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第22話 鬼の撹乱

朝…清四郎と笙は…何とも言えない重さに…目を醒ました 「重い…!!」と悲鳴を上げ…顔を上げると…康太が…二人を跨いで…寝ていた しかも大の字で…豪快に寝ていた 榊原が康太を探して…目を醒ました 「康太?あれ?何処ですか?」 榊原が康太を探す… 清四郎は…「伊織…上に乗ってます…」と指差した 「えっ…乗り上げて…行きましたか…」 榊原が起きると…暑かったからか…布団から抜け出て眠る姿があった 榊原の腕が…康太を回収する 榊原が康太を抱き締めると…榊原の胸に顔を埋めた 「大丈夫ですか?父さん…兄さん」 「重かったです…」と清四郎が苦笑した 「何で…飛び出てるんですか?」と笙は…呟いた 「康太は暑がりなんですよ…暑いと…布団から抜け出て…床で寝てます…」 榊原の言葉に…二人は絶句した 一生は大笑いして…聡一郎も笑っていた 隼人は清四郎に抱き着いて寝ていた 清四郎と笙に挟まれ…隼人は寝ていた 笙は…重くないの…この子?と思わず呟いた 「隼人や一生達は慣れてるんです… 僕と恋人同士になる遥か前から…康太の面倒を見て来たのは…彼等ですからね 隼人なんて…何時も康太に抱き着いて寝るから…殴られたり…蹴飛ばされたり…乗り上げられたりは…慣れてるんでしょうね」 「慣れか…すげぇな…なら、僕達も慣れるまで…康太と添い寝してみますか?父さん」 「……そうですね。また皆で寝ましょう!」 と、清四郎は楽しげに呟いた 「伊織…熱いってば…」 康太が…榊原から離れようと抗う… 「伊織、熱ない?熱いってばお前…」 「熱…?どうなんでしょう?」 「何時もの体温より…五度は高けぇよ!」 「なら、熱があるんですね……」 榊原は他人事のように呟いた 笙は起き上がると…弟の額に…自分の額を合わせ 「伊織……熱出てる…熱いわ…」と呟いた 「……なら、発熱したのですね…」 真矢も…目を醒まし、榊原に触れた 一生は「旦那…病院に行くかよ?」と問い掛けた 「伊織…お前が倒れるのは…嫌だ…」 康太の脳裏に…倒れて救急車で運ばれた時の…無くしてしまう…不安が蘇る… 榊原は康太を抱き締め 「大丈夫です…君がいなかったから…食べてないし…寝てなかったので…体が限界を告げたのでしょう… 食べずに…寝ずに…君を昨夜から何度も抱けば…熱は出ますよ…今日は大人しく寝てます…。」 康太は…しくしく泣いた… 「康太…本当に…大丈夫ですから…」 榊原に、縋り着き…泣く姿は…子供みたいで…胸が痛む 笙は「父さん…医者を呼んで来てください… このままでは康太が倒れてしまいますよ 伊織が…入院した時の…想いが甦ったんですよ!康太は…来週からは闘いの真っ只中に行くんです…悩ませてどうしますか!」と父親を動かし…康太を安心させる為に必死になっていた 「一生…伊織が…」と康太が一生に助けを求める 一生は起き上がると康太を抱き上げた 「過労でんがな…医者に見せて寝てれば治る…泣くな康太…」 清四郎は起きて…着替えてきます…と言うと…部屋へと向かい 笙も…着替えに部屋に向かった 真矢は…一生から康太をもらい…抱き締めた 「康太…大丈夫よ…伊織は頑丈なのよ! 貴方を残して死んだりしないわよ…」と康太を慰めた 榊原は困った顔で…一生を見た 「体調…悪いと思わなかったのかよ?」 「全然…康太を抱きたいと言う性欲なら凄かったです…止まりませんでしたからね」 「体調は?」 「さぁ?」 「性欲は?」 「凄かったです!」 「熱は?」 「さぁ?」 「まだ康太を抱ける?」 「抱けます!」 一生は呆れた顔を榊原に向けた 真矢も呆れて「伊織…貴方には康太が必要だと…よ~く解りました! ですから、さっさと熱を下げて体を治しなさい!」と言い放った 榊原は肩を竦めて…解りました…と答えた 清四郎は着替えて来ると「医者を連れて来ます。」と康太に告げ…笙と家を出ていった 真矢は榊原を自分の部屋へ行きなさい…と告げた 「お医者様をお連れするので…伊織、貴方は部屋で寝てなさい! 一生達、此処を片付けたら朝食にするので手伝ってちょうだい!」 真矢は…そう言うと、一生達と片付けを始めた 榊原は康太と共に…自分の寝室へ向かった 寝室のドアを全開で開けて…榊原をベッドに寝かせる 「パジャマ…着た方が良くねぇか?」 「構わないでしょ?パンツは履いてますからね…。全裸じゃないので構わないでしょ?」 「伊織…頼むから…辛い時は言ってくれ!」 「怠かったのですが…君を抱き過ぎたのかと…想いました…」 「こんなに…熱出して…」 「直ぐに治します!だから君は気にしなくて良いですよ?…」 「お前を愛してるのに…気にならなかったら…おかしいだろ!」 康太は拗ねた 「僕は自分の事よりも…君が心配です 君がいなければ…本当に人間としての感情は皆無になってしまって…食事しなくてもお腹も減りませんでした…」 「オレには食えって言うのによぉ!」 「ごめんね…康太」 榊原は康太に手を伸ばした 康太は…その手を避けた… そして榊原をベッドに押し込んだ 「寝てろ!」 「康太…避けないで…! 逃げるなら…息の根を止めますよ…」 「伊織…逃げてるんじゃねぇ… 寝てろと言ってんだよ!」 「君に触れさせて…」 榊原の指が康太の頬に触れた 「康太…悠太の卒業式ですからね…治します だから…許して…ねっ!」 「怒ってねぇよ…」 「康太も寝ますか?」 「流石と…それは…医者が驚く」 榊原は、そうですか…と残念そうな顔をした 榊原は康太を抱き寄せた 「康太、医者に診てもらったら…飛鳥井へ帰りますか?」 「……無理しなくて良い…」 「無理とかじゃなくて…僕たちの家で過ごしたいと言ってるのですよ?」 「この家も…お前の家じゃねぇのかよ?」 「父の家でしょ?僕達の部屋は飛鳥井にしかないでしょ?」 「伊織…なら診察してもらったらな」 榊原は康太の額を…引き寄せた 「悠太の卒業式ですからね…兄の務めは果たさねばなりません…悠太に…腕時計を買いました。康太は?」 「オレは…万年筆…だ! オレに…プレゼントとか…多分無理だと思う 一生に泣き着いて…買って来て貰った」 「気にしなくて良いですよ…君が欲しいのは総て僕が買って上げますからね」 榊原は康太を抱き寄せ…うっとりと呟いた 清四郎が医者を連れてやって来ても、榊原は康太を離す気はなくて…診察が終わり…注射を打って貰い、処方箋を出して貰うと… 榊原は立ち上がり服を着て 「父さん、母さん、兄さん、僕は帰ります 悠太の卒業式ですからね…帰らないといけません!」 と告げた 清四郎は諦めて苦笑した 「なら、飛鳥井の家まで送ります!」 笙も「じゃあ、僕も一生達を送って行くよ!」と申し出た 榊原はベッドを直し、上着を着て荷物を持った そして康太と手を繋いで…部屋を後にした 清四郎の車に乗せて貰い…飛鳥井の家へと帰って行くと… 清四郎の車から降りた 「父さん…手間かけました!」 「伊織…寝てなさい。ではまた連絡します」と清四郎は言い…帰って行った 一足遅れて笙に乗せられた一生達が帰って来た 榊原は兄に頭を下げて…飛鳥井の家に…入って行った 寝室に直行し、康太は榊原を寝かした 榊原は、ベッドに良い子に寝て見せて、布団を捲った 「康太も寝なさい!抱き締めて上げますから…寝なさい!」 「ん。なら寝る。」 「全部…脱いでね」 康太は全部服を脱ぐと…ベッドに潜り込んだ 榊原の胸に…顔を埋め…縋り着く 優しく頭を撫でられると…知らないうちに…眠りに落ちていた 榊原も康太の温もりを感じて…眠りに落ちた 注射と薬が効いたのか…榊原は深い眠りに落ちていた 不意に目の前が明るくなり…顔を押さえた 「伊織…大丈夫ですか?」 瑛太が声をかけて来た 「義兄さん?今何時ですか?」 「夜の7時は回っています…何度か覗きに来たのですがね…眠っていたので…起こしませんでした。具合はどうですか?」 「僕は朝帰って来てから…夜まで寝た…と言う事ですか…」 「康太は?」 「横にいます。」 榊原は瑛太に…康太を見せた 「起きて来れるなら…下に降りてらっしゃい 夕飯を食べないと…薬も飲めませんよ」 「あ!薬…取りに行ってないです…」 「私が一生と貰いに行きました。 夕食を食べて飲みなさい!下で待ってます」 瑛太はそう言うと…部屋を出て行った 榊原は康太を起こし…服を着せた 榊原も服を着て…下へと降りて行く キッチンに行くと…清隆も玲香も…榊原の具合の悪さを聞いていて…心配していた 榊原は「ご心配かけました…」と誤り…椅子に座った そして悠太の前に…プレゼントを2つ置いた 「義兄さん…これは?」 悠太が驚いて…問い掛けると、榊原は優しい顔で悠太を見詰めて笑った 「悠太の卒業祝です。高校生ですからね…相応しい腕時計を買いました 康太は万年筆だそうです。卒業おめでとう 君も春から高校生ですね! 兄として、君に祝いをさせて貰いました」 悠太は…プレゼントを…持ったまま…泣いた 一生も悠太の前に…プレゼントを置いた 隼人も…悠太の前に…プレゼントを置いた 聡一郎も…悠太の前にプレゼントを置き 慎一も悠太の前にプレゼントを置いた 卒業式の前日の晩に…皆で渡そうと…打ち合わせをしていたのだった 「義兄さん…康兄、一生君、聡一郎、慎一君…有り難う…俺…嬉しい…」 悠太は号泣すると…玲香も悠太の前に…プレゼントを置いた 清隆も…瑛太も、京香も源右衛門も…悠太の為に…プレゼントを用意して…悠太の前に置いた 「嘘…何で…?」 悠太は呟いた 玲香は「伊織が家族全員に声をかけ、祝ってあげましょう…と申し出てくれたのです 康太だけ祝って貰って…悠太は何もないのは…可哀想だ…って率先して計画を立ててくれたのです。 お礼を言っておくのですよ!」と悠太に教えた 「義兄さん…本当に有り難う…」 悠太は…信じられない想いで一杯だった 「明日の卒業式には僕も出ます…君の兄として僕も出ます!胸を張って堂々としてなさい!」 「はい。精一杯頑張ります!」 一生も「俺等も貴史も…正装して祝ってやるからな!」と声をかけた 悠太は…そんなメンバーで来られたら…騒ぎになる…と想うが…口には出さなかった その夜は…榊原は早目に…眠る事にした

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