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第14話 明日の礎

飛鳥井の家に帰ると静まり返っていた 応接間を覗くと…源右衛門と京香が子守りをしていた 「じぃちゃん、母ちゃんが倒れたって?」 「あぁ…血を吐いて…の、救急車を呼んで…運ばせたわい…」 「母ちゃん…血を吐いたのか…」 「お前は…見舞いに行くのか?」 「行ける訳ねぇじゃん!じぃちゃん! 飛鳥井建設の明日を作るのはオレだぜ! 今は改革の真っ只中だ!乱世だぜ!じぃちゃん!行けると思ってんのかよ! 親が死のうが…オレは改革の歩みを止める気はねぇぜ! それを教えたのは…じぃちゃん、おめぇだろ? 着替えに来たんだよ! 着替えたら社員の粛清を行う! 要らぬモノは排除する!それがオレの務めだ!違えはしねぇぜ!」 源右衛門は……静かに目を瞑り…頷いた 康太は、部屋に戻り…正装のスーツに着替えさせてもらうと、目を瞑り…天を仰いだ… 榊原は、何も言わず…康太を見守り…自分の支度をする 支度が済むと、康太は瞳を開けた 「行くぜ!伊織。お前とは…永く共に生きるが…乱世の中で生きさせてばかりだな… オレの行く道は…乱世を呼ぶ… だが、オレは負けねぇ!ぜってぇに負けねぇ! ………だろ?伊織!」 「ええ。君は負けません…! 不利な状況も形勢逆転させるのが君の強みでしょ?」 康太は唇の端を吊り上げ笑った 「愛してる!伊織!」 「ええ。愛してます!康太!」 「この命が続くまで…闘うから着いて来い!」 「何処までも…お供しますよ…」 康太は部屋を出た 部屋を出て…一階の廊下を突っ切り玄関を抜け…外の駐車場まで…向かう 榊原の車に乗り込み…向かうは…康太の戦場…へだった 飛鳥井建設の地下駐車場へ着くと、康太は非常階段のドアを開けた 「階段で行くぜ!一階から見て回る! 怠慢な奴は即クビだ!ナメんじゃねぇってんだ!」 康太はそう言うと非常階段のドアを開けた そして、一階の社員食堂のリフォーム状況を見ながら…受付嬢を監視した… 前までいた子は…退社した 職務に忠実だった子が辞め… 最近は…一階は来なくて見ていなかった 監視に行くと…受付嬢は、席にいなかった 「此処に受付は…不要だな…」 「ですね。サボってたら…意味がない」 康太は、受け付けカウンターにある呼び鈴を押した 康太は呼び出しカウンターの上にマジックで、『解雇通告!飛鳥井康太!』と書いて、他に行く事にした 社員食堂のリフォーム状況も…停滞気味だ… 「社員食堂は、四月には開店でしたよね?」 と、榊原が聞きたくなる程…捗っていなかった 康太が顔を出すと…遊んでいた施工部の人間が慌てて仕事を始めた 「施工部は、要らねぇな…! クビになりてぇならサボってろ! 嫌なら20日までに仕上げろ! 出来ねぇなら建築部の奴が入ってやる! お前等は永久に使う気はねぇ!」と康太は言い捨て…二階へと上がって行った 二階は託児所となる 階段を上がるとフェンスがしてあり、自由に出入り出来ないようになっていた 可愛いキリンさんや、ぞうさんや果物の絵が施した壁は可愛かった 「此処は出来上がってますね」 「此処は遼一に頼んだ。今日は会社に呼んだが…今は他の現場に行ってる。」 榊原は、納得した 「なら三階な!」 「ええ。行きましょう!」 階段を上って、三階へと行く お局のいる『経理、人事部、監査』が入ったフロアーだ 康太は部屋に入って行くと、机を蹴り上げた その音に…社員は…一斉に…康太の方を見た 「今日は、解雇通告に来た! 古株だろうが新人だろうが関係ねぇ! 使える人間しか、飛鳥井建設には要らねぇんだよ! お局だがなんだか知らねぇが、お前は…会社に不要! お局の回りにいて、甘い汁を吸った奴も同罪! これは、社内の粛清だ!不要な人間は切る 必要な人間だけ残れば良い!以上! オレが部屋から出たら解雇通告が入る! 意義申し立てがあるなら社長室で待ってろ」 と、康太は言い捨てた そしてニャッと笑って 「やっぱ、この瞳が紛い物じゃねぇって知らせねぇとな!示しもつきゃしねぇ! 『飛鳥井家の真贋だが、なんだか知らないが現場の事も知らずに…勝手な社員を入れるから…調和も取れねぇわ! 会社の事を考えるなら、こんな無能な上司より私が仕切った方が能率が上がるのに、バッカじゃないのかよ!何が見えてるのかね?あの紛い物の瞳には…』と言われたからな、此処はケジメを着けて、調和を取ることにした! 邪魔な人間は飛鳥井から去れ!以上!」 康太が言い捨てると…お局様は顔色を失った 康太は言うだけ言うと、背を向けた 四階は『建築、設計、施工』の部門が入る 康太が入って来ると、緊張が広がった 「施工責任者!下を見て来たら、お前んとこの奴、遊んでたぜ! 建設の九頭竜班は託児所を作り上げたのに…お前の所は…時間が掛かるな…。 本日、施工部は、取り潰す! 決定だ!文句は聞かねぇ! 後数人、解雇通告をする! 能力入社した奴が役職を着けてるのに、それを聞かずに勝手に仕事する社員は解雇する! 上司の命令は絶対だ!己を知らぬ者は去れ! それに同調した社員も同罪! 飛鳥井は大量解雇しても、入社希望ランキング1位なんだぜ! 使えねぇ社員の変わりなど…幾らでもある! 無能な奴は去れ!解雇だ! 明日から来なくて良い! オレがこの部署から出たら解雇通告が入る そしたら、解雇決定だ! 風通しが悪くては仕事も出来ねぇ 腐った部分は取り去らねば回りに移る! よって、腐った部分は解雇させて貰う!以上!」 康太は一方的に言うと、世を向けた 施工部の奴がクビならどうでも良いと…康太に殴り掛かって来たのを… 康太は後ろ蹴りで…薙ぎ倒し…鳩尾に拳を入れた 飛び掛かる奴は、しゃがんで脛を蹴り上げ…投げ飛ばし… 一人で…10人近くの男を…ボコボコにした 「康太は…喧嘩は強いんですから…あの容姿に騙されると…痛い目を見るのに…バカですね…」 榊原は呑気に…康太の勇姿を見ていた 栗田は「助けないんですか?」と聞くと 「康太の怖さは遼一が一番、味わってますよね?」 榊原は、遼一に振った 「ええ!良ぉ~く知ってますよ! 俺等のグループを解散させたのは…たった四人の四悪童と言うワルガキで… 頂点に立つ飛鳥井康太は、見た目は弱いと思って、情けをかけてタイマン勝負してやって……ボロボロに負けて…半死常態でベッド送りになった記憶は…一生忘れねぇよ! 俺も見た目で甘く見た奴でしたからね!」とヤケクソで答えた 目の前で…鮮やかに薙ぎ倒して行く姿に…榊原は笑っていた 「ね!あんな雑魚…康太だけで大丈夫です! いざとなれば、そこに遼一の仲間がいるでしょ?」 榊原は、しれっと言った 遼一達は…康太に何かあれば、直ぐに出るのを計算してやっているのだ 「食えねぇ奴…」 遼一は呟いた 「しかも、僕が闘ったら撮影は誰がするのですか?」 「撮影?」 「飛鳥井康太が動く時…証拠を遺す!」 栗田は納得した 大体片付くと榊原は、康太に近寄った 「良い運動になりましたか?」 「おう!最近、病人してたかんな!鈍ったわ!」 康太がケラケラ笑うと、施工部の奴が 「社内で暴行ですね!訴えますよ!」と言い掛かりを着けてきた 「この一部始終は、録画してある! どっちが、先に手を出したか証拠はあるぜ! 裁判にするなら受けて立ってやる! 飛鳥井家真贋に手を出した慰謝料は高いぞ! しかも、オレには専属の有能な弁護士もいるしな!」 施工部の完敗だった 「飛鳥井建設は、仕事してくれる奴の上に成り立つ会社だ! 仕事しねぇ奴は去れ!士気が下がる! 解雇通告に文句や異議があるなら社長室まで来い!証拠はある!意義など認めない!」 康太は背を向けた そしてフロアを出て行った 階段を上り五階へと向かう 五階には、お局がデカイ態度で居座る部署だ! 覚悟をせねばならなかった! 五階の『広報、企画、営業 』 この階のフロアーにツカツカと入ると、康太は一番前にあるカラーボードを蹴り倒した 「明日の飛鳥井に不要な人間は、会社から去って貰う! お局など不要だ!んなのがいるから、空気が淀み…腐って行くんだ! 退職勧告をする!オレがこの部屋を出たら辞令が降りる 異議があるなら社長室まで来い! お局と同調した奴もクビだ! 飛鳥井に不要だ!去って行け!」 康太が言うと、お局が食って掛かった 「玲香様はご存知なのかしら? 私はお母様の直属の部下ですよ?」 「玲香は、この部署を降りる! 此よりは飛鳥井家真贋が監視する! よって直属の部下など、不要だ! ついでに幅を聞かせてふんぞり返ってるお前も不要だ! それに同調して、無視を決め込む奴等も同罪!一掃する! 仕事をしやすくする為にな、お前は不要なんだ!クビだ!」 康太はキッパリと言い捨ててやった! 「異存があれば、社長室まで来い! 退職に値する資料も揃えてある! 泣くのはお前だぞ!オレが追い込む前に辞めろ!」 お局は、何も言えず黙った… 康太は階段を上がり、社長室まで行く 社長室のドアをノックすると… 瑛太が…出迎えた 「お疲れ様です!」と深々と頭を下げた 社長の清隆は…ソファーに座っていた 康太は父の横に行き、ソファーに座ると溜め息を着いた 「4月になったら、100人の社員が入社して来る! その中には追加で、能力入社枠で採用した社員もいるからな。 この状況の中で仕事しろと言われたら…3日とは持たねぇよ… 後、施工部は潰す…社員食堂…出来てねぇぞ! 一階の受付嬢にしても遊び歩いて…意味がねぇ… なら、解雇して…消えて貰う! 受付らしい環境を作らねぇとな…」 康太は…頭を抱えた 「ひでぇな…こんな腐った会社になっちまって… 源右衛門が高齢で目が届かなかった間に…腐っちまった……」 瑛太は康太に毅然と言い放った 「ならば、君が創り変えれば良い! 君が頂点に立ち、創りし会社を創りましょう! それにはやはり、粛清なくして…明日へは続かず…ですので、此方は貴方の顧問弁護士を筆頭に弁護団を作って対応させて戴きます!」 「強硬…しかあるまい…情けは無用… 明日の飛鳥井の布石は打たねばならねぇ!」 瑛太は深々と頭を下げた 「総ては…貴方の想いのままに…」 康太はニャッと返した 力哉が社長室に入って来ると、解雇通告を康太に渡した 康太はそれに目を通し、一枚ずつに「飛鳥井康太」とサインを書いた そして、解雇通告を瑛太に渡すと、瑛太も目を通し、サインを入れた その解雇通告を最後は清隆に渡すと、清隆も目を通しサインを書いた 「瑛兄、伊織と共に解雇通告を突き付けてくれ! 伊織、解雇通告を持て!」 榊原は解雇通告を清隆に渡して貰うと、その手に持った 瑛太も立ち上がり康太に声を掛ける 「貴方は?どうなさいますか?」 「粛清の場に、飛鳥井家真贋がいなくてどうするよ? 行くに決まってるだろ?」 康太は立ち上がると、清隆に振り返った 「父ちゃん…後少しだ…後少し絶えてくれ… そしたら、母ちゃんの所へ行ってやってくれ…」 清隆は康太を抱き締めた 「君が…総てを終えるまでは…私は此処にいます! 飛鳥井建設の社長は…まだ私です!」 康太は……父ちゃん…と呟き、清隆から離れた 「ならば、行ってきます!」 康太が言うと…清隆は、深々と頭を下げた 瑛太は三階から回る事にした 副社長が入って来ると…社員は席を立ち並んだ 「飛鳥井建設は、明日へと続く為に粛清を行います! 解雇通告を受け取るか…自主退職するかは任せますが、退職に変わりはありません!」 瑛太は言い終わると、榊原より一歩前に出た 榊原は、それを合図に解雇通告者の名を呼び上げた! 一人ずつ…解雇通告を受け取りに来る… このフロアは半分以下の人数になる 榊原は解雇通告を渡し終えると一歩下がった 「今まで御苦労様でした。 貴方達の行く末が明るいもので有る様に…御祈りしております! 次の所へ行かれる時は、会社に貢献する事を、固く心に刻まれて、ご活躍下さい! お疲れ様でした!」 康太は深々と頭を下げた 解雇通告された者の中から… 「本当に退職せねばならないのですか!」と声が上がった 「はい。こっちも命を懸けてますので、冗談や誤魔化しは効かないんですよ! キッチリ退職して戴きます! 明日には貴方達の席は有りません! 私物は持ち帰って下さいね! でないと、捨てさせて戴きます!」 とキッパリと謂った 「裁判にするからな!」と何処からか声がかかった 瑛太が「どうぞ!」と不敵に笑った 「此方も弁護団を作って対処致します! 此方はすべての証拠があっての解雇通告なのです! 会社の為にならぬ人間は、排除せねばなりません! 貴方達は会社の為に働いてなかった! と、言うことですので解雇させて戴きます!」 グッと押し黙り…悔しそうに…下を向く人間がいた 康太はそれを冷ややかに見ていた 「この不景気に再就職は大変だろうな… でも自分が撒いた種だ、自分で刈り取れ! 以上!荷物を纏めて…出ていけ! そうでない奴は仕事しろ! 遊んでる暇はねぇんだぞ!」 康太は言い捨てると…フロアに背を向け上の階へと上がっていった 康太の後に瑛太が続き、榊原が続いた フロアでは…生き残った人間が…必死に仕事を始めた 階段で上がり四階に行く 瑛太と榊原、そして康太の姿を見ると…此処でも社員は立ち上がって…出迎えた 三階同様…瑛太が解雇通告を説明し、榊原が解雇通告を一人ずつ名前を呼んで渡した 康太は前に出ると 「飛鳥井建設に、施工部は不要だ! もし残すとしても、このメンバーでは残しはしない! と、言う事で…全員解雇させて貰う! 次の会社に行かれる時は…会社に身を尽くす事を忘れるな! 会社は社員に支えられて成り立つが、その社員が支えるのをサボれば…その屋台骨は…成り立たなくなる 会社は社員の為に在るが、社員も会社の為に有る存在なのを忘れるな!以上!」 康太は……言うだけ言うと……黙った 乱闘騒ぎの後で…文句を言う奴はいなかった 「栗田!」 「はい!」 「お前の目も濁って来たか? 一発殴る!前に立て!」 栗田は康太の前に立つと…康太から目を離さなかった 「言い訳はしません!」と栗田は声を上げた 「次はねぇぞ!幾らオレの持ち物でも…使えねぇのは…要らねぇんだ!」 康太は栗田を殴り飛ばした! 栗田の体は…吹き飛ばされ…その唇からは鮮血が流れていた 栗田は立ち上がると…康太に深々と頭を下げた 「俺の目が行き届きませんでした…」 「何故か解るか?」 「解りません…」 「お前は部下との親睦をカタチだけで済ませたからだよ! 人と交わるのは、その真髄を見抜かなければいけない。 時々は社員と昼でも食ったり…話しかけねぇから…細かい事まで…見れなかったんだ! お前は味方を誰も着けなかった お前の為に動く人間を用意しなかった! 高みの見物は猿でも出来る!」 康太は栗田にハンカチを渡した 「血を拭け!」 栗田はハンカチを受け取り…血を拭いた 「解雇通告の社員は今日中に荷物を纏めて、出て行って貰ってくれ! 明日の朝、残っていたら捨てて良い! 以上!」 康太は言い捨てると、栗田が必ず!遣らせます!と言葉を述べた 「ならな、栗田!粛清だ…甘い顔は出来なかった…」 「解っております!」 康太は背を向けると…振り返らずフロアを出て行った 五階のフロアの中に入って行っても、下の階と同じ様に瑛太が説明して、榊原が解雇通告を渡した 「このフロアの統括本部長は、飛鳥井康太がなる! オレはこのままの部署なら…ハッキリ言って潰すに値する…価値すらない…部署だと思う この世の中は実力社会だ 人を使いたいなら、それに値する人間になれ 不要な人間は出て行って貰う! 明日の朝、荷物が残っていたら捨てる! お前達の席も名前も飛鳥井にはない! お前達は会社の為にはなぬ人間だからだ 他所の会社に行かれるのなら、その時は会社の為に身を尽くされる事をお勧めします!」 そう言い康太は頭を下げた 「会社に残る者は仕事しろ! 会社の為に身を尽くせ!以上だ!」 康太の言葉に…誰一人異議を唱える者はいなかった 「力哉、監査から、陣内博司を連れて来い!」 「解りました」 力哉はエレベーターに乗り…監査から、陣内博司を連れてやって来た… 戻った力哉は、はぁはぁ…言っていた… 「お連れしました!」 「悪かったな力哉…」 「いいえ。構いません!」 康太は力哉を労り…連れてこられた陣内博司の方へ歩いて行った 陣内は…牛乳瓶の底のような眼鏡と…ボサボサの髪をして…冴えない男だった 「陣内、今日も綺麗だな!」 「……そんなことを言うのは…貴方だけですよ?」 「そうか?その格好を止めれば…皆そう言うぞ?」 「見た目の称賛など、私には不要!」 康太は苦笑した 「ならば、お前の腕を見せてくれ! その徹底した管理能力を…オレの為に使いやがれ!」 ボサボサの冴えない男は…眼鏡の奥の瞳を…輝かせた 「時は…満ちたのか?」 陣内博司は康太にそう問い掛けた 「あぁ。満を持しての投入だ!」 康太は苦渋を飲んだ日々の終わりを告げた 「徹底的にやって良いのか?」 「あぁ!お前の好きにやれ! この部署の総責任者はオレになった! お前は、オレの統括本部長の席に着き、皆を管理して働かせろ! 統括本部長だ!どうだ?」 「役職など、どうでも良い! でもな、絶対の権限は必要だからな!」 「今日、これから、お前はこのフロアーの責任者だ! 手腕を発揮する時が来たのだ! それには、その容姿を何とかしろ! その牛乳瓶の底の様な眼鏡は、責任者として相応しくはない!」 「解った!」 陣内は眼鏡を外し、手櫛で髪を整えた 「後で、ちゃんと支度して参ります! 今はこれで、良いですか?」 陣内の顔を隠していた…眼鏡と…髪を直すと…見違える美しい顔が現れた… 「良いぜ!なら、頼むな!」 「はい!必ずや貴方の期待を裏切らない仕事をして見せます!」 「お前も勉強だ! 人は締め付けるだけでは不満を抱く… その不満が重なれば…不協和音が産まれる そこを上手くガス抜きして、やっていけるか…見ててやんよ!」 陣内は康太に深々と頭を下げた 「お前等…陣内に手を出すなよ!」 康太は釘を刺した フロアーの人間は…皆頷いた 「コイツに手を出せば…」 …………ヤクザの愛人だとか?…社員は息を飲む 「必ずや…負傷を追うことになる…」 やはり……怖い男がバックに着いてるとか… 「それは避けたいからな…」 ……………そんな怖い人…手は出せません! 「何たってコイツは、オレんちの道場の師範代だかんな… 下手に手を出したら…投げ飛ばされるか…その腕を折られる… コイツ…顔は綺麗だけど…過去にはオリンピックに出た程の体育会系だ! 下手に手を出したら…血を見る… そして…犯される…どっちも食えるからな陣内は……」 と、康太が言うと… ひえええええええ~バイですかぁぁぁぁ~ 社員は…青褪めた 「でも、話の解る奴だし…管理能力は逸品だ! オレの目をを置く……その言葉、飛鳥井家真贋の言葉だと想え!心して聞け!以上!」 康太は陣内に向き直った 「陣内、解雇通告した社員は排除して、仕事にかかれ! 飛鳥井は遊んでる暇などない筈だ!」 陣内は姿勢を正して「はい。解りました!」と答えると、仕事を始めた 康太は背を向けると、そのまま階段で最上階まで…上った その後に…瑛太と榊原が着いてくる 瑛太が「陣内…飛鳥井にいたのですか…」と今更呟いた 「アイツは、オレのモノだ! オレが拾って…育てた! 雇用主は飛鳥井康太、オレの駒だ! アイツ…頭は良いけど協調性が有りすぎて… 退職を続けてた… その時、オレが拾って…これより、2年は下積みを経験しろと、働かせ勉強させていた やっと、アイツは本領発揮出来る時が来た、と言う訳だ!」 榊原は何も言わず康太の側にいた 社長室に戻ると…清隆は誰かと話していた 静かにソファーに座って待ってると…清隆は電話を切ると…康太を抱き締めた 「 玲香から電話でした…」 父の…瞳は濡れていた 「母ちゃん…胃潰瘍だろ?」 「知っていましたか?」 「弥勒が教えてくれた…オレは弱っていたから…回りの事を…そこまで把握出来なかった…」 「君の所為じゃありませんよ! 悩んでいた…玲香を助けてやれなかった… 私がいけないのですから…」 「父ちゃん…母ちゃんの所へ行こう も、少ししたら…終わる…そしたら行こう」 「そうですね。でも、総て…片付けるまで来るな!……と電話口で言われたので、終わるまでいます!」 康太は…父ちゃん…と呟いた 蒼太から電話が入ったのは…就業30分後の事だった 「三階フロアー、解雇通告の社員は自主退職届を提出して…退職されて行きました!」 栗田の方からも…電話が入った 「四階フロアー、職務完遂! でも、施工部の一部が…もう一度…やり直したいからチャンスをくれと行ってきてます…どうしますか?」 「一度退職させろ!残りたいなら入社試験を受けろ!と言ってやれ」 「解りました!」 五階フロアーの陣内からも電話が入った 「お局が…占拠して…困りましたが…やっと、排除して…職務完遂…」 康太は総てのフロアーの通達を受け取った事となる 「力哉」 「はい。」 「能力入社を控えてる社員を…前倒しで出社させろ! 入社式は、出てもらうが早めに仕事してくれ!と言い仕事をさせろ! それと、戸浪に持って行く資料と人材名簿を明日までに作っておいてくれ!」 「解りました!」 「父ちゃん!終わった! 会社の粛清は滞りなく終わった…母ちゃんの所へ行こう!」 清隆は…頷いた… 瑛太は「父さんは先にお行きなさい!後は、私と伊織、康太がおります!」と言い、父を病院に促した 清隆は立ち上がると「ならば、後は宜しく御願いしますね…伊織…君がいてくれて助かりました」と、榊原の手を握り…抱き締めた 「瑛太、康太…ありがと…」 そして、我が子を二人…抱き締めてから…社長室を後にした 父親が帰って行き…瑛太はソファーに座って溜め息を着いた… 「母さんは…退院したら…どの部署に置くつもりだ?」 瑛太が問いかけた 陣内博司を起用するなら…玲香のポジションはない… 「母ちゃんは、社員食堂の統括をしてもらう! 客の接客や対応、社員の管理など遣って貰う 今度は…悩まなくて良い職場で忙しく動けば…良いと思う 京香は託児所の管理をしてもらう! 四月になったら…一般の乳幼児も募集をかける 現状、何処で保育園の事を聞いたか知らねぇが、募集前なのに…問い合わせが…百軒を越えている そんなに沢山の子は預かれないし、時間も会社がやってる時間だけだ… 6時までには…終わらせる…と、まぁ微調整が必要なんだよ…! 社員を優先にしねぇとな…だから、一般には…まだ踏み切れねぇでいる…」 「待機児童が…凄いですからね…難しい問題です!」 「さてと、オレと伊織は…母ちゃんの所に行くわ…瑛兄は?」 「私はまだ行けません…片付けねばならぬ仕事が…有りますからね…」 「明日にしろ!明日になったら、オレも伊織も手伝う!」 「そうですね…なら、行きましょうか?」 康太が言うと…瑛太は帰り支度を始めた 「先に出てて良いですよ?私も後で行きます!」 「ならな、瑛兄。」 康太は榊原と共に…社長室を出た そして、地下へと降りるエレベーターに乗り込んだ
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