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第6話 適材適所
榊原は、車に隼人を連れて戻ると、康太に話した
「ファミレスに葛西を呼ぶしかねぇだろ?」
「解りました…慎一に呼びに行かせます」
榊原は、慎一の車に行き、葛西をいつものファミレスに連れて来てくれてくれと、頼んだ
すると慎一は「了解!」と言い車を走らせた
榊原も車に乗り込み…行こうとすると…三木が近付いて来た
車を取りに来たのだ
康太は窓を開け三木に「よぉ!」と告げた
「何処かへ行くのかよ?」
三木が聞くと榊原がファミレスに行くと告げた
「なら、オレが奢ってやるよ!」と後部座席に乗り込み隼人と仲良く座っていた
榊原は運転席に乗り込むと…車を出した
ファミレスの駐車場に車を停め
店内に入って行くと、後から三人来ると告げ10人用のテーブル席に案内された
康太は…三木に…飛鳥井は問題山積だ…と愚痴を溢した
「今夜、蒼太の件を話し合うだろ?
一生は、オレに付きっきりで…肩の怪我を…悪化させ…高熱を出していた
そして…悠太が…何も言わず…泣いていた…
何なんだろ?
…何でこうも…問題が一度に来るかな…」
三木は黙って聞いていて…
「康太、改革を始めると…中の膿みは出されるんだよ…
総て綺麗に…しねぇとな改革は達成出来ねぇ…
飛鳥井の中で…貯まっていた泥々の…膿が綺麗に…出るまでは…問題はなくならねぇぞ」
「そう言う…もんか?」
「そう言う…もんだ!
三木の家を…お前によって…洗われた時に…そうだったろ?
兵藤の家だって本家を解体してから大変で問題山積だ…って鳴海がボヤいていた…」
「そうか…飛鳥井の道は…姿を現したのか…
ならば、今が正念場か…踏ん張らねぇとな!
明日へと続かねぇかんな…」
「明日へと遺すには…今ある闇と膿を総て出せ…
それしか…明日へは…続けねぇんだよ!」
「三木…」
康太が何か言いかけた時に…葛西を連れて慎一と一生が康太達の席へとやって来た
葛西が席に座ると…康太は…
「葛西、悠太が…泣いていた
何があったか…話してくれねぇか?」
「……僕も…解らないんです…
今日、悠太は、学校にも来ませんでした…」
と葛西は話した
康太は眉を顰めた
榊原が葛西に「最近、何か変わった事は?有りましたか?」と問い質した
「中等部は今、卒業式の練習の真っ只中です…。
忙しく準備してます…
それなのに休まれると…そのうち…悠太への信頼をなくします…」と危惧していた
康太は…思案して…瞳を閉じた…
「葛西、悪かったな…慎一、送ってくれ…」
康太が言うと葛西は「近くですので、帰れます!では、失礼します!」と頭を下げ…帰って行った
康太は…龍騎…と呟いた…
「悠太の思念を…紡いで…オレに見せてくれくれ…」と康太が頼むと…
優しい風が…康太の回りを…吹き抜けていった
「安曇…貴之…辺りかな…?
それもと…貴也?貴教は小学生だしな…違うか?」
と、呟いた
三木は…「安曇…って、あの安曇…?」と康太に尋ねると…
「飛鳥井康太に手は出せねぇなら…
飛鳥井の身内の…手頃な…悠太…辺りに来るか…とは、想ってた…
勝也は連れ子を…見た目の表面しか見てねぇからな…
再婚も…反対だったのに…父親となる勝也が…血も繋がってねぇのに…飛鳥井康太を溺愛するのは…許せねぇ…って事だ
勝也と子供達も血が繋がらぬ関係なのに、勝也の想いはその上を逝ってしまったからな‥‥
子供としたら理不尽さは感じずにはいられねぇだろ?
思念は…力を使えねぇけど…解るからな…」
康太の説明に、皆は言葉を失った
まさか‥‥其処へ繋がるとは‥‥
康太は更に続けた
「勝也はケジメ…だって言ったろ?
なら、オレの所へ来る前に…家族に言ってる訳だ…。
言われた家族は納得いかねぇなら…腹いせと…警告を…知らしめる必要がある…」
そう言われれば…納得が行くかも知れない…
「弥勒…頼みがある…依頼料も支払う頼みだ…
一本《百万円》で頼まれてくれねぇか?」
『お前の頼みなら…依頼料など要らぬ…』
「オレも…ケジメを着けねぇとな…」
『ならば、受け取っておく…』
「龍騎の紡いで来た思念を…CD-ROMに落とせねぇか?」
『焼き付け…をしろと?
また無理難題を…
それだと、…映像は不鮮明になる。
ならば、時空を越えて…撮して来た方が鮮明だ…』
「出来るか?」
『やれと、言うのであろうて…』
「やれとは…言えねぇよ…。
オレは頼んでる…だけだ…」
『龍騎の紡いで来る思念を見て…その時に時空を越えて…撮影をしに参る…。
証拠を残したいのであろうて…待っておれ』
「龍騎も出すなら…もう、一本…出すから頼むな。」
『お前は…自分の体を…大切にな…』
弥勒の気配は…消えた
「繁雄…お前の持ってきた厄介事だぞ!」
「すまねぇ…俺も一本…出すわ」
「要らねぇよ…。
繁雄…安曇を潰したら…済まねぇな…」
「良いさ!安曇が潰れても…俺は潰れねぇ…からな!」
「お前を潰す奴がいたら…オレは闘ってやるさ…」
康太は…笑った
三木は康太の頬に手をやり…
「俺は…お前が敵にならねぇなら…闘えれる…。
この世の総てを敵に回したとしても、俺は闘うのを止めねぇ…
でもな、お前が敵になったら…俺はさっさと白旗上げて…降参する!
お前がいてくれるなら、最前線を走る政治家として生きて行く!
そして、そのうち貴史と共に…駆けて行き…お前の礎になる!
お前の手足だ…それが俺がこの世界に生きる…意味だからな!」
「繁雄…オレとお前は一蓮托生…共に在る…
血を交えて飲んだ時に…そう決めたんじゃねぇのかよ?」
「……あぁ。総て…棄てようとした俺を留めるのは…お前だからな…。
俺の命を…引き留めたのは…お前だ…
責任とれよ!責任取って長生きしやがれ!」
「責任取って…お前はオレの愛人かよ?」
「おっ!それ良いな…。
お尻は処女だから優しくしてね♪」
「なら、本当に抱いてやろうか?」
「……おめぇが言うと冗談にならんな…」
「嫌…冗談じゃなく…寝てみるか?
オレのキスは伊織仕込みで上手いぜ…」
「……最近…性欲すらねぇのを解ってて言ってる?
政治家として生きていくのに…嫌気が刺して…
投げ出したいのを知ってて…言ってる?」
康太は何も言わずに…笑った
「鳴海が…結婚するから…だろ?」
「………叶うなら…総て…投げ出して…行きたかった…
少しだけ…お前を恨んだ…程にな…」
「解放してやろうか…?
おめぇ…を。
好きに生きろと…言ってやろうか?」
「康太…」
「今夜…オレと寝ろ…」
「え…冗談は…」
「おめぇの…明日を紡いで…夢を見せてやる…
選ばせてやる…
見る夢は…お前が決めて良い…
決めたなら…そこへ…お前を送ってやる
だから、お前が選んで…決めろ」
「伊織に…恨まれる…」
「伊織も一緒だ…気にするな…
オレは…適材適所、軌道修正する為に在る
お前の居場所が…違うなら…お前はそこへ行かねばならねぇ…って事だ」
「少し …時間をくれ…」
「今夜は…蒼太が来るからな、明日の晩か、明後日…辺りだな…
それ以上は…待たねぇよ?
大丈夫だ!挿入はしねぇよ!
オレの中も…伊織のモノだ…挿れさせねぇけどな、この世で一番感じさせてやんよ
でねぇと…紡げねぇんだよ…おめぇの心が…無防備にならねぇとな…紡げねぇんだよ!」
「俺は…お前の前で…無防備じゃねぇのかよ?」
「無防備だ…だがな…おめぇの心が…鳴海の事を…封印して…認めねぇからな…
何度か…紫雲龍騎に、お前の夢を紡ぎに行かせた…
でも…相当深い所の…想いも…封印して…頑なだと言われた
お前は今…分岐点にいんだよ…
だから、こうも頻繁にオレと逢う機会がある…
越えなきゃ行けねぇ試練だ…
繁雄…オレにお前の深淵を見せろ!
オレは見る義務が在る!
違うか?だから、ベッドを共にしようと言うんだよ!」
「……康太…伊織の想いを思えば…了解は…出来ない」
「伊織は…解ってくれる!」
「言い切れるのかよ!」
「言い切れる!
何故なら…オレは一生とも寝てる。
聡一郎や隼人、力哉とも寝た…
エッチを見せた相手なら弥勒や龍騎…瑛太と京香に見せたぜ…。
後、悠太も見たな…」
「………....はい、そうですか!と言って…やるにはハードルが高い…」
「なら、これから?行くか?」
「解りました…明日の晩で良いです!」
「飛鳥井へ来る?ホテルの部屋を取る?」
「飛鳥井の家で…やるのは、抵抗がありすぎ…
そこまで厚顔無恥にはなれねぇよ!
一生…助けろよ!」
「無理…俺は…二度…康太と伊織に抱かれてる…言える立場にない…」
「なら、慎一…助けろ…」
「俺は…寝てませんが…主に抱き締められるのは…大好きで…時々甘えます…
伊織が…許してくれるので…時々…康太を抱き締めてますから…言えませんね…」
「…………貴史とも寝てるのか?」
「貴史は寝てねぇよ!キスは良くするな…
まぁ、伊織は知ってて…止めろとは言わねぇかんな…やらせてある」
三木は榊原に「康太を…貸し出すなよ…」と愚痴を溢した
「三木…僕が好きで康太を触らせてると…思ってるのですか?
康太も…好きで触らせると…思ってるのですか?
その時々に…康太は必死に…考えて…出した結論だ!
一生をこの世に留めておく為に…康太は…その体を投げ出して与えた…
後で泣いて…僕に謝る康太に何が言えますか!
この世に引き留める…為ならば…
僕は…苦しいけど…受け止めます
それが康太の決めた道ならば…僕は共に行くと決めたのです!」
榊原の想いは重い…
康太を思えばこそ…堪える試練の…道なのだ
「僕のモノだと想えば…堪えれる事ですが…
逃げるなら…確実に…その息の根は……
この手で…止めます
僕の為に生きない康太を…許せる程…人間は出来てません…
康太が死ねば…魂を結びつけてある僕も死にます…無理心中です。確実に…この手で…仕留めます!」
榊原の想いは…康太の命…自分の命を懸けて…繋げているのだ…
三木は抵抗を諦めた
「康太…俺は…分岐点に来てるのか?」
「そうだ。」
「お前の瞳には…果ての俺が…見えてるのか?」
「……見えてねぇよ!
だから、その果ては…お前に選ばせてやる…
お前の行きたい果てに…お前の先を置いてやる…
それが、オレの…お前にくれてやる愛だ!」
「…康太 」
「おめぇとの仲も…長い。
総て捨てて…行こうとするとお前を引き留めたのはオレだ!
だから、責任を取ってやると…言ってる!
死にたいと…逝かせてくれ…と頼んだ…お前を引き留めたのはオレだ…
あの日…血を交えて…飲んだ約束など…反故にしてやる
行きたい場所に行け…行かせてやる!」
三木は…下を向いた…
透明の…滴が…零れて…落ちた…
「明日の晩…飛鳥井に来い…」
「…解った…。伊織…済まない…」
「三木…気にしなくて…良いですよ」
榊原は、三木の背中を優しく撫でてやった
「伊織、明日は若旦那に逢う!
夜は…三木の為に使うからな…」
「解ってますよ!
三木、明日は夜の7時までに来なさい!
三階のリビングで、皆でデリバリでも取って…からで、良いですよね」
「おう!若旦那に午前10時には…ホテルで待っててくれるように電話しといてくれ」
「解りました。今、電話してきます」
榊原が外に電話に行くと…三木は…
「伊織の背負うモノは重すぎる…」と溢した
一生は「だから、俺達がいんだろ?」と告げた
「一生…」
一生は、親友と…寝た…
それしかなかったと言っても…
何ともやるせない…
それでも…一生は変わらず…康太の側にいて
榊原とも普通に…付き合っている…
不思議な…関係で…結ばれている…
三木は…染々と…一生の顔を見た
榊原は、電話から戻って来ると
「若旦那は了解との事です」と告げ、鞄から薬を取り出し
「慎一、康太と一生の分のお水を持って来て下さい」と頼んだ
慎一は立ち上がると…ドリンクバーから水を汲むと…二人の前に置いた
「慎一、聡一郎と悠太の分を弁当にして…持ち帰りをお願いします!」
「解りました!隼人と康太の焼きプリンも持ち帰りで頼んできます!」
慎一が立ち上がると、榊原は康太に薬を飲ませた
そして、一生の横に座り…一生に薬を飲ませる
自分で飲める…と言う一生を、黙らせ…榊原は一粒ずつ手に出してやり…飲ませた
「家に帰ったら、弥勒から貰った薬も塗りますからね!
君は本当に…見てないと信用になりません!」
と怒って…榊原が言う
二人の間に…確執や…遺恨は残ってはいないみたいだった…
三木は…「仲良いんだな…」と呟いた
一生は「良いぜ!伊織はオレを認めているからな…
オレも伊織を認めている…。
俺は…飛鳥井康太の為にならないのなら、動かねぇ…と、解っているからだ…
俺は…康太を愛してる…この命よりも…大切だ…
だが、だからと言って…康太と恋人同士になりてぇ訳じゃねぇ!
俺は…康太と生きて行きてぇんだよ!
共に生きていてぇんだよ!
伊織は…そんなオレ等の絆を…理解して側にいるのを許してくれている…
飛鳥井の家族も…俺等と…康太を別に考えているなら…その関係は崩壊する…
理解の上に成り立つ俺等の存在だ!
伊織は…そんな俺等ごと康太を受け入れてくれてる…
そんな伊織を…誰が裏切れるよ?」
「僕も…一生は認めてますよ!
誰よりも側で康太を守り…康太の為に生きているのは…一生ですからね!
僕は…一生が、愛しいです…
こんなに体を…ボロボロにして…
それでも康太の為に生きようとする一生を愛してますよ!
康太の宝の隼人も…聡一郎も…愛して止みません…
そして、慎一も愛してますよ!
誰よりも…康太に使えてくれる君を…君達を…認めない筈…ないじゃないですか…」
「何か……羨ましいな…」
「三木、一人でオレのベッドに入るのが嫌なら…誰が連れてくか?」
それも…嫌なんだけど…
一生は「良いぜ、別に」と簡単に言い
慎一も「俺も構いませんよ…」と返答し
隼人も「伊織と康太と寝るのは…久し振りなのだ…」と嬉しそうだった…
「嫌…良い…。俺も覚悟を決めた…
明日の夜…伺うよ…。此処の精算をして来る」と三木は席を立った…
康太は…三木の後ろ姿を見て
「唯…一人の人を…想わん…
我は…我の道を行く…
お前は…修羅の道を…歩めば良い…
我等の道は…この先も…重なるが…
それでも…交わりはしない…
ボクの想いだけ…連れて行け…」
と、呟いた…
一生は、「誰の言葉よ?」と問い掛けた
「兵藤…鳴海…」
榊原も、一生も慎一も隼人も…あっ!……と、納得した
「鳴海が…血を吐き…忘れた想いを…オレは覚えておいてやると…約束した…
だから、お前は…お前の道を行け…と鳴海の背を押した…
だからな…今更…迷う三木を軌道修正する…
鳴海の所へ行きたいのなら…行かして遣るつもりだ…
それが、三木の…適材適所配置する場所ならばな…」
康太は…天を仰ぎ…涙を…溢した…
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