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第38話 役割分担

飛鳥井の家に帰ってくると…一生の怒鳴り声が…応接間から聞こえた 康太はドアを開け…何時ものソファーに座ると…何も言わず…見ていた 隼人が…康太に飛び付いて来ると…その腕に抱いてやった 慎一が…「すみません…隼人を…怖がらせてます…」と謝った 康太は何も言わず…隼人を胸に抱くと… 一生を、見ていた 一生は聡一郎を殴り付けた 聡一郎は…口から血を流していた 俯いて…下を見て…何も言わない… 康太は慎一に「隼人を…お前の部屋に連れて逝ってくれ」と頼んだ 慎一が隼人を連れて行くと、康太は足を組んだ 「一生、余裕もなく殴るのは…親の愛じゃねぇぞ!」 康太は…余裕のない一生に釘を刺した 「康太…すまねぇ…」 「それの…頑固は…昨日今日始まってねぇかんな…」 一生は…くそっ!と言い、ソファーに座った 「伊織、聡一郎を座らせてくれ」 榊原は…聡一郎をソファーに座らせた 「聡一郎、一生から聞いたか?」 聡一郎は、グッ!と唇を噛み…頷いた 「一応…おめぇの親だ!最後は教えといてやる! おめぇのいない日々は…朝霧には…堪えられなかったみてぇだな… 入院して…すぐの頃から、お前を探して…何時間も歩いていたらしい… 聡一郎がいない…と泣いて…探しているんだってよ 毎日……毎日……聡一郎、聡一郎、言葉は聡一郎しかなかった 朝霧は、良い親父じゃなかった… でもな…アイツの愛していたのは…聡一郎しかなかった… 四宮朝霧は…妻さえ死ななければ…良い父に終われたのに…」 聡一郎は、「だから?何なんですか?」と言い捨てた 康太は笑った 「だから?さぁ? オレの知った事じゃねぇからな… オレは手を出す気も、お前に意見する気もねぇよ! だがな、覚えとけ! オレは飛鳥井に関係なきものは…容赦なく切れるってことをな!」 康太は立ち上がり…冷たい瞳で…聡一郎を見た ゾッとする程の…冷ややかな瞳で…見られ… 聡一郎は身を竦めた 「お前が、遺骨を海に投げ捨てようが… 粗大ごみに出そうが…オレには関係ねぇ! オレに関係ねぇ事で動く気もねぇ!安心しろ!」 と冷たく言い捨てた 「だが親族が遺体を引き取らねば、戸浪の若旦那に迷惑が掛かる事は忘れるな!」 そう言い…康太は背を向けた 「一生、甘い事やってるな! 要らねぇと言うなら…敢えて遺骨を持って来て、そいつの目の前で…床に投げつけてやれ! 後は…生ゴミに出そうが…オレの知った事じゃねぇ! 死者に鞭打ちたいのなら…やるしかなぇかんな」 「……………!解った!」 「聡一郎、一生の言う事を聞けねぇなら… オレの側にいる資格はねぇよ…外で暮らせ」 と言い捨て…応接間から出て行った 一生は、康太の背中を見送り… 溜め息を着いた 聡一郎は…康太に…捨てられた…想いで…崩れそうだった 榊原は……ソファーに座っていた そして、何も言わず…事のなり行きを見守っていた 「聡一郎…要らねぇなら…自分の手で…棄てろ! 明日…俺は取りに行く…」 一生は…聡一郎に言った 「………棄てるのを…わざわざ…取りに行くと言うのか…?」 「そうだ!康太の命令だ!」 「…取りに行かなくて良い…」 「聞けねぇなら……飛鳥井を出ろ! 康太の側にいる資格すらねぇ!」 「……!」 「………俺等は…動けてこそ…康太と共に行ける! 今のお前は…頑な過ぎて…動けねぇだろ?」 「嫌だ!動ける…僕は…康太の側を…離れたくない…」 「なら、動けよ聡一郎!目の前の壁を越えろ!」 「…一生…僕に……アイツの…」 聡一郎は泣き崩れた 一生は、聡一郎を抱き締めた 「…また、バラバラになったら…俺が繋ぎ合わせてやる…! 何回だって…俺は…お前を…戻してやるから! 前を見ろ! 受け入れろ…! それが、お前が越えなきゃ行けねぇ… 壁なんだからよぉ」 聡一郎は号泣した バラバラになったら…繋ぎ合わせてやる… そうして…一生は、聡一郎を繋ぎ合わせて… この世に…踏みとどまらせて…いるのだ 一生にしか…出来ない…絆 康太が口を挟まない…と言うのが…心から…解った 聡一郎を作り上げた一生にしか…出来ない事だった 隼人を…受け入れ…康太の宝だと… 大切に…懐に入れる…仲間達… 康太を軸に…集まった…仲間だった 傷を持ち…その命…共に生きる…仲間達… 聡一郎は……一生が懐に入れてた宝なのだ… 繋ぎ合わせて…… 組み立てて…カタチを復元し…… ……それを生かしているのは… 飛鳥井康太 適材適所 配置し… その能力を引き出し 動かせる 絶対の信頼と…絆 飛鳥井康太と…共に在ろうと願う… 想いは1つだった 榊原は、その目に…彼等の…絆を目にして… 改めて想う 適材適所…違えはしない… 康太の手腕を…。 榊原は聡一郎に 「聡一郎…頑なな心では…見えるものも… 見えなくなってしまいますよ? 君には…一生がいる… 無くしたくないのなら…一生の言葉を聞きなさい…」と告げ…立ち上がった 自室に向かうと…リビングのソファーに、康太が座っていた 「康太…」と榊原がソファーの後ろから抱き締めると… 康太は振り返った 「伊織、どうしたんだよ?」 「甘えてるんです…」 榊原は康太に…擦り擦り…懐つく 「伊織…くすぐってぇよ」 「ベッドに行きますか?」 康太は榊原に腕を伸ばした 「…伊織…愛してるもんよー」 「僕も愛してます!」 「伊織…チューしてやる。横に来い」 榊原はソファーに座ると…康太を膝の上に乗せた 榊原に向い合わせで…抱き締めると…チューをする 貪る接吻を交わし…キスに酔いしれる… 榊原の指が…康太の服に忍び込む… 悪戯な指が…康太の乳首を弄る 「悪戯っ子だな…伊織の手は…」 康太は体を捩って…榊原の唇を舐めた 「好きでしょ?僕に触られるの?」 「好きだよ!決まってんじゃん」 「康太…ベッドに…」 「無理かもよ?邪魔が来るからよぉ…」 榊原は康太の服を捲ると…乳首を舐めた 「邪魔なんか…させない自信はありますけど?」 尖った乳首を吸う…舌で舐めて…転がす 「ぅん…感じちまう…」 「康太…僕の…解りませんか?」 盛り上がった股間の熱に…康太は…吐息で答える 「熱い…太くて…硬い…」 康太は…ゴクン…と唾を飲み込んだ 「欲しいでしょ?君のですよ?」 「伊織…オレを食って良いぞ…」 「何処から食べましょうかね♪」 楽しそうに呟くと…ズボンの上から…康太の熱を撫でた その時…バタバタ…と足音がして バターン…とドアが開いた 康太の腕は…怯む事なく…榊原を抱き締め…接吻をした 一生は……足を止めた 聡一郎は…一生を見た 「ゃん…あぁん…伊織…挿れてぇ…」 康太は…意地悪く…敢えて悩ましい声を出した 「康太…」 康太を抱く手が…服の中に入ってて… 一生は後悔する… 一生が困ってると…康太がじっと… 見ていた 「あんだよ?馬に蹴られに来たんかよ?」 康太が笑う 「康太…わざとだろ?」一生はボヤいた 「わざと…じゃねぇぞ!オレが退けば…伊織のすげぇ事になってる股間が現れるぜ…」 「まぢかよ…」 「伊織…邪魔が入ったじゃねぇかよ」 「このまま…挿れたら消えませんか?」 「なら、頑張るか♪」 康太が言うと、一生は慌てた 「ちょい待て!昨夜…やってましたやん…」 「僕は毎晩でも…出来るのですよ!」 榊原が、しれっと答える 「話を…聞いてやってくれねぇか?」 康太は「一生、お前が出した答えなら…聞く必要ねぇかんな… どんな答えでも…オレは受け止めてやる!」 と、一生に言い放った 一生は康太に飛び付いた 榊原は溜め息を着いた 「喧嘩の後は仲直りなのに…」と少しだけ残念そうだった 「すまねぇ…旦那…。康太と喧嘩したんかよ?」 一生がすまなさそうに…詫びる 「ええ。少しだけ…喧嘩したんですよ…。」 「……喧嘩の…原因はあんだよ?」 一生が気にして問いかける 「…君達の絆に…口を挟む気はなかったんですがね 聡一郎の事で…一生に言わせるのは…酷だと…言ってしまったんですよ… そしたら、康太が…怒りました」 「げっ!俺の事で…喧嘩すんなよ…」 「少しだけ康太はご機嫌斜めでした… 喧嘩の後は仲直りでしょ? 仲直りしてたんですよ?」 一生はアワアワ…となった 「すまねぇ…旦那…」 「許してあげますよ!座りなさい一生 そして、聡一郎!」 榊原は康太をソファーに座らせると…立ち上がった …………スゴい事になってる……股間に…冗談じゃなかったのを知った 熱を持つ股間を…物凄い精神力で律し、性欲を押さえ……深呼吸する 榊原のストイックさは……強靭な精神力から…来てるのを知る… 盛り上がった股間の熱を……無理矢理引かせ、大人しく眠りに着かせる… そして、何もなかったかの様に、お茶を出し、ソファーに座った 榊原がソファーに座ると、一生は話始めた 「明日…静岡まで、遺骨を取りに行く 聡一郎も連れて行く! 死んだ場所位…知っておきたいと…聡一郎が言うからな…連れて行く」 「そうか。ならば、泊まりで行くと良い それ位の金はあんだろ?」 「泊まってたら………悠太の入学式に…間に合わねぇ…」 「出なくて良い!お前は…聡一郎の事だけ考えてやれ!」 「康太…やっぱ…おめぇはひでぇ奴だ…」 康太は一生を抱き締めた 「一生、聡一郎をちゃんと納得させろ! 今は…それしか考えるな!良いな!」 「康太…」 「納得しなきゃ帰らなくて良い…付き合ってやれよ…」 一生は頷いた 康太は頭を撫でて…キスしてやった 「無くしたくねぇなら…手を抜くんじゃねぇぞ…」 「解ってんよ!」 「オレには…伊織がいる…お前はお前の…事をやれ!」 「解ってんよ!……俺には…聡一郎を納得させる…責任がある…」 康太は何も言わなかった 「ならば、添い寝してやんよ!」 「伊織と……エッチは?」 「それは…何時でも出来る!心配すんな!」 結局やるのかよ!……っと一生はボヤいた 「あったりめぇだろ!オレは伊織に惚れてんだからよぉ!」 康太は一生額にデコピンを食らわせると…… 笑った 一生は額を押さえた 「聡一郎…お前が許さねぇとな…何時まで経っても…その場所に留まって…迷子の可哀想な…聡一郎のままだぞ!」 聡一郎は……解ってます!と康太を見詰め…答えた 「ならば、良い!」 康太は眠そうに…目を擦っていた 「康太…眠いんですか?」 「ん…眠みぃ…」 「夕飯食べて…寝ますか?」 「ん。食う…」 榊原は康太を抱き上げると…キッチンへと向かった 康太は……食べてる最中に…眠りに着いて… イビキをかいていた 榊原は、康太を…寝室に連れて行くと…一生と聡一郎を交えて…雑魚寝した その晩…康太の寝相に…一生は何度も殴られ… 聡一郎は蹴飛ばされ… イビキの大音量に…苦笑した 「子猫の寝方は…何処へ行ったん…?」 一生がボヤいた 「だから、そんな時も有ります…って言ったでしょ? 何時じゃ有りません…寝相が凄いですからね…僕も被害はあってますよ…康太の足蹴りに…時々…玉を蹴り上げられ…のたうち回ってる時も…有ります…」 一生は…榊原に同情の瞳を向けた 「この子の寝方は…殺人的ですからね…」 榊原は苦笑した 「鳩尾に入ると…息は出来ないし…大変です」 「それでも…愛してるんだろ?」 一生は…榊原に確認した 「愛してますよ。康太しか愛せません」 「こんなに寝相も…イビキもすげぇのに?」 「凄いですね…最初見た時には驚きました 寮で…康太がベッドから落ちた時があったんです 凄い…ドテンッて音があって…僕は飛び起きました なのに康太は……床に落ちても…寝てるんで驚きました 後…狭い部屋中に響く…康太のイビキに…飛び起きたもんです ですからね…康太を初めて抱いた時から…覚悟をしてました… 寝相とイビキは…同室になって…初めて知りましたがね… そんなもの……どうでも良い程…愛してるんです するとね、寝相もイビキも…康太の一部だと…気にならなくました… まぁ…玉を蹴り上げられるのは…困りますけどね… 後…この子は…無意識なんですが…誘うんです 無意識に……男を、その気にさせて…気付かない とても、危険な子なんですよ…」 榊原は苦笑した… 「康太…だからな…」 一生も苦笑した 「体を…擦り付けて…誘うんですよ… 甘い臭いで…クラクラにさせて… でも、いざ食べようとすると…本人は驚いて…何で…?って顔をするんです… 無意識な分…タチ悪いです……」 「康太は、本当に無意識だかんな… 誤解して…ストーカーになった奴…多かった 無意識に男を煽るからな… 康太の側にいる俺等は…そんな奴等を排除して…遠ざけて…結構大変だっせんだぜ!」 「康太に擦り寄られたら…理性も尽きます… なのに…性欲には…無関係な顔してるんですからね… 時々…誘いと無意識と…解らずに康太を怒らせます… 誘ってるのに…って怒るんですが…区別しろってのが…至難の技なんですがね…」 榊原が呟くと…一生は榊原の背中を撫でた 「康太が欲しがるのは旦那だけだ! 惚れてる奴は多いけど、康太がこの世で欲しい人間は…旦那、お前だけだ!」 「一生……」 「中学の頃から…その瞳は…お前しか捉えてなかった… お前を焦がれて…泣いた康太を…俺等は知っている…」 榊原は辛そうに…瞳を閉じた 「時々…康太は哀しそうな顔をするんですよ… その時のお前はオレを嫌っていた…って… 僕の欲望で…汚して良い子じゃないと…逃げてた自分が…怨めしいです…」 「旦那…今更だ…!過去はくれてやれねぇ… お前の総てで…康太を愛して…やってくれ!」 「愛してますよ…康太だけを愛してます 今までも…この先も…愛する人は… 唯一人…しかいませんからね!」 「お前は……共に在る道を選んだんだもんな…」 「ええ。僕は共に生きる…道を選びました 総てを…擲って…共に在る事を選びました」 「お前等を引き裂ける奴なんていねぇよ…」 「引き裂かれるなら…確実に…その息の根を止めます! 康太を殺せば…僕も死にますからね…」 一生は慌てた 「物騒な事を言うな!」 と怒った 「想いも…覚悟も…決めている…と、言う話してるんですよ!」 榊原はそう言い、康太をベッドの中に入れ…一生も聡一郎も抱き締めた 「少し寝ましょう…」 「そうだな…」 一生は、康太を抱き締め…瞳を閉じた

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