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第24話 代価

「ちょうど若旦那に…オレの願いを聞いて貰いたいと思ってた所だ…聞いてもらおう… 万里と千里は?」 「妻が乗せて帰りました」 「そうか…なら、飛鳥井に来てくれ 若旦那に…飛鳥井康太…命を懸けた話がある」 「解りました!」 戸浪は秘書に飛鳥井の家まで乗せて行く様に…頼んだ… 飛鳥井の家に着くと…康太は戸浪と三階の自分のリビングに招き入れた 「下の応接室だと、邪魔が入るかんな…」 「このお部屋は?」 「飛鳥井家真贋の部屋…即ちオレと伊織の部屋だ」 「貴方のプライベートルームにお邪魔出来るとは… では、私に頼みと言う話を聞きましょうか?」 「少し待て…伊織がお茶を淹れる」 榊原が戸浪や秘書の為にお茶を淹れる 榊原が戸浪と秘書の為にお茶を淹れ、二人の前に茶菓子と共に置いた 「頼みと言うのは…トナミ海運、大和にある営業所と倉庫をくれねぇか? オレはあの土地が…欲しい…あの莫大な面積の土地が欲しい…頼めねぇか…」 康太は単刀直入に申し出た 戸浪は…思案した… 「貴方が望めば…差し上げたいのですか… 倉庫を無くす訳にはいきません 代替えの土地が出来るまで待っていただけませんか? 待っていただけるのでしたら… 譲渡と言うカタチで貴方にお譲り致します!」 「代替えの土地があれば譲ってくれるのか?」 「はい。我が社は…海運…即ち物流ですので…倉庫は無くせません! ですので……はい、解りました!と言う訳には参りません… 貴方に仙台と青森の倉庫を調達して戴いたので…何としても貴方の意に添いたい… 暫く…待っていただけませんか?」 「代替えの土地をやると言ったら?」 「え?代替えの土地…?」 「そう。代替えの土地をやるから…大和の土地と倉庫の土地を…くれ!」 「解りました!飲みます…!」 「緑川の…牧場をくれてやる! だから…大和の事務所と倉庫をくれ あの牧場は…飛鳥井康太が所有している… ついでに…牧場の裏の裏山は…一生が所有している 因みに…あの裏山…高速が通るぞ… 海運の名に相応しい…土地になる… ダメなら…あの牧場を他に売るだけだ その時は…文句は聞かねぇからな…」 「飲みますと…申しませんでしたか? 緑川牧場は…元々…目に着けてた土地です 大和の土地を処分して…行きたいと…思っていたのです!」 「なら交渉成立だな!」 康太は戸浪を射抜き…嗤った 「大和の土地は…何になさる気なのですか?」 「一生と慎一の為の…厩舎とファームを造る… その厩舎からサラブレッドを輩出する あの兄弟の作りし馬を飛鳥井のパドックに入れる… その為に…広大な土地が欲しい…」 「ならば…そのファームと厩舎を造る手助け…私にもさせて下さい 一生所有の裏山…私が相場の値で購入します それで厩舎とファームを建設出来ませんか?」 「良いのかよ?」 「私にも損な話では有りません… 貴方は私に…莫大な利益を与えて下さる 乗り損ねたら…損失の方が大きいので乗らせて下さい!」 「ありがとう…無体な話だと言う自覚はある…だがな…一生をあの土地から切り離してやりたかった… あの土地の解体は…緑川綾香の死後に…頼む 綾香が亡き後…あの土地はオレの手によって浄化する…そして利益と繁栄を呼び込む様に結界を張ってやる…」 康太の一生に対する想いがひしひしと伝わって来る… 緑川一生の為に…資産を投げ売り…牧場を救った…あの日から…康太は変わりなく… 一生を守り…大切に…している その絆は揺るぎない 羨ましい程の…想いに満ち溢れていた 戸浪はホスピスに入る綾香の現状を口にした 「綾香さんは…もう‥‥」 「長くは…ない。その命…何時費えても…おかしくはない… 緑川慎吾と綾香は…不倫の果てに結ばれた…夫婦なんだよ 出逢って愛し合った時…慎吾には妻がいた その妻と愛人が…時を同じくして妊娠し…数ヵ月遅れの同級生の子供を産んだ それが一生と慎一だ… 慎吾の母親は…正妻で、一生の母親が愛人だった… 綾香は…罪を感じて…慎一の母親に詫びて…死ぬつもりだった 子宮癌が見付かって…手術したのに…転移して…放置していた… そして倒れて…一生が行った時には…余命幾ばくもない……状態だった 今月一杯…生きれるか…解らねぇな…」 戸浪は…康太の話を…静に聞いていた 「綾香が死ねば…一生は天涯孤独になる 慎一は…既に…天涯孤独だ… 罪ばかり…緑川慎吾は作った… そして……一生は身内を亡くす… 唯一…血の繋がりのある人間は…緑川慎一… だけとなる…皮肉だな」 「お二人は…仲がよろしいのですよね」 「……互いを知らずに育ったからな…最初は反発していた… だがな、慎一がオレに仕えてくれる様になって…互いを認め今が在る… 今じゃオレに何かあれば…飛んで来る兄弟になった…」 康太はクスッと笑った そこまでになるには…どれ程の葛藤があったのか…… それを纏め上げて…適材適所…配置するのは…飛鳥井康太だからこそ…出来る業なのだろう… 「綾香が…黄泉に渡った後に…牧場を解体する… 更地になった地に…オレが降り立ち…舞ってやる…特別サービスだ 中々…オレは舞わねぇかんな…」 「舞う…?それは…?」 「奉納の舞だ…天皇家に…奉納する舞だ… 無病息災…安全祈願…そして…東西南北…結界を張る…舞だ…。」 そんな大層な舞を…しても大丈夫なのか… 「サービス良すぎでは…?」 「……一生の存在は…それに値する… オレは一生や聡一郎、隼人や慎一、力哉の為なら…してやれる事はしてやる… 伴侶には…この命…くれてやる覚悟は出来てるんですよ…」 「羨ましい…絆ですね…」 「若旦那…オレはお前の為にも…命を懸けてやるぜ! 利益も見返りも求めず…純粋に…オレはお前が好きだ… だから、出来る事ならしてやりてぇ…」 「康太…」 戸浪は…純粋に…涙を流した… 田代は…信じられない想いで…戸浪を見ていた 昔の戸浪なら…有り得なかった…感情が…有ると言うのか? 「若旦那…共に在ろう… 共に行こう…行ける所まで!」 康太は手を差し出した 戸浪はその手を取り…固く手を握り合った 「貴方と共に在りたいと想います」 戸浪は康太を見詰めた… 康太は笑った… 子供の様な純粋な笑顔を…戸浪に向けた 戸浪は…康太のその純粋な、子供の様な笑顔は… 信頼した人間にしか向けないのを…最近知った 「康太…綾香が…1日でも長く…生きられる事を…お祈りしております…」 「一生が聞いたら…その言葉…喜ぶと想う」 「私は…既に…父親も母親も早くに他界して祖父に育てられました… 私の父も…罪ばかり残して…逝きました 力哉が今…貴方の元で…生き生きと仕事をしていて…本当に私は…救われました… 腹違いの弟を…愛せなかった… 立場や金さえ与えて…育てなかったのを…今の力哉を見ていて痛感します… そう思えるのも…貴方がいればこそ… あのまま…力哉を飼い殺しせずに良かったと想います… 裁かれる為に…自分に罠を張る力哉を…見殺しにしなくて良かった… 私も…罪を作りましたが…貴方が…救って下さった…」 「定めだよ…若旦那 オレはお前を支えて…高みを上る お前には支えがなかった お前は何時も一人で立って堪えていた オレはそんなお前の支えになってやる お前を支えてお前を導く… 孤高の狼を…飼い犬にする気はねぇよ! でもな…心に一本…支えがねぇとな崩れると…脆い だからオレはお前の支えになってやろうと…決めた 孤高の狼だって…休息は必要だ…オレの所に羽根を休めに来い… オレはお前の総てを受け止めてやんぜ! お前の休息の場所は此処しかねぇだろ? ここで休んで…戦地に出向けば良い… 心を…裸にしろ…装うな…お前は総てを解き放ち…オレの前にいろ!」 康太はそう言い…戸浪の頬に手を当てた 「無理を続ければ…その心…崩壊するぜ…」 「康太…」 「オレに見えてねぇと…想ったか?」 戸浪は首をふった 「ならば…オレに甘えろ! オレは誰よりもお前を甘やかしてやるぜ!」 戸浪の顎を撫でる指は…猫でも撫でてるかの様に…優しかった 「貴方にかかれば…私は…赤子も同然ですね」 「そうか?体は18だが…意識はかなりの年寄りだからな…」と康太は笑った 「若旦那…何故…この部屋に連れてきたか解るか?」 「明日…部屋をとると言うのを…前倒しですか?」 「そう。明日は…オレは千歳に行かねぇとな…いけねぇからな」 「千歳…?何か有りますか…」 「飛鳥井建設の…株の暴落だ…オレは北の相場師の神取羅刹に逢う! 今朝アポイントは取った…オレは朝一番の飛行機に乗って…千歳に向かい…夜までには東京へ帰ってくる そして、参考人招致だ… 盛田は…参考人招致前に…飛鳥井に徹底的なダメージを与えたい…みてぇだな 飛鳥井の株主に…売ることを勧めて…売らせてる ストップ安になる前に…介入させる オレの資産を注ぎ込んで…買い占めさせる そうすれば…名実共に…飛鳥井建設の筆頭株主だ。良い機会だったと…想う」 戸浪はどんな不利な状況にあっても…前向きな考えをする…康太の手腕に…感銘した 「微力ながら…私も協力致します… 明日は予定が入っておりません…! 私も千歳にお連れ下さい!」 「行くのか?俺と共に?」 「はい!貴方と共に在りたいと想います」 「ならば…オレの血をかっ食らって…共に寝るとするか…夜中に起きて…朝一番の飛行機に乗る……」 戸浪は頷いた 「なら腹ごしらえだな…飯を食いに行くか!」 康太は立ち上がると 「若旦那、着替えてくるから待っててくれ!」 と戸浪に頼んだ 「構いませんよ…お待ちしております」 康太は寝室に飛び込むと、榊原も後を追った そして、ラフな私服に着替えさせ、自分も着替えた 着替えが終えると…康太は戸浪の所へ行った 戸浪と田代と一緒に階下に降りると…一生達が…帰ってきた 「一生、慎一、綾香は…入院したか?」 康太が声をかけると…一生は振り返った 「若旦那…?何故?」 「オレは若旦那と飯食いに行くけど、お前はどうするよ?」 「行く!」 一生が答えると慎一も「行きます!」と答えた 「ならば、隼人と聡一郎を呼んでこい…」 康太が言うと、慎一が 「聡一郎は、今、会社へ行きましたよ? 栗田が迎えに来て、力哉と共に…向かいました」 「そうか…栗田は動いたか… なら、腹ごしらえだな…!」 康太は駐車場へ向かい…戸浪の秘書の車に乗り込んだ 戸浪は田代に和食の上手い店に連れて行きなさい…と言った すると、田代は戸浪の行き付けの和食の店へと向かった 店内に入ると…戸浪は 「此処の店の和食フルコースを食べると良いですよ。 女将…全員分…和食のフルコースをお願いします」 と、注文した 「食ったら…オレ等は…三階の部屋に籠る 田代は戸浪の着替えを取りに行ったら、客間に泊まると良い」 田代は「解りました…誰か着いて来て貰えませんか?帰ってくる時に…玄関を開けて頂きたいので…お願いします!」 と言うと慎一が… 「俺が一緒に行きます!」申し出てくれた 「田代…夜中の3時に家を出る… 寝過ごすなよ? 若旦那の着替えは三階の部屋に鍵をかけねぇから勝手に入れてけよ!」 「解りました。アラームを掛けときます」 一生は康太と田代の会話に…疑問を抱いた 「夜中の3時に…起きてどこへ行く気だ?」 と、問い掛けた 「新千歳空港…遊びに行く訳じゃねぇぞ 用があるから行く…そして用が済めば…帰って翌日は参考人招致だ……強硬スケジュールだ…でも行かねぇとな…」 「俺も行く!」 「一生…北海道から…何が有っても…間に合わねぇぞ」 「覚悟の上だ…お袋も…そんな覚悟とっくに着けてる」 康太は一生を、殴った 「強がるな…おめぇらしくねぇ…」 「康太…」 「綾香といろ…着いていてやれ…」 「俺はお前の…懐刀じゃねぇのかよ! 懐刀を忘れて行くんじゃねぇよ!」 一生は言い切った 「一生…んとにお前は殴り足りねぇ位に頑固だな!」 「旦那程じゃねぇよ!」 榊原は苦笑した 「一生が行くのでしたら…俺が綾香を見ております!」 と慎一が申し出た 「大人しく…留守番出来るのかよ?」 慎一は…グッと詰まった 「無理です…置いて行かれたら…心配で… それどころじゃないかも…」 「なら行け!オレは社運をかけてんだ! オレは負けねぇぜ!一生…慎一、絶対に負けねぇ!」 「おう!おめぇが負ける筈ねぇ!」 慎一は頷いていた 康太は笑った… 和食定食を戸浪に奢って貰って… 康太達は…飛鳥井の家に帰って行った 三階の寝室に戻ると、康太は戸浪をベッドに入れた そして服を脱ぐと…戸浪の服も脱がせた 下着一枚になり、康太は…戸浪を見た 「血が交われば…見えねぇ明日が見えて来る お前の腕を切る…」 康太は…戸浪の腕を…切り着けた 「っ…ぅ…」 痛みが…戸浪を襲う 戸浪が血を流すと…康太も腕を切った 傷口を合わせ…血を混ぜた 流れ出る血を…康太は…舐めた 「お前の血と…オレの血が交われば… 原始の血が入る…どうなるかは…解らねぇけどな…」 康太は…流れ出る交わった血を…口に含むと… 戸浪に接吻した 血生臭い…鉄臭い…味が…口腔に広がる 蒸せ返る…血の臭いに…戸浪は目眩を覚えた 康太が舐めると…あれ程…流れていた血が止まった 榊原が洗面所に案内すると…戸浪は…うがいをした 康太は…ベッドの上で嗤っていた 「オレの血と…お前の血が混じって…体内に吸収された…解らねぇか?」 「え?」 「そのうち解る。」 康太はそう言うと…戸浪をベッドに引き入れた 「寝るぞ…優しく寝かしてやるから寝ろ!」 「え…本当に?」 戸浪は躊躇した 「あの……私は…妻とも…同じベッドでは寝ません…」 「気にするな…」 康太は戸浪の、手を引く そしてベッドに寝ると…康太と榊原で…挟んで…眠りに着いた 最初は…他人とは…眠れないと…想っていたが… 何時しか…康太の体温と榊原の体温に癒され…戸浪は眠りに落ちた 深く沈み込むような…眠りに着いていた 夢さえ見ない… 安らぎの眠りに…戸浪は落ちていた 夜中に…田代が着替えの用意をしに寝室に入った時に…戸浪の寝顔を見て…驚いた… 田代が入ってきても…起きないし… 安心しきった顔をして眠りに着いていたから… この人の…こんな安心した顔……初めて見る 田代は…飛鳥井康太のもたらすマジックを…身をもって教えられた事となる… 「若旦那…若旦那…起きろ…」 頬を軽く叩かれて…戸浪は目を醒ました 「あれ?……??」 寝惚けた顔が可愛かった 康太は戸浪にキスをした 「え?康太?……康太!すみません… 寝惚けてました…」 榊原はドライヤーで戸浪の寝癖を直した 康太は笑って…田代が用意した着替えのスーツを…戸浪に着せた 「あの…自分で着れます…」 「気にするな…たまには甘えてろ!」 康太は笑って、戸浪に服を着せて行く ネクタイは榊原が絞めてやり…身なりを整えて行く 「すみません…熟睡…してました」 こんな事は…初めてだった… 「たまには、泊まりに来い…甘やかしてやるからな…」 康太が言うと、田代も 「社長…夜中に…着替えを持って来た時に…子供の様に安心しきって寝ておいででしたよ? こんなに無防備な社長は…長く秘書をやらさせて戴いてますが…初めてです たまには宜しいかと想います…社長は…気を張りすぎて…おいでですからね」 と心中を吐露した 戸浪は…お恥ずかしい…と、恐縮しきりだった 「たまには戦士も寝ねぇとな、闘えなくなんぜ! 心底…寝て、明日に鋭気を蓄える でないと365日…フル活動なんざ命をすり減らしてるようなもんだ」 康太の言いたい事は解る… 戸浪は…妻や家族にも気を許してはいない 素の自分でいる時間がない… 眠りに着いても…誰かが部屋に入れば…飛び起きる… 「時々…ご迷惑でなければ…泊まりに来ます」 「良いぜ!美味しいもんを奢ってくれれば…添い寝してやんよ!」 康太は一方的に与えるだけの…引け目は絶対に抱かせない 奢ってくれれば…添い寝してやる… 持ちつ持たれつ…負担に感じる…想いは抱かせない 戸浪は…康太と榊原にしたくてして貰い、立ち上がった 康太も榊原にスーツを着せて貰い…支度が済むと…榊原が着替えを始めた 戸浪は榊原のネクタイを結んでやった 「すみません…」 「お返しですよ!」 「照れ臭いですね…これって…」 「そうでしょ?」 戸浪は笑った 「田代も味わいたいか?」 と、戸浪がお茶目に言うと、田代は…辞退した 強引にネクタイを掴むと…戸浪は田代のネクタイを結んでやった 「社長…勿体ない…」 「お前…妻に結んで貰うんですか?」 「まさか…そんな新婚みたいな事しませんよ」 「子供は作るのに…?」 田代は…五人の子持ち…だった 「社長ぉ~」と田代が情けない声を出す 康太は「五人の子持ちか…すげぇな…パパやん」と揶揄した 「康太……瑛太んとこも…二人目…妊娠してるでしょ…?」 と、田代が…康太に言う 「瑛兄ん所の…一番上は…死んだよ 二人目の子供は…俺が認知してオレの子にした 三人目は…今腹の中…だ。 だから……田代ん所の様に…幸せじゃねぇかもな…」 田代は…言葉を失った… 「知りませんで…」と田代が謝った 「言ってねぇからな…。なぁ瑛兄」 康太は…駆け寄って瑛太に飛び付いた 「瑛兄、こんな夜中に起きて…寝不足になったら…佐伯に怒られっぞ!」 瑛太は康太の頬にキスして…愛しそうに抱き締めた 「君が夜中に起きるって一生が言ってましたからね… ご挨拶が遅れました…戸浪さん…康太と一緒に?」 「そうです!無理言って着いて行かさせて貰います」 瑛太は…そうですか。と優しく笑った 「伊織、頼みますね…康太は元気になった分…危ないですからね…」とボヤいた 田代は…「瑛太と伊織君は…似てるよな…」と本日二回目の…ボケ発言をかました 「瑛兄と伊織は血が繋がってるからな… 伊織の父親の榊 清四郎と、飛鳥井源右衛門は…親子だからな… 似ていても不思議じゃねぇんだよ!」と康太は説明した 戸浪は…田代!と怒鳴った! 人様の家庭の内情を聞いてどうするのですか! と、戸浪は…怒りを覚えていた 田代は…すみません…と平謝りで謝った 康太は戸浪と田代に 「気にすんな…田代は瑛兄と学友だろ? 同情して欲しくねぇからな…敢えて言った また酒を飲みに行け…4月から彦ちゃんは高等部の教師になんだぜ…誘って…飲みに行け」 田代は「解りました!瑛太、また飲もうな!」と瑛太に声をかけた 「瑛兄…株価の暴落で…今、帰って来たんだろ? オレはその為に千歳に行くんだよ!」 「康太…」 「ストップ安になる前に手を打つ! オレは資産を投入する…それで邪魔な株主を一掃して…オレが筆頭株主に収まる」 「異存などありません!」 「瑛兄は…動揺する事なく…構えてろよ!」 「やってみます!」 「じゃあな瑛兄、オレは行く! 今日の夜には帰ってくる! そして明日は参考人招致だ! 打つ手は総て打って…望んでやんよ!」 康太は不敵に笑った 康太は瑛太の腕から降りると…榊原に行くぞ!と声をかけた 榊原は戸締まりを確認して…寝室に鍵をかけた 康太はもう、振り返る事なく…歩き出した 玄関まで行くと…、力哉が待ち構えていた ついでに、一生と慎一と聡一郎と隼人が待っていた 「増えとるやん…」 思わず康太は呟いた 「僕を置いて行くなんて酷いです!」 聡一郎が訴えた 「オレ様も行くのだ…邪魔はしない… 一人は…嫌なのだ…置いて行くな…」 隼人が…寂しげに呟くと…康太は行くぞ!と声をかけた 戸浪の車に乗り込むと力哉は全員分の飛行機のチケットを渡した 「慎一、隼人を頼むな…」 「解ってます…」 空港へ向かう…車の中で…康太は目を閉じていた…

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