2 / 72

第2話 記者会見

スーツに着替えた康太と隼人は、私服を袋に入れてもらい、スーツを着たまま…百貨店を後にした 榊原の車に乗り込むと、小鳥遊の携帯に神野から電話が入った 赤坂プリンスホテルの広間で…記者会見の手筈を整えたから…との事だった 小鳥遊は榊原に行き先を告げた 行き先を聞き、榊原は目的地へと走った 赤坂プリンスホテルに到着すると、一生が駐車場で待っていた 康太は車を降りると、一生に笑い掛けた 「そっちは、順調か?」 「俺達と力哉が動いてんだぜ! 滞りなくに決まってんがな!」 「だな!オレは隼人を守る! 何があってもな!」 「あたりめぇだろ? 隼人は俺達も守ってやる! お前の宝を守ってやる! そうだろ?康太… 俺達は昔から…お前の為ならなんだってしてやった! これからも、それは変わらねぇ!違うか?」 「違わねぇな…オレはお前達がいるから、止まることなく歩いていける…」 「さぁ!闘って来い! お前の戦闘の場は用意してやった! 後は…お前が勝利を納めれば…それで良い」 一生は、康太の胸を…拳で軽く叩いた 「だな。行くぜ!」 康太が声を掛けると…隼人と小鳥遊も、車から降りた 康太達は、一生に案内されて控え室へと向かった 康太の姿を見ると力哉が飛んで来て、詳細な打ち合わせをする 康太は、力哉の話をソファーに座って黙って聞いていた そして一言… 「………沢庵…食いてぇな…」と、呟いた やはり………康太は緊張感もなく… 最近禁止にされた沢庵に想いを馳せていた 榊原が「帰ったら…一枚なら良いですよ…」と、折れた 「沢庵もポリポリ食えねぇなんてな…」 康太は…しくしく…泣いた そして、あっ!!!!と立ち上がった 榊原は驚き「どうしたんですか?」と尋ねた 「弥勒の所に寄ってねぇ… 行くって言ったのに…忘れてるやん…」 「………なら、明日、行きましょう… 弥勒の好きな甘露酒を持って行くと喜ばれますからね!持参します!」 今日は…これから、記者会見がある それが終わったら…あっちこっち…電話が半端ないから… 康太は、時間が来るまで…榊原の膝の上で…目を閉じて…大人しくしていた… 榊原の胸のスマホが着信を告げて震えていた 康太は榊原の、胸のポケットからスマホを取り出すと電話に出た 「あんだよ?貴史? オレは今から記者会見だ…あん? 伊織に変われって?……」 康太はスマホを榊原に渡した 榊原は「電話、変わりました」と電話を変わると 何やら話だし…記者会見場は何処かと聞かれ、答えると電話を切られた 「あの人…飛鳥井建設で仕事してるんですよね?」 「おう!でも、慣れるまで…5時間位の…バイトだかんな!もう終わってんだろ?」 「なら、今は…何処にいるんでしょうか?」と榊原は呟いた 「オレは無駄な力は使えねぇかんな! 解らねぇよ!」 その時…控え室のドアがノックされた 「時間です!御願いします!」 力哉が時間を告げに入ってきた 康太は立ち上がり、隼人と共に…控え室を後にした 記者会見場に入ると…プレスの証明書を首から下げた…カメラマンや記者が集まっていた 入ってきた康太に、一斉にフラッシュが炊かれた 康太は……記者会見席に座ると、辺りを見渡した その中に…記者に紛れている人間を見付けて…笑った 「三木…お前…何時からそっち側の人間になったんだよ!」 康太は…プレスに紛れて三木繁雄の姿を見付けて…笑った その横には…兵藤貴史の姿もあった 康太に見付かると、三木は、兵藤と共に… 康太の横の席に座り、同席した 「記者には…現 総理の意向で…報道規制を引かせた。 その使命を仰せつかったので…記者にはお前が来る前に通達しておいた!」 三木が康太に……何故記者会見の会場にいたかを説明した 康太は……通達…って?と尋ねた 「それは後でな!さぁ!記者会見をするぞ!」 三木に押しきられて…記者会見を始めた 力哉が「これより、一条隼人の婚姻の記者会見を始めます! まず!飛鳥井康太から、報道各社に…話が御座います! 質問は…その後にお願い致します!」 と始まりを告げた 康太は…マイクを持つと、話を始めた 「一条隼人の婚姻の事実関係は…昨日TVにて放送した通り…事実です! 隼人の妻の…奈々子には生まれついて心臓に疾患がありました…。 そんな彼女が…出産をすると言うのは…命の保証すらない…誰もが止めました ですが、彼女の意思は固く…誰も止める事は出来なかった…。 死に向かい行く…愛する人に…隼人は婚姻と言う約束をする事で… 1日も長く生きて欲しいと…願った… 発表しなかったのは…隠していた訳ではありません… 誰にも邪魔される事なく…隼人は…奈々子を見守り…側にいたかった! 限られた時間しか…二人には与えられていなかった… 奈々子は…我が子をこの世に送り出して…三日後に…永遠の眠りに着きました… 隼人は…悲しみにくれて…失踪した それを見つけ出し…この世に引き留めたのは…オレです…非難は…総てオレが受けるべきです…」 康太の言葉に…誰も…反論する事なく… その姿を…取り続けた… 隼人も…自分の言葉で…皆に伝えようとマイクを持った 「俺は…何の感情も…持たない人間でした 早くに事務所の社長に引き取られ、好き勝手に生かされて来たので… 俺には…肝心な…部分が抜け落ちて育ってしまいました 最初は…奈々子とは遊びでした… でも、スキャンダルで総てをなくした俺の傍に…奈々子はいてくれた そして妊娠が解ると…俺から消えた 俺は…奈々子を探した… そして…探した時に…妊娠を知りました 一人で生むから…と言う…奈々子の側にして… 幸せにしてやろう…と想いました そして、二人で子供を育てて…俺は…芸能界を…辞めても良いと決意をしました だから、消えたのです…康太の前から…消えて…奈々子と二人…治療に専念した… 何もかも捨てて…俺は…奈々子と生きていく決意をしました… だが…俺は…康太に逢いたくて…泣いていた 何も持たぬ俺を康太が…育ててくれた… 空っぽだった俺に…中身を積めてくれたのは康太だ… 俺の子の音弥は…飛鳥井康太の子として…戸籍に入れました… 俺は…康太の子を…命を懸けて守り通す… 無責任な…親だと罵られても…仕方がない… 俺は…自分の子を…康太に…渡してしまったのだから…」 隼人が…真実を…言った… 質問は…隼人に集中した… 康太は…三木を睨み付けていた… どちらかと言えば…隼人に同情的に…記者会見は終った 神野が…今後の経緯を話して…記者会見は終った 康太にとっては不完全燃焼となる記者会見だった 康太は控え室に帰ると、ソファーに座り…三木を睨んだ 「三木!てめぇとの仲も…この日限りだ!」 と、康太は言い捨てた 三木は臆する事なく…「構わない!」と応戦した 「俺は…安曇勝也に、頼まれて来ただけだ 職務の遂行をしただけだ!」 「安曇は…何て言ったんだよ!」 「『三木、お前は飛鳥井康太と懇意にしていると聞く 1つ私の頼みを聞いてはくれぬか? 飛鳥井康太は、また記者会見を開くと言う… 無理は出来ぬ体なのだ… だから、君に動いて欲しい! 飛鳥井康太に質疑応答が行かぬ様に… 規制を引いてくれ! 頼むから…康太を守ってくれぬか?』と頼まれて動いただけだ! お前こそ…安曇勝也と懇意にしてるなんて…知らなかったぜ!」 「………...言ってねぇからな…」 「どう言った関係なのか聞かせてもらおうか?」 「…オレの愛人だ!」と答えた 榊原は…えええええええっ!!!!と叫んだ 「って言うのは冗談だけどな! 伊織…叫ぶな…オレのお尻がバージンだったのはお前が一番知ってんじゃんかよぉ!」 「康太…冗談は…」 あ~心臓に悪い…… 榊原は……康太の愛人だなんて…想像すらしなかったから…泣きそうになった 「愛人は嘘だが…知り合いだ…」 「お前を助ける位の…知り合いか?」 「…………....さぁな…」 「話せねぇのか?」 「昔の話だぜ…オレが…まだ小学校に入る前の話だ… ……オレは…あの人の…命を救った… そして…一年ちょっと…あの人の…亡くした子供の変わりとして…生きてやった… ちょうど修行中だったからな… 一緒に暮らして…親子の様に過ごした… 忘れてるかと想った… ある日突然…あの人は…消えた…からな… 自分の足で歩くと…書き置きを置いて…出てった… それからは、オレは修行を終えて飛鳥井に帰ったからな…逢っちゃいねぇ… だが…戸浪の…竣工式の時に逢ったな… 話しはしてねぇがな…顔を見て解った…」 「あの人は…知っていたのか? その助けられた子供が… 自分の子供の変わりを…してくれていたのが… 飛鳥井康太だと…?」 「解らねぇな…オレは今……見るのを禁止されてる… 死にかけて…愛する亭主を泣かしたからな… 力は使ってねぇかんな…解らねぇよ!」 「でも…多分知ってるんだろ? でなかったら安曇勝也の口から…飛鳥井康太…と名指して…頼まれるはずがねぇからな!」 「三木、説明はしてやった! おめぇとの仲は… 今日この日で終わりだ!フン!」 と康太はそっぽを向いた 「え!嘘!本気だったのかよ!許して! なぁ、康太ってばさ、許してくれよ」 三木の腕が…康太を抱く… そしね三木は時系列を口にする 「康太…おめぇとオレが出逢ったのは…おめぇが小学校の入学に入る前だよな? って事は…その前に……安曇さんと知り合ってたのかよ?」 「……昔の話だ…。 助けられる謂われもねぇ…昔の話だ」 「…安曇勝也…現総理大臣… 彼の経歴は…叩き上げの精神から来てる… 安曇総太郎の娘婿となり…安曇…の名を名乗る… 康太と知り合ったのは…その前か…」 「……三木…当分はおめぇは見たくねぇ!」 「康太…怒るな…俺も職務を完遂しねぇとな…解ってくれ…」 「解りたくもねぇ…三木…アイツに伝言だ! 『オレにもう構うな!』と言っといてくれ」 「解った…伝えとく…だから機嫌を直してくれ…なっ?」 「嫌だ!伊織…三木がオレをイジメるぅ」 と榊原に腕を伸ばすと…三木の腕から康太を奪い…榊原は抱き締めた 「伊織!イジメちゃあいねぇぞ!」 「三木…もう康太には逢わせませんよ?」 榊原が脅すと…三木は慌てた 「それは困る…伊織…康太ぁ~頼むから~」 康太は仕方がねぇな…と折れてやった 「飯を奢れ…全員のだぞ! オレは…多分…食えねぇから、プリンで良いや…」 康太が言うと…三木は眉を顰めた 「食えねぇのか? それとも相当…体調…悪いのか? そう言えば…痩せたよな…。こんなに痩せて…」 三木は…康太の頬に手をやり…尖った顎を…撫でた 「三木…」 「何だ?」 「もう…二度と…アイツの命令で…オレの前に顔を出すな…!」 「康太…あ!少し待て…」 三木が何か喋ろうとすると、胸の携帯が着信を告げた 三木は…通話を押すと…電話の相手は… 安曇勝也…だった 「貴方の頼みは完遂しました…。 ………え?・・・・それは…聞いてみます…」 三木は…康太に…… 「このホテルにいるそうだ… 逢いたいと…仰られてるが…どうする?」 「オレは…逢いたくねぇ…」 「康太…」 「でも、三木が…困るなら…逢ってやる それで…終わらせる…」 「すまねぇな…康太…」 「逢われるそうです… え?………一人は…無理かと…伴侶が…許可しません…。 あ……はい。解りました…お連れします…」 三木は…電話を切って…弱った顔をした 「オレ一人で来いと…言うんだろ?」 「あぁ…そうだ。 でも、それは、伊織は許さねぇだろ?」 三木が…溢すと…榊原は「当たり前でしょ!」と怒りを爆発させた 「康太を…見た事もない男と二人っきりにはさせません!」 「って事は…俺は…伊織に許されてるのかよ? 康太と二人で飯を食いにいくのを…許してくれてるよな?」 「三木が康太を襲うとは…思わないので… 康太は我が父…清四郎と二人で食事にいきます…。貴史にしても…安全だと…思えばこそです! でも三木はもう気を付けます…」 榊原が怒って口にすると、三木は平謝りで謝った 「伊織…許してくれよ…。 俺はしがなねぇ議員だ…総理に言われれば、聞かねぇ訳にはいかねぇのよ?」 「解ってますよ? ですから、口は挟まないで差し上げましたよね? でもそれとこれとは別です! 康太の記者会見を台無しにして…怒っても許されるでしょ?」 「……本当に…悪かった…。 康太…来てくれや…。」 「伊織は?」 「一緒で良い…来てくれ…頼む…」 総理に頼まれれば嫌とは言えない… それは解っている… 解っているが…許せない想いも…あるのだ 康太と榊原は…三木に連れられ…控え室を出て行った 案内するはずの…三木より…康太は先を歩く… まるで…知っているかの様に…その足取りに…澱みはない… 康太はスタスタと歩いて…最上階へ行くエレベーターの前で止まった… そして、上へ行くエレベーターが開くと、それに乗り込み…最上階のボタンを押した 「康太…力は使わないで…」 「伊織…使ってねぇよ…弥勒が…教えてくれてるだけだ…なぁ弥勒…」 『伴侶殿…案ずるでない…。俺が教えただけだ…!何かあれば…俺は時空を越えて…康太を助ける…』 弥勒の声だった… 榊原は…胸を撫で下ろした… 最上階に到着すると…康太はエレベーターを降りた… そして…SPが立つ…ドアの方へ近寄る SPが警戒して…康太を見る… 三木は走って行って、康太の前に出た 「総理に呼ばれた!三木繁雄だ! この方は、飛鳥井康太! 手を出せば…確実に…あの世に送られるぞ… 怪我でもさせようものなら…永遠に…闇に葬り去られら…止めとけ…! この方の…影で守ってる人間は…甘くはない…! 確実に…その命…とられる覚悟がなければ近寄るな!」 三木は言い放った… SPが携帯で…中の秘書に連絡を取ると… 部屋へ通せ…と言われ…ドアの前を…退いた 三木が…部屋に入っても…康太は中々…部屋には入らなかった 「康太…」 三木が呼ぶと…渋々…康太は部屋の中へと…入っていった 康太の姿を見ると…安曇は、立ち上がり…康太の側へと寄った 「康太…」 名を呼ばれ…康太は榊原の後ろに隠れた 「許しては貰えないのですか?」 安曇は哀しげに…呟いた 康太は安曇の前に出て… 「何故、今更、オレに構う?」 康太の瞳が…安曇を貫いた 「ずっと…気になっていたよ… あの日…君の側から…消えて…必死に生きて来た…。 君の事を捜したよ? 身寄りもないなら…私の子供にしよう…と捜した 君は…飛鳥井康太と名乗っていたから…直ぐに解ったよ… 君は飛鳥井源右衛門を継ぐ者だ…と謂う事を。 そして今、源右衛門を越えて…飛鳥井家の真贋になられた。 私は…常に…君の事を気にかけ…見守ってきた…。 そして…血を吐き…運ばれたと…聞いた なのに…そんな体を押して記者会見をすると聞いて…堪らなかった 君は…怒ると想ったがね…手を出してしまった…許してくれ…」 安曇は、康太の頬に…触れた… 暖かな…温もりが…安曇に伝わると…その体を…抱き締めた 「私は…君と位の我が子と妻を… 一度に亡くして…死のうと…山をさ迷っていた… そんな時に…息子と同じ様な子供に助けられて… 君は私を助けてくれたばかりか、一緒に生活してくれた… あの一年がなければ…今の私は…なかった あの時…私は…仕事もしていなかった… 君に養われて…君に…守られて生きていた 私は…自分の手で…働いて…君を引き取ろうと想っていた… 手紙には…何時か…一緒に暮らそう…と、書いたよね? でも…戻ると…君はいなかった… 捜したら…かなりの資産家の息子だと解った…。 それからは、何時か…君と顔を会わせても…恥ずかしくない自分でいようと…必死になった…! 戸浪の竣工式の時に…逢ったよね? 君に…声すら掛けられなかったが… 飛鳥井家の真贋になられた今…私は…君の役に立つ…存在になりました! 君への恩返しです…私を…使えば良い… 本当なら…子供に…したかった…愛しき子よ‥」 安曇は、想いを…ぶちまけ…康太を抱き締めた 「勝也…お前は自己満足の為に…オレの存在にしがみついているだけだ! オレは…お前の力など…必要とはしねぇ! 恩返しなんて…要らねぇよ… オレは…飛鳥井康太…として、飛鳥井家の真贋にしかなれねぇ! お前の息子にはなれねぇ! お前を待たなかったのは…オレにはオレの生きる道があったからだ… 飛鳥井家の真贋…… それ以外の…存在になるなら…生きてる意味すらねぇんだよ!」 康太は敢えて容赦のない言葉を紡ぎだした 安曇はその言葉を受け‥‥ 「君なら、そう言うと想ってましたよ… 本当に…変わっておられない… お久し振りです… 貴方の…父として…生きた日々は…私の中に…今も輝いて在ります! 貴方と暮らした日々が在るから…私は…曲がらずに政治家として生きてきました! これから、残り少ない…政治生命は…貴方に捧げます! 嫌だと言われても、要らないと言われても… 私は…そう決めて生きて来たのです!」 強固なまでの胸の内を語った 康太もその顔を見て笑った まるで子供みたいな顔で…笑った 「おめぇも変わってねぇな…勝也… 一年しか暮らしてねぇけど… おめぇはオレの父親だった… オレも…あの日々は…忘れてねぇぜ… でもな…おめぇは…時代の先端を行く政治家になった… そして、今は…総理となった… そんな人間が…オレの為に…動いちゃあいけねぇ…許されねぇんだよ!止めろ!」 榊原は…誰よりも…愛した……父として過ごした人だから… 康太の事で…動いて欲しくなかった気持ちが…痛い程…解った 「康太、私は、君に還る為に…必死で生きて来た…。 あの日…君が拾った命は…繋がれ…必死に生きて来た… 君が…血を吐いたと…聞いたら…居ても立っても居られなくなった… そんな君が…記者会見を開くだなんて… 堪らず…規制を掛けました…許して下さい…」 安曇は、康太に…頭を下げた 「勝也…誰に聞いた…? オレが…血を吐いたって…誰に聞いた?」 「……兵藤…貴史に…。 兵藤の倅が…康太と同級生だと聞き…頼みました…。 どんな些細な事でも…連絡してくれるように…頼みました…」と 康太は……やっと、総てを…理解した 「思わぬ所に…伏兵がいたもんだぜ!」 康太は…大笑いした 「三木は知っていたのかよ?」 康太に聞かれ…… 三木は「知らねぇよ!アイツ…本当に曲者やん!」とボヤいた 「勝也…ならば、オレの命より大切な人間が…男だってのも…知ってるな…」 「知ってますよ…。 遠くから竣工式の時に拝見させて貰いました…。 榊原 伊織君、安曇勝也と申します! 康太の第二の父親です…宜しくお願いします…! 近くで見ると…良い男ですね…」 榊原は、安曇に深々と頭を下げ 「榊原伊織です!」と挨拶した 「康太、私に二人を守らせてくれないか? お前達…二人を守る…そう心に決めていた 私は…お前の父でいた日を忘れたくはないのだ… お前は…私の…長男だ…! 妻や…子供達には…話してある… 血は繋がらぬが…私の…命を救った…私の子供だと…。 今度…食事しましょうね、康太。 残りの人生は…お前と…親子として過ごしたい…」 安曇は、康太を抱き締めた… 父親の…抱擁…だった 飛鳥井の家族に…抱かれているかのような…… その抱擁に、榊原は確かに二人は親子だったのを知った 安曇は、痩せこけた康太の顔を…撫で 「こんなに痩せて…」と哀しそうに…呟いた 「康太、近いうちに、飛鳥井の家族にご挨拶に伺う…。 そして、お前の父親に加えてもらうつもりだ…良いか?」 「………...駄目って言っても…オレの親に…なるんだろ?」 「良く解ってますね! 君と暮らした一年が…今の私を造ったんです… 私は…君と暮らしていた時に…想い知りました…。 私は…議員として生きて来ましたが…如何に無知で…世間知らずな人間として生きて来てしまったのかを…思い知りました… それからは、自分の足で確かめて…自分の目で…知る! 走り続けて…安曇総太郎の目に止まり、娘婿になる為に再婚しました… 相手も再婚で…康太と同い年の子供と…高校生の子供と…私との間に出来た…小学5年の息子がおります! そのうち…逢わせます…」 「…勝也…そこまで…しなくて良い…」 「私の…ケジメです……。 貴方が…もう少し体調が良くなったら… 食事に行きましょう…! それより、貴方のお連れの方を呼んで…お茶にしても良いですか?」 康太は…黙って…頷いた 三木が…控え室まで呼びに行き…一生達を連れに行った 一生、聡一郎、隼人、神野、小鳥遊は、三木に連れられ…最上階へ向かった 三木と一緒にいた兵藤も、一緒に着いて…最上階への総理の所まで…向かった 部屋の中に入ると…そこには、テレビとかで見る…総理が座っていた… 一生が「えええ!!」と仰け反った… 総理が…康太を大切そうに…抱き締めていた 安曇は、一生達を見ると立ち上がり、頭を下げた 「康太の父の安曇勝也です! 以後、お見知り置きを!」 と安曇は、挨拶をする 一生は榊原に助けを求めた! 榊原は弱って…返答に困っていた… 「…康太の…第二の…お父さん…なんですよ…」 と返答に窮していた… 三木は「詳しい話は…後でな…。座れよ!」 と一生達を座らせた 三木がそう言うと…榊原は 「帰りに…貴史を飛鳥井に連れて行き…聞けば良いんですよ! ねっ…貴史…君が一番説明が出来ますものね!」と 兵藤を睨んだ 安曇が「お茶を…」と、言うと秘書が電話を入れた 待機していたホテルの従業員が運んで来て、康太達の前に…ケーキと紅茶を置いた 安曇は、康太の髪を撫で 「食べなさい…」と勧めた 康太は、少しずつケーキを食べた 「伊織…疲れた…」と、スプーンを食わえながら…言うと 「お茶を戴いたら帰りますか?」 「…ん…。」 返事をして、紅茶を飲むと…一生が康太のケーキを…食べ始めた 「…食えんでしょ?無理すると吐くからな…」 と、一生が康太のケーキを食べた 安曇は、こうして康太は仲間に守られ…恋人に守られ…生きて来たのだと…知った 榊原が「もう少ししたら、食べれる様になるので、そうしたら、食事に誘ってあげて下さい! 康太は沢庵が大好きなのです」と安曇を気遣い言葉にした お茶を終わらせると、康太は立ち上がった 「勝也…少し疲れた…帰るかんな!」 帰宅を告げると…安曇は康太を抱き締めた 「また逢って下さいね! 私も逢いに行きます…」 頬に手をやり…慈しむように…抱き締めると…康太を離した 「またな…勝也…貴史にでもオレの携帯の番号とアドレスを聞くと良い…」 「解りました…気を付けて帰りなさい…」 康太は頷き…背を向けた…そして片手をあげて…別れを告げた 記者会見場を後にして榊原は、康太を車に乗せた… 一生達や神野と小鳥遊は力哉の車に乗り、兵藤は三木の車に乗り…飛鳥井の家に向かった 康太は車の中で…寝ていた 「疲れましたか?」 「ん…。少しな…。」 「君は……勝也さんが、君に還るのを知っていたのですか?」 「子供のオレは…そんなに見えてねぇよ! 源右衛門がいたしな…オレは…見ちゃいねぇ 自分に還る布石を子供のうちから打てる程、オレは…凄くはねぇよ…」 「なら…何故?」 「オレが山に修行に一人で出されたのは…5歳になるかならねぇか…だ… そんな歳で…オレは一人で修行に出され日々修行で酷使されて…泣き付きたくても…誰もいねぇ…そんな世界にいたんだよ! 勝也は…妻子を亡くして…絶望して…死にに…山に入ったんだよ… でも死にきれず、山をさ迷ってい歩いてるのを…見付けて…宿泊所に連れて行った そこで、一年間…一緒に暮らした… オレも淋しかったんだよ…暖めてくれる人間に…縋ったんだよ! だから、返される恩なんて…ねぇんだよ! オレも…救われた…息子の身代わりだと解っていても…愛されて…優しく撫でられ…救われた… オレは…あの人の優しさを利用していたんだ…最低だろ?」 榊原は、優しく…康太を引き寄せ 「違うでしょ…? 君は…彼を放っておけなかったのでしょ? だから、拾って…一緒に暮らした あの人を癒したのは…君ですよ! 君が助けなかったら…彼は死んでいたでしょ?」 「伊織…オレは…」 「何も言わなくて良いですよ…寝てなさい」 康太は…その瞳を…閉じた

ともだちにシェアしよう!