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本当は、口付けに没頭してる。
この先にある行為を、期待してしまって、いる。
だけど、夢中になってしまうのが、飲めり込んでいくのが恐ろしいから、カタチだけの悪足掻きは、やめられない。
「ん、も……くるし……っ」
「……いい加減、鼻で息するの覚えたら?」
唇を離して、顎に伝った透明な唾液をつう、と舐め上げながら、男は揶揄するように囁く。
……だから、それができたら苦労しないって。
やつが話すたびに、吐息が唇を掠め、濡れたそこが冷える。
それほど、顔の距離が近いんだろう。
想像するだけで、恥ずかしい。
「うるさ……っん、ぁ」
赤い顔に気付かれないように悪態をつこうとした瞬間、首筋に唇が触れて、舌が這う。
ちろちろと舌先で擽るように舐められて、それは耳にまで上がる。
柔らかな耳朶を唇で食んでくるのを、俺はただ震えながら堪えた。
──身体が、熱い。
どうしようもないくらいの熱情が、俺を蝕んでいく。
「これ、邪魔だから取っちゃおうか」
「いやだ、寒いって……!」
ばさ、と衣擦れの音がして、掛け布団を剥ぎ取られる。
中途半端に身体から離れたそれは、重みでベッドの下へとずれ落ちた。
急に外気に晒された俺は、夜の冷たい空気に身を震わせる。
ばかじゃないのか、寒いっての。
ひんやりどころじゃない、刺すような寒さにすぐに体温が奪われて、足先が冷たくなっていくのが分かった。
「ひぁ、やだ……、」
さっきまで暑かったくらいの体温だったから、余計に寒く感じてしまう。
少しでも暖をとるように足をシーツに擦りつけると、男はからかうように、悪戯な声で囁く。
「大丈夫、すぐにあつくなるよ」
冷えた身体に熱が宿る、低音のいやらしい声。
顔は見れないけど、きっとこいつは、愉しそうな、意地の悪い笑みを浮かべてるに違いない。
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