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───……
あんな夢を見ておいて、翌朝俺が夢精してることは、今まで一度もない。
わざわざ男とする夢を見て夢精なんて、自分はもしかして潜在的に抱かれたい気持ちがあるのかと思うとショックだし、それはそれで落ち込むのは目に見えている。けど、でも。
俺はいつもほとんど全部覚えている。
なんというか、ぬるついた硬いモノが出たり入ったりする感覚なんてもう、思い出すと消えたくなるくらい生々しくて、鮮烈すぎるんだ。
だからあれほど濃密なことをしておいて、全く痕跡がないなんて……、とも思う。
涙を流しながら握りしめたはずの枕も、足で何度も引っ掻いたシーツも、ベッドの脇に落ちたはずの掛け布団も、全部ちゃんと元通り。
……いや、いつも通りなのか。
おかしな体勢で寝ているらしく、例の夢を見た時は、必ずと言っていいほど朝は腰が痛くなるけど。
やっぱり安物のベッドはだめだなあ、と思ったり。
「……あ、ヤス、おはよ」
「んー…」
朝、顔を洗ってからリビングの扉を開けると、焼けたパンの香ばしい匂いがして、弟のヤスがまだ寝惚けまなこでテーブルについていた。
よほど眠いのか、目を瞑ったままトーストを食べて、湯気の立つあたたかそうなコーヒーを飲んでいる。
猫背でのっそりとした動きだが、寝ながら朝飯食えるとか、こいつは無駄に器用だな……。
呆れを通り越して、もはや感心しながら俺もパンをオーブントースターで焼いて、その間にコーヒーを淹れる。
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