26 / 72

第26話 神取

タクシーの運転手は行き先を聞かない 力哉が既に行き先を告げて…タクシーを呼んだからだ 「若旦那…神取…の一族を知っているか?」 「知りません…代々、相場師の家系なのですか?」 「そう。北の神取。浪花の蒼真。薩摩の鞍馬。 これが日本を代表する相場師だ!」 「全員……顔見知りなのですか?」 「この世は狭い…飛鳥井は土地を転がす 相場師は先読みをする…仕事柄顔を合わせる機会も多いかんな…顔は知ってる だがオレは…羅刹以外からは…敵視されてるからな…仲良くはねぇよ!」 「……そうなんですか。」 「そう。しかも飛鳥井の株を売り捌いてるのは、浪花の蒼真…潰してやるけどな!」 康太は言い捨てた 「貴方を敵に回せば…仕方がないですね…」 「飛鳥井に刃を向ければ…息の根を止めやる それがオレのやり方だ…! 容赦はしねぇ…滅びの盛田に荷担した罪は重い…」 戸浪は…黙って…頷いた タクシーは…神取本家に到着した 康太は車を降りると…呼び鈴を押した 『どちら様ですか?』 「飛鳥井家 真贋 飛鳥井康太 お目通り願います!」 暫く…沈黙が続き…どうぞ…と声が掛かった 康太は正面玄関の引き戸を開けて…中へ入ると…瑛太位の年の男が待ち受けていた 「おみえになると想っておりました 飛鳥井家 真贋…飛鳥井康太様 此方へどうぞ」 招かれて…家の中の座敷に通された 康太は正座をして…男を見据えた お茶を出されて…暫くすると男は名乗った 「私は神取の本家の総代代行をしております、神取那智と申します…。 跡目争いの件で…おみえに?」 「そうだ!羅刹は飛鳥井康太の叔父に当たる 飛鳥井の名を名乗る事となる… だから跡目争いから永久に消してくれて構わない! それと、翡翠が産みし子供…オレが預かる 渡して貰おうか!」 「はい…解りました…と言うとお想いか?」 「言わぬなら…言わせるまでだ… オレを誰だと想ってる…?ナメると痛い目に合うぜ!」 「…………ナメてはおりませんが…聞けません!」 「ならば…狩るだけだ! 翡翠の子供は…羅刹の子! 親と名乗る者が子に手を出して…出来た子だ 本来…産まれてはいけない子だ… 軌道修正は…オレの仕事 黄泉の女神から授かり仕事だ… 破滅を唱えるしか…なくなる… 飛鳥井に刃を向ける者…間違った…道を聞き入れずに…行く者は…破滅するしかねぇんだよ!」 那智は…グッと詰まり…俯いた 「罪の子は…残してはおけぬ… このまま…残しておくのなら…その子は必ず 神取を潰す…何故なら羅刹が腹の子に…呪いをかけたから… 産まれるな…と呪った子だ その命…狩って…黄泉に送るべき命なり 翡翠は…オレが狩って…黄泉に堕とした 閻魔の裁きで…無限地獄に堕とした その命…永遠に…転生は許されぬ… 哀れだからな…オレが昇華してやった オレの焔は『 無 』になる浄化の焔… 跡形もなく消してやったわ… 違えれば狩る…オレの仕事だ… オレも仕事を完遂せねば狩られる立場に…なってしまう 聞かぬなら…強行手段に出るだけだ…造作もない それをわざわざ足を運んだのは…筋だけは通した! ……と言う事だ…筋を通せば、遠慮はする気もねぇけどな!」 「解りました…貴方の力はナメれば…手痛いしっぺ返しを受けねばならぬ… 貴方は…敵に回せば…跡形もなく消される 神取は…翡翠が…道を踏み外し…終わるべきでしょ? 羅刹は神取に寄り付きもせず…憎しみを膨らませ… 神取の存続など…どうでも良い事です…が、一応総代をしています故…言ってみました… 解っておいででしょ? お久し振りです…康太様…」 「久し振りだな…那智 跡目争いで…駆り出されたか?」 「…はい。弥勒院厳正に駆り出されました」 「厳正が…?ならば、オレが介入する必要はねぇな…」 「厳正は…源右衛門と元妻に……頼まれたそうですよ?」 「じぃちゃんが?」 「道を外したのは…見えていたのでしょうね そして…羅刹の軌道修正をしに…この地に降り立つのも…見えていたのですよ…源右衛門は…」 「クソッ…ジジィの癖に…食えねぇ奴等だかんな!」 「それでも…厳正が出ねば…神取は欲と化した親族に…潰され…跡形もなくなりました」 「無くなれば良いのに…!」 「無くせないそうですよ…? 厳正が言うには…無くしてはいけないそうです」 「……羅刹のいぬ今……跡目は誰が継ぐ?」 「逢いますか…?翡翠の子供に…」 那智は…思案して康太にそう言った 「逢えば…狩ると解っていて…何故止めぬ?」 「……逢えばわかりますよ…」 「赤い髪をして…鬼の角を持つ子に…逢えと?」 「………見えておいででしたか…」 「今は…3歳…翡翠が死んで…3年… 無縁地獄に…翡翠が堕て…オレが昇華して3年か…」 「罪の子を、狩る気で…この地に来たのですか…」 「嫌…羅刹の子は…オレが跡目争いの道具にされぬ様に…預かり…誰かに育てさせようと想っていた その髪を…黒く封印してやって…角を隠してやろうと…想っていた」 「そうですか…ならば雪は貴方に差し上げます! その手で狩られないなら…貴方に差し上げます」 「まだ3年しか生きぬ子を…殺す程…オレは情けもねぇ…人間じゃねぇぞ! 違う生き方を…させてやりてぇ このままじゃ…その容姿に…悩む時が来る 人と違う姿を晒して…生きて行くのは至難の技… このオレが誰よりも味わった…経験だ オレの瞳を知れば…人は見事に逃げる… 見られたくないと…わらわら逃げる そして次には…怪異な瞳で見られる それを…味わうのは…生きてる自分の総てを否定されるも同じ… このままじゃ…その子はそうして生きて行くしかねぇかんな… オレは違う道を用意して…普通に生涯を終えさせてやりてぇ」 康太の言葉に那智は想いを馳せる 「あぁ…貴方は…黄泉の目を御持ちですからね…人には怪異に映るのでしたね… 雪は…生まれた瞬間に…総てを悟り……言うのです 『僕の命を握るのは…焔を纏った…お兄ちゃんなんだね』…と。」 「産まれた瞬間から…喋ったろ? それは……罪を背負った子の烙印… 翡翠の力と羅刹の力をまともに受け継いだから… このままでは狩らねば…ならぬ だけど…オレは狩りたくねぇ 連れ帰り…封印を施す…二重三重に…念入りに…封印を施す オレが封印して、伴侶にも封印をさせる そして…朱雀にも封印させ…弥勒と龍騎も…封印をさせる オレの命が費えても…消して解けねぇ…封印をして…普通に生涯を終えさせてやりてぇ そのつもりだ…」 「ならば、貴方に託します! 神取の跡目は…翡翠の年の離れた弟の子供が才能を秘めていると厳正が申してるので… その子に総てを受けさせて…終結させます 私の仕事は…そこで終わります 終わった後は…厳正の所へ帰り…ボロ寺の住職に帰ります…」 「そう簡単にはいかねぇぞ! 何たって…いるのは魑魅魍魎と化した…欲の塊…引かねぇな ならば、強行手段に出ろ! このお茶に…毒を混ぜる様な…身内では…殺し合いが勃発するのも時間の問題だ」 「え!毒が…混ざっているのですか?」 「誰もお茶に手を着けねぇだろ? オレの仲間はオレが飲まねば…一切手は着けねぇ!」 「何ともまぁ…帰りたいです…厳正!」 那智は弱音を吐いた… 「海坊主!出て来てやれよ!」 康太が言うと…奥の部屋から…弥勒院厳正が…現れた 「何時解ったのだ?」 「この地に降り立った時から…海坊主の臭いがプンプンしてたかんな!」 「相変わらず鼻の良い坊主だ! お前が雪を狩るのなら…阻止しなければ…と想っていた… 一度は…妻だった女に頼まれればな…聞かぬ訳にはいかなくてな…」 「死に際に…お前の所に走って頼んだのはお見通しだ… オレを誰だと思ってんだよ!」 「……弱っておったからな…見えてねぇのかと思ったわい! すっかり完全体となったか! しかも…神の体に…戻られて…人の体は捨てられたか?」 「我が兄が百年に一度咲く花をくれたからな! 魔界に還った時には…その体…完全体になったわ! でもな…オレは人の体は捨てちゃいねぇぜ! 寿命が終わる時…オレは死ぬ それが何時終わるのかまではオレの知った事じゃねぇ! それまでは、オレは…死なねぇぜ…この世を全うしてやるかんな!負けてなるものか!」 「ならば、お主に頼むとしよう! 雪の命…長らえさせてくれ… 一度は…妻と呼んだ女が…その命を費えても尚…頼むと言ってきた子供だ… 守ってやりたい 翡翠は…罪をおかした…してはいけない罪をな 親となるなら…子に抱く…感情でも行為でもない… だがな…翡翠は…羅刹を、心底愛してしまった…そして歪んで…束縛と執着で雁字搦めにして…羅刹を壊した… 羅刹は…お前に還ると…源右衛門が言っていた 『羅刹の最後の砦が…飛鳥井康太、我が孫だ…!羅刹は飛鳥井康太に還る! その場所が…羅刹の終の棲みかとなる』…と、源右衛門が言ったからな…」 「オレはお前の息子にも…あの兄弟にも愛されてるからな! この世で一番愛してるのは…オレだとぬかす奴ばかり…オレに還るのは当然だろ? 羅刹の最後の拠り所は…オレしかねぇ オレから逃げて…逃げまくったのにな… やはり…最後はオレの所へ来るしかねぇかんな それが羅刹の定め…もう定めを邪魔させはしねぇ!」 「誰も邪魔などするものか…! 羅刹を救える者が…この世に在って…逆にわしは救われておる! 羅刹をこの世に留めるは…飛鳥井康太…お主しかおらぬ お主に還ると言うのなら…わしは陰ながら…見守らせてもらう… 羅刹の…行く末が…穏やかである様に…見守る…それがわしの定め…」 「なら見ていてやれ!見るならば影からじゃなく…堂々と見てやれ… 横浜に帰ったら…お前の所へ連れていってやろう!」 「康太…」 「海坊主、後継者は…避難させてあるのかよ?」 「あぁ!わしの結界の中におる!」 「ならば、さくさく進めろよ! 伊織…この近くに東青を控えさせてある呼んでくれ! 東青の費用は…当然…神取が出せよ!」 康太がそう言うと…那智は 「当然…払わせてもらいます!」と答えた 「伊織、ついでにタクシーも二台呼んでおけおけ」 「解りました」 榊原は電話を取り出し、天宮とタクシー会社に電話を掛けた 榊原は天宮とタクシー会社に電話を入れて…神取の家に来るように…と連絡を入れた 「両方とも直ぐに来るそうです!」 榊原が言うと、康太は 「雪を連れて帰る!連れて来い! 名前も…雪の名は…捨てる… この子は…生まれ変わって別の子供になる!」 言い放った 那智は…部屋を出て…雪を連れに行った そして、その手には…子供が抱かれていた 「雪に御座います!」 那智は康太の手に…雪を渡した 雪は…康太の顔を…じっと見詰め…笑った 「焔のお兄ちゃんだ…」 「雪…オレはお前を昇華してやる 神取雪は…今日死ぬ…そしてお前には違う人生を用意してやろう!」 「構わないよ…跡形もなく無くなろうとも…僕は怖くなんかない」 「もう喋るな…オレの瞳を見ろ」 雪は…康太の瞳を見詰めた すると…意識が遠退き…雪は眠った 「さてと、昇華してやる!」 康太が言うと…厳正は康太を睨んだ 「跡形もなく消し去る気か?」 「厳正、オレは力の加減も出来ぬ…未熟者のままか? 喋る赤子などおらぬ! この子の…生まれを昇華してやるんだ! 誰も総てを『 無 』にするとは言ってはおらぬ!」 康太は毅然と言い放った 「どの道、お前がオレに手を出せば…その命を…確実に消えるぞ… オレの回りは…甘くはねぇ…オレに手を出して生かせておく優しい奴など皆無だ!」 厳正は…グッと詰まった 康太に何かあれば…確実に…その刃は…厳正に向かう 赤い龍に…青い龍 そして…康太に何かあれば…九曜の血が暴走を始める… 知らぬから…暴走をすれば…止まりはせん 康太は立ち上がると…炎帝の剣を…手に出した 長く細いパレスに…焔を纏った剣は紅く燃えていた 「お前の罪を…昇華してやろう… 罪など背負わず生きて行け!」 康太は呪文を唱えると…雪の頭上を…斬り着けた 斬られた雪は…紅い炎に包まれて…燃えていた 「雪の罪の総てを…持ち去って行け…!」 業火の焔に焼かれ…雪が燃える… 雪は…安らかな顔で眠っていた その焔が…燃え尽きると…寝息を立てて…眠っている雪の姿があった 「神取雪は…死んだ… この子の名前は…北斗… 北斗七星に導かれ…曲がる事なく生涯を終える」 康太はその腕に抱き上げ…一生に渡した 「お前が育ててくれ!お前の子供として…育ててくれ! 緑川北斗…この子の人生を初めてやってくれねぇか?」 康太が言うと…一生は手を伸ばした 康太が…その手に北斗を抱かせた 「俺は…子持か?」 「オレも子持ちだ…慎一も子持ちだ… 気にするな!」 「そう言うものか?」 「そう言うもんだ!」 「ならば、この子を…立派な緑川ファームの跡継ぎにしねぇとな…慎一の子供と…共にな…」 「……慎一の子供は…力持ちだ… その道は…違う方に行かねばならぬ… 緑川の跡継ぎは…その子だけだ… お前が慈しみ育てろ… そして何時か…流生に親父だと名乗って…本当の親父になれ! それだけが…オレの願いだ!」 「……康太…」 一生は北斗を、抱いたまま康太に抱きついた 「海坊主…これで文句はねぇだろ!」 「流石でござるな! その力…神の時に使えれば…人などに堕ちる事もなかったのに…」 「人に堕ちてこそ解る事もある… オレは…人に堕ちて…味わった苦しみや悲しみ…辛さを味わった… 伴侶がいればこそ…乗り越えれた試練だった 無駄な時間じゃなかったから…こうして総てを『 無 』にしたりしなくなった その力の意味を知った… 愛する伴侶が教えてくれた…愛が有ればこそ…解る事だ!」 「何気なく…ノロケておるだろ?」 「解ったか…」 康太は笑った 「東青が来るな。ならば、オレ等は帰るとするか!」 康太が呟くと…全員が立ち上がった 「那智、総てをそつなくカタが着く! これで跡目争いは終わる…だがな厳正 最後まで気を抜くな…相手は魑魅魍魎… 人と思うな…解ったな!」 那智は深々と頭を下げ 厳正は…気を引き締め…解った!と答えた 康太は北斗を貰い…歩き出した その後に…榊原が続き…戸浪が続き…一生達が続いた 厳正は…康太を見送って…息を吐き出した 「誠…恐ろしい…我が息子は…アレを愛してやまぬ…と言う…」 那智は苦笑した 弥勒の想いの総てのベクトルが…康太へと行くのを知っていたから… 『親父殿…康太の悪口を言うなら…その口を縫い付けてしまうぞ!』 と、弥勒の声がして…厳正は苦笑した 「わしが此処にいるのを知っていて…送り込んだな…弥勒…」 『誰も康太の動きを止めさせはせぬ! 例え親父殿でもな!康太の行く道を邪魔するのなら…俺は親父殿でも排除する!』 厳正は溜め息を着いた 「聞いたか…那智! あやつは、わしより、康太をとると抜かすわ」 「師匠…弁護士の先生が見えましたから…」 那智は何とか…現実を知らせ…黙らせた 那智と厳正の前に食えない秀才がやって来た この男も…飛鳥井康太の為ならば…命を懸けて…仕事を完遂するのがバリバリ見てとれた 「東青…良い面構えになったな」 厳正が声をかけると…天宮は嗤った 「久し振りで御座いますね…厳正殿 康太の邪魔をするのなら…どんな手を使っても…潰させて戴きます!」 厳正はふん…と鼻を鳴らした 「わしが飛鳥井家 真贋の邪魔をすると?」 「この場にいるのなら…疑われても…仕方ないと思いますよ?」 「邪魔などせぬわ…ついでに…翡翠の子の養子縁組もして行け!」 「無論…それもしますがね、まずは跡目争いをカタ着けましょうか!」 「天宮…下がっておれ…お前には指一本触れさせはしない! でないと…康太に何されるか解ったもんじゃないわい!」 厳正が、構えると…廊下を…走って魑魅魍魎と化した…親族がやって来た… バタン!と扉を開け…つかつかと入って来る輩に…厳正は覇気を、出した 「邪魔するんじゃない!」と覇気を出し…礼儀の知らぬ人間を吹き飛ばす 「那智!早く相続の手続きを取れ!」 厳正は叫んだ! 厳正が親族の前に躍り出た! 己の欲望で突き動かされた…親族は人の心も忘れてしまったかのように… 欲に囚われ…突き動かされている 厳正に怯む事なく…襲い掛かる人間に……傷付ける訳にもいかず…躊躇する その隙に…襲い掛かられ…厳正は慌てた 天宮が危ない…! と、思った瞬間… 天宮の前に…康太が立っていた 「ジジィ…オレは油断するな!って言ったぜ!」 康太は笑っていた 「伊織、お前の槍をくれ!」 康太が言うと…榊原は秩序と規律と法律を織り交ぜ作りし槍を…康太に渡した 「ジジィ、後ろに下がってろ!」 康太は槍を回しながら…嗤っていた 「コイツ等は…眠らせる!」 康太は槍に…息を吹き掛けた… すると凍り付いた息が…槍に煽られ…冷気と化し…吹き付けられた 「人の意識があるうちに気絶しろ! オレに刃向かえば……その命を撃ち取るぞ! お前等の曲がった心は…青龍の槍が正してくれる!」 康太は…頭上の空気を…浄化した すると…バタバタと倒れて…意識を失っていった 「これで邪魔物はいなくなったぜ! 相続をやれ!東青、済まなかったな… 怖い目に遭わせた」 「いいえ!貴方が私に指一本触れさせはしないと言った… ですから心配なんてしておりませんでした!」 康太は…何も言わず笑った 「そいつ等は死んじゃいねぇ… 暖かい部屋に置いとけば…意識は戻る 目が醒めれば欲に眩んでいた時の記憶はなくなっている ならば、今度は本当に帰る!」 言うなり康太は背を向けて…片手をあげた 康太は外に出るとタクシーに乗り込んだ 榊原や戸浪と田代が乗り込む 一生達も…もう一台のタクシーに乗り込むと…空港へ向かった 「若旦那…最後まで付き合ってくれて、ありがとう御座いました」 「いいえ。好きで着いてきたのですから… お気になさらないで下さい」 「東京に着いたら…田代と帰って下さい お疲れになったでしょう」 「貴方は?」 「瑛兄が迎えに来てます! 力哉の車を栗田に運転させて…来てくれます また連絡します! 飛鳥井が片付けば…次は必ず戸浪へ向かいます!」 「宜しくお願いします!」 「来週には…女装して…トナミ海運へ下見にでも行きます! オレの面は割れてますからね… 飛鳥井もそれで視察をしに行き腐った内情をを知った…」 「……お願いします」 康太は優しく笑っていた 「若旦那…オレも女装は趣味ではないですよ… 伴侶は男ですが…オレは女になりたい訳じゃねぇから……抵抗はあります ですが…別人にならねば…見えぬ事も有るのです そのままの姿で行けば装われるが…違う姿になれば…何時もは見えぬ…何かが必ず見えます… その為だけに…オレは女装して…違う人間になります!」 「貴方の謂う通りです‥‥見方を変えねば目に入らぬ事も多いと想います」 だが‥‥自分には出来ない‥‥ 康太のようなフットワークは皆無に等しい 「なら来週、トナミに行く前に連絡します」 「お願いします」 新千歳空港に行き…飛行機に乗り込むと… 皆疲れて…眠っていた 羽田空港に到着すると…戸浪と別れて…康太はターミナルの外に出た 戸浪と田代は…空港駐車場へと向かった ターミナルの外に出ると…力哉の車が停まっていた 康太は近寄り窓を叩くと…瑛太が飛び出して来た 「康太…お帰り…」 「ただいま…瑛兄。」 「伊織、お疲れ様でした。 一生…お母さんは変わりなかったですよ 聡一郎、御苦労でしたね 隼人、疲れましたか?」 瑛太は全員に声をかけ、車の中に招き入れた 車の中に乗り込むと…瑛太が栗田に 「栗田、ファミレスに行きましょう!」と栗田に言った 「了解しました」 栗田と瑛太は…仲良さげだった 「栗田、瑛兄と仲良くなったのか?」 康太に聞かれ…栗田は苦笑した 「はい。取り敢えず嫌われてないのは解りました…。 それが解れば…拘りは無くなりました!」 「そうか。飯食ったら…寝たい…疲れた」 康太は本当に疲れたように呟いた 車は…何時ものファミレスに行き… 食事をしてから家へと帰って行った 飛鳥井の家に帰ると、康太は三階の自室に帰って行った

ともだちにシェアしよう!