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「……っ、」  布を巻く時に触れる、やつの冷たい指先。  それが耳に当たって、ぴくりと肩が跳ねた。 「……ちょっと当たっただけなのに、もう感じちゃったの?」 「んな、わけ……っ」 「あ、分かった。期待してるんだ?」  揶揄うように耳打ちしてくる。  吐息を吹き込むような喋り方は、絶対わざとだ。  意地悪なその男に組み敷かれて、身体を開かれてる自分も大概だが。 「こっち向いて、口開けて」  頭の横で、きゅっと布を縛った感覚がする。  下準備が、終わったらしい。  男は俺の頬に体温の低い手のひらを滑らせて、囁くような甘い声をかける。  こいつの声は呪文だ。  されるがままになってしまって、抗えなくなる。  視界を遮られた今、目を開けても暗闇しかない俺の情報源は、全てを聴覚と嗅覚と触覚で賄わないといけない。  だからこそ余計に、やつ自身から香る石鹸のような匂いを、声を、触れてくる手の感触を。 与えられる情報すべてを、敏感に拾ってしまう。  いやらしくて耳に残る声で囁かれた俺は、言われるがままに口を開ける。控えめに、少しだけ。 「……っん、」  無防備に薄く開いた唇の隙間から、突如柔らかくてぬるぬるしたものが入ってくる。  何度も何度も、交わした口付け。いつもの、こいつの味。

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