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第19話 別離②
榊原の車から飛び降りた康太は…人混みに紛れて…気配を断ち切った
美容院に入り…髪の毛を白…銀に近い…金髪に変え…瞳は…カラーコンタクトを嵌めた
そして…ストリート系の服に身を包み…
パッと見…康太には見えなかった
「康太さん…遼一さんに連絡取りました」
康太に声をかけたのは…門倉仁志…だった
康太は門倉の所に身を寄せて…秘密裏に動いていた
「悪かったな…門倉!」
「構いません…ですが…離れますよ…」
「おう!」
康太は門倉のバイクの後ろに跨がった
門倉のバイクが…飛鳥井建設から離れて行く
愛する男の待つ…会社から…離れて行く
「伊織…あと少しだ…待っててくれ!」
康太は…榊原に思念を飛ばした…
思念を飛ばせば…弥勒が…察知して追ってくると解っていても…
飛ばさずにはいられなかった…
榊原は…康太の思念を…感じた
その耳元に…康太の声を聞いた
『伊織…あと少しだ…待っててくれ!』
と言う…康太の思念を受け取っていた…
榊原は…涙を流した…
離れて暮らして…久し振りに感じられた康太の存在だったから…
弥勒は…康太の思念を…感じとり…追跡の式神を飛ばした
その追跡を…昇華して…康太は…再び…存在を断った
……………再び…康太の覇道を捉えそこなり…
弥勒は…自らの封印を…解いた…
「次は…逃がしはしない…次は…掴まえる」
次に康太の存在を感じたら…己を飛ばす…
この世に…存在する意味
それは……お前を見届ける事だ…
お前のいないこの世に…未練などない
お前がいないと思うだけで…
生きる意味さえ…解らなくなってくる
「康太!帰って参れ!」
弥勒は叫んだ!
「帰って来るのだ…康太!」
神よ…!
康太を返してくれ!
人の世にいる間位…好いた人間と共に生きたい…
それさえ奪うのか?
ならば…次の転生の時に……
貴方を殴ってやる!
康太が消えて…悠太は…週明けには卒業式だった…
「康兄…俺の卒業式に出てくれるんじゃないの?」と呟いた
このままじゃ…卒業式の…父兄の参加は…誰もいない…
悠太の小中…の入学式も卒業式も…康太しか出てくれないからだ…
「康兄…酷いよ…俺の父兄は…誰もいないじゃんかぁ…」
卒業式より…康太が帰ってくれれば、それで良い
別に…卒業式だからって親や…兄弟に…見てもらわなくても構わない…
だが、何時も…康太が見てくれていた
あの人の側に行きたい…
そんな思いで…追い掛けた…
「康兄!ずるいよ!約束を破るなんて…」
悠太は…空に向かって叫んだ…
聡一郎は…そんな悠太を…泣きながら見守っていた
康太は…足元から固めて動いていた
おおよその目処が立って…本陣…本丸を討てば…総てが…終わる…
飛鳥井に仇成す輩を…ただで済ませるつもりはなかった
目当ては…国会参考人招致…
そこで…目にしたものを見せてやる!
二度と…飛鳥井に手を出そうと…思う人間が出てこぬ様に…仕上げは完璧にせねば!
康太は…単独行動をしている間に…飛鳥井を裏切った奴等を追い込んだ
徹底的な証拠を手に入れる為に奔走した
ネカフェで栗田に指示を出し…内側も動かした…
陣内も…康太と連絡を取ってると気取られら事なく…職務を完遂する
中を動かし…外堀を埋めて行く…
その前に……榊原に思念を飛ばす…
『…明日には…帰る…伊織…帰るからな…』
と、思念を飛ばした
その思念を張っていた弥勒は…追跡した
上手く交わし…撒かれそうになるが…
康太を突き止め…追って行く
「今回は…本体だ…必ず…お前を捕まえる!」
弥勒は呟いた
弥勒は…執拗に康太の覇道を追って…
掴まえた…!
だが…目にした時…
弥勒は…誰か解らなかった…
白…嫌…銀に近い髪をした…康太が不敵に笑っていた
門倉が…不審な人間に臨戦態勢を取る
「止めとけ…!お前らなど…近寄れば消されてしまう…アレは呪術師 弥勒院高徳…
お前たちの相手ではない…。
門倉…捕まったからな…此処までで良い!
ありがとう!助かった!」
康太が言うと…
門倉は康太に頭を下げ…バイクに乗り…去って行った
「よぉ!久し振りだな…高徳!」
康太は…敢えて、弥勒の真名を呼んだ
「康太?……本物か…」
弥勒は…康太を抱き締めた…
「オレ1人追って来るのに…封印まで解くか…普通…」
「お主が逃げるからであろうて…」
「オレにも色々と…あんだよ!」
「絶対に伴侶殿に…思念を送ると…踏んでいた!絶対に掴まえると…決めていた」
弥勒は…康太に接吻した…
舌を入れる…濃厚な接吻で…康太の口腔を…味わい…離した
「弥勒、オレのキスは高いぜ!」
「解っておる…盛田の家にお前を飛ばす
それで…目を瞑ってはくれぬか?」
「ちゃんと、オレを回収しろよ!
そしたら許してやんよ!」
「回収も何も…共に行く!
共に行って…お前に何かするなら…生かしておるつもりもないわ!」
「さくさく片付けて…オレは伊織の所へ帰りてぇ…人の感情を忘れる前に…帰らねぇとな…回りが…アイツを忌諱な目で見る…
それは避けてぇし、オレの弟の卒業式があんだよ!出ねぇとな…オレの子供だからよぉ」
「ならば、さくさくやるとするか!
我は今…本体だ…このまま連れていってやろう!捕まっておれ!」
康太は…弥勒に縋り着いた
弥勒は…時空を越え…康太を盛田の家に…連れていった
ネズミ一匹…抜け出すのが不可能な…警備体制の…盛田兼久の家を…意図も簡単に…
弥勒が康太を連れて行く
外の喧騒の割りに…家の中は静まり返っていた
弥勒は…部屋に忍び込むと…結界を張った
これで騒ごうが喚こうが…外には漏れない
康太は静かに…盛田兼久に忍び寄った…
盛田が気付いた時には…真横にいた…
そんな感じにジリジリと忍び寄る…
「うわぁぁぁ~!!!!」
康太の存在に気付くと…盛田兼久は騒いだ
騒いで外の警備を呼ぼうとしたが…部屋の中は静まり返って…警備は来る気配すらなかった
「盛田兼久…何故、飛鳥井建設を陥れる?
飛鳥井がお前に何かしたのか?
お前に陥れられる理由が解らねぇ!
オレはその理由を聞く権利はある?違うかよ?」
「お前の所の…社員が…言って来たんだよ!
証拠もあります…飛鳥井を潰してくれ…と頼まれた!お前の自業自得だろうて!」
康太は…喚く盛田に…ふん!と鼻で笑った
「その見返りに何をもらった?」
「飛鳥井がいなくなれば…弟の…建設会社が…吸収合併する……そしたら真贋は…ワシの好きに使って良い…と言ったから…!」
「手を引け…二度と飛鳥井に手を出すな!
お前の共々…国会参考人招致…で明らかにしてやる!
飛鳥井に手を出せば…破滅しかない!
手を引け!」
「……もう遅いわ!来週には国会参考人招致だろ!」
「…オレが…不利なまま出るかよ!
参考人招致で目に物言わせてやる…
お前の破滅だ!楽しみにしてろ!
そこで覗き見してる…盛田太一!
てめぇもな、御返しは倍返しで…返してやる!待ってな!」
康太は姿勢を正すと…
「飛鳥井に仇成す輩には…制裁を!
オレは許しはしねぇ!絶対にだ!」と叫んだ
康太は天を仰ぐと…両手を広げた
そして…破滅の序章を唱える…呪文を唱えた
「この先…盛田の家は…破滅に向かって走って行く!
この軌道は…呪術師だろうが、止められねぇぜ!
弥勒、帰るとするぜ!」
「なら帰ろうか…」
康太は唇の端を吊り上げ嗤った
「悪いな…高徳!お前の顧客を…なくさせた!」
「構わんさ…俺の顧客は…此れに留まりはせん!」
「そうか。なら良かった。」
「伴侶殿の所へ送ってやろう!」
「悪いな!」
「お前が…生きていてくれれば…許してやる…」
康太は…笑って弥勒を抱き締めた
「掴まっておれ!離すでないぞ!」
弥勒は…康太を抱き締めると…時空を…越えた
「高徳…悪かったな…」
「覇道を切った事か?」
「それもある…」
「俺は…お前をなくすかと…狂いそうだった
覇道を断たれ…お前の消息が掴めぬ…
伴侶殿を…張ってれば…何時か思念が飛ぶと想っていた…こんなのは今回で御免だ…」
「オレもな…今回で御免にしてぇ…」
弥勒は…笑った
笑って時空を…越えて…
康太を榊原の所へ届ける為に……時空を…飛んだ
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