴り合った結果怪我を負ったのだとしても彼は傷だらけのまま学校へは休まずに行くような気がする。それでも休んでいるということは、茅原の身に何かあったに違いないのに自分では何もできないことが本当にもどかしくてしょうがない。 「茅原くんのことは僕も少し探ってみるから、だから今はまだここで大人しくしている方が良いよ。」 無意識に震えていた俺を宥めるように藤本が背中をさすってくれる。 どうか茅原が無事であってほしいと祈る俺に「きっと大丈夫だよ。」と言って笑ってくれた藤本が次の報せを持ってきたのはそれから1週間した後であった。 「佐伯くん。茅原くんの居場所が分かったよ。やっぱり彼は君たちの部屋にはいなかった。篠宮くんが自分の部屋に戻ったのは確認したから今から茅原くんを助けに行こう。」 ハキハキとそう告げた藤本に俺は待ち焦がれたように顔を上げ返事をすると足早に部屋を出た。 向かった先は俺の部屋がある方の寮の最上階にある1人部屋。まるで篠宮とも茅原とも、ましてや俺とも関わりがあるとは思えなかったその部屋を開けるとそこには見慣れない男子生徒が4人。 だが、その中に茅原の姿はない。 不審に思って後ろにいた藤本を見ると藤本は困ったように眉を下げて、一言「ごめんね。佐伯くん。」と呟いた。 言葉の意味が分からなくて更に眉根を寄せた俺の口を後ろから伸びてきた手が無造作に塞ぐ。 「!?」 慌てて暴れた俺の四肢は他の3人に押さえ付けられ、俺はそのまま引き摺られるように部屋の奥へと連れて行かれた。 状況が分からず目を白黒させていると、男たち4人のとは明らかに異なる凛と透き通った声が耳に届く。 「こんなののどこが良いのかな。本当に理解に苦しむね。」 目を向けるとそこにはあまりにも有名なΩの3年生…津川先輩が、両脇に女生徒を従えベッドに腰を下ろし俺を蔑むように見る姿があった。

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