2 / 5

第2話

「気に触るっていうか、今もそうだろ。何度も言ってるが、必要以上に俺に触れないでほしいんだ」 「どうして? 僕の命令でも?」  パワハラ上司、ここに極まれりだ。しかしこの男、顔が良いのである。 「だいたいアンタ……いや、あなたはスキンシップが過剰だって自覚持ってます? ぶっちゃけウザいです。あなたなら相手はいくらでもいるだろうが」 「自覚はあるけど、僕はJに触りたい。良い身体だし、特に尻が。僕と同じくらいハンサムだしね。どこのジムで鍛えてるの?」 「ジムに週七で行ってるだけです。どうせ分署はヒマだ。上に呼び出されなきゃ、俺はここで根付いてしまっても構わねえさ」  ジェイクは用足しを終えたので戻ろうとしたが、手洗い中のサムの動きが気になった。ハンカチを忘れたのだろうか……それにしては雑な手つきで水を払い、颯爽とトイレから出て行く。潔癖そうに見える外見を持つ男がする行動とは思えず、ジェイクはサムを呼び止めた。 「拭かねえのか?」 「……他人から指摘されたのは初めての経験だよ。君は怖いもの無しだね、J。いずれ僕が君を昇進させてあげるね」 「遠慮しておきますよ。ただひとつ、俺を『J』と呼ぶのやめてもらえませんか?」 「だめ?」 「だめです」  ジェイクはサムに強く言った。 「どうして?」  サムが戻ってきてジェイクの頬に手を滑らす。ジェイクは周りを見たが、幸いなことに男子トイレに自分たち以外の姿はなかった。 「どうしてそんなこと言ったの、J?」

ともだちにシェアしよう!