5 / 72

第5話 頑固

今朝は…リビングには聡一郎が顔を出した 康太は…珍しくて「一生はどうしたよ?」と尋ねた すると、聡一郎がピキッと固まった… 後方から…慎一が… 「聡一郎…聞かれて固まったら…康太が勘ぐるでしょ!」とボヤいた 「慎一、一生はどうしたよ?」 「………高熱出して…瑛太さんが飛鳥井の主治医の病院へ連れて行きました…」 「高熱…?…体調が悪かったのか?」 「…みたいです。」 康太は…立ち上がると、榊原の方へ行った 「伊織…一生が瑛兄と病院へ行ったって…」 「え…!嘘…。無理させたのですね…」 「伊織、オレの顔を見ると、一生は無理すんかんな…ホテルに部屋でも取って…時間潰すか…」 「解りました。君を見れば、一生は無理しますからね なら、家を出ますか?」 「そうだな!慎一、オレは飛鳥井の主治医の病院の近くのホテルで過ごしてくわ!」 「解りました…。誰か連れて行きますか?」 「嫌…良い…。オレは伊織と行く…」 「何かあれば呼んでください!駆け付けます!」 「解った…病院へ行ったら一度伊織が、電話を入れると思う それまで一生を見張っててくれ…頼むな ならな、一生が帰ってくる前に…行くとするわ!」 榊原は寝室に鍵をかけて、自室を後にすると 駐車場に向かって、車に乗り込んだ 「康太、ホテルに部屋を取ります!」 「ん…。」 榊原は、車を走らせた… 車を走らせて少しすると…瑛太の車と擦れ違った… 康太は…瑛太に手をふって…榊原に止まるな!と告げた 「良いんですか?」 「良い…」 「でも、後を追ってきますよ…」 「嘘…まぢかよ!」 榊原は、仕方なく…路側帯に車を止めた すると瑛太が…榊原の車に近付いた 「…何故無視して行きますか?」 「無視してねぇだろ?手を振ったじゃん」 「…何処へ行くのですか?」 「病院!」 「康太も…調子が悪いのですか?」 「違げぇよ!瑛兄 オレの顔を見れば一生は無理すんだろ? だから、ホテルで時間潰しして…治療に向かう! それより一生の具合は?」 「熱が凄かったんで、病院に連れて行きました!」 「今は?車の中にいんだろ?」 「はい。当分は…安静です!」 「なら、早く一生を早く飛鳥井に連れていけよ! オレの顔を見たら、アイツは無理するからな、無理させねぇ為に…ホテルに移動するんだかんな!」 それで、やっと、康太の意図を…瑛太は理解した 「何処のホテルに行くつもりなのですか?」 「…言わねぇ!言うと一生も来るからな!」 「康太…兄にも言えませんか?」 「……一生が絶対に無理しねぇならな!」 「飛鳥井に行ったら力哉を見張りに着けておきます!」 「瑛兄、一生を頼む…」 「後で電話を入れます!では!」 瑛太は車に戻り…榊原は車を出した 「康太、何処のホテルに行きますか?」 「ヒルトンで良いよ! 主治医の病院に近いしな…。」 榊原は、言われ主治医の近くにあるヒルトンホテルに向かった ホテルの駐車場に車を停め、ホテルの中に入って行き、フロントで部屋を取る 診察までの時間潰しだから…手頃な部屋を…頼み…借りるとこにした 榊原は、keyを貰うと案内は拒否して…部屋へと向かった 部屋の中に入ると…康太はソファーに座り…怠そうに体を投げ出した 榊原は、そんな康太の横に座り…康太の髪の毛を掻き上げた 「怠いですか?」 「ん?怠い…」 「少ししたら診察に行かないと…」 「解ってる…」 その時…榊原の胸ポケットの携帯が、けたたましく鳴り、着信を告げた 榊原が出ると瑛太だった 「義兄さん…遅刻しますよ?」 と、言っても…瑛太は引かず…榊原はホテルと部屋番号を教えた 暫くすると…瑛太がスーツ姿で立っていた 瑛太は、ソファーの上に寝ている康太の姿に…苦笑した 「愛され疲れですか?」と康太の髪を撫でる 「愛され疲れ…と言うより…襲い疲れだ 無性に…伊織が欲しくて…オレが伊織の寝込みを襲った… 寝てる伊織の………を食べて…乗った…」 襲った… 何とも…まぁ… 返答に困る事を… 瑛太は苦笑した 「発情期…ですか?」 「伊織にも…言われた… 欲しくて…欲しくて…止まらなかったかんな… 伊織を押し倒して…好きなだけ食べ尽くしても…足らなくて…止まらなかった…」 瑛太は…榊原を、見た 榊原は苦笑した… 「大変ですね…君も…」 「……康太ですから…」 瑛太は…言葉もなく…納得した 「義兄さん、一生は?」 「今朝、起きたら一生がフラフラと階段を降りてくる所でした 声をかけたら、熱ぽいって言うので計ったら… 九度近くあったので、病院へ連れて行きました!インフルエンザ…かもと、調べて貰ったら違いました… 原因不明…だそうです。 採血をして、一応検査をして来ました」 「一生は、辛くても無理しますからね…。 しかし…原因不明…って、何でしょう?」 「どっち道、検査の結果を待たねば… 結果を急いで出してもらうつもりです!」 瑛太は部屋にランチを運ばせ、軽い朝食を取った 「この部屋は…何時まで借りるつもりで借りたんですか?」 「康太を病院に連れて行くまでの、時間潰しに借りました。 こんな怠そうな康太を連れて歩けないので…」 と榊原は困った顔をして答えた 「なら、康太が病院に行く時に、私が精算してあげます! 一緒に部屋を出れば良いですからね…」 榊原は、朝食を取り、少し休んで…病院に行く事にした 康太は…主治医の所へ…診察に行く為に…瑛太は会社に行く為に、一緒に部屋を出た 主治医の病院へ診察に行き…点滴を打ってる間に慎一に一生の状況を聞く… 「あ!慎一ですか?……… 一生? 起きてて良いんですか?」 『今何処だよ!あんで俺を置いて行くんだよ! 俺も行くから場所を教えやがれ!』 一生は激怒していた… 「一生…熱出してたんですよね…?」 『出てた…今も出てる!でも寝れるかよ!』 「原因不明…の熱でしょ?寝てなさい!」 『嫌だ!康太はどうしたんだよ!』 「今、点滴してます。」 『なら、そこへ行く…待ってろ!』 「一生!寝てなさい!」 『…康太の側にいてぇんだよ!』 「治らない状態で来ても…逆に康太は心配しますよ?」 『…旦那…俺から康太を奪わないでくれ!』 「解りました…飛鳥井の主治医の所へ…いらっしゃい!君も…診察してもらいなさい!」 『…悪い…』 「慎一に変わって下さい!」 一生は慎一に電話を変わった 「慎一ですか?飛鳥井の主治医の所まで…一生を連れてらっしゃい!」 『すみません…聞かないから…コイツ…』 相当…慎一の手を手こずらせたみたいだった 榊原は、飛鳥井義恭に…一生が、来ることを告げた 義恭は、ニャッと笑い… 「鴨が葱背負ってやって来たわい!」と呟いた 慎一が一生を、連れて来ると…一生はフラフラだった 飛鳥井義恭は、一生の姿を見ると…診察室に…引き摺って行った ついでに、榊原と慎一も来いと…呼ばれた 「伊織、検査結果が出たぞ! 一生は2月の終わり頃…肩を刺されたろ?」 「はい!」 「完治しとらんし、感染症の疑いがある… よくもまぁ…破傷風にならんかったわ… 当然、入院な!」 「ええええええ!嘘!入院は嫌やん!」 一生は、訴えた! 「なら、お前も康太と一緒に点滴に来い! 怪我も治癒出来ぬ奴に…文句を言う資格なし!」 飛鳥井義恭は、言い捨てた 一生は、ガクッと項垂れた 「先生、一生の怪我は治癒してないのですか?」 榊原が聞くと…義恭は、怪我の部分を榊原に見せた 傷が…膿んで…化膿していた… 榊原は、一生を睨んだ 「何時からですか? 貴方!今は人間なんですよ! 放っておいても治るって事はないんですよ! 何でちゃんと治療しないんですか!」 榊原は、青筋立てて…怒っていた 「治さないと…タダじゃ済ませませんよ!」 怒られて…一生は、小さくなった 「怒るな…解ったから…」 「解ってないでしょ! 貴方…ベッドに縛り付けて…入院させましょうか?」 一生は、ブルンブルン首をふった 「約束なさい!怪我を第一に治すと!」 額に怒りマークを着けた榊原が怖くて…一生は頷いた 「3日位…入院しますか?」 「それは……勘弁…その間に康太に何かあったら…と想うと…脱走する…」 「なら、明日から毎日、点滴と治療ですよ? 康太も毎日来てます!約束なさい!」 「解った…約束する!」 「と、言う事ですので…ガンガン治療して下さい!」 と、榊原は義恭に頼んだ 「解ったわい!手始めに…注射と点滴な! 毎日、欠かさず薬を飲ませてくれ!」 「解りました!康太が飲む時、必ず一生も飲ませます! 目を離すと…怪我さえ治しやがらねぇ奴は…脅しとかないといけませんね…」 一生は、形無しだった 康太の点滴が終わると、榊原は一生の事を康太に話した 康太は…一生の頭を殴った! 「てめぇ!治さねぇと…オレは消えるかんな! 見てりゃぁ無理するなら消えてやる! 覚えときやがれ!」と言い放った 「解った…無理しねぇから…許して…」 「嫌だ!見捨ててやる!」 「あ~それだけは! 俺に死ねと言うのと同じじゃねぇかよ!」 康太は一生を抱き締めた 「なら、治せ…解ったな?」 「解ったよ…」 「オレが…黄泉に行って帰って来なかったり、宣言祭に、卒業式…や、オレが血を吐いたりしたからな…お前は自分の事を後回しにしちまったんだろ? オレも治療に専念する…お前も…治せ… 良いな…絶対だぞ!」 「解ってる…卒業式…前から…熱が引かなくて…限界かなと…感じてた所だ…治療に専念する!約束する!」 一生は、康太を抱き締めた… そして、大人しく…治療を受け、点滴をされていた 一生の点滴が終わると、榊原は精算に行った 「オレは…これから弥勒の所に行く お前達は、どうするよ?」 「着いて行く…。」 一生がそう言うと榊原が精算から戻ってきた 「伊織、弥勒の酒を忘れんなよ…」 「解っています。 弥勒の所へ…行く前に精算して来ます。」 榊原は、一生の分も精算して…戻って来ると 「一生も来るってよ?」と案の定の展開だった 「だと、想いましたよ!」 榊原は康太を促し、駐車場まで向かった 「慎一、君はどうします?」 「着いて行きます! 一生を乗せて着いて行きます!」 「なら、後を着いて来て下さい!」 榊原は、弥勒の所へ…行く前に酒屋に寄り、甘露酒を買って…手土産にした そして、それを後部座席に置いて、車を走らせた 弥勒の所へ着くと、弥勒は外に出ていた 榊原は座席から甘露酒を取り出すと…弥勒に渡した 三本…買って…弥勒に渡した… 弥勒は喜んで、その甘露酒を受け取った 道場の方へ招かれ…行くと、そこには誰もいなかった 一生が「城之内と東矢は?」と尋ねた 「二人は飛鳥井の菩提寺から山に上がり…修行の身に入った…。 下山してくるのは…二年後…だ。 暫しの別れとなる! だが、下山しても…修行は続く 下山して来たら…城之内は、菩提寺の住職に、東矢は、妖術師…久山《くざん》元帥の所へ弟子入りする! オレの所の…修行は、終わりだ!」 康太は頷き…何も言わなかった 弥勒は…紙袋を取ると…康太に渡した 「これを毎日飲め…そうすれば、その内臓の粘膜は…日々甦る筈だ…。 一生には弥勒院に伝わる傷薬をやろう! こまめに塗れば…傷口は治る!」 弥勒は一生にも薬を渡した 「世話かけたな…弥勒…」 「その薬草を毎日、煎じて飲め… そうしたら、内臓の粘膜は再生される…」 「あぁ!毎日飲む…」 「飲み方は我が父、厳正が書いておいたから、読んで飲ましてやってくれ 頼みましたぞ伴侶殿」 榊原は「解りました!毎日飲ませます!」と弥勒に約束した 「ならな、弥勒…。蒼太が来る前に飯を食わねぇとな!」 「また、会いに来てくれ…」 弥勒は…康太を抱き締め…頬擦りをした 「また来るかんな!」 「待っておる…!」 弥勒は康太を離すと…外に出て康太を見送った 康太は車に乗ると…弥勒に別れを告げた 榊原は、飛鳥井の家まで走っていくと…駐車場に車を停めた そして、車から降りると家の中に入っていった 「隼人、聡一郎、外食に行きますよ?」 呼びに行くと、隼人が榊原に抱き着いた 「淋しかったのだ伊織…置いて行くな…」 少しだけ…愚痴を溢す隼人を榊原は抱き締めた 「まさか、一生が抜け出すと思わなかったので… 君達を置いて出てしまいました…」 榊原は、隼人の頬を撫で…キスした 「一生は、どうだったのだ? そう言えば…昨日、オレ様の着替えを手伝う一生の手は熱かったな…」 と、隼人は思案した…そして、そこで気付けなかった自分を少しだけ…責めたい気分になった 「隼人、君も大変でしたからね…気にしなくて良いですよ。 それより、聡一郎を呼んでらっしゃい」 「……・・・嫌だ!悠太と…エッチの最中だ…嫌だ…」と隼人はごねた 仕方なく榊原は、隼人を連れ…聡一郎の部屋をノックした 応答なしで…榊原はドアを開けた… そこではエッチしてるんじゃなく…泣いてる悠太を慰める…聡一郎の姿が…そこにあった 「何か有りましたか?」 「……悠太は、何も言わず…泣いているので…僕にも解らないのです…」 「外に出ますが…君は…悠太といますか?」 「……どうしたら良いんだろ?困ったな…」 榊原は、悠太を起こし、悠太を見た 「悠太、兄に話なさい! 何故泣いているのか…兄に話をしなさい!」 「……義兄さん…すみません…言えません…」 悠太は、吐きそうにないと踏むと…榊原は聡一郎に 「持ち帰りを持ってきます! 君は悠太といなさい!」と告げた 聡一郎は、黙って頷いた

ともだちにシェアしよう!