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第23話 悠太の卒業式

朝、起きると、榊原の熱は下がっていた 康太が…嬉しそうに榊原を見ていた 「元気になったな…」 「少し無理して…君を抱き過ぎたのですかね?」 「飲まず食わずで、寝てねぇのに無理するからだろ! 今度無理したら…離婚してやる!」 「そんな事したら…君の息の根を止めます… 愛してますよ…奥さん。 今後は体調管理も…して行きますから許してね!」 「お前に息の根を止められらなら本望だぜ!」 康太は不敵に笑った 「朝食を取ってから、支度をしましょうね その前に…君をお風呂に入れて、支度をしたら掃除と洗濯をします だから、一人で出て行かないでね」 榊原は康太に口付け…抱き締めた 「大丈夫だ、オレもやることがあるかんな」 榊原は何をするかは…一切聞かない 康太を風呂に入れ、綺麗に磨きをかけて洗う 康太を湯船に浸けて自分の体を洗う そして康太と湯船に浸かって…暖まり 風呂から出ると、康太の髪を乾かし支度してリビングへと持って行き座らせる それから榊原は自分の髪を乾かし支度をして、洗濯と掃除に勤しむ 洗濯物を総て…洗濯機に放り込み…作動させてる間に、掃除をする 留守にしてたから…あっちもこっちも…気になって磨き上げる チラッと康太を見るとPCを駆使して忙しそうだった それで階下に掃除の場所を移し…磨いて行く 塵1つない廊下にすると…キッチンを磨き…玄関を磨いた…序でに階段も総て磨き上げる やっと終わらせ部屋に戻ると…康太が飛び付いて来た 「康太…どうしました?」 「腹減った…」 「なら、手を洗ってきます…少し待ってね」 榊原はそう言い康太に軽くキスして、手を洗いに行った そして戻って来ると…綺麗になった手を康太に差し出した 康太はその手を取り…キッチンへと降りて行った キッチンに行くと皆が既にいが、一生が居なかった 「一生は?」 そう言えば…朝来なかったし… 慎一が…「部屋にはいませんでした…」と答えた 康太は力哉を見た 「僕は今朝は知りません…」と答えた 康太は首を傾げて…天を見上げた そして一生の覇道を…辿る… 一生は……自分ちの牧場にいた… 「何で?牧場?何かあったんかな…」 康太はポリポリと沢庵を食べ続け…思案する この懐かしい光景が…やっと帰って来たのに… 一生が居なかった… 康太は…果てを見続け… 「そう言うことか…」と納得した そして、瑛太の方を見た 「瑛兄…頼みがある…聞いて欲しい…」と頭を下げた 「何ですか?」 「緑川綾香を…ホスピスへ入れて欲しい」 「え!ホスピス…ですか?」 「この家の近くの…ホスピス…が良い 金はオレが出す。個室を用意してくれ!」 「解りました…では、会社に行く前に…支度をしてお連れします!」 「その時に…和希と和真を引き上げてくれ 慎一に子守させる…来月からは幼稚園にいれる…それか…小学校に入れるまで…東青に頼んで綺麗の所で面倒を見させるしかねぇな 綾香は…子守りどころの騒ぎじゃねぇ…」 康太の言葉で…長くはない事を知る… だから………痛みの緩和治療…のホスピスなのか… 「もうじき一生が帰ってくる!慎一着いて行け!」 「ですが…悠太の卒業式ですよ?」 「悠太はオレの弟だ…オレが出る… お前は…母の…最期をちゃんと看取れ…」 慎一は…康太…と泣いた 何時もの…飄々とした一生が飛鳥井の家に帰って来た キッチンには皆が揃っていて一生は 「おはようございます」と言い椅子に座った 「一生、今日の卒業式には出なくて良い」 康太が言うと……一生は康太を睨んだ 「どう言う事だよ、それは! 何でそんな事を言うんだよ! 悠太の卒業式には皆で出るって言ってたじゃんか!」 「それより、お前に行って貰わねばならぬ大切な頼みがあるんだ!聞いてくれ! 寸分違わず…オレの頼みを完遂してくれ! お前にしか頼めねぇんだ!一生!!」 康太は…一生の瞳を貫いた 「お前の頼みなら…寸分違わず…聞いてやる!」 やはり一生は……その台詞を吐くのか… と、家族は見ていて…辛くなった 「お前に頼むのはな、緑川綾香をホスピスに連れて行って貰いたい! 金はオレが出す!その命費えたら…夫の所へ送ってもやる…! だけどもな、簡単には逝かせねぇぜ! 1日でも長く…その命全うせねば…一緒の所へは送らねぇと…言っとけ!頼むな…一生」 「康太…」 一生は…信じられずに…康太を見た そして…その瞳から…涙を溢れさせた 「綾香は…バカだな…。 何処まで行っても…慎一の母に詫びて… その命を終わらせようと罪を被る… 一生、慎一、お前等の母親だ その命から目を反らすな…最期まで看取れ 飛鳥井の事は…心配するな…解ったな!」 康太が謂うと一生は 「嫌だ!……俺は…お前と共に在る…と、決めたんだ…!」と叫んだ 「違えるな一生!オレの頼みを聞いただろ?」 「お前は…ひでぇ奴だ… お前と共に…それしか願ってねぇのに…」 「一生、緑川牧場は潰す!良いか?」 「構わねぇ…お前が金を出した牧場だ…」 「その代わり…此処から一時間位の場所に…ファームを作る…厩舎専用の牧場を作る! サラブレッドを作るんだ…その牧場で… 今の牧場は…綾香の想いが…強すぎる…終焉だ…綾香と共に…あの地の牧場は終わりを告げる…それが定め…違えは出来ねぇ」 「俺は…構わねぇ…あの地に母親程の想いはねぇ… それより…俺は…あの地が嫌いだ…」 「一生…母を連れて…ホスピスへ行け 瑛兄が病院の手筈をしてくれる…連れて行け」 「康太…俺は…悠太の卒業式に出たい!」 「我が儘言うな!」 一生は康太を抱き締め…号泣した… 瑛太が…「式が終わったら…お連れすれば良いですよ…式が終わる時間に中等部の校門の前にいます!そしたら来なさい!康太は…ダメでしたね」 と妥協案を出した 康太は果てを見て 「オレが行けば…確実に…綾香の死は早まる オレは人の歪みを直す存在…その歪み…時空ごと直して正す…オレは行けねぇよ!」と呟いた 「ならば、一生…10時半に中等部の校門の前にいらっしゃい。良いですね? 私も康太にねだられたら、その願い寸分違わず聞いてやりたいのです…!頼みますね!」 康太は…瑛太の首に…抱き着いた 「瑛兄…すまねぇ…オレが動けば…その命…磨り減らせる……頼むな…」 瑛太は康太の髪に指を差し込んで…頭を撫でた 「お前の頼みなら…この命を懸けたって完遂してやるさ…だから悩まなくて良い… お前が伊織と仲良く…幸せにしてるだけで…兄はそれを守る為に生きて行けるのです」 「瑛兄…ありがと」 「悠太の卒業式を頼みますね…お前が出るな…と言うから…出席も出来ません 高等部の卒業式には家族揃って…出てあげたいのですが…どうですか?」 「おう!悠太の高等部の入学式には全員で…出席するかんな! 今回までは…オレが出る…オレは悠太の保護者だからな!」 「お前より…デカいのに…ね」 「瑛兄!それを言うかぁ!」 康太は頭に来て、瑛太の頭を…自分の頭で…ゴツンとぶつけた 「痛い…兄にそんな事やりますか!」 「瑛兄なんか嫌いだ…オレは悠太の兄なのによぉ…」 康太は拗ねて…そっぽを向いた 瑛太は立ち上がると…拗ねた康太を抱き締めた 「お前は誰よりも立派な悠太の兄ですよ! 少し…ちぃさぃのは…悠太の発育が良すぎって事で…許しなさい…」 「瑛兄…嫌いだ…」 「康太…嫌わないで…ね? ならゲーム買ってあげます」 「本当?オレ欲しいのあんだわ!」 康太の目論見が解って…榊原は康太を回収した 「義兄さん…康太を甘やかさない!」 「良いじゃないですか…」 「ダメですからね!康太!」 「なら、三木にねだる…」 「……解りました…僕が買ってあげます」 「本当にか!やっぱ伊織に買って貰うかんな!」 康太は…落ち込む一生に罪悪感も引け目も感じさせたくなくて…瑛太に甘えていたのだ 瑛太は…そんな康太の気持ちを知っていて…甘やかした 榊原に甘えてベッドの中でねだったモノを…瑛太に買わせようと…榊原への当て付けもあった 結局…折れるしかなかった… 「もう…本当に君は…ベッドの中で…上手にねだりなさいと言ったのに…」 「ねだったやん!でもダメ出し出したのお前やん!」 「なら、今晩…ねだって下さいね! 上手にねだって下さいね!そしたら買ってあげます! 義兄さんも…康太の今回欲しいのを聞いてから…約束しなさい…。 今回の要求は…500万は越えますよ…」 榊原が言うと……瑛太は…たらーっとなった 瑛太は…康太に何が欲しいのか聞いた 「オレの寝室の隣の部屋に…ホストコンピューターを会社から半分持って来ようと思ってな! 安く見積もっても500万は下らない… まずは…それを置いて…その後…更に500万を注ぎ込んで…コンピュータールームを作る その設備投資に…総て合わせて1000万円は下らない。」 「飛鳥井建設に置けば…会社の設備投資で…経費で多少引けるでしょ?」 「会社の中に…頭脳を全部置く…会社は滅多といねぇよ? 頭を潰されたら…会社は麻痺だぜ サイバーテロの標的にされたら鯖落ちだぜ そしたら会社は制御不能になる…だから、システムの分散化…するんだろ?」 「なら、私がお金を払いましょう! 京香、良いですね?私の小遣いの預貯金と有価証券を売り払い現金にすれば…それ位は捻出、出来ますよね?」 「大丈夫だ、足りなくば、康太が残してくれた真壁の土地を売り飛ばせば良い… あんなの残しておく価値もない…売ってくれ」と京香はさらっと言った 話が大きくなりそうで…榊原は止めた 「京香、真壁の土地はな、使う時があんだよ! あの土地は特別な土地なんだ…お前の子供が産まれたら…飛鳥井はあの土地に…ビルを建てる この家の…新築までそこで住み…後は賃貸にする この家も…ビルにする…隼人が建ててくれるからな、新築にする!」と康太の話を…聞いていて…頭痛を覚えた 「まぁ…伊織はケチだからな…力哉に頼んであるから…もう良い。 その為に…力哉は忙しく動いていた訳だ」 「康太…僕は買わないとは言ってませんでしたよ…」 「なら、買ってくれ…最新のPCをな♪ ノートじゃなくデスクトップをな」 康太が言うと…瑛太が 「今晩、話し合いましょう! お金の事なら…私達も用意は出来る 足りなくば、父さんや母さんにも出させれば良いでしょ? ベッドでねだれる金額でないでしょ?」 康太は舌を出し…笑った 「瑛兄…でもな、ねだるのはベッドの中と決まってるやん! 伊織は…ケチだからな…サービスしまくらないと…買ってくんねぇんだよ!」 「康太…兄なら…サービスなしで、買ってあげますよ…」 「瑛兄は、京香にサービスされとけよ!」と康太は笑った 瑛太は…肩を竦めた 一生の話は…何処へやら…それが目的だったのだろう… 康太は立ち上がると…嗤った 「伊織、白のスーツを着せてくれ!」 「解りました!では着替えに行きますか 一生、君も着替えて悠太の卒業式に行きますよ! その後…君は康太の頼みを寸分違わず完遂なさい!解りましたね!」 「伊織…解ってんよ…」と一生は榊原に抱き着いた 優しすぎる…榊原の想いに…一生は泣いた 寝室に着替えに行くと…榊原は康太に白のスーツを着せた 榊原は黒の礼服を…着た 「康太…僕は買わないとは言ってませんでしたよ?」 「買ってやると言ってたよな…」 「君が…メイド服着て…サービスしてくれたので…買うつもりでしたよ? メイドさんの服の下は…はしたなく縛られてて…燃えましたね… あんなにサービスしてくれた…おねだりを…ケチったりはしませんよ?」 「でもな…あぁ言わねぇとな…一生が気にする…だからついな…」 「解ってますよ…君は誰よりも…一生を大切にしてますからね…」 「お前以上…じゃねぇけどな… アイツは盟友だかんな…共に闘ってくれた 赤い龍の頃も…今も…それは変わらねぇ… アイツはオレの為なら…オレの前を行き…その命…オレの為に投げ出す… そんなアイツだからな…出来る事はしてやりてぇ… ホスピスは金がかかるからな…気にさせねぇ為に…ホストコンピューターを移す金を…瑛兄に払わせとこうと…思った…」 やっぱり……一生が負担に思わない為に… 榊原は康太を抱き締めた 「僕の預貯金も…君の預貯金もかなり有ります…使ってしまっても…また働けば…貯まります…と、言ったでしょ?」 「ん。伊織…愛してる… そう言う優しい事が、さらっと出来るお前に…惚れてて良かったと…思う」 「僕も愛してますよ。 君が大切にするものなら…僕も大切にしたい… 君と僕とは共に在ると誓ったでしょ!」 「伊織…」 「さぁ、奥さん、行きますよ! ビデオも持ちましたからね…弟の晴れ姿を撮ってあげます」 榊原は康太を促し…荷物を持つ 一回に降りると…皆支度が出来ていた 「待たせたな!行くぜ! 貴史を呼びに行かねぇとな! 歩きで間に合うだろ?」 康太は玄関へと向かい…外へと出ると…兵藤が迎えに来る所だった 「遅せぇよ!迎えに来ちまった!」 「悪りぃ…一生の母ちゃんが病気なのに…病院へ行かずに…卒業式に出ると抜かすからな…」 兵藤は「病院?」と聞いた 「ホスピスへ連れて行けと言うのによぉ…」 その言葉だけで…病気の重さを伺い知る… 「何処の病院へ入れるんだよ?」 「この家から近いと言えば…国立癌センターだかんな…そこ」 「だな、でもあの病院紹介状がねぇと入院出来ねぇぞ…」 「嘘…知らんかったな…まぁ瑛兄が何とかすんだろ?」 「美緒が癌予防学会の理事してるから…口聞いてやろうか?」 「頼めるか?」 「おう!美緒に電話してみるわ」 兵藤は母親に電話を入れた 一生の事を話したら…美緒は動いてやると…申し出てくれた そして何時頃行くのか…聞いた 「何時頃行くんだよ?」 「式が終わったら直ぐな。 10時半に中等部の校門の前に瑛太が来る オレは行けねぇからな…瑛兄に頼んだ」 「なら11時頃には着けるな」 兵藤は母親に11時頃には行けると告げた すると、美緒は病院で待っているから連れてこい!と申し出てくれた 「悪いな…貴史…。」 「俺も一生や慎一と瑛太さんの車に乗って…行くとするよ! お前はダメなんだよな?確か…」 「そう…オレが行けば…その命…確実に縮む」 「なら、俺がお前に変わって見届けてやるよ」 「悪いな…」 「なぁに貸しは返さねぇとな」と兵藤は笑った 「お前の愛車…オレが手筈を整えて輸入してやったんだもんな」 「あ~それ言うか…」 「言う!他にも沢山有るぜ!」 と言い康太はツラツラと貸しを述べた 「もう良いよ!そのうち返してやるからよ!」 康太は笑った 「一生、なら、お前も貴史に貸しを返さねぇとな! その体で…返してやれ!」 「解ってんよ!兵藤昭一郎を何がなんでも当選させる! その為に…動いて返してやるよ! 体で返せと言われてもな…抱かれる気ねぇしな…貴史だって…俺を抱くのも嫌だろ!」と一生は笑った 「一生と寝るのは…勘弁…。 性欲も…わかねぇよ…お前じゃあ… 逆もお断りだ…俺は抱かれるのは趣味じゃねぇ…」 一生は「康太ならわくのにな…」とボソッと言った 「言うな!俺は男は…止めとく事にしたんだよ!日陰に…置くのは性には合わねぇ」 兵藤の想いが…痛かった 修学館 桜林学園の中等部の校門を潜ると そこには清家や楡崎…前期生徒会や…生徒の姿があった そして、何故か…藤森もいた 「どうしたんだよ?お前達…」 康太が聞くと…全員康太の容姿に…唖然となった 清家が「貴方…その姿…」と声をかける 「訳ありだ…染め直すには髪が痛みすぎだと…伊織が言ったからな…少しはこのままだ」 康太が言うと……皆…黙った 榊原は「それより…貴方達…どうなさったんですか?」と問い掛けた 「康太の弟が…卒業式なら、お前達が来ると想ってな…会いに来た!」 「なら皆で会場に入るしかねぇじゃんか!」 康太は笑って言うと…歩き出した 体育館に入り、式を待つ 大量の…来賓に…在校生は…椅子を増やしたり…と、大変だった その時…地響きがして佐野春彦が…飛んできた 理事長の神楽四季も…走って康太に飛び付いた 「逢いたがったです!」と理事長に抱き着かれ 「おう!康太、逢いたかったぞ!」と気難しい科学教師が康太に飛び付いていた 「彦ちゃん…四季、オレは弟の晴れ姿を見に来たんだ…邪魔すんな!」 康太が言うと…佐野は 「こんなに沢山引き連れて?」と揶揄した 「沢山は…校門の所にいたんだよ!」と康太はボヤいた 「おめぇの弟…持ち直したな… 一時は…潰れるかと…想ったが…持ち直した 流石だな…お前の力は…」 「彦ちゃん…悠太の努力だ…」 「4月から俺は高等部の教師になる! おめぇの弟は…俺が見張っててやるよ… 後6年は高等部で、そしたら小等部の教師になって定年だ…余生は妻と二人で仲良く過ごす…」 「彦ちゃん…」 「お前の弟のクラスの担任は俺だ! さてと、お前に恥じない式をやるとするか」 神楽と佐野は笑いながら…壇上の上に…上がって行った 「卒業生入場」のかけ声で…卒業生が入ってくる その時…康太の肩がポンッと叩かれた 振り返ると…戸浪海里だった 髪型を…康太の言うままに変えて…爽やかに康太を見て笑っていた 榊原は席を戸浪に譲る 一つずつずれてもらい…戸浪は康太の横に座った 「凄いね…悠太の卒業式は……」 ゾロゾロ…と引き連れて入って来た時から…目立ちまくっていた 「入学式は…地味に行きてぇな…」と康太が呟く 戸浪は笑っていた 卒業生が入場して来る 葛西は…「康太さんいる。凄い…容姿になられて…でも似合っておいでだ…」と康太に目が釘付けとなっていた 悠太は…兄を見る… 沢山の…人間が…康太の回りにいた わざわざ…康太が来ると思い…やって来たのだ そうそうたる顔ぶれに…悠太は溜め息を着いた… 兵藤貴史が…いるだけで…格別なのに…康太に榊原に清家も顔を揃えて…高等部の藤森までいた 式も後半に差し掛かり…クライマックスを迎えるその時… 神楽四季から 「来賓の方の…ご挨拶を特別…拝聴戴きたく想います…飛鳥井康太…御願いします!」とフラれて…康太は面食らった 「打ち合わせもしてねぇのに?」 「なんなら、兵藤貴史とやりますか?」 康太は兵藤の顔を見た 「やる?」 「良いぜ!やってやる!」と兵藤は笑って立ち上がった そして、ステージに立つと…深々と頭を下げた 康太「ご卒業おめでとう御座います!」 兵藤「君達は高等部へ上がり高校生になる」 康太「高校時代と言うのは一生に一度しか味わえない時間の集まりだ」 兵藤「生涯の友を探せ」 康太「一分一秒を…大切に過ごせ」 兵藤「高校を卒業した俺が言えるのは…生涯一度の楽しい時間だった」 康太「やり直しの効かねぇ…時間だった」 兵藤「あの時…あの場所にいられて、俺は最高に幸せだった」 康太「皆と過ごせた…時間はオレの宝だ」 兵藤「そんな高校生活を送ってくれ」 康太「皆で力を合わせれば…出来ねぇ事はねぇ」 兵藤「ご卒業おめでとう御座います!」 康太「今日の日が…始まりの日となる!」 兵藤「悔いのない日々を送れ!」 二人はそう言い…深々と頭を下げた 卒業生は予想もしなかったサプライズに涙した 啜り泣く…声が…会場に響いた… 佐野は「飛鳥井康太、兵藤貴史!協力に感謝します!」と労いの言葉をかけた 格式ばった式に…花を添えたいと…神楽は思ったのだろう… 「兵藤会長!康太さん!ありがとうございました!」 と、何処からか声がかかると… 全員立ち上がって…康太達に頭を下げた 康太は笑って片手をあげた… 滞りなく式が終わると…悠太は康太に飛び付いてきた 「康兄…ありがとう… 兵藤君もありがとう…」 自分より小さな兄に…腰を屈めて…抱き着く様は…笑えるかも… 悠太は榊原から貰った腕時計を嵌めていた 榊原はそんな悠太を優しく見詰めていた 記念写真も…全員で写り… 康太は… 「全員分の写真は買うからよぉ…飛鳥井に取りに来い…。 一生がまたTwitterで呟くからよぉ…そしたら見て飛鳥井に来い! 用がなくても…たまには来いよ!」 と、笑って…別れを告げた 式が終わり…校門に行くと瑛太が待っていた 一生と、慎一…そして兵藤は瑛太の車に乗って…綾香を迎えに行った 康太は榊原と聡一郎と隼人と歩いて帰る事にした その途中…戸浪が…康太の前に車を停めた 「田代の車なら…乗れるので乗って行きませんか? あれ?一生と慎一は?」 「一生の母親を近くのホスピスに入れる為に…病院へ行った」 ホスピス……入れるのは末期癌の患者… 戸浪は…眉を顰めた

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