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第31話 厄介な人達
瑛太は清四郎達に
「応接間に行きましょう!」と声を掛けた
真矢は重箱に蓋をすると立ち上がった
応接間に行くと…脇田誠一が康太に抱き着いて…号泣していた
「オレの康太を…!絶対に!あの議員は許しちゃおかない!オレの康太!心配してた!」
脇田誠一…
設計士として…世界に名を馳せる…第一人者
その彼が…康太に抱き着いて…号泣していた
「誠一…落ち着け…」
「落ち着いてなんかいられねぇよ!
オレの康太を虐める奴は…許しちゃおけねぇ!」
かなりの男前なのに…
役者の父を持つ脇田誠一はかなりの男前だった
身長は高く…モデル体型していて、元宝塚の妻を持つ…
子供も…いると…書いてあったのに…
「誠一、オレは大丈夫だ!」
顔を上げた…脇田の涙を…康太は拭った
「泣くな…男前が台無しだぞ!」
「こんな顔…どおでも良い!
お前が幸せで…笑っていたなら…オレも生きて行ける!
なのに!昨日のアレは……辛すぎて…
女房は…ぶっ倒れた!
康太ちゃんを見てこいと…女房は言った
愛する康太ちゃんを見てこいと!
オレも…愛するオレの康太を……見ねぇと…生きてる心地もしねぇよ!」
「麗奈は元気か…」
「女房は…三人目を出産してから…体調を崩してる…」
「三人目が難産…だったからだろ?
ホルモンのバランスが崩れてるんだよ…
病院へ行け…村瀬に言っといてやる…
診察して来い…子供は…見てやるし…
もうじき飛鳥井では託児所も出来る
そしたら、少し預けて…息抜きもしねぇとな…」
脇田は、うんうん…と頷いた
「誠一、伴侶の家族だ…そして、オレの第二の父親の安曇と、オレの果ての見届け人の戸浪海里、そして議員の三木だ!挨拶しろ」
康太に言われ…脇田は涙を拭った
「脇田誠一です!初めまして…じゃありませんよね皆さん…
榊さん家族は…スポンサーのパーティー会場で幾度も顔を合わせましたよね
戸浪さんは…先日…緑川牧場の跡地に建つ、建築の説計の依頼を受けましたね
安曇さんとも議員会館の打ち合わせで…幾度も逢ってますし…三木は…康太と鳴海とで飯を食いに行ってる…だから…
初めましてではなく…オレは飛鳥井康太の心の恋人…ですと言っとこ!
構わないよな?栗田をくれてやった時から…お前の心の恋人は…オレだよな!」
「構わねぇよ!伊織にも言ってあるしな」
榊原も「はい。お聞きしてるし…文句は言いませんよ!」と同意した
「栗田は…使えてるか?」
「伊織、栗田を呼べ…元師匠が来てるから…ってな。
栗田はオレの言葉を寸分違わず動いてくれる
失くせねぇな…アイツは。
それをくれたお前は…心の恋人しかねぇだろうよ!
今は弟も世話になってるしな…」
「悠太は…お前が目を着けただけあるな…
その才能…オレが育てて…お前へ還す…
オレは…お前の仕事をする…
お前は…オレの仕事を…最高のものにしてくれる…
オレの建築を愛してくれるのは…お前しかいねぇよ!」
「言い過ぎだ…賛辞なら…欲しいままに手にしたろ?」
「……心の籠らねぇ賛辞は…お世辞と変わらねぇよ!
お世辞なら…建築を知らねぇ奴でも言える」
「…その言葉…天狗になってたお前に、オレがお前に言った言葉やん…」
脇田は笑った
「あの時、お前と出逢わなかったら…オレは傲慢で…生け簀かねぇ…愚か者になってたよ
一度お前の手で地に落ち…這い上がる為に…
吐いた血ヘドは…無駄じゃなかった
でもな…小学生に鼻っ柱折られるなんて…想像もしなかったし…
しかも…お前に惚れて…懐刀の栗田まで…渡しちまった…
だから…総て自分でやって…行くしかなかった
今思うと…栗田を取られて良かった
お前の所で…お前の懐刀に収まっているなら…オレは満足出来る!」
脇田誠一は…熱い…男だった
暫くして…栗田が…駆け付けてきた
栗田は…脇田誠一の前に膝を着くと…頭を下げた
「お久し振りです…誠一さん」
「栗田…飛鳥井のお嬢を貰い受け…康太の側で…ラブラブ生活してるんだって?
子供いるらしいじゃねぇかよ?」
「はい。恋女房と……家も子供も康太に貰いました!」
「大切にされてるやん!」
「はい。大切に酷使してくれてます!
おじさんは疲れたと言うのに…もう一仕事して来いと…情け容赦なく…愛してくれますからね…我が主は…!」
「まぁ座れ!」
栗田はソファーに座った
脇田誠一と栗田一夫の侍従関係が見てとれた
栗田は…冷静になると…物凄い面子に驚いた
「皆様…康太を心配して?」
皆…黙って頷いた
榊原は「此処に来ないまでも、電話なら昨夜から鳴り続けてますよ?
須賀さんや、相賀さんも…神野に小鳥遊からも、学友や…議員…財界の重鎮からも…電話なら…掛かってきてますよ…」と現実を告げた
皆…絶句した
「そのうち痺れを切らして…来ると思いますよ!」
榊原はさらっと言った
安曇は…康太に近寄ると…
「昼から…議会が入ってます…
君が心配でね…参考人招致の後に控え室に行ったけど帰った後だったから…心配で来てしまったよ…
立派な姿でした!
私は…父親として…とても誇らしかったです!」
と言い康太を抱き締めた
「勝也…それだけど…」
「君の父親にしてくれると言ったではないですか!
今更…無しは聞きません!」
「でも、オレといると…」
「構いません…今度、食事をしてくれると約束して下さい!」
「勝也…」
「康太、私は…国会に戻らねばなりません…当然三木も…ですから…時間がないのです!」
「勝也…」
「今度、この父と夕飯を食べると、約束をしなさい!
私は…貴方の父として生きた日々を…恥じたりはしていませんよ?」
「勝也の…都合の良い日を教えて…
その日に合わせるから…」
「また電話をします!
この前…外遊に行った時、君にお土産を買って来たのです!
息子に買うんだって言ったらね…店員が…腕によりをかけて選んでくれたんだよ!」
「勝也…ありがと…」
康太は腕を伸ばした
安曇は…そんな康太を抱き締めた
「君が…苦しまない日々が続く様に…何時も祈っているよ…」
「ありがと…」
「それでは、行きます!」
安曇は康太を抱き締めた…他の人に頭を下げて応接間を出て行った
三木も康太に
「悪かった…」と謝った
康太は笑って
「許してんよ!美味しい店に連れて行け
それで許してやんよ」
と、許してやった
三木は康太を抱き締め…帰って行った
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