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第17話 日常

朝、何時もの様に起きると…浴室で中も外も洗ってもらい…支度をしてもらった 榊原は、リビングに康太を置くと…掃除と洗濯に勤しみ部屋を磨き上げる 康太は…リビングから出て一階へ降り、外へと出ると…三木が車で飛鳥井に寄る所だった 康太は三木の車が停まるのを待つと、車に乗り込んだ 「どうしたよ?珍しいじゃん?」 「………貴方の電話に出られなかったので…後程掛け直したら、出られなかったので…来た方が早いと想ったのです…」 「お前に電話をした時は、オレはまだ会社にいた! お前に話があって電話をしたんだけど…エッチの最中とはな…タイミングが悪かった…」 「貴方…電話の向こうが…見えるんですか?」 「…お前とは血を交えてるからな…」と康太は笑った 「掛ける前は…見えてましたか?」 「おめぇ、人を化け物扱いすんなよ! お前の息遣いとかで、見えるだけだろ? なんも狙ってやってねぇよ!」 「すみません…焦りましたから…切ってしまったので…」 「構わねぇよ…!」 榊原は掃除を終えてリビングを覗くと…康太の姿はなかった… 一生が顔を出して…康太の姿がなくて…探していた 「伊織、康太は?」 「いませんか?ソファーに座らせてましたが…」 一生が康太を探しに、部屋を出た 榊原も慌てて康太を探しい行く… 家の中を総て探しても…いない 「と、なると…外か?」 「しかありませんね…」 榊原と一生は外へと出て行くと…三木の車を見つけ…駆け寄った すると三木の車の中に…康太が座っていた 榊原がドアを開けようとすると、康太は待て…と合図をした 三木と康太は何やら話していた… 一生と榊原は、車から離れて…康太を待った 暫くして康太は車を降りた 三木も車から降りた 康太は一生の背中によじ登った 一生の肩まで上がって…頬に擦り擦り…コソコソ…ゴニョゴニョ… 「一生、家まで連れて行け!」 「はいはい、お連れしますよ!」 「伊織、三木を逃がすな!」と榊原に声をかけると… 榊原は三木に「どうぞ先に!」と促した キッチンに向かうと、一生は、康太を下ろした 「今朝は…少な目しか駄目だって旦那が… また腹痛くなったのかよ?」 一生が心配して声を掛ける 「……ご飯…食わない!」と康太は拗ねた 榊原が康太を膝に抱き上げた 「朝は…病院へ行きますよ? 少し…食べましょ?」 「要らない…」 「康太…食べないと薬が飲めないでしょ?」 「飲まないもん…」 康太が駄々を言う すると慎一が康太を抱き上げ、膝の上に乗せて…プリンを…剥いて食べさせた 「伊織は食事をしなさい! 康太は俺が見ています…中々、お腹の痛みが取れないから…食べるのが嫌になってるんですよ…」 慎一に言われ…榊原は食事を始めた… 一生が手早く食事を終わらせ、慎一と変わる 「………一生…何で治らんのやろ?」 「治って来てるやん?あと少し…気長にな!」 「嫌になる…もう…何か…嫌だ!」 一生は康太を抱き締めた… 悠太は…そんな康太を見ていた 「気休めばっかりだ!何時になれば治るんだよ!もう何ヵ月…こんなのが続いてんだよ! もう食わない!もう良い!」 康太は喚き散らした… 悠太は…そんな康太の姿は…目にした事はなかった… 一生は、康太を強く抱き締めた 「治るから…信じろ!おめぇが信じなかったら…治るものも治らんやろが!」 「一生…すまん…最近は…伊織の相手も出来ねぇからな… 伊織が望む様に…相手をすれば…オレは確実に気絶だ…そして起きれねぇ…状態になる だから、何時も…伊織は添い寝ばかりだ 伊織に…悪いって何時も思うんだ… 前の…半分も…体力がなくて…出来ねぇんだ… 一緒に寝てても…我慢させる時の方が多い… 飛鳥井の事で動けば…動く程…伊織に我慢させている 時々…瑛兄に愛され疲れか…と揶揄されるけど…あれは腹が痛くて…疲れてんだよ 心配させねぇ為に…愛され疲れって言ってるけど…エッチなんて…出来ねぇよ 伊織が…欲しいと…思うのに…出来ねぇんだぜ… 伊織に…我慢させて…世話をさせて… オレの為に…飛鳥井の家の為に…生きさせて… で、エッチもろくに出来ねぇ嫁だなんて……伊織が可哀想だ… 毎日…一緒に寝てるさ…でもそれは…夫婦の営み…とかじゃねぇ… オレは…名ばかりの…妻だかんな…伊織に…本当に悪いと…思う」 「康太…伊織は解ってくれてる…」 「解ってくれてる…その想いの上に…オレは…胡座をかいてる…様なもんなんだぜ 伊織だって…俺を思いっきり抱きたいさ… でもな…抱いても気絶する妻なんて好き好んで抱きたいって思うかよ!」 瑛太も…清隆も…悠太も…驚愕の瞳で…康太を見た 榊原は康太を一生の上から抱き上げると… 自分の膝の上に乗せて…抱き締めた 「エッチも大切ですが…僕は…君が生きていてくれれば…それで良いですから… 君を思いっ切り…抱き潰したい想いはありますよ? 君を腕に抱けば…ムラムラする時も…あります でもね…相手は君でなければ…意味はない 君と過ごしたいんですよ…一生達も…そうですよ? 君といたいから…君の側にいる 君でなければ…ダメなんですよ…」 「でも…オレは…エッチさせられない…」 「それだけじゃないでしょ?」 「死んでも良いから…抱き潰されたい想いはある…」 榊原は笑った 笑って…康太の背中を撫でた… 「義兄さん…今日は康太は病院です! 会社には…終わったら行きます… その前に三木には聞かねばならぬ事がありますからね…」 三木は「さっき、康太に聞いた…俺の解る事なら総て話すし…俺は死んでも康太を裏切ったりはしない! 俺が議員として生きているのは…飛鳥井康太…その人の為だからな…!」と潔く話をした 康太は榊原の上から降りると、キッチンに置いてあるメモ用紙にスラスラと走り書きをして…聡一郎に渡した 「三木から聞いた奴を…調べといて 一生は、黒幕を慎一と共に…調べにいって ガードとして三木を連れて行け! 三木、頼めるか…?」 「解ってますよ! 君は体を治すことを考えて……病院へ行ってください」 康太は頷いた そして、瑛太に… 「瑛兄、陣内に仕事を頼んどいた 陣内と栗田と蒼太を総動員して…動いてくれねぇか? 父ちゃんは天宮に連絡を取って、辞めさせた奴等の裁判の打ち合わせにいってくれ」 と指示を出した 「オレも…動ければ良いのにな… 本当に…この体は…口惜しい…」 三木は康太を抱き締めた 「この先…先頭を行く為に…貴方は今、体を治しなさい… 今は…治癒の期間なんですよ…君は… そしたら、また走り続ければ良い… 伴侶は君に惚れてますからね…浮気したりしないし…甘えてれば良いんですよ…」 「三木…」 「貴方の分も…動く人間は…沢山いる 貴方の為に命を懸けて…生きている人間も沢山いる… それらの為に…貴方は…体を治さねばならないんですよ」 「三木…今日は…普段見せねぇ…部分を見せてちまったかんな…すまねぇ…」 「良いですよ…癇癪起こす君を見れば…愛しさも増しますからね…」 「……選挙…知らねぇ…」 康太は唇を尖らせ…拗ねた 「うわぁ…康太…それだけは…許して…」 三木は情けなく…康太に訴えた 康太は笑って「嘘だもんよー」と答えた 瑛太と清隆は、康太を抱き締めた…キスを贈ってから…会社へと出勤して行った 一生と慎一は三木と共に出て行き 聡一郎は力哉と共に会社に向かった 悠太だけが残った 康太の瞳が…キランと光った 康太は…悠太を跨いで…膝の上に座った… 目の前に…康太の顔があり…悠太は…戸惑った 「お前の卒業式には…オレも伊織も…行くかんな… 堂々と…卒業証書を受け取るんだぞ…」 「はい…康兄…あの…何で…膝の上?」 悠太が戸惑って…康太に聞く 「ダメなのかよ?それともケツが痛てぇのか?」 「ち…違うよ…」 でも……愛してる康太を目の前にするのは…キツかった… 「悠太…おめぇ…勃起しねぇのか?」 「え!え…聡一郎が?」 「…勃起しねぇのか?」 「うん…聡一郎を触っても…ダメだった…」 康太は悠太の唇を…指でなぞった 榊原は席を外し…いなかった キッチンには…康太と悠太と…二人きりだった 「勃起しねぇから…聡一郎に他の男を…作れって…言ったんだって…」 「こっ…康兄…」 康太の指が…悠太の服に…忍び込む… 「動くな!本当に勃起しねぇのか?」 「し…しなかった…」 康太の舌が…悠太の口腔に忍び込み…犯す そして…康太の指が…悠太の…乳首を…撫でた 悠太の…胯間は…みるみるうちに反応し…ギンギン…になった 康太は…胯間に手を伸ばし…勃起した…性器を…なぞった 「悠太の…硬いじゃん… 本当に…勃起もしなかったのか?」 「康兄…許して…離して…」 「勃起しねぇなら仕方ねぇが…するなら何故…聡一郎に、使わねぇ?」 「本当に…勃起しなかったんだ!」 「なら、治ったんだろ?一時的なもんなんだよ!」 「聡一郎はこんな…男に汚された奴なんか…相応しくない…!」 康太は…悠太を殴った… 「てめぇが決める事じゃねぇだろ? 聡一郎は、てめぇに着いて看病してくれてたんじゃねぇのかよ!」 悠太の唇から…鮮血が流れた… 康太は…それを舐め取ると…悠太は… 「康兄…俺は…汚くない?」と問い掛けた 「汚かったら…おめぇに触るかよ!」 悠太は…康兄…と泣いた 康太は悠太の顔を舐めてやった… 傷付いた動物が…傷を癒すかのように舐める…みたいに康太は昔から…悠太を舐めて癒してやった 「愛する奴を…簡単に手離すな…良いな!」 悠太は頷いた… 榊原は、離れた所で…それを見ていた キッチンで…愛してるのに…寝てない…うんぬんは…悠太に向けて…言ってるのだと…解った 康太は悠太に教えたかったのだ… この兄弟は…こうして…傷を舐め合って…辛い時を過ごして来たのだ 悠太には……育ててくれた康太しかいなかった 康太は…悠太を引き受けた時から…親になった… 悠太に取って絶対の親に… そして……その親は…我が子を舐めて癒してやった… 悠太の…想いは…刷り込みに…良く似た…愛だった… 「康太、支度をして病院へ行きますよ! 悠太は学校ですか?」 「義兄さん、はい。学校へ行きます!」 「なら、ついでですので乗せて行って上げます! 支度してらっしゃい!」 榊原は悠太の上の康太を、引き取ると…抱き上げて…キッチンを後にした 寝室へ戻り…康太は榊原にスーツを着せてもらった 「キッチンでの言葉は…悠太に向けて…言ったんですよね?」 「それもあるけど…やっぱ…伊織に我慢させている想いはある 会社に行く日なんか…伊織はまだ元気なのに…抜かなきゃいけねぇ… オレが元気なら相手して…出尽くせるのに…口惜しい…と思う時がある……」 「僕が…君の体だけ…欲しがってると? 君を愛しているから…抱きたくて堪らない日もあります… 君に無理させて…辛そうな…思いはさせたくないのに…暴走する時もあります… だけど、相手は君だから…欲しいんです それは体だけじゃなく…君の総てが僕は欲しいんです…」 榊原はキツく…康太を抱き締めた… 「伊織…ごめん…」 「君が…僕の側で…生きてるだけで… 僕は…生きていけるんです! 愛してます…君だけを愛してる!」 「オレも…お前だけ愛してる! 伊織…愛してる!」 榊原は康太を離すと…頬にキスした 「悠太を待たせてます…行きますか?」 「おう!送り届けねぇとな!」 康太は榊原と手を繋ぎ…一階まで降りて行った 一階に行くと、悠太が待っていた 榊原の姿を見ると…悠太は深々と頭を下げた 榊原は靴を履くと…悠太の肩を叩いた 悠太を桜林の中等部の校門まで送って行く 校門の前で車を停めると、康太は車から降り…後部座席のドアを開けた 「康兄、義兄さん、有り難う御座いました」 悠太は二人に頭を下げると…吹っ切れた様に笑った 「行って来い!」 康太が悠太の背中を叩くと、悠太は「行ってきます!」と言い……二人に背を向けて校門を潜った 何処からか「康太さん、おはようございます!」と声がかかる 康太は片手をあげて「オハヨー」と応えてやり車に乗り込んだ 車を走らせると…生徒が擦れ違う康太達に手をふる 「相変わらずの人気ですね…」 「伊織が?」 「君が…ですよ?」 「……あれは人気とは言わねぇよ…」 「康太…?」 「オレを知らねぇから…騒ぐだけだ…オレを知れば…逃げて行く…そんな奴は沢山見てきた…」 「君は…自分を知らないんですね…」 「伊織…?」 「まぁ…知らなくて良いですけどね… 君は僕のモノですからね…」 康太は嬉しそうに笑った 車は飛鳥井義恭…主治医の病院へ向かい 診察を受けた 康太の回復ぶりに義恭は、驚いていた 何時…潰えて無くなるか解らぬ命の灯火だった筈だ… それに比べれば…今は…治癒目前となっていた… 「凄いな…これで、消化器系統が上手く働けば…完全体になるな…あと少しだ… 毒素も…概ね抜けた 定期的なメンテナンスと検査を続けて行けば問題はなかろう…」と太鼓判を押してもらった 「食ったら腹が痛くなるのは…勘弁願いたい…」 「それもあと少しの辛抱た… 次からは1ヶ月に一度で構わない…」 主治医に言われ…榊原は胸を撫で下ろした 「沢庵…何時になったら食える?」 「節食を続けたから、胃の動きが…良くないんだろうな…薬を出しとくから飲み続けなさい! そしたら徐々に痛くなくなるからね!」 康太は嬉しそうだった 「食える♪食える♪沢庵食える♪」 義恭は榊原を見て 「沢庵に飢えてる?」と尋ねた 榊原は苦笑して…ええ…と答えた 診察を終え、薬を取りに行き、車に乗り込むと…「腹減った…」と催促した

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