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第15話 暗雲①

榊原の車に乗り込み…玲香の病院へ行こうとすると…電話が入った 康太は…榊原の胸ポケットの電話を取ると、通話ボタンを押した そして…なにやら話し…電話を切った 「伊織…ここから一番近い、ヒルトンホテルまで行ってくれ…」 「病院は?」 「無理だな‥‥今は逝けねぇ‥」 「電話…誰でした?」 「………」 康太は眼を瞑り…何も言わなかった… 榊原は、会社から一番近いヒルトンホテルに向かって走った… ヒルトンホテルの車寄せに車を停めると、康太と榊原はkeyを預けて…ホテルへと…入っていった 康太がホテルへと入って行くと…康太の姿を見つけた…綺麗な女性が…近寄って来た 「飛鳥井康太様ですね?」 「……違う!」 「どうぞ!此方へ!」 康太は動かなかった 「康太様?」 「名乗らねぇ奴に着い来いと?ふざけるな!」 康太は…ラウンジのソファーに座って…そっぽを向いた 「さてと、伊織、帰るか! 礼儀も礼節も教育されてねぇ…秘書を見れば…主は解る!」 康太は言い捨てた 綺麗な女性は、慌てて…何処かへ電話を入れていた… 暫くすると…安曇勝也が康太の前に姿を現した 「康太…私の秘書が…失礼をしましたね 無礼をお許し下さい」 安曇は康太に謝罪した 「初歩の教育も出来てねぇようでは…な。 今日は帰るわ…逢う気も失せた…」 「康太…そんな事は仰らずに…少しだけ…私に時間を下さい」 康太は仕方なく立ち上がった ホテルで一番良い部屋に通されると康太はソファーに座って足を組んだ 「用なら早くしろ!」と急かした 「何か…用でも…有られたのですか?」 「わざわざ来てやったんだ!用を言え!」 「貴方に…逢いたいと…申すのに用が必要なのですか?」 「お前の秘書は…用があるから…何が何でも来い…と言ったんだぜ! 用がねぇなら…オレは病院へ行けた…」 康太は…榊原の胸に…顔を埋め…もう何も言わなかった… 康太は…やるせない想いを…どうする事も出来なくて…震えていた 榊原はそんな康太の頭を撫でた 「勝也さん…貴方、タイミング…悪過ぎ… 飛鳥井玲香…康太の母親が倒れられたのです… でも、康太は会社に行き粛清を…続けた… それでやっと、母親に…逢いに行こうとすると…これじゃぁ、康太は遣りきれませんよ」 榊原の説明に…勝也は…言葉を失った… 康太の携帯が…けたたましく着信を告げ鳴った 榊原は、「失礼…」と言い電話に出ると…瑛太だった 『康太?……君…何処へ行ってるんですか?』 病院に行ってもいないから…瑛太が電話を掛けて来たのだ 「義兄さん…会社を出た所で…安曇勝也氏から電話が入り…会社の近くにあるヒルトンホテルまで、来てます…」 『伊織…康太は…?』 「待って下さい…康太?義兄さんからですよ?」 榊原は康太に携帯を渡そうとすると…「嫌だ…出ない!」と言い…電話を受け取らなかった 「すみません…完全に…拗ねてます」 『そうですか…なら、康太に…母さんは起きていて康太の事を心配してましたよ?と伝えて下さい…』 「はい…伝えておきます…」 榊原は通話を切ると胸ポケットにしまった 「康太?大丈夫ですか?」 「気力が…萎えた…」 朝から…ずっと緊張感を保ち続け…粛清に当たった 張り積めた…糸が…ダラーん…となって萎えた…感じになっていた 勝也は…そんな二人の前に…お茶を置いた 「本当にすみませんでした…」 「お前の秘書…あれじゃぁ…どの政治家より落ちるな…。 自分は名乗らねぇのに…オレに来いとか… 有り得ねぇ…名乗りもしねぇ奴に着いて行く奴なんかいねぇよ!」 あまりの酷さに康太はボヤいた 安曇は‥‥まさか礼儀もなってないのかと‥‥頭痛がしていた 「そうでしたか…」 「電話をしても…安曇勝也の秘書…と言うけど自分の名は名乗らねぇ… そして用件は…大切な用だから来なかったら…それなりの覚悟をしろ? 何様だ…こんな事続けてたら…お前は失脚するぜ!それを言う為に来てやったもんだ!」 康太は一気に文句を言い…お茶を啜った… 「用がねぇなら…オレは帰りてぇ… こんな気分が萎えて…何も出来ねぇかんな」 「用がなかった訳ではないのですよ? 貴方の耳に入れておきたい…事がありました…」 安曇が言うと、康太は…安曇の方を向いた 「飛鳥井建設は駅前ビル開発プロジェクトを、頭になり手掛けてますよね?」 「おう!かなり大きな仕事だからな!」 「それ、談合の疑いが…上がってますよ?」 康太は…驚愕の人見で安曇を見た… 「嘘…談合…?」 「国会に上がってるのですよ。 私の耳に…入る位に…噂は蔓延ってます 近々、参考人招致すべきか…検討中です」 「そんな…極秘な事…オレに言ったら…お前は…身がアブねぇじゃねぇかよ!」 「構いません!失脚すれば…振り出しに戻るだけ…また這い上がります! それよりも…君の守る会社を私も…守ってあげたい 君を守りたいと言ったのは…嘘ではないのですよ? 本心から…君の父親になりたかった… でも…ろくに子供も育てられない…父親など不要ですよね…」 安曇は、淋しそうに…笑った 「勝也…そう言う…意味で言ったんじゃねぇ…。 お前は…既に…血は繋がらなくても二人の子供を持つ…そして血の繋がった子供を持つ…父親だ… オレはそんな子供達を…押し退けて…子供には収まれない… しかも、こんな化け物…子供にする価値はないと言ったんだけどな…」 「君と生きた…日々を忘れたくはないのです… でも、現実には…私は人の親… ちゃんと接して来たつもりでしたが…伝わってなかったのですね…」 「違う!あの子供達は…登喜子の前の旦那に操られてただけだろ? 真実を知れば…解り合えるさ… お前は…あの子達の父親だぜ!」 「君の父には…なれませんか?」 「………昔から…おめぇはオレの親父だったじゃねぇかよ だから母親が倒れても…お前を優先して来た 違うのかよ?」 安曇は康太の横に座ると…康太を抱き締めた 「康太…君が苦しむ事態は…食い止めてあげたい! 何としてでも…食い止めたかった… だけど…もっと事が大きくなったら…私は止められない…」 「勝也…手は出さなくて良い…」 「ですが…君が傷付くのは耐えられない…」 「この話は…三木の耳にも…入ってるのか?」 「多分…入ってません! 私が…口止めして内密に進めさせてるので拡散はしてません… ですが…誰かが…意図的に…拡げているのです… 三木の耳に入るのも時間の問題です」 誰かが…意図的に…拡散してる? 「勝也…ありがとう! 手を打てる早さで助かった…」 「行かれますか?」 「おう!聞いたら早く動きてぇ…」 安曇は、康太を離した 「勝也…今度、必ず時間を作る… そしたら、親子水入らずで食事しような」 「康太…待ってます… 後、あの秘書は…クビにします…」 「飛鳥井に寄越せ! 再教育して戻してやる!」 「解りました…では、また。」 康太が立ち上がると…安曇も立ち上がった 榊原も立ち上がり…康太を待つ 康太は安曇を抱き締めると…またな…と体を離し…歩き始めた そして、片手をあげて部屋を出て行った 部屋を出て、ホテルを出て車に乗り込むと、康太は榊原に手を差し出した 榊原は胸ポケットから携帯を取り出すと康太に渡した 「あっ、オレ、調べてくれねぇか?」 と言い…調べることを告げ… 「一生に変わってくれ…」と言い 変わった一生に「動いてくれねぇか?」と言い指示を出した 手早く指示を出し…電話を切ると… 「会社に戻れ…」と言った 榊原は、仕方なく…解りました…と言った 一番…玲香に逢いたいのは…康太なのは…解っていたから… その時…康太の携帯が…鳴り響いた 「瑛兄?どうしたよ?」 『康太…君今何処ですか?』 「何故?」 『聡一郎と一生が、慌ただしく出て行きました 君の指示がなきゃ…あの二人は動かない あの二人を動かして…君は何をしているのか…私は聞く必要がある…何故なら会社の事でしょ?』 「オレはこれから会社に戻る…瑛兄も会社に来い その時に…飯を買って来てくれ 腹減って…死にそう…食いてぇ…食わせろ」 『解ってますよ…最近の君は…食欲が戻りつつありますからね… 買って会社に戻ります!』 瑛太はそう言い…電話を切った 榊原は苦笑した… 「伊織…そこのスィーツ食いてぇ…プリン買い込んで来てくれ…後、スィーツも」 「解りましたよ。待ってて下さいね」 榊原は、車を駐車場に停めると…スィーツを買いに行った 暫くして…袋一杯の手荷物を…持って帰ってきた 「君の欲しいのは…買って来ましたよ 後欲しいのは有りますか?」 榊原は車に乗り込んで…康太に問い掛けた 「ある!」 「何ですか?」 「伊織が欲しい!」 榊原は、康太を見詰め…康太の肩に…額を置いた 「……康太…下半身に…直撃でした…」 榊原は康太を抱き締め…耳元で囁いた 「終わったら…な。」 「解ってますよ…でも触って…? 君の好きな硬さになってます…」 康太は手を伸ばし…触った… そこには熱を持ち…勃起した…榊原のモノがあった 「熱い…」 「でしょ?でも、今は…仕事が優先でしょ?」 「だな…」 「行きます!」 榊原はエンジンをかけ車を走らせた 「ごめん…伊織…」 「良いですよ?僕が欲しいと言われて怒る訳ないでしょ?」 「本当に…この世で欲しいのは伊織だけだかんな…」 「康太…」 「ん?」 「押し倒されたいですか?」 「ごめん…もう言わない…」 榊原は笑った 榊原が会社の地下駐車場に停めると…瑛太が車を飛ばして…やって来た 車の中には…慎一も乗っていた 康太は車を降りると…慎一が飛び出して康太に抱き着いた… 「貴方が動く時…俺も連れて行って下さい…」 「慎一、悪かったな…これから動いてもらう…頼むな!」 「はい!」 「瑛兄…悪いな…」 瑛太は康太に近寄ると…そっと抱き締めた 「康太…大丈夫…ですか? お弁当を買って来ました…食べましょう 慎一、お願い出来ますか…? 伊織の…袋の方が大変そうですので…手伝います…」 瑛太は…康太を離すと…榊原の紙袋を持つのを手伝った 「これは……康太の?」 「……スィーツです。」 納得して…エレベーターに乗り込み…最上階へ向かった 康太は社長室のドアを開けた 部屋に入ろうとした康太は……固まった 「父ちゃん…何でいんだよ?」 社長室の部屋の中で清隆が…仕事をしていたから…… 「康太…何で…? 病院へ行かなかったのですか?」 「ちょうど良い…話がある!」 康太はソファーに座った 榊原と瑛太と慎一は…弁当やスィーツをテーブルの上に置いて…ソファーに座った 瑛太は…「父さん…母さんに着いてなくて良いんですか?」と尋ねた… 「会社が…気になってね…。 玲香も…会社を疎かにするな!と煩いしね…」 清隆は苦笑した 康太はソファーに座ると…足を組み…父と兄を見た 「手間が省けた。二人に話がある! オレが勝也の所へ呼ばれたのは…会社の事で…勝也が掴んだ情報を…オレに流す為… 会社の危機だぜ!手を打つ為に…会社へと戻って来たんだよ!」 「会社の…」瑛太が…呟いた 「危機…?」清隆が…呟いた 瑛太は「話して下さい!」と康太に頼んだ 清隆も「手を打てるのなら…打たねばならないので…話して下さい!」と康太に頼んだ 「談合…だと。 駅前開発に携わり…落札は談合だと… 国会の…勝也の所まで上がっている 参考人招致すべきか…検討中だとか… 今は…勝也が握り潰しているが…時間の問題だ… 動かねぇとな…そして、そんなデマを拡散した奴を捕まえねぇとな!」 「そうですね!必ず…捕まえねば… 資料を…集めねばなりませんね…」 「今集めてる…だから、弁当を十個は要ると言ったんだ!」 「予備に…15個買って来ました… 先に食べますか?」 「そうだな。父ちゃん飯にしよう!」 康太が言うと慎一が「お茶を淹れて来ます」と言い部屋を出て行った

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