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第11話 視察
「瑛兄が出勤したら行くぜ!三木!」
「はい。お供しますよ」
「伊織、会社でな!絶対に話し掛けるなよ!」
「解っておりますよ…君の邪魔を一度でもしましたか?」
「してねぇけどな、男に口説かれたら…出てきそうだし…」
「あ!それは……嫌です!君を口説く男など…闇に葬り去ってしまいたくなります!」
………と、物騒な事をさらっと言って…
榊原は、拗ねていた…
「伊織、安心しろ!誰もオレなんかに声はかけねぇよ!」
康太が安心させようとしてるのに…三木が
「嫌…本当にそこら辺の女より可愛いからな…口説く男は…後を断たないかもな…」
と余分な事を言うから…榊原は、本気にして…心配になった
「おい!三木!余分な事を言うな!
伊織…大丈夫だ!オレにはお前しかいねぇかんな!安心しろ!なっ!」
羨ましい…台詞だった…
羨ましい…恋人同士だった…
そして、誰よりも…刹那い恋人同士だった…
この二人も…結局は…家の為に生きて…
飛鳥井の明日を紡いでる…
誰よりも…過酷で…愛し合うカップルを…三木は…微力ながら…守って行きたい…と思った
「旦那!おめぇがそう言うと想って、俺も康太に着いてくぜ!」
「え?一生も?」
「そう。聡一郎と隼人は…目立ち過ぎる
何たって隼人は輝かしい桜林のミスコン一位なんだぜ!んなの会社にいたら大変でっしゃろ?」
三木は…クラクラしてきた
同じ桜林なのに…ミスコンとか何?
そんなのあったっけ?????
と、苦悩するも…受け入れるしかない現実だった
「なら、俺も着替えてくるぜ!」
一生が着替えに行き…隼人がボヤく
「オレ様も…康太と一緒に行きたかったのに…ダメだって…一生は意地悪なのだ…」
「よしよし。なら今度、女装してナンパにでも行くとするか?」
康太が隼人を慰めるが…直ぐにナンパは榊原の手によって脚下された…
「そんな事したら…君の息の根を止めますよ?」と脅され…愛する男を抱き締めた
「冗談だ!伊織は心配し過ぎだ…
愛してるのはお前だけだ…!」
榊原が康太…と抱き締める…
なんともまぁ暑苦しい…カップルだったりして
三木は…何時も冷静沈着な榊原しか見たことなかった…
こんなに嫉妬を露にする姿は…意外だった
余裕もなく…愛する姿は…少し暑苦しいが…微笑ましかった
瑛太が出勤すると…玲香も清隆も出勤した
康太は応接間に向かい三木に我が子を紹介した
「この五人が…オレの子だ!
明日の飛鳥井を担って行く子供達だ…」
と愛しそうに見詰める目は母の慈愛に満ちた顔をしていた
応接間のベビーベッドの上には…五人の赤ちゃんが眠っていた
「康太は五人の子持ちか…」
「この流生は…一生が惚れた女と作りし子供だ…。
だが、オレが別れさせた…それしか方法が無かったからだ…
一生に死刑宣告を告げたのはオレだ…
そして、この世に引き留めたのも…オレだ…
オレは自分の体を使って……一生をこの世に引き留めた……」
康太は流生を三木の手に乗せた
三木は…一生を見た…
自分の子供なのに…名乗れぬ男を見た…
だから…一生を引き留める為に…その体を与えたと言うのか…
なんと言う想い……
「罪深いだろ?オレは…。」と康太は自嘲的に笑った
流生を腕から引き取ると
「そして、この子は翔…。京香と瑛兄の子供だ…。
オレはあの夫婦から…我が子を奪った…
親なのに…親とは名乗れぬ…罪を…あの二人に与えた…一生同様にな…」と翔を三木の腕に乗せた…
「瑛兄に似てるだろ?」
あの静かな男は…どんな思いで…これを受け入れたのだ…
考えるだけで…辛すぎる
康太は翔を腕から引き取ると、大空と太陽を抱かせた
「この子は双子だ!我が伴侶の母親がオレにくれし、子供だ!」
三木は…子供を見た…
「可愛いだろ?伊織の血を引く子供だぜ!
真矢さんがオレに託してくれた子供だ…」
康太は一人ずつ腕から取ると…音弥を渡した
「この子は隼人の子供だ!
亡くなった奈々子との間の子供だ…
オレはこの子供の親として生きて行かねばならぬ…義務がある…」
三木には…言葉もなかった…
「明日の飛鳥井を強固なモノにする!
それがオレの使命だ!
その為に…伊織がいる、一生、聡一郎、隼人、慎一、力哉がいる
オレの為に集まってくれた奴がいる…
生きてくしかねぇんだよ!オレ達はな!」
「解ってるよ…康太…
もう迷わない…もう…迷う道はない…」
「ならば、良い!近いうちに鳴海と飯を食おうぜ!」
「あぁ!食おう!」
「でも、その前に…仕事だな…」
「ですね。」
三木は康太に深々と頭を下げた
「今改めて…血の誓いを…させて下さい…」
「良いぜ!でも今は…ダメだ…
服を血で染めて、会社に行けねぇ…」
「解ってます…暇な時にでも…電話を下さい…」
「なら、行くとするか!
隼人、どっち道お前は仕事だろ?頑張って来い!」
と、隼人にも気遣い…抱き締めてやってから、康太は玄関へと向かった
「では。行ってきますね。隼人。」と榊原は隼人の頭を撫でた
「行ってらっしゃい…なのだ!
オレ様も行きたいなぁ…羨ましいのだ…」
「なら、明日、外に食べに行きますか?」
「それなら、我慢するのだ!」
隼人の機嫌も直り…榊原も玄関へと向かう
靴を履き…外に出ると…康太が榊原を待っていた
飛鳥井の家を出ると…偶然に…兵藤と出逢った…
兵藤は、飛鳥井の家から出て来た…三木と…二人の女に瞳を凝視した
「三木!ひょっとして…ソイツは康太と一生かよ!」と喚きながら…近寄る
「よく解りましたね…」と三木がボヤいた
「俺は…一度ミスコンで二人の女装は見てるからな…」
また……ミスコンかよ…
何時から桜林は…んなもんをやりだしたんだよ?
三木には…解らない事ばかりだった…
「会社に行くんだろ?
俺も行くからな、ついでに乗せてけよ!」
と言い、返事も聞かずに…兵藤は榊原の車に乗り込んだ
「また、可愛いじゃん!」
「ありがと、貴史
嫁に欲しい位だろ?」
「おう!解ってんじゃんかよー」
「惚れるなよ、貴史!」
「遥か昔から惚れてるから大丈夫だ!」
「そうだったな!」
と、兵藤と康太は笑った
そこ………笑う所と…違うし…
一生と三木は…刹那かった
榊原が先に車を走らせた…
すれ違い様…榊原は笑っていた…
三木は…一生と共に車に乗り込み、車を走らせた
「三木、地下の駐車場へ入れろ!」
榊原の車の窓を開け…後方を着いてくる三木の車に声をかけた
康太に言われ…三木は地下の駐車場へと向かう
車を降りると…康太は三木の車に近寄った
「三木、オレより少し後に社内に入り…お前の感じた社内の雰囲気を教えてくれ
近いうちに逢う時にでもお前の意見は聞く
近いうちに電話する…またな!」
「はい!御待ちしております!
社内を歩かせて戴き…瑛太さんに話をして帰ります
今日は本当に……有難う御座いました」
三木は…康太に頭を下げた
兵藤は車から降りると「またな!」と言い、非常階段から一階の現場へと上がって行った
一生は、三木の車から降りると、康太の横に並んだ
「行くとするか?一生」
「おう!行こうぜ康太」
と、声を掛け合い…エレベーターの前まで向かった
さてと、どの階から回ろうか…と思案してると……栗田が出勤して来て…社内にいる……見慣れない人間に目を止めた
「あの…」
声をかけて振り返ると…
可愛い子と…美人な才媛が振り返った
可愛い子は…栗田を見ると…微笑んだ
「栗田、丁度良い。お前の階から回るとするか!オレをバイトの子として連れて行け!」
声は…飛鳥井康太の…声だけど…
その姿…可愛くて…家に飾っておきたい位だった
「一夫…浮気か?」
少し間を開けて…恵太が出勤してくると…
愛する男の前に…可愛い女の子が二人…
恵太は慌てて…栗田へと近づいたのだ
「よぉ!恵太!」
「え!…………康太ですか?
ではこちらの女の人は…まさか…」
「一生だよ!」
言われ一生は頭を下げた
「どうしてこの様な…格好を?」
康太は社内虐めの現状を話した
栗田は…寝耳に水…で、まさか…虐めが横行してようとは…夢にも思わなかった
康太は女の子みたいな声を出して
「栗田サン、私を建設部まで連れてってくれますかぁ♪」と言った
似合い過ぎてて…違和感がないから…怖かった…
エレベーターの中で、康太はボヤいた
「スカートってどうしてこうもスカスカなんだ?」とスカートをヒラヒラ捲った
恵太は「そのスカートの中って…男性用の下着?」と気になった部分を聞いてみた
「違うぜ…パンティだぜ!ガーターベルトもしてあって、脱ぐと…伊織が興奮しまくりの姿になるぜ!」と康太が言うと
一生が「こらこら…孫悟空でお前とエッチ出来る人しか…解らない興奮だわさ…」とボヤいた
恵太は、悟空で…エッチ…
想像して…無理…と思ってしまった
「ブラとパンティ姿はかなり興奮するらしいぜ…
今度、栗田やってみろよ!
恵太は結構…女装似合いそうだしな…見たくねぇか?
マンネリなエッチは…ダメだぜ…刺激を求め合わねぇとな…栗田、見てぇだろ?」
康太の悪魔の囁きに栗田は…やはり男だった
栗田にアブノーマルな囁きがされ…心が大幅に傾いた
「恵太…やってくれる?」
「見たいのか?」
栗田は、うんうん!と頷いた
「…外に出ないなら良いぞ…」とやはり愛する男が望むなら…折れるのは飛鳥井の血筋か…
「なら、一式揃えるなら花菱デパートへ行き、飛鳥井康太の紹介って言って道明寺を呼び出して…見繕って貰えよ!」
チン!と目的の階に到着すると、康太は優しく微笑んだ
「栗田サン…私は三木繁雄の紹介で来たバイト…って事で…お願いね!」
「しっかし、可愛いな…恵太、欲しいだろ?」
恵太のフワフワ好きを…栗田は知っている…
「家に飾っておきたい!」と恵太は興奮して言った
フロアに入ると…歪み合った空気が…伝わる
フロアに入ると、栗田は「朝礼を開くぞ!」と声をかけた
皆が整列すると…栗田は話始めた
「この子達は議員の三木繁雄氏から預かったバイトさんだ!
今日は彼女達は社内を見て回る…邪魔をしない様に…以上解散!」
栗田の号令で動き始める
九頭竜遼一が…そっと康太の側に寄り…
「康太?」と小声で聞いてきた
康太は頷いた
何か戦略があっての事だと…遼一は離れた
栗田がお構い無し…と言うから、社内の人間は…本当に構いもせず…仕事を始めた
栗田が出て行くと…その行動は…あからさまになった
役職入社した社員が…自分より下の人間に…仕事すらさせて貰えなかった
「一生、録画な!」
「あいよ!」
一生は、ペンでメモを取るフリして、録画を始めた
「お前なんか入社して来なくても、この会社は回って行くんだよ!」
と言われ…堪えきれず…部屋を出る社員の後を追う
「大丈夫ですか?」
声をかけると…社員は泣いていた…
「こんなんなら…来るんじゃなかった…」
社員は飛鳥井建設に入社した事を後悔していた
「弱音を吐くのは早いでしょ!
無能な社員に…泣き寝入りですの?」
康太は…社員に声をかけた
「君は…?」
「弱音を吐けば…そこから負けてく…
敗けだと思ったら…もう勝ち目はないのよ?」
全くその通りだった…
「だけど僕には気力がない!」
「なら、退社するしかないわね…」
「お前に何が解る!」
男が怒鳴ると、康太は低い声で
「八つ当たりするんじゃねぇよ!」と怒鳴った
その声は…飛鳥井家の真贋の声で…社員は驚いていた
「闘うか、闘わずに尻尾を巻くか…
どっちしかねぇんだぜ?
ならお前はどっちを選ぶんだよ?」
社員は驚いた顔で
「貴方…何故その様な姿を?」と問い掛けた
「社内虐めの調査だ…他言無用だぞ!」
「はい…!」
「ならな!も少し闘ってみろ!
そしたら、道は開かれる!
開かれねぇなら、新しい道を探して見るのも良い
でもな、何も闘わずして尻尾を巻くな!
解ったな!」
「はい!解りました!」
康太は、その社員の横を通り過ぎて…行こうとすると…階段に連れ込まれた…
力強い腕が…康太を抱き締める…
「伊織…ダメだぞ…」
「男と二人っきりにならないで…」
「オレがやられたままでいると思うのか?」
「思いませんが…焼きもちを妬く…男の嫉妬位…許しなさい…」
「許してんよ!でもな…まだ、回らねぇとならねぇんだ!離せ!」
榊原は、その腕を離した…
「オレはお前のモンだろ?」
康太が上を向いてキスをせがむ…
榊原は、頬にキスして…
「僕のモノです!君は僕だけの…モノです!」
「ならな、また後でな!」
康太は榊原の側を離れて…フロアの方へと消えて行った
榊原は………溜め息を着いた…
すると背後から
「君も大変ですね…」と声がかかった
振り向くと…そこには瑛太が立っていた
康太が気になり…こっそり見に来たのだ…
「義兄さん…」
「あんなに可愛いなら…心配ですよね…」
「男と二人きりの…場所は…心配で…」
「解ります…」と瑛太も溜め息を着いた
フロアに戻ると…一生が、
「また新しいの撮ったぜ…次に行くとするか?」
「そうだな…なら下に降りて…だな!」
康太と一生は、他を見て来ます…とフロアから出て…エレベーターの所へ向かった
途中…城田琢哉が康太に近付いて来た
「貴方…何故その様な格好を?」と尋ねた
「私が誰か…解りますの?」
「貴方は俺の命の恩人も同然のお方…解りますよ」
「そうか…。」と康太は…女装した経緯を話した
「ならば、俺が貴方の目になりましょうか?
栗田統括本部長では行き届かない部分は俺が貴方に教えます!」
「頼めるか?」
「任せといて下さい!
今の状況を俺はおかしいと思ってました
貴方が動かれないのなら…談判に行こうかと…思っていました…」
「そうか…死にかけていたからな…出遅れた…」
「それでも貴方は動かれる!
貴方の為に働かせて下さい!」
「頼むな!…何かあれば電話をくれ!
一生、連絡先書いて渡してくれ!」
康太に言われ一生は、手にしたメモ帳に康太の携帯の番号とメールアドレスを書いて渡した
「何かあったら、メールで知らせてくれ
緊急の場合は電話でも良い、動ける時は動く、動けねぇ時は誰か動かす!頼むな!」
「はい!解りました!」
「ならな!」
康太は…来たエレベーターに乗り込んだ
三階のフロアに着くと…蒼太がいた
「私達の事は…構わないで下さい
今日は一通りの見学ですので…」と淑やかに話していると
「三木議員からは連絡を承っています」と、統括本部長を任命された蒼太が…やって近寄って来た
「蒼太…席を外せ…」と康太が小声で話すと…蒼太は、頷き…
「私は…席を外しますが…ゆっくり見ていって下さい!」と、フロアから出て行った
片隅で…椅子に座って様子を伺うと…
お局様…と言われる女性社員が…康太達に
「アンタ達邪魔よ!議員と寝て仕事を貰ってるか知らないけど、邪魔だけはしないでよ!」と怒鳴ってきた
一生は、素早く涙を拭くフリして…録画をした
「私達…議員とは寝ていません…」
一生が名演技するが、お局様は怯まない
「ちょっと若くて可愛いからって、回りがちやほやしてくれるからって、良い気になるんじゃないわよ!
仕事も出来ない無能な奴ばかり入れやがって!バカばっかし増えて空気が淀むばかりだわ!
飛鳥井家の真贋だが、なんだか知らないが現場の事も知らずに…勝手な社員を入れるから…調和も取れねぇわ!
会社の事を考えるなら、こんな無能な上司より私が仕切った方が能率が上がるのに、バッカじゃないのかよ!
何が見えてるのかね?あの紛い物の瞳には…」
と、吐き捨て…お局様は高笑いした
康太はカチン…と来て、
「貴方がいるから調和も取れないんじゃ有りません?」と小馬鹿にして言うと…突き飛ばされた…
このまま…壁に激突…と、思いきや…力強い腕が守って…支えてくれた
「お嬢さん、危ないですよ?」
腕で支えて…カツラを直してくれると…
榊原の瞳が…険しくなった
「騒がしい!何か有りましたか?」
榊原が、顔を出し…フロアに緊張が走った…
「此方は三木議員の…秘書候補の方々
社会勉強をなさりにおみえになられた方
失礼のないようにして下さいよ!」と、榊原が怒声を上げる
「済みません…転んだだけですので…」と、言い、康太は早く出ていけ…と、榊原に文句を言った
「失礼のないように…御願いしますよ!」と榊原が出て行くと…
ネチネチ…グチグチ…愚痴を言われた
当て付けまがいに…ぶつかって来られたり…
歩く時に…足を引っ掛けられたり…
最低最悪の…事が横行されていた…
部署の人間は…逆らえば…標的にされるので…見て見ぬふりを決め込んでいた
お局様は……康太達に向かって…ゴミをぶつけ…出て行けよ!邪魔だ!と唸っていた
康太が出て行こうと…立ち上がると…足を引っ掛けられ……パンティが丸見えで…転んだ…
康太は顔を隠して…部屋を出て行くと……
一生が後から追ってきた
「康太、怪我してねぇのかよ?」
一生が心配して…尋ねると…康太は膝を見せた…
少し…血が滲んでいた
「大丈夫だ!次は、五階の広報、企画、営業だぜ!行くぜ!」
康太は五階を押すと…エレベーターの中に…榊原がいた
榊原は、役員特権で…最上階まで…エレベーターを一気に…上らせた
「てめぇ!手出し無用だと言ったじゃねぇかよ!
来んじゃねぇ!」
「ごめんね…君が心配で…心配で…」と榊原に抱き締められれば…文句も言えなくなる…
「怪我したでしょ?」
「少しだよ…」
「化粧も直してあげます…少し来て、ねっ!」
と、呼ばれて…榊原の部屋に連れ込まれた
そしてソファーに座らせた康太のスカートに手をかけると
「見せて…」と言った
「えっ!止めろよ伊織!一生がいるじゃねぇかよ!」
康太は慌てた
一生も慌てた…まさか、始めるのは止めてぇ~と、心の中で叫んだ
「違いますよ…足の怪我を見せて下さい…と言ってるんですよ」
康太は言われ…息を吐き出し…膝を見せた
榊原は、手早くストッキングを下ろすと、消毒をし手当てをして…バンドエイドを貼った
そして、ちゃんとストッキングを戻し…化粧を直してやった
榊原に化粧を直してもらい、ズレたカツラを直して貰い…康太は部屋を出た
そして、階段で…五階へと降りて行った
五階に顔を出すと…玲香はまだ出勤しておらず…困っていると…瑛太が出て来て、紹介をしてくれた
紹介が済むと瑛太は帰って行き、部屋の片隅に…座らせてもらった…
このフロアにも…お局様がいるみたいで…
飛鳥井玲香の直属の部下…と言う肩書きを…かさにきて…好き放題…傍若無人な振る舞いが許される…状況だった
康太と一生は、完全に…いないものと扱われ…お茶を飲むにしても…数には入らず…
いない人…と化していた…
他に数人…
役職入社した…社員が…いないものとされていた…
わざと、書類を…当てて…痛い…と言っても聞こえてないので無視となる…
だが、玲香が出勤してくると…態度は一変
和気あいあい…の雰囲気となる
玲香は…二人に気づくと…
「三木議員の…所からおみえになられた方ですね…」と声をかけた
康太は挨拶するフリして…声を掛けるな…何処かへ行け…と指示すると…玲香は…少し出る…と言い、出て行った
玲香が出て行くと…再び…陰湿な…空気を孕んだ
役職入社した社員がトイレに行くと…PCのデーターを全て消去して…初期化したり、下剤を飲ませたり…
これは犯罪でしょ…と言う事が日々横行していた訳となる
一生は、あまりの陰湿さに…吐き気すら覚えていた
「お前ら!仕事もせずに座っていられると目障りだ!」
と、お局様はふりぞり反って…康太達を見下していた
「少し若くて可愛いからって…特別扱いされるだなんて思うなよ!」と康太と一生を椅子から突き飛ばした
毎日……こんな事が繰り返されたら…役職入社した社員は、耐えられない…
辞めるしかないと…思い知った…
「痛い…」
「ふん。何か声がした?気のせいよね?」
フロアの人間は…従うしかない空間…
康太は……狂っていると思った…
一人の権力を手中に納めた奴が…総てを仕切って…良いなりにする…
これは…マトモな…会社なのか…
玲香がフロアに戻って来ると…皆、知らん顔して仕事を始めた…
玲香は訝しげに…辺りを見渡した
「大丈夫…ですか?」と玲香が問い掛けると
お局様は、しゃしゃり出て
「その子達は…ふざけて転んだのですよ
ったく、今の若い子達は…躾がなっていませんね!」と言った
康太は呆れて…笑った
服をはらい、立ち上がると…
「飛鳥井玲香、明日、逢いましょう!」と康太はそのフロアを後にした
康太は階段で…最上階まで行くと…心配そうな榊原と出会した
「康太…大丈夫ですか?」
「ケツ…痛てぇ…」と呻いた…
一生の方を見ると…「椅子から突き飛ばされたんだよ!」現実を話した
榊原が部屋に康太を連れ込もうとすると、瑛太が…副社長から顔を出し…近寄って来た
「私の部屋においで下さい!!伊織も一生も、来て下さい!」と瑛太が呼んだ
康太を庇い…瑛太が康太を連れて行く
その後を…榊原と一生が続いた
康太をソファーに座らせると、康太の左右は、榊原と一生に席を譲り、反対側に座った
「どうでしたか?」と瑛太が康太に問い掛ける
「思った以上に…悲惨だわ…」と呟いた
「……役員は…目が届かないですからね…」
「大幅な人事を明日下す!
今日録画した映像は…飛鳥井の家にいる聡一郎の所へ送られるようになっている
明日、証拠を突きつけて…解雇する!
こんな状況が続けば…社員は辞めてく…況してやオレが雇用した社員を特にいびり倒して…退職へと追いやる…真贋だか何だか知らないけど!だってさ…
徹底的に遣ってやる!解雇しかない!
オレを蹴り飛ばした奴は許さねぇよ!」
と、康太は…怒り爆発で…一気に吐き出した…
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