25 / 72
第25話 極寒の地へ
朝早くの空港は静まり返っていた
搭乗時間まで…時間を潰し…
時間が来たら搭乗手続きをして…飛行機へ
北海道まで…寝てすごし…
新千歳空港へ到着…飛行機を降りた
空港に降り立つと…まだまだ寒くて…
空港の外に出ると…
康太は黒塗りの…ワゴンに手をあげた
「悪かったな…羅刹…迎えに越させて」
車の前にいた人間に声をかける
羅刹と呼ばれた人間は…腰まで長い髪を垂らして…
年齢も性別も解らぬ姿をして…立っていた
「お久し振りです。車へどうぞ!」
どうやら…知り合いみたいだが…
康太は車に乗り込んだ
榊原や一生達…戸浪に田代も乗り込んだ
羅刹と呼ばれた人間は…
車に乗り込むと…運転を始めた
車を走らせて一時間は経っても…中々到着はせず
車は…何処までも続く一本道を走った
そして康太達は…家など建ってなさそうな…
山奥へと…走って行った
山奥なのに…立派な門構えの屋敷の前に車を止めた
羅刹は車から降りると、康太が車を降りるのを待って…抱き上げると家へと入っていった
仕方なく…榊原や一生達…戸浪達も…後へと続いて…屋敷の中に入っていった
玄関で靴を脱いで…通されたのは…
重厚なソファーの置いてある…応接室だった
羅刹は…康太を抱き締めたまま…ソファーに座った
「康太、お前の伴侶を当ててやろうか?」
「オレの伊織は男前だからな♪」
「その男前…流石だな…俺がお前を持って行っても顔色1つ…変えたりはせぬ
その男だろ?静かで寡黙な…蒼い龍…」
と言い…榊原を指差した
「ご名答!何で解った?」
「その姿…人の容姿で…変わらぬが…本来の姿は…青龍だからな…人とは違う…
そして、赤い龍も…堕ちていようとはな…
ついでに…その男…海神《 わだつみ》が入っているのか?
九曜…の血の入りし子もいる…
後…御厨の転生し…人間とまぁ…多彩だな
そして…あの金髪は…謂うのも烏滸がましい‥
お前の伴侶も…仲間も…凄いな…
珍しいモノが見えたからな…サービスしてやる」
羅刹はご機嫌に答えた
「今はいねぇが…朱雀もうちの裏に落ちてんぜ!」と康太も楽しげに言った
「そしてお前は…未だに弥勒憑きか…」
「そう。オレは弥勒に愛されてるからな…」と康太は笑った
「そして…我が弟…龍騎も…お前に憑いておるのか…諦めの悪い奴等だ…」
「オレは龍騎からも…この世で一番愛されてるからな…」
「二人とも…子を成したと…聞いたから…
お前には憑いておらんと思ったのに…
未練たらたら…お前に憑いて…歩いておるのか…」
「もうじき産まれんぜ!」
「……………お前を愛して…子を成すか…」
「それが定めだ…
それより羅刹の…妻は?」
「………出て行ったわ…私には…着いては行けぬそうだ…」
「お前はさ…相手に求めねぇからな
一方的に与えて…邪魔はするな…では…
一緒にいる意味がねぇからな…」
「お前に対する執着なら有るのだがな…」
「……お前ら…兄弟は…とことん…殴られてぇらしいな…」
羅刹は康太を見て…刹那げに笑った
「どの人間も…お前程には愛せん…
お前に逢わずに過ごした日々が…お前に逢えば…一瞬で意味のないモノになる…
堪えて過ごした日々は…跡形もなく崩れ去る…」
「それはオレの所為じゃねぇよな?龍騎」
康太が言うと…紫雲龍騎が…姿を現した
神取羅刹を初めて見た時…何処かで見た顔だと想ったら…紫雲龍騎だっのだ
羅刹の横に立つ紫雲は…酷似した容姿で…兄の前に立っていた…
『お久し振りです…兄上…
康太に触って良いのは伴侶殿だけですぞ!
北の果ての大地に…身を投じられて…果ててしまうと思いきゃ…兄上はしぶといですな』
「康太を目にすれば…時間は遡る…
意味すらないと…気が付いた…
何もこんな寒い地で…堪えて忍んだ日々が…跡形も消えてなくった…」
『兄上…貴方…×5になられてましたか…
男も女も…貴方に着いて行くのは至難の技なのですよ…罪は作らないように…去勢でもしますか?』
「康太が帰る時…俺も着いて帰る
その時は…覚えていろ!龍騎!」
『それは……ちょっと…身重の妻もいますし…』
冷や汗をかく…紫雲龍騎を見ようとは…
『龍騎も形無し…だな!』と弥勒は笑って康太に声をかけた
「似た者兄弟だ…放っておけ」
と、康太は一蹴した
康太は出されたお茶を啜りながら…
「羅刹の性欲が…龍騎にも有ればなぁ~」と呟いた
羅刹は男も女も…大好きで……性欲も凄かった
方や紫雲は康太一人…愛して…その想いを抱いて…妻を持つ
桃香もまた康太一人愛して…紫雲の子を生む
『康太…我は兄上の様な節操なしでは御座らん!』
紫雲が興奮して話す
「龍騎の様な性欲の欠片もない…隠居にはなりたくない」と羅刹は言い放った
「仲良くしろ…この世でただ一人の兄弟であろうて…」
康太は出された苦笑した
康太は榊原達に
「この男…神取羅刹は紫雲龍騎の兄だ
紫雲龍騎とは一卵性双生児だ!
子供の頃…龍騎は紫雲北斎に貰われ
羅刹は神取翡翠に貰われ…その道を分けた
分けさせたのは…飛鳥井源右衛門…じぃちゃんだ
二人の親は…若くして亡くなった飛鳥井隆彦……親父の弟だ…
二人の母親は…飛鳥井瑠璃…一族の者だ
隆彦は癌で…子供の姿を見る前に他界して
瑠璃は…子供を産み落として…命を費やした…
源右衛門は…力持ちで産まれた双生児を…知り合いに預けた…
二人は…オレの叔父に当たる…人間だ…」と康太は説明した
「榊原清四郎を、父に持つ榊原伊織…
お主とも…従兄弟に当たる訳か…
世の中…狭すぎると想いませんか?
愛する康太?」
「………人は繋がり縁を結わえるかんな…
どっかで繋がる様に出来てんだよ?」
「さてと…この俺に…何をさせたくてこの地に降り立った?
この俺に…ストップ安の介入だけで来ないだろ?」
「まずは…オレの資産の許す範囲で…買い付けてくれ…
買う時期は…ストップ安の直前を詠んで買い付けてくれ」
「また無茶な…ストップ安を詠めと?」
「そう!ストップ安になって為替介入されたら…市場から弾き出されて…倒産は免れねぇ…それは避けたい…
それが解る眼は…お前しかいねぇ…」
「なら、その見返りに…お前を抱きたいと言ったら?」
「お前は…弥勒かよ?」
と、ボソッと康太は呟いた
「一人寝が続いてんだろ?なら、添い寝ならしてやっても良いぞ!
当然…伴侶も一緒だぞ」
「……ったく…食えねぇの…
弥勒は上手くやり過ぎ…」
『羅刹…息の根止められたいか?』
弥勒は…笑って声をかけた
「康太、俺は弥勒程セコくないからな、キス1つで許してやるよ!」
『キス1つも勿体ない…』
と弥勒はボヤいた
「そう言う事言うか~!
まぁ良い、弥勒…横浜に帰ったら…飲もうな!」
『お前は…北の大地におれば良い…』
「一人寂しいんだ…飲むの位付き合え…」
『俺には家族がある…。
しかも康太に手を出せば…その命…断ち斬ってやるからな!』
「康太の幸せに水は刺さんよ…誰よりも康太の幸せを祈っていたのは俺だからな!違うかよ?」
『……雪に埋まって…帰って来るな!』
「弥勒…横浜に大雪降らせてやるから…お前も埋まりなさい!」
『冗談はさておき……羅刹…康太を頼むな…
このピンチ…救ってやらねば…康太は命を断つ覚悟だ…飛鳥井が滅ぶ時…康太はその命の…明日を断つ…
だから……救ってやってくれ』
「解っておる…康太の命…そうも容易く捨てさせたりするものか!
ちょうど良かった…弥勒…勝機を呼び込んでくれ!負けられぬからな!」
『呼び込んでやる!特大のをな…!
お前の弟も…その命…懸けて康太の為に…勝機を願う…!
我ら二人…命を懸けて…呼び込む故…頼む…』
「なら腕によりをかけないといけませんね…」
『明日で…飛鳥井の明日へと続く…道が決まる…
参考人招致…の最中の為替の動きが…明日の飛鳥井を…左右する…』
「神取羅刹…神取の名を懸けてやる…最後の仕事……神取の名に恥じぬ仕事をする」
羅刹は言い切った
『あぁ…お前は飛鳥井の…名を名乗るのだったな…』
「神取の…本家の争いに…巻き込まれたくはない…翡翠が亡くなり…跡目争いが…勃発して…煩いからな…康太に相談したら…飛鳥井へ帰れ…と言うからな…当分は康太が用意してくれたマンションに住むわ…
清隆も弟の忘れ形見の俺を…可愛がってくれるしな…帰る事にした…」
弥勒は…なら横浜でな…と言い…消えた
羅刹は…笑って
「康太、この家や土地…すべてお前にやる
裏の山も俺の持ち物だ」と述べた
「貰っても…こん僻地で雪深い場所…住む奴は…いねぇぞ…
まぁ夏は…涼しいから避難してくるのに良いか…」
「ALSOKにも入ってるから泥棒が入れば、吉田選手が来てくれるかもな♪」
「来るかよ…」
と、呆れながらも
「横浜のマンションの最上階…ワンフロアー…統べてやると言ったろ?
お前が…オレの資産を減らさねば…やるよ」
康太はそう言い笑った
そして…この地に降り立った本来の用件の話に…入った
「今夜オレは帰る!明日は参考人招致だからな!」
「で、俺には何時動け?と?」
「同行を見ててくれ…
その動き…ストップ安になる前に手を打て!
で、決定的に決めるのは…明日の昼だ!
力哉をこの地に置いて行く…お前は食いそうだから…慎一も置いて行く
終われば…荷物を片付けてオレの所へ来い!」
「食わねぇよ…食うとしたらお前の様にちぃさぃ子が良いな♪」
「おめぇの股間は信用ねぇからな…」
「失礼な!」
康太は笑っていた
「康太…俺に戸浪を見せると言うのは…
そのうち動けと…言うことか?」
「そう。もうじき…トナミは揺さぶられる時期が来る…」
「戸浪の血も古いからな…」
「古い血は澱む…その澱みが…中も外も…腐らせる…新しい風を入れる時期なのかも知れない…」
「………腐る前に…手を打ったか…
ならば、その時になったら…出てやろう…」
「頼むな…」
羅刹は不敵に微笑んだ
「源右衛門は何故…お前の方を翡翠に預けたのだろう…?
龍騎よりも…その力…強いのにな…」
「俺は黄泉の番人なんぞ…御免だ
番人…なんかしたらサボって…黄泉から魔物がうじうじゃ出て来るからじゃねぇか?」
「違うな…源右衛門には見えていたのかもな…
オレへと還る姿が…黄泉の番人になったら…
その生涯…その場に捧げねばならぬ…からな」
「与えられた仕事はやるさ…それしか生きてく術を知らねぇ子供は…そうして生きるしかねぇからな…」
羅刹は少し投げ槍に言葉にした
「オレだって…おめぇとは変わらねぇよ!
オレは飛鳥井の家の為だけに在る存在だからな!」
「お前は曲がりはしない!
だから惹かれる…お前を見ていたいと想う
お前の回りに集まった人間は…皆そう想っておる筈だ…俺も弥勒も…弟もな…
若旦那…貴方も…そうでしょ?」
羅刹にフラれ戸浪は羅刹を真っ直ぐに見た
「そうですよ!彼の…曲がらない信念を目にしたら…見て行きたいと願います
康太は決して特別に強い訳ではない
血を吐き…倒れても…絶対に諦めない…
仲間や伴侶の為なら…その先が崖でも…迷う事なく進む…だから目を逸らせないのです」
「………気に入った…今度康太と共に飯を食おうぜ!」
羅刹はそう言い戸浪に手を差し出した
戸浪はその手を取り…握手を交わした
「横浜に戻られて…都合の宜しい日に、ご連絡下さい。貴方の御好きなお店にお連れします」
「康太…若旦那は良い男だな…お前が入れ込むのが…解るぜ」
「だろ?この男の本質は…わだつみ…どんな嵐が来たって揺るぎねぇ…オレはそれを見守りてぇ…。」
「ならば、俺も加えろ!さてと、俺は別室に行きお前の仕事をする…!
残る奴は…自由に過ごせ…俺のいる部屋には来れねぇからな!
気にせずに待っていろ!」
「羅刹、力哉と慎一は仕事がある…
多分仕事してる…こう見えて力哉は俺の秘書をしてる
慎一は今、オレの馬の全般の管理をしてる
暇じゃねぇんだわ…」
「母親も…病の最中に在られる様だしな…」
「本当は…慎一も置いておきたくはない
だが…聡一郎は…やる事があるし…
一生は母親の側に居させてやりたい…
隼人は…俺の側じゃねぇと…パニックになる
慎一しか頼めそうもねぇからな…」
「お前の伴侶が…おるではないか
置いて行くのは…伴侶でも良いぞ」
「ダメ!オレは伊織の側から離れたくねぇ」
「ラブラブではないか…ムカつく…」
「そりゃあ…もぉ!オレと伊織は愛し合ってるかんな!」
「康太…俺が独り身だと…解っててやってる?」
「お前が独り身でも、オレには伴侶がいる
愛しまくって惚れまくってるのはオレの方だかんな…離れたくねぇもんよー」
「ムカつく…俺も横浜に帰ったら…恋しまくろ…」
康太は笑っていた
羅刹は立ち上がると…康太を抱き締めた
「気を付けて…帰るのだぞ」
「帰る前に…神取の本家に…挨拶をしてから帰るけどな…」
「え!」
「お前を返して貰うんだ!
キッチリとな挨拶しねぇと…飛鳥井が廃る
そうだろ?羅刹!
オレは飛鳥井家の真贋…お前を育てて貰った…礼は言わねばな!」
「あれを…育てるとは…言わない…
だから、無視して帰れば良い!」
「そう言う訳にも行かねぇんだよ羅刹!
礼は言わねばな!育てられてなくとも…礼は言っといて遣らねばな!
翡翠は…愚かな女として…地獄に堕ちた…
翡翠は…親ではなく…女だったろ?
お前を育てて行くうちに…愛してしまい…
お前を…束縛して…その体を与えて懐柔した
初めての女が…母と呼んだ女だった…
その心の闇は大きい…
しかも翡翠は嫉妬の鬼になった
盗られると想って…束縛し…お前を繋いだ
そして…高齢で子を成して…死んだ…。
オレはな、その子供も貰いに来た!
だから、オレの帰るのは夜なんだよ!」
「康太……」
「お前の穢れは…この地で昇華しろ!
この地で起きた事は…この地で昇華しろ!
そしてお前は生まれ変わる…そしたらマトモな恋でも出来る…
女を憎む様に抱けば…女は逃げる…
愛すらないと解れば…誰でも逃げる…
だから…オレが…断ち切ってやる!
もう悩まなくて良い…羅刹…総てこの地に捨てて行け…」
羅刹は…泣いた
康太に抱き着き…肩を震わせていた
「羅刹…龍騎はな、性欲すら感じさせずに育てられた
欲と言うのは不浄のモノとして…性欲を断ちきられて…育てられた
勃起すると…棒で…修行が足りぬからだ…と蔑まれ…生きていた…
アイツの性欲の無さは…それから来てる…
アイツに桃香を与えたのは…優しく抱き締めてくれる腕を…教えたかったからだ
お前は…男も女も心底…侮蔑してる…
だから…一度リセットしてやる…
そしたら…美人の秘書をくれてやるよ!
毎日…オレの覇道を匂わせて帰ってくる…美人な秘書を…くれてやるよ!
お前の仕事の邪魔なんかしねぇ…出来た女を…な!やんよ!」
康太の言葉に…その美人の秘書って……
まさか……あの鬼……??と榊原や一生達は思案する
「康太…俺はこの先は…お前の側で暮らしたい…
お前に逢うには…俺は穢れすぎてると思った…でも無理だ…お前の側に…いさせて…」
康太は羅刹の背中を撫でた
「だから、わざわざ来てやったんだろ!」
もう後は…声にもならなかった
「羅刹…」
「何だ?」
「その髪は、切って…オレの元に来い…」
「………!!」
「総て…昇華しろ!お前の想いを…昇華しろ!」
「康太…」
「憎しみは、何も産まない…」
「……解ってる」
「セックスは…相手を憎む為に有るんじゃねぇぜ!」
「………!頭は…解ってる…」
「恋愛は頭ですんじゃねぇ」
康太は羅刹の胸を叩き
「心で…すんだよ!
人を愛すのも…抱くのも…頭じゃねぇ
心が欲するから…抱くんだよ!」
「康太…」
羅刹は康太に縋り着いた
「幸せになれ…羅刹
お前が泣いて、憎んだ人生も半分
残りの半分には幸せが待ってる
苦しみも悲しみも…幸せも喜びも…
半分ずつ…調和が取れて用意されてんだよ」
「……ならば…俺にも…幸せは用意されてるのか?」
「当たり前だ!これからの人生は…幸せになる
だから過去を捨てを!引き摺るな!
その髪を、切り捨てて…新しいお前になって…オレの所へ…来い!」
「捨て去るのは…容易くはない…
だが…お前の側に行けると言うのなら…
総てを…ここの地に捨て去って行く!」
羅刹は…震える手で…康太を抱き締めていた
そして断ち切るかの様に……康太を離すと…清々しい…顔付きをしていた
「康太…仕事をして参る…!
お前の仕事…この命が尽きようとも完遂する
明日の夜…横浜の地で…逢おうぞ!」
「あぁ。待ってるかんな!」
羅刹は康太に背を向けると…応接間を出て行った
「力哉、レンタカーをチョイスして持ってこさせろ!」
康太は力哉に声をかけると…力哉は仕事を始めた
康太は…ふぅー…と息を抜くと…
榊原の膝の上に…頭を乗せた…
「さてと…乗り掛かった船しかねぇわな…
神取の本家に行くしかねぇわな…」
康太が呟くと…榊原はクスッと笑って
「君が…決めたんでしょ…?」と言った
「……神取の本家には行きたくもねぇ…
跡目争いの真っ只中…だからな…相手はもう人間じゃねぇ…
金と名声に群がる魑魅魍魎だ…ったく嫌になる」
「車が来るまで…甘えさせてあげます」
「なら、甘えるもんよー」
康太は榊原の膝を跨いで…向かえ合わせで、座った
榊原の胸に…甘えて擦り寄る…
榊原は康太の銀色の髪を…撫でた
康太は榊原の唇に…キスした
榊原は康太の好きにさせていた
目の前で…康太が榊原に乗って甘えていても…誰も気にする事なく…やり過ごす
田代に至っては…仕事していた
「伊織…勝機が…大群を成して来やがった
解るか?体に漲る…勝機を?」
「ええ。若旦那にも…変化が解るんじゃないですか?」と榊原が、声をかけた
「……これは…勝機ですか?」
と戸浪が呟いた…
「紫雲龍騎と弥勒高徳の願いし勝機だ!
勝機が渦になって…押し寄せてくる…
オレは…これを受けると…堪らなく血が滾る
無敵になる…総てを信じて突き進む…
それがオレの原動力だ!」
康太が言うと…榊原は
「燃えてますね…力が漲ってますね
君の中は…熱く畝ってるんでしょうね…
抱けなくて…残念です…」残念そうに呟いた
一生は…「下ネタかよ!」と怒った
「一生、僕の恋路を邪魔すると…火を噴きますよ!」
「邪魔しねぇよ!しかもおめぇの噴くのは…ブリザードやん」
「一生、僕は火も噴けるのですよ♪」
「………ったく。契ってますと言いたいのか?」
「そう。愛し合ってますからね…兄さん♪」
榊原は楽しそうに…呟いた
一生は唇を尖らせ…ちえっ…と拗ねた
「車の手配出来ました!後五分で来ます!」
と、力哉が言うと、康太は榊原の膝の上から降りた
「力哉、慎一、一晩…此処で頼むな…
明日になれば…帰ってこれるから…頼むな」
康太が言うと力哉は康太に抱き着いた
「堪えて…君の仕事を完遂します!
でも、その前に…君を抱き締めさせて…」
「良いぞ!」
康太は力哉の背中を撫でてやった
そして手を広げると、慎一!と名を呼んだ
慎一も康太に抱き着いた
「悪いな…一晩…堪えてくれ…
一生には綾香の所へ行かせるからな…」
「解ってます!総ては貴方の想いのままに…やり遂げますから…」
康太は肩に乗せてる慎一の頭を撫でた
「ならば!オレは行く!
若旦那はどうするよ?帰るなら空港で下ろすが?」
「君が乗り掛かった船なら…私は最後まで下船する気はありません!
君を見届けてあげます!
明日の参考人招致も…見届けに行きます
社長室には…今…亜沙美がいます
代理をさせております…構わないでしょ?」
「そうか…。」
「ならば、行く!」
康太は応接間を出て、玄関へと向かうと…
タクシーが2台、止まっていた
一台に、康太と榊原、戸浪と田代が乗り込み
もう一台には一生と聡一郎、隼人が乗り込んだ
康太は窓を見上げると…二階の窓には…
羅刹が康太を見送っていた
康太は片手をあげて…別れを告げた
ともだちにシェアしよう!