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第28話 参考人招致①
康太は三木に…
「美容院へ連れて行け!」と言った
「その髪を…治しますか?」
「多分…直ぐには直らねぇからな…黒く見せかけて…出るしかねぇだろ?」
「解りましたよ…お連れしますよ」
三木は笑って何時も行く美容院へ康太を連れて行った
美容院で…髪を黒く見える様にして、支度を整えると…康太は深呼吸をした
こんなに…幾度も…我が儘を通せば…
榊原に飽きられ…嫌気が刺すかも…知れない
愛してる…
榊原伊織だけ…愛してる
榊原伊織しか愛せない…
守りたいのだ……愛する男を…
この手で…守りたいのだ…
「三木…」
「何ですか?」
「これが終わったら…何処かへ部屋を取ってくれ」
「良いけど…お前一人で…?」
「少し…頭を冷やさねぇと…ダメだかんな…
一人になって…考えねぇと…な!」
「喧嘩したのか?」
「違う…でも…オレは…伊織を困らせるしか出来ていねぇ…少し頭を冷やして…反省しねぇとな…」
「お前の気の済むようにしてやる」
「悪いな…絶対に…伴侶や一生には教えるなよ…」
「一応…解ってると言っとくわ」
康太は三木に「資料は?持って来てくれた?」と問い掛けると
康太の前に莫大な資料を置いた
「なら、行くとするか!」
「ええ!何処までもお供しますよ!」
康太は前を見詰め…目を反らさなかった
三木の車は…国会に入って行き…参考人招致の控え室へと向かった
議員が…次から次へと…康太に挨拶をしに来る…
賓田や…安曇…までもが…やって来て
挨拶をして行った
康太は何も言わず…瞳を閉じていた…
オレは…負けねぇ!
何を言われても…絶対に負けねぇ!
心に…そう決め…己を信じる
弥勒や紫雲の勝機を…一新に受け…康太は身震いをした
「負けねぇ!…オレは…何があっても毅然として…現実を見る!」
自分に言い聞かせる様に……言葉にする
想いは…榊原の事ばかり…
だけど…現実は…榊原を晒し者にしてしまうしかない…
康太は悩んでいた…
だから、瑛太も…国会には一緒に来なかった
「三木…オレは…自分を卑下した事はねぇが…
同性を愛するのは…世間じゃ認められねぇ事だと思い知らされると…辛いな…」
「お前は…それでも選んだんだろ?
ならば受け入れるしかない…違うか?」
「違わねぇ…違わねぇが…頭を冷やさねぇとな…
何時か…嫌われちまう…かんな…」
「嫌わないでしょ?」
「それでも一人で考えてぇ…時もある…」
「ならば、邪魔されない部屋を提供しますよ…それも…これが終わってからですが…」
「それで良い…オレは…負けねぇかんな!」
「飛鳥井康太が…負ける筈など…ないでしょ?
俺の命を握ってる男が弱かったら…困るって言うの!」
その時…議員の一人が…参考人招致の始まりを告げに来た
「お時間です!此方へどうぞ!」
康太は立ち上がり…三木と共に…会場へ向かった
『国会 参考人招致を始めます』
テレビ中継を入れて…大々的に放送して…飛鳥井家の真贋の終わりを全国放送で…知らしめるつもりなのは…一目瞭然だった
康太は参考人席に立ち…宣誓を述べて誓った
「飛鳥井建設の…駅前開発の談合について、飛鳥井家の真贋…飛鳥井康太を招いて…参考人招致を、始めます
呼ばれたら…嘘偽りなく…答えるように!」
「はい。」
「では、飛鳥井建設の談合についてお聞きします…」
参考人招致が始まった…
康太はどんな質問にも…談合ではない!と、答えた
「飛鳥井建設は談合など一切、行ってはいません!
飛鳥井建設の談合を証人しているのは…今現在…横領で告訴されている人物です!
どちらが…信用がならないか…一目瞭然ではありませんか?」
康太がそう言うと…新進気鋭の議員が…康太の弱点を突く
「貴方の恋人は、法律で認められない…同性だとか…
そんな伴侶を、公然に言い切る貴方の方こそ…信用がならないのではないでしょうか?
この先…貴方は…信用を得れる立場にはないと…世間は判断すると思うのですが?」
やはり……そう出て来るか…
カメラは…榊原の姿を探すだろう…
会議場を…くまなく写すだろう…
何処かにいると思い…天蚕糸ね引いて…待ち構えているだろう…
飛鳥井康太に…社会的な…制裁を…と言う目論みなのだから…
「駅前開発の土地の、所有者や駅前開発の…実行委員が飛鳥井建設を頭に決めて他の建築会社を入札で決めた
これの何処が…談合なのですか?
談合もなにも…飛鳥井建設は、入札する前から…建築の頭で参加するのは決まっていた」
「それが、そもそも変ではないのですか?
何故!土地の所有者が…飛鳥井建設を頭に据えて…他を入札するのですか?
それ故が談合なのではないのですか?
何と言っても…社会的な信用のない…貴方の言う事を…誰がまともに聞きますかね!」
新進気鋭の議員が…侮蔑した様に康太を見る
情勢は有利だと…得意気な顔を…康太に見せていた
だが…幾ら康太の弱点を突いても…怯まないから…ネチネチ…責めて来る
議長から…個人のプライベートな部分は談合とは関係ないから言わないように注意を受けると…
やっと言うのを止め…侮蔑して康太を見ていた
「駅前開発の土地の所有者は飛鳥井康太
飛鳥井家の真贋の、持ち物です!
駅前開発の実行委員が…飛鳥井を頭に持って来るのは当たり前ではないでしょうか?
飛鳥井康太が…飛鳥井建設を頭でと注文したとしても…談合ではないと思います!
資料を提出します!
これを見て判断して下さい!
三木…配ってくれ!」
康太の髪が…風もないのに靡いていた
勝機の風が吹き込んで来た瞬間だった
康太を批判していた議員は…顔色を変えて…青褪めていた…
飛鳥井の株価が…値上げの一途を…迎えていると…一報が入ると…
康太は唇の端を…吊り上げた
滅びの盛田は…堕ちて行け…
それに荷担した者は…許しはしない…
康太の身体を…紅い妖炎が包み込む…
参考人招致の結果は調査団を作り…事実確認をした後に発表すると言う事になった
康太は……息を吐き出した
控え室に行くと…三木がお疲れ様と労ってくれた
「三木…休みてぇ…部屋を取ってくれ」
「あぁ。解ってる…なら行くか…」
康太は疲れた顔をして立ち上がった
参考人招致が終わって…康太は三木が取った部屋に来ていた
国会議事堂近くの ザ・キャピトルホテル東急に、三木は部屋取り…康太を休ませた
一人になりたい…と言う康太の為に…
三木は…部屋を出て行った
康太は静まり返った部屋のベッドに寝転がり…
目を閉じていた
この先も…何かにつけて…
康太の弱点を…突くのなら…
榊原が引き合いに出されてしまう…
別れたくは…ない
でも……
康太は…榊原を晒し者にしたくはないのだ…
覚悟も…想いも…揺るがない
幾度生まれ変わろうとも…愛する人は…
唯一人……
恥じはしない…
自分の生き方に…恥じはしない…
だが…世間から認められない事なんか…
百も承知だった…
涙が…溢れ出し…
止まらなかった…
でも良い…
想いっきり泣いて…
………………涙が…枯れるまで…泣く
…………そしたら…飛鳥井へ帰る
きっと怒っている…
許してくれないかも…知れない
それでも……逢いたい…
でも……今は…逢えない…
「伊織…逢いたい…」
想わず…呟き…康太は泣いた
愛するのは…榊原だけ…
「伊織…愛してる…」
康太は…そう言い…自分を抱き締めた
力強い…榊原の腕に…抱かれたい…
愛するのは…やはり
榊原伊織…唯一人…
他の人など…愛せない…
…………愛してる
愛してる
愛してる
愛してる…伊織
静まり返った…部屋のドアが…カチャッと音を立てた
康太は…泣き顔を見せたくなくて……
ベッドに突っ伏した
顔を…ふかふかの枕に埋め…
肩を震わせ………泣いた
榊原の臭いがしないベッドが…
こんなに辛いだなんて…知らなかった
その時…ベッドが…ギシッと音を立ててた…
三木が…心配して…やって来たのか…
康太は…顔を上げなかった…
泣いている顔なんて…見せなくなかったから…
優しい手が…康太の髪を撫でた…
優しい…
優しい…
康太の愛する男の触り方に…酷似した指が…
康太の髪を…撫でる…
康太は…その手を…振り払い…
顔を上げた…
目の前には…
榊原伊織の顔があった…
榊原は…ベッドの端に座って…
康太の頭を撫でていた
「伊織…」
「康太…愛してるは…本人の前で言わないと…伝わりませんよ?」
榊原は部屋に入って来て…
自分を抱き締め…愛してる…と言い続ける
康太を見ていた…
足音がして…ベッドに突っ伏した康太を…
黙って見ているなんて……出来なかった
三木に…ホテルに康太が泊まると言ってる…
頭を冷やしたいそうだ……
と、聞き…いてもたっても居られずに…
三木の言うホテルに…車を飛ばしてやって来た
ロビーに三木が待っていた
「康太は…一人になりたいって言ってたがな…
あんなに耐えて乗り切った後が…一人じゃ…
悲しすぎるからな…お前に言った…
キーだ。行ってやってくれ
部屋は明日の朝まで…借りてある…
頼めるか?康太の事…頼めるか…」
榊原は三木に頭を下げた
「連絡して下さって…有り難う御座いました
康太の事は…僕が命を懸けて…守ります
安心して下さい!何があろうとも僕の心は揺るぎません!
僕達は…共に生きると…決めたのです!」
三木は…榊原の肩を叩いた
そして、ホテルを出て行った
榊原に頼んでおけば…心配はないから……
あの二人は…自分が捨てた…未来を生きて行く…
見守りたいと…心に誓った…
だから、康太の言う通りには…出来なかった
「………伊織…」
康太が呼ぶと…榊原は康太を抱き締めた
「僕は…晒し者になったとしても…君を無くさなければ…堪えれます…」
康太は…首をふった…
「参考人招致の会場では…カメラが…お前の姿を…映そうと待ち構えていた…
そんな場所に…お前を連れて行けなかった…」
「貴史から聞きました…弱点を狙って責めて来るから…だって…
君の弱点は…僕なのですね…
僕の存在は…君を苦しめてますか?」
「違う!違うんだ…伊織…
オレの弱点は…同性の伴侶がいる事だけだ…
だが…それを恥じた事はない…この先も恥じはしない…
だがな…その場にお前は…連れては行けない
何故ならば…お前のその姿を…晒したくはないからだ!
お前が恥だからじゃない…
何も解らぬ…人間がマスコミや映像を真に受けて…お前を侮蔑したり……奇異な目で見るのを…オレが堪えられないからだ!
お前は…飛鳥井建設の副社長にならなくても…脚本家として生きて行くのなら…
その姿は…間違った方で晒してはならない…
晒したくはない……お前の信用を貶めて…汚したくは…ないんだ!
守りたい…お前を守りたい…許してくれ…」
康太は…榊原に抱き着く事も出来ずに…
腕をだらんと…投げ出していた
康太の想いが…泣きたくなる程…嬉しくて…悲しかった
「康太…僕は…君の陰に隠れて…自分を守るつもりは……ないですよ?
君と共に…誓ったあの日から…君と共に…
在りたいと…願ってるんですから…」
「解ってる…でもオレは…こうしてしか生きられねぇ…
お前を晒すなら…死んだ方が…ましだ…」
「解ってますよ…君は僕を全身で守りたかった…
でも僕もね…君を全身で守りたかったんですよ…
愛してるのは…この世で唯一人
君しかいないのですからね…」
「伊織…」
「さぁ、君の愛する男を…その腕で抱き締めなさい!」
康太は…震える手で…榊原を抱き締めた…
「この髪…染めたんですか?」
「違う…洗うと取れる…
お前が…染め直してくれるまで…触らない」
「なら、お風呂に入りますか?
昨夜の…今日ですからね…腰が立たなくなると思いなさい
でも…寝てれば良いですからね構いませんね?」
「伊織…」
康太は…榊原の背に…縋り着き…匂いを嗅いだ…
鼻一杯に…愛する男の香りに包まれる…
榊原は康太を離すと…スーツに手をかけた
上着を脱がし…ネクタイを外し…Yシャツを…脱がした…
そしてズボンに手をかけ…下着ごと脱がすと…
産まれたままの姿の康太が…目の前に現れた
榊原も服を抜いだ
そして、全裸になると…康太を抱き上げ…
浴室へと入っていった
浴室の床に座り…榊原にシャンプーしてもらう
洗うと…真っ黒の…泡がモコモコ立っていた
「目を瞑ってなさい…流しますよ」
二度…榊原に、シャンプーしてもらい…流すと…銀色に近い髪が出てきた
「……また…髪が痛みましたね…」
「ごめん…伊織…」
トリートメントして…洗い流すと…体を洗ってもらった
優しい…榊原の指に…康太は…許されてるのを知った
洗い終わると…湯船に浸かり…榊原に抱き着いた
「伊織…愛してる…だから許して…」
「僕も愛してます…
君がベッドの上で…自分を抱き締めて…僕を愛してると言い泣いてる姿を見た時に…
もう許してますよ…」
「お前しか愛せない…蒼い龍しか…愛せない」
「当たり前でしょ…僕達は…幾度も生まれ変わろうとも…互いしか愛せないのですからね…」
「好き過ぎて…壊れそうになる…」
「僕なんかとうの昔に壊れてる自覚は有ります…!」
康太は榊原の耳元で…
「伊織…ベッドに行こう…」と言った
「ええ。愛し合いましょう…」
榊原は康太を湯船から出すと…体を拭いて…ベッドに向かった
康太をベッドに横たえ…重なり…榊原は問い掛けた
「僕が…来なかったら…どうするつもりだったんですか?」
「伊織が来なかったら…泣いて…一晩頭を冷やして…帰る気だった…それしか想い着かなかった…」
「君が望むなら…僕は…何処へでも迎えに行くのに…?」
「………伊織…時々…感情がセーブ出来ねぇ時があんだよ…
そんな時は…お前を困らせるし…我が儘言うかも知れねぇ…
飽きられたら…とか…嫌われたら…って考えると…怖い…
そんな時のオレは…動けなくなんだよ…
臆病で…どうしょうもない…弱虫だかんな…オレは…」
「君は考え過ぎるんですよ…
僕が…君を嫌ったり…飽きたりなんてしませんよ?
困らせたって我が儘言ったって…君の我が儘は、可愛いもんです
スカイツリーを買ってくれ…って言われたら困りますがね…
君の言う我が儘は…僕の中では我が儘になんてなりません」
「伊織…」
「約束しなさい!
自分を抱き締めて…僕を愛していると…
言う位なら…僕を呼ぶと…約束しなさい!」
康太は頷いた
頷き…その瞳からは…涙が流れた
「僕は…君の為に…生きてるんですからね」
「オレも…お前がいるから生きて行ける…」
「僕達は…互いをなくせない…違いますか?」
「………違わない…」
「愛してますよ…奥さん
誰が何と言おうと…僕の妻は…君しかいません!
両親が許して…友も…解ってくれるなら…
多くは望まないでも…僕達は幸せですよ?」
「うん。お前がいて…家族がいて…一生達がいる……それ以上は…望まねぇよ」
「愛してます…康太」
「愛してる…伊織!」
後は…もう…言葉にならなかった
榊原は康太の唇に、甘く蕩けさす接吻を送った
トロンとした瞳が…愛しい
堪らなく…惹き付けられて…煽られる
だが…康太は…自覚がないから…タチが悪い…
抱き合った…互いの股間が…自己主張を始め…互いの体に挟まれ…痛い程だった…
「ん…伊織…触って…」
「何処をですか?」
「全部…伊織の触らない場所はなくして…」
「良いですよ…触ってあげます」
榊原の唇と…指が…康太の身体を這って行く
尖った乳首は…歓喜に満ち…痛い程に…勃ちあがっていた
吸って…舌で転がすと…康太は悶えた…
「僕の…康太…僕を受け入れて…鳴くのは許しますが…一人で泣くのは…許せません」
ヘソに舌を入れ…骨盤を…舐める…
「ひゃっ…ゃぁ…うぅん…」
康太は擽ったさと…快感を織り交ぜた優しい愛撫に…腰を捩った
康太の躯が赤く色付き…艶を増す…
「あぁん…イイッ…イキそう…」
「我慢出来ますか?」
「する…伊織がイイって…言うまで我慢する」
榊原は康太の内腿を舐めた…
そして脛に降りて…脚の指を舐めた
康太の躯で…舐めてない部分はない…
と言える位に…舐めて…
康太の…性器を口に含んだ
お尻の穴を解しながら…性器を刺激する
勃起して…震える性器は…健気に射精を堪えていた…
榊原の長い指が…康太の…性感帯を…弄ると…康太は身震いした
「伊織…来い…」
「ええ。君の中に…行きますよ!」
「挿れたら…イク…」
「良いですよ…イキなさい…」
榊原は康太を躯の上に乗せた
榊原を跨がり…榊原に導かれるように…腰を下ろした
ぬるぬるの…穴が…
喜んで榊原を飲み込んで行く…
「あん…伊織…っ…はぁはぁ…イク…!」
息を乱して…康太は榊原に縋り着いた
そして…挿入の刺激だけで…射精してしまっていた
榊原も…康太の中に…精液を撒き散らし…脈打った
「くっ!…康太…っ…」
榊原は康太をキツく抱き締めていた
そして引き寄せられる様に…唇を合わせ…接吻した
意識が遠くなるまで…求めない…
絡まり合い…求め合った…
何時間…1つに繋がっていたのか…
どれだけの時間が過ぎたのか…
解らない程…夢中になって…
二人は求め合った
指一本…動かすにも…体躯が重い…
康太は…榊原の上に乗って…
愛する男の心臓の音を…聞いていた
「康太…」
「ん…?」
「動けますか?」
「無理…」
「ですよね…」
「伊織…」
「何ですか?」
「羅刹が…帰ってくるの…今晩だった…」
「えっ…そうでしたね…」
「携帯…凄いんじゃねぇか?」
「見るのが…怖いですね…」
「参考人招致…の、後だからな…
清四郎さんとかからも…電話あったろ?」
「解りません…携帯は…飛鳥井の家です…」
「え…嘘…」
「三木から電話をもらったから…
君の着替えだけ持って財布とカードを持って出てきてしまいました…」
「三木は…お前に連絡したのか?」
「怒らないであげて下さいね」
「誰にも…連絡するなって…
言ったのによぉ…」
「三木には…出来なかったんですよ…
一人になったら…泣くのに…放っておけなかったんですよ」
「……伊織を連れて来てくれたから…怒らない…」
榊原は笑った…
その笑いが…康太に伝わる…
康太は榊原の胸に擦り寄った
「…伊織…今夜は行方不明で良い…
お前と離れたくない…このまま眠る…」
「なら、寝ましょうか?」
康太は榊原の上から降りた
そして抱き締めてくれる腕に包まれ…
胸に顔を埋めた
「…伊織…ごめん…」
「良いですよ…でも、一人で泣く位なら…僕の胸で…泣いて下さい…」
「伊織に…抱き締めて欲しかった…
その力強い腕で…抱き締められて…胸に顔を埋めたかった…」
「君のためにだけある…場所でしょ?」
「……ん。」
「君は…誰よりも不器用で…真剣に僕を愛しているのを…知ってたんですが…ね」
「……伊織を…仲間を、家族を守りてぇ…
でも…オレは…不器用だから…上手くはこなせねぇ…」
「君はそのままで…良いんですよ?
変わらなくて良い…そのままの君を愛してやまないのですからね…」
「伊織…」
「寝ましょう…ずっと抱き締めてあげますから…寝なさい…」
「ん…」
康太は愛する男の匂いを…嗅ぎながら…
幸せに浸っていた…
榊原の温もりに甘やかされ…
康太は眠りに落ちた…
榊原も康太を抱き締め…
深い眠りに落ちた
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