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第9話 粛清
一階に下りると…戸浪は玄関で待っていた
戸浪は玄関に姿を現した悠太の姿に
「悠太…大丈夫なのですか?
」と思わず康太に問い掛けた
「闘わねぇとな…男として…ダメになりそうだと…言われればな、連れてくしかねぇだろ?」
言われる言葉の意味を推し量り…戸浪は頷いた
「田代を呼び出しました!
皆で乗り込み…行きましょう!」
「乗れるのかよ?」
「大丈夫ですよ!外で田代が待ってます!」
戸浪に促され…玄関から出ると、田代のワゴン車が停まっていた
瑛太も出勤のスーツに着替えて、外に出て…旧友に顔を合わせた…
「ならな、瑛兄、オレは行く!」
「貴方の…想いが無事…溜飲出来る事を…祈っております!」と瑛太は頭を下げた
康太は頷き…車に乗り込んだ
「若旦那、弥勒院に…行ってくれ」
「田代、弥勒院に行った後に、桜林学園へお連れして下さい!」
「解りました!」
田代は弥勒の所へ…走って行った
弥勒の所へ行くと、駐車場には弥勒と紫雲が出て待っていた
康太は車を降りると「ちょっと行ってくる!」と言い榊原と共に車を降りた
「弥勒、龍騎、待たせたな!」
二人の前に…ピシッとスーツに身を包んだ…康太と榊原が降り立ち…決意を…伺い知った
「撮影して来た映像は…このディスクの中に入っておる」
康太にディスクを渡すと…榊原は鞄の中から…札束を取り出し
「お約束の二本…。お受け取り下さい!」と渡した
弥勒が袱紗ごと受け取り…紫雲に渡した
そして康太を抱き締め…頬にキスした
「お前の頼みなら…なんだってしてやるのに…」
「してもらってるさ…弥勒。
オレもケジメを着けねぇとな!
ならば、オレに勝機を呼び込んでくれ…
絶対に負けられねぇ!
オレの上に…最強の勝機を呼びやがれ!」
「呼んでやろう…俺と龍騎で、お前の呼び込んだ勝機を更に強めてやろう!」
「弥勒、オレは負けねぇぜ…
例え…親と…想った…相手でもな!
反撃の手は…緩めねぇ…ぜってぇにな!」
紫雲も…康太を抱き締め…
「なんなら…闇に消し去ってやっても…良いわ…」とゾッとする笑いを浮かべた
「龍騎…それは、するな!お前が人の道を外してどうするよ?」
「解っておる…。だが…お前の…辛さを思えば…」
紫雲は、康太を抱き締めた
そして弥勒も抱き締め
「ならな、弥勒、龍騎!オレは闘いに行かねぇといけねぇ!」
逝く事を告げた
紫雲と弥勒は背筋を糺すと康太に頭を下げた
「貴方の上に絶対の勝機が…導かれん事を…願っております!」
康太は笑って、それを受け取り…背を向けた
車に乗り込み…桜林学園 高等部へと向かった
来客用の駐車場に車を停めると…
康太は車から降りた
康太は…天を仰いだ…
『 来い!絶対の勝機よ!オレの所へ来い!』
と念じて…運気を手繰り寄せた…
体に…力が…漲る…
康太は…笑った
弥勒と紫雲の想いが…絶大な勝機を…導き…注がれる…
「さてと、1年A組 首席番号1番 安曇 貴之の所へ…ご挨拶に行くとするか♪」
康太の足取りは淀みなく…目的を手繰り寄せ突き進む…
康太の姿を見たさに…卒業生も…出て来て
待ち構えていた
「康太、一生のTwitterに、今日お前が来るとの呟きがあったから…来た!」
と、清家静流が、康太に近寄り…嗤う
「愉快な奴が…オレの弟に愉快なことしてくれたからな…制裁しねぇとな!
ナメられたままだと男が廃る!」
清家は、なにも言わず…康太の後に着ける…
康太は…怯むことなく…一階の…1年の校舎へと足を踏み入れた
1年A組のクラスの中に入って行き…目当ての人間が見付からず…椅子に座った
そして、レイプの一人が登校すると…
康太は…近寄り…鳩尾に拳を入れた…
「まずは、一人!粛清だ!」
二人目が来るのが解ると、康太はドアの影に隠れた
そして、入って来ると同時に、鳩尾に…膝蹴りが…お見舞いされた!
「安曇 貴之と愉快な仲間達…二人目」
康太は…見も凍るような瞳で…そいつ等を見た
「愉快な仲間達が纏めて来るな…」
康太は…ドアの影に隠れた
「慎一、逃げたら追いかけろ!
後ろにいる奴、逃げたら捕まえるの協力宜しく!」
待ち構えて…入って来た奴を…飛び蹴りでノックダウンさせ、手は…次の奴の鳩尾に入り…本人は…捕まえられていた
「慎一、捕まえてろ!」
康太が言うと、安曇貴之は暴れた
「てめぇ!俺を誰だと思ってるんだ!」
あまりにも煩いから…鳩尾に…拳を入れ黙らせた
「お前?タダのバカだろ?」
康太は…安曇の手を捻り上げ…嗤った
「愉快な事をしてくれた御礼はするさ」
「お前!誰だよ!」
貴之は頭に血が上って相手を見ていなかった…
「オレか?オレの名は飛鳥井康太!」
と、康太は言い捨てた
貴之は、康太の顔を…凝視した
「慎一、コイツを立ち上がらせろ!」
慎一は、貴之を引き起こし…立ち上がらせた
「御返しは…誰よりも派手に!」
康太は貴之の頬を思いっきり殴り飛ばした
「やられた事は、倍返し!」
殴られて…動けない貴之の胸ぐらつかみ…投げ飛ばした
「我等に仇成す者には…粛清を!」
その鳩尾に…拳をヒットさせると…白目を向いて…倒れた
「だらしのない…」
康太は……その顔を踏み着けた
「まだ、教師が来ねぇな…一生、愉快な仲間達を立たせろ!」
「一生、皆の見てる前で…レイプしてやれよ!」
「面白そうだな…友達は選らばねぇとな!
飛鳥井康太に仇成せば…我等四悪童…命に変えても…復讐は完遂する…」
青褪める…愉快な仲間達を追い詰めて…服に手をかけると…教師がやっとやって来た
「学長の命で来た!」
言われ貴之は、安堵した…
「四季は…親を呼んだのかよ?」
「今、呼んでる最中です!」
助けでないと解ると…その瞳は…愕然とした
「なら、学長室で…待つとするか!
ソイツ等を連れて来い!」
康太の命令で愉快な仲間達が連れて逝かれた
康太は教室を後にする時、1年の奴等に
「騒がせて悪かったな…あぁでもしねぇと逃げるかんな…悪かったな!」と謝った
1年A組のクラス委員が
「1年A組のクラス委員をやらさせて貰ってます!
彼等は…それなりの理由があって…貴方から粛清を受けたのですか?」と尋ねた
「あの五人に…オレの弟、飛鳥井悠太は…暴行を加えられた!
それなりの理由だろ?
4月に…高校生になる弟が…受けるべき暴行ではない!
それが原因だ!」
康太は…キッパリ…と答えた…
「そうでしたか…悠太が…」
「弟を…ご存知か?」
「中等部の頃、一緒に生徒会で…活動をしておりました…」
「そうか…。ではな!」
康太は…1年のクラスを出て…職員室へと行き…理事長室のドアをノックした
ドアを開けたのは神楽四季だった
神楽は康太達を招き入れると…
「親御さんは…もうじき見えるそうです!」と状況を告げた
康太は学長室の隣にある応接間のソファーに座り…お茶を飲んでいた
「四季、この愉快な仲間達は…総理の子供と言う立場で…相当悪さしてんだろ?」
「してますね…公に出ないから…懲りないんですよ
世の中で怖いものも…叶わないものも…ないと思ってるんですよ
ったく…バカとしか言いようがありませんね
来年度…うちの高校は定員を遥かに越える応募があり…クラスを増やしたのです!
こんなバカが五人減ったって…どうって事でもないです!
総理の息子と言ってもね…許される時代は…等の昔に終わってますよ!
良い機会なので…親を呼び出せて良かったです!」
「四季…オレが動けば…安曇の総理の座も…なくなるかもな…」
「貴方を怒らせたのですからね
飛鳥井家の真贋の…弟に……手を出したのです
それ相応の報いは当たり前です!」
「四季…オレの手の中には…勝機がある…
今回の勝機は高く着いたけどな…オレは負けねぇぜ!」
「ならば…勝負は着いたも同然じゃないですか!
その上…こんな豪華な…人間を引き連れて…お見栄になるなんて…
戸浪さん…お久し振りです…」
戸浪は声をかけられ…頭を下げた
暫くすると…安曇勝也が妻を引き連れ…
理事長室にやって来た
ドアをノックして…中に入ると…康太の姿に…勝也は…眉を…顰めた
「神楽理事長…これは、どう言う事なのですか?」
勝也が尋ねると…神楽は、お座り下さい!と毅然として…答えた
ソファーに座り…康太を見る…
康太の顔は…キツい瞳をして…勝也を睨み付けていた
「今回、学園に呼び出された…理由をお話下さい!」
安曇は訳が解らず‥‥問い掛けた
四季は「待ちなさい!貴方が幾ら総理だと言っても、融通が通ると思ってもらっては困ります!
まずは、此方の方から紹介致します!
飛鳥井康太さんです!
そして、回りにいるのは…愉快な仲間達と、言う事で…。
飛鳥井康太さん、此方にいる方が、安曇勝也さんと、奥様の登喜子さんです!
そして、今回安曇さんを、今回お呼びしたのは…貴方の息子さんが主謀格で…飛鳥井悠太さんを暴行した事について…お呼び致しました」
四季は康太達の紹介と事の経緯を話した
勝也が…「暴行?」と言うと、貴之は良い子ぶって
「パパ…僕はそんな事してないよ!信じて!
証拠なんかないのに言い掛かりを着けているんだよ!」と父親に甘えるフリをした
勝也は理事長に「証拠は…有るのですか?」と尋ねた
「パパ、証拠なんかないのに、アイツ僕を殴ったんだよ!暴行だよ!訴えてよ!」
バカな息子は…証拠は…ないから…いい気なもので…逃げ切ろうとした
康太は、あまりにもバカ臭くて…高笑いした
「安曇登喜子…久し振りだな!
オレを誰だと思ってる?
1番知ってるのは…お前じゃねぇのかよ?
安曇総太郎の側で…オレの手腕を見て来たのは、てめぇじゃねぇのかよ!違うか?」
登喜子…と名指しされた…安曇の妻は…康太に深々と頭を下げた
「お久し振りです真贋‥‥
貴方がこの場におられると言う事は…証拠など手に入れて…確信で来られてるのですよね!
ならば、私は…自分の子供でも…切り捨てねばなりません!」
飛鳥井家真贋の手腕を誰よりも知る安曇の妻は覚悟を決めた顔でそう言った
「おう!証拠ならあるぞ!」
康太が言うと…貴之は、「でたらめ言うな!」と怒って立ち上がった
康太は嗤って
「慎一、そのデカいテレビに映して見せてやれ!
2百万円も払ったんだからな…見せねぇとな!
登喜子、二本払って手に入れた映像だ!
息子のバカさ加減をじっくり見ると良い…
オレは許さねぇぜ…お前等など潰すのは…容易い事を忘れるな!」
と言い捨てた!
テレビには…悠太を数人で殴る蹴るの暴力で…黙らせ…
面白半分で…レイプする姿が…映っていた
『コイツの兄はホモなんだぜ…コイツもホモなんだろ?お尻に太いのが欲しいの…って言ってみろよ!』
悠太を数人で押さえ付け、ズボンを脱がし下着を脱がす
そして無理やり肛門に性器を突き立てた
『おい!血が出たぞ…!コイツじゃ面白くねぇな…飛鳥井康太を呼べよ!
お前のホモの兄を呼べよ!
兄貴なら喜んで足を開き、ありがとう…って言うかもな!』
見ていて…堪えられない…映像が…そこに在った
悠太は…兄を守る為に、堪えていた
『兄を呼べよ!呼ばねぇなら仕方がねぇ!
拳でも…入れてやるよ』
拳を握った男が悠太の肛門目掛けて‥‥容赦もなく拳を突き入れた
悠太の…ギャー…って言う声が…響き渡った…
悠太は…一度も兄を呼ばず…最後まで…堪えていた…
『面白くもねぇな!』
悠太の顔に唾を吐き捨て…足蹴りして、ソイツ等が出ていくまで悠太は…堪えていた…
そして、帰って…聡一郎に縋り…泣いていたのだ…
貴之は、項垂れた…
「飛鳥井家真贋は真実が其所に在るのなら、どんな証拠でも用意は出来るんだよ!
『証拠はあるのかよ?』と言うバカが相手だと……証拠を確保してからでは動かない様にしている!」
康太はそう言い「登喜子」と名を呼んだ
登喜子と呼ばれた安曇の妻は「はい。何でしょう?」と冷静に返した
「オレは頭に来てんだ!
その代価…命を持って償え……良いな?」
「仕方ありませんね…。
これ程のバカならば…この先…生きていても…仕方がないでしょ?
どうぞ!お好きに!」
康太は立ち上がると…ニャッと笑った
呪文を唱えると…愉快な仲間達を取り囲む様に…焔が…回り始めた
「道を開いてやんよ!」
康太は…その手に…雷帝の剣を…出した…
一生はまさか其処でその剣を出すとは想わず
「雷帝の剣!嘘…何で持ってんだよ!
閻魔の道が開かれる…やべっ!
…止めろ…康太!止め!」
慌てて…止めに入ろうとしたが、榊原に止められた…
「一生‥動かないで下さい」
榊原に謂われれば動く事すら叶わなかった
「オレが怒れば… 地獄の扉が開くぜ!
オレが動けば…時代は変わる…
オレを止めるたいなら…その命を懸けてみろ!」
康太が…呪文を唱える
ミシミシと時空が音を立てて軋みだした
登喜子は、その瞳を瞑って…微動だにせず
勝也は…何が起こったのか解らず‥‥呆然としていた
貴之達…五人は…許して…と泣いた…
「遅い…総てが…決められし定めなり!」
康太は…そう言うと…雷帝の剣を振りかざした…
すると、斬られた空間に…歪みが…出来…
その空間から……騎士の様な格好をした…男が…白い馬に乗って…姿を現した
真っ赤な服に金糸が…ふんだんにあしらった服は…この世の…物ではないのが…一目瞭然だった
その馬に見覚えある榊原は、なっ!と目を見張った…
やはり、閻魔に育てられていたのだ…
他の人間は…驚異の瞳で…その状況を…見守っていた
「人の世に…我を呼ぶのは…我が弟…炎帝か?
何か用があって呼んだのであろうて!申せ」
閻魔は…鋭い眼孔で…辺りを見渡した
「この五人の…罪の代価だけ、寿命を…持って行け、我が兄…閻魔大魔王!」
康太に言われ…閻魔は台帳を取り出すと…開いてみた
「………罪深き子よ…代価を取ったら…生きてはいまいぞ!
その代価…その命でも…もの足りぬ!」
閻魔は…言い捨てた…
「兄者よ、なら、その命…持って行くが良い!
足りぬ分は地獄に堕として働かせろ!」
康太は…そう言い、嗤った
その時…安曇勝也が飛び出した
「待ってくれ!待ってくれ…康太!
この子達に…やり直す…チャンスを…やってくれないか?」
必死に康太の足に縋りつき安曇は訴えた
「チャンス?何故チャンスをやらねばならぬ?
我が弟の気持ちも考えた事があるのか!
我が子と言えど…お前は…連れ子の本質も見抜けずにいた…お前にも罪もある…!
違うか?ならば、悠太は…凌辱され損ではないか?
人の気持ちも…解らずに…総理などする資格もないわ!」
勝也は…膝を着き…ガクッと崩れ落ちた…
安曇はとっては良い子達だった
何処で道は違えたのだ?
康太に食って掛かった顔など‥‥見た事もない顔だった
子を見ていなかったと謂うのか?
安曇は‥‥打ち拉がれて崩れる様に座っていた
一度は父のように慕った人だった
情けなら‥‥‥在った
想いも在るのだ
「ならば、安曇勝也、お前にチャンスをやる!
我が子を矯正しろ…。
オレと同じ年の子供も…一枚噛んでいる
三人の子の父親になれ!
オレの様な…化け物の父親になど…なろうと思わなくて良い…
今いる、子供の…父親になれ…
約束を違えれば、その命…確実に没収する…事となる…
閻魔大魔王…見届けてくれ!」
「見届けてやろうぞ…!
違えれば…その命…間違う事なく奪う!」
「安曇貴之…そして、愉快な仲間達
お前達は…行く道は…一本しかねぇ!
違えれば…そこの閻魔大魔王が、その命…狩りに来る!」
貴之と、愉快な仲間達は、何度も頷いた
用が終わると康太は
「ならな、兄者!」と兄に別れを告げた
「手土産もなく…帰るのは…嫌だな…」
「ならば、閻魔に…雷帝の剣を返すよ…」
元々は炎帝の兄、雷帝の剣だった
閻魔はその剣を目にして
「お前が…人に堕ちる時に…腹いせに持って行った…剣を…か?」
と笑った
「そう。返してやんよ!」
康太は…そう言い…雷帝の剣を…閻魔に渡した
「それは、そちが持っていろ!
ならな、我は…帰るとする…でも、その前に仕事をせねばな!」
閻魔大魔王は、校庭に…雷を落とした…
「我の名は、閻魔大魔王…その人に在り
我は人の世の…真実を写す…
人の罪は…最後の最後で…暴かれる
あの世までは…嘘など通用はせぬ!
心して…あの世に参れ…!
ではな、我が弟…炎帝よ…達者でな
お前に…これをやろう!」
「これは?」
「百年に一度…咲く花だ!
それを食べれば…病は…たちまち治る
人の世を…もう少しだけ…過ごすと良い
ではな…」
ヒィヒィ~ンと、馬が反り返り…方向転換すると…閻魔は…時空の裂け目に…消えていった…
辺りは…何もないかのように…静まり返った
康太は…円陣の焔を消した…
そして、ソファーに座ると…お茶を啜った
「四季、騒がせたな…
若旦那も…せっかく来てくれたのに…
怪異なモノを見せてしまって…すまねぇな!」
神楽は「気になさらないで良いですよ…
あの世に行った時には…あの方には逢いたくはないですね…」と呟いた
戸浪も「全然…気になさらないで良いですよ?
私も…あの世に行くなら…あの方には逢いたくはないですね…。天国に…行きたいですね…。」と気楽な事をいっていた
ソファーに座ると康太は登喜子に声をかけた
「安曇登喜子、お前の夫が…懇願したから聞いてやった!
一度でも親子でいた男だ…情けだ…
だが、次はねぇ…違えれば…その命、違える事なく魔界へ堕とす!
お前達、二人が…力を合わせ…子供に向き直ってみろ!
但し、飛鳥井家の真贋の弟をレイプした罪は大きいぞ!
どう責任をとるのだ?」
登喜子は、康太の前に…土下座した
「貴方様の弟様を傷付けた罪は…万死に値する…許されはしません!
なのに、情けをかけて下さると言うのなら…
正して見せます…
弟様への…償いは…代価が…思い付きませぬ……
男として…この先…考えるだけで…」
登喜子は…泣き崩れた
「オレの伴侶は男だが…弟まで…そんな目で見られて扱われた事は…オレは悔しくて堪らない!
本来なら…オレが殺してやりてぇ…
オレの恋人が男だと、弟も…そう言う目で見て…レイプされねばならぬのか…」
康太の…悔しそうな声が…部屋に響いた…
貴之は…己のした罪をやっと…理解する事になった…
「伊織、東青を呼んでくれ!」
「解りました!」
「義恭の所から…写真を持って来させろ!」
解りました…と言い…榊原は天宮を呼ぶ為に、電話をかけに行った
「登喜子、勝也、お前等二人の子供が…どれだけの傷を悠太に着けたか…その目で見てみろ!人の痛みの解らぬ…人間にお前達は育てたのだぞ…」
登喜子も勝也も言葉がなかった
「勝也…今後…オレを子供にしたい…と言うな…
オレは普通の人間ではない…人に怪異な瞳で…見られる存在…
しかも、オレはホモだからな……」
康太はそう言い…嗤った
「オレは自分の事を…恥じてはおらぬ…
オレの愛する伴侶は…未来永劫…彼だけだ
しかも、オレはこの世に…子種は遺せぬ存在…
恥はせぬ
が…オレの家族も同等にで見られたと思うと…堪らない…」
勝也は…自虐的な…言葉を紡ぐ…康太が辛くて仕方がなかった…
「康太!私は…君の事を…怪異な瞳で見たりはしないよ!
君の伴侶が…男なのも…解っているから…守ってやりたかった…
君の背負う荷物を…背負ってやりたかった…
父には…なるなと…言うのなら…父になるのは…諦めます!
だけど…君に、たまに逢うのは…許して欲しい…」
「勝也…まずは…自分の子供を…ちゃんとしろよ…」
「解ってます…弁護士さんから…出される慰謝料は…この五人が支払います!
一生かけても…支払います…
私は…肩代わりはしません!
それで良いね…登喜子…」
「ええ。自分の罪を…認めて…稼いで払えば良い
そこで…落ちるなら…さっさと、その命は狩られれば…良いのです!」
登喜子の言葉は‥‥総理であった父に仕え、秘書として生きて来た潔さがあった
敏腕秘書として登喜子は生きて来た
邪魔なモノは総て排除して父(総理)の道を作って来た‥‥‥機械的なまでの‥‥悲しさが在った
「登喜子…前の旦那…岩崎良隆…は、良い夫ではなかったと…教えねぇから…母親が淫売扱いされるんだぞ!
1番の罪作りは…安曇総太郎…だな!
ワンマンなエゴイストは…子供の人生まで……勝手に選んだ
子に政略結婚させ、利用価値がなくなると捨てさせた
捨て去られた岩崎良隆は安曇の家を恨み、復讐の為に我が子を利用した
父親が…吹き込んだ事を総て信じて…動く子供もバカだ…
だがな、それを教えなかったお前も罪を作ったんだぞ!登喜子!」
「承知しております‥‥」
康太は安曇貴之の顎を持ち上げると
「貴之…お前の父親は…傍若無人に好き勝手して安曇総太郎に追い出されたんだ!
当たり前だよな、愛人に借金に…横領、傍若無人の限りを尽くしてたんだ…離縁されて当然な男だと想わねぇか?」
康太は…そう言うと…貴之は驚愕の瞳を…康太に向けた
「嘘だ…」
「お前は真実を知らねぇとならねぇ!」
「真実‥‥‥真実って何なんだよ‥‥」
「オレの弁護士が来る
その時に資料も…持って来させる…
自分の目で…見ると良い…
伊織、彦ちゃんに電話して…捕獲しといた…貴也を連れて越させて!」
「解りました!」
榊原は、電話を入れに向かった
暫くすると…天宮東青と佐野春彦…が理事長室にやって来た
「康太!捕獲しといた…バカだ!
確かに…お前に渡したからな!」
「ありがとう彦ちゃん!」
「ならな!」
佐野春彦は、安曇貴也を置いて…去っていった
貴也が…理事長室から逃げようとすると…兵藤がその鳩尾に…拳を入れた
「座ってろよ!落ち着きがねぇな!」
兵藤は、言い捨てた!
「てめぇ…こんな事して…タダで済むと思うな!」
貴也は兵藤に捨て台詞を言い放った
「弟もバカならば…兄もばかかよ!
バカの一つ覚えしか言えねぇのかよ!
はっきり言って…お前の父親など…飛鳥井康太が動けば…総理の座など風前の灯…
それも解らねぇバカには…見極める…目もねぇか!」
兵藤は、高笑いした
安曇貴也は「ホモの友達か…麗しい友情か…それとも…兵藤、お前とも出来てるのかよ?」と揶揄した
兵藤は、鼻でふん…と笑い
「天宮、名誉毀損だ…!訴えてやれ!」
「解りました!充分に名誉毀損ですね…
さてと、飛鳥井悠太の暴行障害の…写真をお持ち致しましたよ…
精液のDNAが取れたので…その五人から…髪の毛を採取させて戴きます!」
兵藤は、一人ずつ…髪の毛を抜くと…天宮へと渡した
天宮は、名前を書き込み…髪の毛を…サンプル採取した
そして天宮は、勝也と登喜子の前に…暴行の写真を提示した…
避けた…肛門が…暴行の惨さを物語っていた…
登喜子は、あまりの惨さに…目を覆った…
そして、岩崎貴匡の身辺調査を…康太に渡した
康太はその身辺調査を貴也と貴之に渡した
写真着きで渡された資料には…子供である…自分達も知らない…内容があった…
二人は…その資料に…釘つけになった…
「これは本当の事なのかよ!お袋!」
貴也が母親に食い付く
登喜子は「飛鳥井家の真贋の提示される資料が…偽物の筈はない!
彼は政界財界の方々に絶大な支持がある
それは的確な資料も用意されているから…誰もが納得するの!
嘘や偽り、偽造など飛鳥井家真贋が渡す筈はない!
そうですよね?トナミ海運社長 戸浪海里さん?」と言い放った
戸浪は貴也と貴之を侮蔑した瞳で見て
「飛鳥井家の真贋 飛鳥井康太は…敵に回せば…この世で生きては行くのは至難の技となるでしょう
徹底的に追い込まれ、生きている事が困難になる程追い込まれる
それだけの力をお持ちの御方
彼は…共に在ればこそ…導いてくれる
敵に回せば、確実に…その息の根は止められるであろう!
彼の恋人が男だとかは…彼のプライベートで…我等は関知はせぬ!
そんな些細な事よりも…彼のもたらす力は強大だと…言うことですよ!
財界、政界、彼の助言で動いている…と、言っても過言ではい!
そんな彼を敵に回したのです…身を持って知るが良い!」
戸浪も言いきった!
康太は「天宮、示談を提示しろ!」と命令した
「飛鳥井家の真贋の弟への暴行障害の示談金は…最低でも60億は戴かねば…と言いたいですが…無理なので、毎月、自分で働いたお金で、誠意を見せて下さい
親が出せば…真贋の瞳には…お見通しです…
人の果てを写す…飛鳥井家の真贋!
彼は軽んじられて良い存在ではない!
それを身を持って…知るが良い!
バイトを始めるなら早くして下さいね!
毎月、バイトしたお金を振込か、天宮の所まで持ってきて下さい!
お金が入らない場合、裁判に持ち込みます!
これより、愉快な仲間達の方々の親御様の所へご説明に伺います!
多分…腰を抜かされると…想いますよ?
特に…郷田くん…貴方のお父様の会社は…真贋の支援があればこそ…見離されたら…明日はないでしょう…
その他の…方の親御さんも…真贋にはお世話になってる方々ばかり…
どんな反応が…来るか…自分の目で…確かめられると良いでしょう!」
天宮は、そう言い神楽に
「愉快な仲間達の、親御さんを御呼びください!
康太さん、貴方はもう良いです!
示談の話は私の専門!お帰り下さい!
悠太さん…お身体…大丈夫ですか?
貴方の受けた苦痛の代価は…この天宮、必ず取らさせてもらいます!」
と、天宮は…康太と悠太に頭を下げた
康太は立ち上がると
「東青、なら後は頼むな…。
四季、こんな面倒を持って来て…悪かった
埋め合わせに…今度、お茶でもしょうぜ!」
と、神楽に労いの言葉をかけた
「君に逢えただけで…得したので…構いませんよ!
でも君とのお茶は魅力的なので…楽しみに待ってます!」
神楽は、優しく康太を抱き締めると…名残惜しく…その体を離した…
「若旦那、中等部へ行き…万里を連れてくる前に…悠太を葛西に合わせる…少し付き合ってくれ…」
「良いですよ!お供させて戴きます!」
戸浪も立ち上がり…康太と共に…理事長室を出て行く…
職員室の前には…人だかりだった…
「もう、帰られるのですか!」と一人の生徒が聞くと…
「これから、中等部に行くんだよ!」と答えた
「貴史も…行くのかよ?」
「ついでだ!ついでに若旦那との会食も着いてく♪」
兵藤は楽しそうに…言うと、康太は溜め息を着いた
「若旦那…良いですか?」
「一人増えても…変わらないから構いませんよ?」
康太は兵藤を肘で突っつき…だってよ!と、言った
兵藤は、悠太の肩に…腕を回すと…
「あれは、暴行だ!お前の男の尊厳は…なくなっちゃいねぇよ!
あの席に座った…お前は負け犬なんかじゃねぇ!
解ったな!」
と、言い聞かせた
「兵藤くん…ありがとう…」
悠太は…涙が溢れた瞳を…拭って…前を向いた
康太達は…回りの…応援してくれた…人間を引き連れ…中等部の橋を渡った…
騒ぎを聞き付けた…葛西が…やって来て…康太に頭を下げた
「お久し振りです…悠太の暴行の件なら…噂が走り…聞いた所です…」
「悠太は今後一切…表舞台から…手を引かせる!
執行部…役員として、やって来た卒業式だけは、送らせてやりたい!」
「え!何故ですか!悠太は…貴方のモノじゃない!貴方が決めるのはおかしいです!」
「葛西、悠太は飛鳥井の人間だ
飛鳥井家の真贋の言うことは聞かなくてはならない!
悠太は…表舞台から引かせるのが…筋だろう!」
「それは悠太の本意ではない!
悠太は何時も言ってました!高等部に行ったら…伊織くんの様な執行部の部長になると…
その夢を…何故断たれなければ行けないのですか?」
葛西は…静かに泣いた
「葛西…悠太はリハビリが必要なんだよ!
顔を見れば解るだろ?
暴行は悠太の心に暗い影を落とした
触られるたびにビクビクしてたら…人など取り締まれはしない!
それ程の…暴行だ!力任せに…受けた傷は…深い。
体より…心が…傷付いている…
だから、高等部に上がっても、表舞台から身を引かせるのが筋だろう…」
「そう言う時だからこそ…我が友には…闘い抜いて欲しい…。
俺も支えます…皆も支えます…
考え直して下さい!お願いします!」
「だってさ…悠太!どうするよ?」
「康兄…考えさせて…今はまだ…ショックが大きい…」
「悠太…俺は諦めないぞ!
お前と共に明日の桜林を引き継いで行くと…誓ったじゃねぇかよ!」
「葛西…」
「取り敢えず、卒業式の練習な…出てこいよ
傷が治るまで、フォローはすっからよ!」
悠太は…泣いて頷いた…
「悠太、傷が痛くないのなら…少しやって行け!聡一郎を着けてやるからな!
帰りは…タクシーでも使って帰れ!」
悠太は、何度も頷いた…
「聡一郎、悠太を見守ってくれ!
オレの大事な弟だからな!頼むな!」
「解りました!君の弟を見守ります!」
康太は聡一郎の肩を叩くと、葛西に
「葛西、頼みがある」と言った
葛西は康太の前に…倣って頭を下げると
「何なりと申し付け下さい!」と康太に言った
「戸浪万里、を連れてきて欲しい!」
「三年A組の戸浪万里…ですか?」
「そうだ!オレが行けば騒ぎになるからな」
「解りました!お待ち下さい!」
葛西は走って、A組のクラスへと向かった
暫くして…万里が葛西に連れられやって来た
万里は、康太の姿を見つけると…走った
「康太さん!お久し振りです!
あ…父さんも…いらっしゃったのですか?」
「とても失礼な…口を利くようになりましたね!我が息子は…反抗期ですかね?」
戸浪が言うと、康太は笑った
「万里、オレと来い!話しがあるんだ!」
「解りました!お供します!
クラスに行って鞄を持ってきます!」
万里は走って…鞄を取りに行き…戻って来ると、康太の横にやって来た
「さてと、高等部に戻り、帰るとするか!
集まってくれた皆、ありがとな!
お前等が…力をくれたから負けなかった!
ありがと!またな!」
康太は皆にお礼を言うと片手をあげて別れを告げた
高等部へ戻り…駐車場へ行き、田代の車に乗り込むと…ヒルトンホテルへと向かった
部屋が取ってあり…その部屋に向かうと、康太はソファーに、腰を下ろした
「万里、此処に来い!」
康太の横に座らせると、康太は話を始めた
「万里…お前の瞳は…人と違うのに…気が付いた事があるだろ?」
康太に聞かれ…万里は頷いた
「戸浪はその昔…海に生きる仕事をしていた
漁師の船頭の家系でな…その繁栄の為に…娘は海神との間に子を儲け…未来永劫の繁栄を約束された
その血脈は脈々と受け継がれ…お前の瞳にも出ている
それは戸浪の家系の証だ…
お前の瞳は海神の血の先祖帰りだ!
その瞳を恥じるな!先祖の血がお前に出ているのだ!
だから悩むな‥‥‥」
万里は‥‥時々金色になる瞳が嫌いだった
爬虫類みたいな瞳になるのが嫌だった
「封印すれば少しはコントロール出来る様になるまでの、凌ぎになるかな?」
康太は呟いた
「その力が…表に出るのが嫌なのなら、俺が瞳を封印してやろうか?」
黙って聞いていた……兵藤が…康太に言った
「どうする?万里!その瞳を封印するか?
コントロールが出来ないなら…封印した方が良いのかもな…」
「なら、僕がパパ位の年になるまで…封印して下さい!パパ位の年になれば…なんとかなりそうだから…」
兵藤は、戸浪に「若旦那…幾つよ?」と尋ねた
「30代前半です…。学生結婚でしたので…若くして授かった子供です…!」と説明をした
「なら、30な!俺の前に来い!」
兵藤が言うと万里は兵藤の前へと立った
「朱雀…優しくな…」
「俺は誰よりも優しいぜ!」
ニャッと唇の端を上げて嗤う兵藤は…どうみても悪役が…似合う男だった…
「お前には…ヒーローは似合わん…」と康太がボヤくと、兵藤は康太の唇を摘まんだ
「そう言う事を言うのは、この口かよ!」
兵藤はボヤきながらも…万里の瞳に…封印を施した
「何時まで…と、期限は着けずにおいてやった!
己の心が…勝った時、その瞳の本当の意味を知る事となる!」
兵藤は万里に…優しく…言葉を紡いだ
「この男は…四神の一人朱雀!
その力…神(鳳凰)をも凌ぐ…力なり…と言う男が施した封印ですので…確かだと思いますよ?」
「康太!確かだと…じゃねぇ!確かなんだよ!」
とボヤき…ふんぞり返った
「海神《 わだつみ 》の子孫が人の世に…繋がっていようとはな…誇り高き海神の血を恥じるでない!」
万里は「はい!」と元気よく返事した
戸浪は、昼食のコースを運ばせた
部屋の中にテーブルが入れられ…料理が並べられる
康太と榊原、一生、隼人、慎一と兵藤の前に…料理が並べられた
戸浪も万里も田代も席に着き、ランチを食べる
「この後、何か予定は有りますか?」と戸浪が康太に聞く
「夜には三木と…用がある…。
ですので、帰ろうと思います!」
康太が言うと…兵藤が「三木?何の用だよ?」と問い掛けた
「野暮用だ…」
「だから、その野暮用を…聞いている!」
一歩も引かない…兵藤を前に…康太はため息を着いた
「田代さん…食事が終わったら万里を…学校に連れて行って下さい!」
康太に言われ、田代は「解りました…」と答えた
食事か終わると…万里は…康太に名残惜しく別れを言い…
学校に帰って行った
「貴史…子供のいる前で…怒るな!」
「……悪かった…。若旦那…すまねぇ!」
戸浪は…良いですよ…と、優しく言葉を投げ掛けた
「で、三木の用はなんなんだよ?」
「三木と寝るんだよ!」
「え!冗談は…」
「冗談じゃなく…」
「何故?何故…自分を犠牲にする?」
「三木は、今、分岐点にいんだよ!
アイツの進む道が…間違いなら…オレは行きたい場所に…送ってやるつもりだ…
それが、オレの為に生きてくれた三木に報いる…証だ…。」
「何で!三木と寝るんだよ!!伊織は知ってんのかよ!」
兵藤に言われ榊原は、「知っていますよ…」と答えた
「貴史…落ち着け!」
康太が…兵藤を落ち着かせる…
「鳴海が…結婚するって…聞いてからアイツの心は揺れている…分岐点にいんだよ!
この先は…三木の好きな果てに…行けば良い…
オレは導いてやるつもりだ…
三木の心が頑なだからな…深淵を見せねぇ…
今夜…ベッドを共にして…アイツの深淵まで潜り込み…夢を見させる
その夢の…通りの果てに…三木を置く
それが、三木を…拾って生きさせて来た…オレの愛だ…」
「康太…お前って奴は…」
兵藤は…言葉もなく…泣いていた…
「後、若旦那にも言う事があるからな、万里は帰らせた!
若旦那…藍崎と別れたのか?」
ストレートに言われ…戸浪は…言葉をなくした
「はい。私は…あの子達の…親でいる義務が有ります!
妻に押し付けて…省みなかった…自分を反省して…別れました…。」
「そうか…藍崎が…哀れだな…」
「十分な…慰謝料は払いました…」
「アイツが欲しいのは…慰謝料じゃねぇよ!
ならば、オレが貰おうか!騎手生命は終わっても…第二の人生位…用意してやらねぇとな」
「康太…」
戸浪は…深々と頭を下げた
「済みませんでした…私が作った罪なのに…」
「気にしなくて良い…」
康太は立ち上がると、戸浪に手を差し出した
「ならな、若旦那、今日はありがとうございました!」
戸浪は康太の手を握り…
「また、お食事でも…」と別れを惜しんで…声をかけた
「また、連絡します!では!」
康太は戸浪に…背を向けると…部屋を後にした
ホテルから出ると…康太は、
「バスで帰るか?」と帰路について声をかけた
「たまには交通機関も使わねぇとな!」
兵藤は楽しそうに…言った
全員で…バスに乗って…還る道すがら…
兵藤は…「おめぇはお節介焼きだからな!」とボヤいた
「鳴海が結婚するって…あんなに三木が動揺するとは…想わなかった…」
「……あの二人は…惚れあっていたからな…」
「そう!その二人を引き裂いたのは…オレだ!
鳴海にも…怨み言を…言われた…
三木は…死のうと…自殺して…それを引き留めて…オレの為に動きやがれと…この世に押し止めた…最低なのはオレだな…」
「でも、あの二人は…一緒にいれば…ダメになったんだろ?」
「ダメになっても…いさせてやれば良かったんだ…あんな想いばかり募らせて…
そのうち三木は…すべてを投げ出して…鳴海の家庭も潰す…泣く人間が増えるだけの果てを…何とかしてぇんだよ!」
「それで、三木と寝るのとは…違うだろ?」
「三木は…心の奥底まで…鳴海の事を封印していた…
何度か…紫雲龍騎…アイツの思いを紡いで来てくれと頼んだ…が、頑なで紡げなかった…
箍が外れれば…三木は…総てを投げ出して…鳴海の所へ走る…
残った…心は…鳴海しか残ってねぇからな…
そうしたら、鳴海の妻も…三木の妻も…泣く人間が…増えるだけだ…
そうなる前に…三木の心に決着をさせたい…
それには…ベッドを共にするしかあるまいて…
まぁ、挿入させる訳じゃねぇ…オレの中は伊織だけだ!」
「………伊織も…断れよ…!」
「康太が決めた事ですからね…仕方ないでしょ?」
「なら、一生が止めろよ!」
「俺は無理…康太と…寝てるしな…!」
え!……
兵藤は…面食らった顔で…一生を、見た
「まじ…かよ?」
一生は苦しそうに笑うと
「マジだぜ!康太と伊織に抱かれて…二度寝てる…言う権利は俺にはねぇよ!」と謂った
康太は「一生は、死ぬ気だった…それを引き留める…為に、オレは一生と寝た…」と事情を話した
「お前等の関係って…ヘビー過ぎでしょ…」
「でも、一生をこの世に引き留めておくには…それしか思い付かなかった…からな仕方ねぇよ」と康太は儚げに笑った
「まぁ、お前だからな!それもありか?
なぁ、伊織?」
兵藤にフラれ…榊原は目を伏せ…そうですね…と答えた…
兵藤は覚悟決めた奴等がやった事に口を挟む事は許されないと‥‥‥話題を変えた
「所で、飛鳥井建設…って、バイトしてて想ったんだが…仲間意識強すぎで…後から入ってきた…優秀な社員は…仕事すら回されてねぇぞ!」
「……やはり、そう出るか…」
「お前に言われて幾つかの部署を回ったが…総ての部署で社内イジメ…らしき事が…横行してる
統括本部長の前ではやらねぇからな…
内部の奥へと入ると…結構陰湿だな…」
「オレは面が割れてっからな…
なら、女装して…入り込んでみるか…」
「おい…止めとけ…」
「それしかねぇな…。伊織、ワンピースと、カツラ用意しといて」
康太に言われ…榊原が解りました…と答えると兵藤は…
「女装は…止めとけ…」と溢した
飛鳥井のまで最寄りのバス停から歩いて来て、兵藤とは別れた
康太達が…飛鳥井の家に帰ると…瑛太が待ち構えていた
「お帰りなさい…。悠太の件で…数名の方がおみえになっておりますが…どうしますか?」
「謝罪なら力哉に受けさせとけ!
飛鳥井家の真贋に用ならば…そんなに簡単には逢う訳にはいかぬ!追い返せ!」
「解りました…」
「それと、謝罪の者など家の中に入れなくて良い!
オレは当分逢う気はねぇ!
そんな暇あるかよ!」
康太の罵声に…応接間から…愉快な仲間達の保護者が顔を出すと…瑛太は
「そう言う事ですので…お帰りを!
後今後一切…飛鳥井に来られても…御逢いする気はないと思われますよ?」
わらわらと、愉快な仲間達の保護者が帰って行く…
康太は誰もいなくなった応接間に入って…ソファーに座った
「瑛兄、仕事はどうしたよ?」
「君が雇用した人達の依願退職者が…何人か…出てるので君の耳に入れとこうと想いまして…。」
瑛太は現在飛鳥井建設が抱える現状を伝えた
「だろうな!瑛兄…陰湿なイジメが横行してるそうだ!
能力入社した人間に…仕事をさせねぇらしい…。
仕事する為に飛鳥井に入って来て仕事が出来ねぇなら…意味がねぇよな?
と、言う訳で、仕事を渡さなかった奴をクビにする…
自分の立場可愛さに…セコい振る舞いをするならば…退職を願わねぇとな…。
と、言う事で…明日オレは女装して…高校生のバイトとして、会社に入る!」
「女装…康太…そっちの…趣味でしたか…」
「違げぇよ!オレが社内を見て回ったら…好い人ばかりじゃねぇかよ!
現場を捕まえる!」
「あぁ!そう言う事ですか…康太の女の子の姿ですか…想像するだけで…可愛いでしょうね…」
「瑛兄…」
康太はげんなりと…呟いた…
「ならな、瑛兄、オレは部屋に行く!」
「はい。解りました。私は会社に行きますよ!康太の耳に入れておかねばと…待っていただけです!」
「瑛兄、今夜は三木が来る!
部屋に来るのは遠慮してくれ!」
「解りました。用があったら、一生か力哉に言っておきます!では、行ってきます!」
瑛太は康太の頬にキスして…会社に戻って行った
一生は「本当に女装するのかよ?」と問い掛けた
「あぁ。やらねぇとな!」
「なら、俺が買いに行ってやるよ!
化粧にカツラに…靴…ストッキングにブラとパンティ…を買ってきてやるよ!」
「伊織、お金を持たせてくれ!」
「はい。ならば、5万円で間に間に合わせて下さいね」と財布からお金を出して一生に渡した
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