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初めてこの夢を見た時はわけが分からなくて、夢と現実の境目がごちゃごちゃになって混乱したし、気味が悪くて、怖くて仕方なかったけど、今ではもう慣れつつある。気持ちも、身体も。
「久しぶりだね」
「っ!」
──来た。
不本意だけど、今では聞き慣れてしまった吐息を含んだ低い声。
やっぱり今日は、“悪夢の日”だ。
深く、ベッドが沈む。
やつが、布団を被った俺の身体を跨ぐ。
そいつはいつも、真っ黒な出で立ちをしていた。
真夜中だから、月明かりのないところは暗くて見えないだけで、ほんとはもっと違う色の服を着ているのかも知れない。
だけど俺には上下真っ黒の服装で、黒髪に見える。
逆光で、顔は分からない。
シルエットは細身の、だけどしっかりと筋肉はついている、正真正銘、男の姿。
「……また、するのか?」
「分かってるくせに。ほら、目を瞑って」
やつは毎回、必ず俺に目隠しをする。
いつだったか、そんなものしなくても見えないのにと言ったら、暗闇に慣れてくると見えるからね、と笑いながらやつが言っていたのを思い出す。
そんなに見られたくないほど、ひどい顔でもしてんのかな。
これは夢だから、そんなことどうでもいいのに。
大人しく目を瞑って、男が布で目を覆ってくるのを待つ。
その行為はまるで、儀式みたいだ、と、いつも思う。
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