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父親はいつも早朝の出勤で、母親も朝早くから昼までパートに行っている。
だから平日の朝は大抵、高校生の俺ら二人っきりだ。
「ヤス、今日バイトは?」
「……今日は、休み……」
「……お前、起きてる?」
「…………ギリギリな……」
目を瞑ったままトーストをかじって咀嚼して、目を瞑ったままコーヒーを飲む弟に、俺は苦笑する。
そういえば、こいつは低血圧だったっけ。
体温も、平均で35度くらいだとか、前に言っていたような気がする。
そのせいか、なんとか毎朝はちゃんと起きるけど、昼近くまではずっと眠そうだ。
ヤスによると、昼飯食ってからがほんとの朝らしい。アホか、こいつは。
「兄貴は? バイト」
「俺は今日あるよ。しっかり22時までのシフト」
「……ふーん、大丈夫なの?」
「何が?」
自分専用の青いマグカップにコーヒーの粉末とポットで沸かしていたお湯を注いで、ミルクだけを入れる。
台所のシンクに凭れかかってパンが焼けるのを待ちながら、マグカップに口を付けた。
真っ黒で白いラインの入ったジャージ姿の弟の横顔は、まだ眠いのか、目はいつもの半分も開いてない。
「……身体、」
「あ?」
「なんか、どっか庇いながら歩いてると思ったから」
……目、開いてたのか。って、そうじゃなくて。
他人から見て分かるほど、俺は腰を庇いながら歩いてたのかな。
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