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第40話 苦難①

一生は聡一郎に 「康太は…入院してるらしい…」と告げた 「何故…僕達が…いない間に…何がありましたか…」 呆然となって呟いた 一生が…車を酷使させ…病院まで向かう 病院の駐車場に車を停めると… 一生は走った 聡一郎も後を着いて…行った! そして、病室のドアを開けると… 康太を抱き締めて…離さない…榊原の姿が目に入った 榊原は……ベッドに座り…康太を抱き締めていた 誰にも…触らせず…康太を抱き締めていた 康太の手は…榊原を抱き締めもせず…ダラン…と、投げ出されていた… 頭にも…体躯にも…包帯が巻き付けてあった 榊原はキツい瞳をして…康太の横には…誰も近付けなかった 一生は言葉が…出なかった… 聡一郎は唖然として…訳が解らなかった 病室の中には…飛鳥井の家族と…榊原の家族… そして、兵藤…と三木…安曇と戸浪もいた どう言う訳か…身なりの良い…執事風の人も…固唾を飲んで…康太を見守っていた 一生が…康太の側に…来ようとすると 「来るな!…今は…誰も来るな…」と一生を制止した 「康太の側に…誰も…来て欲しくはない! 無理矢理来るのなら…康太の息の根を止め…僕も共に逝きます…」 榊原の精神状態は…極限を迎えていた 蒼い龍が…哭いていた… 愛する…康太を手に…誰にも来るなと…哭いていた 榊原は……康太を…誰にも触らせたくはないのだ… 榊原の想いが…痛い程に…伝わる 一生は、康太を心配して駆け付けた人達に… 病室を出てくれと…頼んだ 「伊織は興奮してます…。 申し訳ないのですが…落ち着かせるので少し時間を下さい…。 暫くの間…席を外して、病室を出て下さい…」と告げ… 見舞いに来ている人間を…一旦…病室から出て行って貰う… 病室にいた人達は…康太の意識はなく…暴行を受けたと言うなら…伴侶の想いは…半端ではないのは理解していた だから……言われ…了承して…病室を出て行く事にする 「瑛太さん、最上階の展望室にでも行ってて下さい…何かありましたら呼びに行きます」 瑛太は…なにも言わず頷き…病室の人を…伴い、病室を後にした 一生は、聡一郎や隼人も…出ていかせた… そして、誰もいなくなると…慎一に…声を掛けた 「何があったよ?」 と、問い掛けると…慎一は話し出した 「康太は、自分の事は見えません… ですから…不意打ちだったと思います… 守衛の一人が…康太の車を…売り飛ばそうとしたんですよ… でも、あの車には…最先端のセキュリティな組み込んでるので…バレたんですよ 犯人は…飛鳥井に恨み持つ者と…今夜で解約される…守衛の人間でした 蔵持の会社から警備員がやって来て、そいつ等の悪事はバレて追い込まれて……真贋の部屋に…押し込んで来て…部屋を占拠したんです… 力哉も入院してます…止めに入った力哉を…襲い…康太を襲った 康太は…壁に頭を何度も打ち付けられ… 気絶してる所を……犯そうと…したんです …持っていたナイフで…服を皮膚ごと…切り裂き……」 後は…言葉にはならなかった 「犯されたのか…」 康太の中に…榊原以外が挿れれば… 想像するのも怖い… 「挿入は…されてないと思います… 意識を取り戻した…力哉が伊織に電話を入れて…発覚しました 伊織が…真贋の部屋のドアを蹴破り…部屋に入った時…康太は…血だらけで…男に組み敷かれてました… 弥勒が…康太を守り…本体を飛ばして来てました… 紫雲も…駆け付けて…康太を守ってました 康太を襲った犯人は…現行犯逮捕されました 力哉は…脳挫傷…する程の…頭にダメージを受けてます 康太も…頭の傷も…体躯の傷も…深いです」 説明を受け…一生は…涙を流した 「俺が…殺して来てやる!」 一生が言うと…慎一は一生を殴った! 「康太は…仇を取られても喜びはしない!」 一生は、涙を流した 「…康太の幸せを…奪うモノは…許したくねぇんだよ!」 「それでも…だ。仇は討つな…。 主は…そんな事…望みはしない…」 慎一は…一生を抱き締めた… 一生は、手負いの…獣みたいに…人を寄せ付けない…榊原の姿に…胸が…痛かった 「…旦那…俺だ…一生だ…」 榊原の瞳が…一生を見詰める… 一生は…細心の注意を払い…そっと…榊原に近付いた… 「旦那……」 一生は…榊原に近寄り…腕を伸ばした 榊原の頭に触れ…優しく…引き寄せ…抱き締めてやった 「一生…」 榊原が……一生の名を呼んだ… 「…旦那……」 力強い…腕で…榊原を抱き締め…榊原に問い掛けた… 「康太は…挿入されていたのか?」 榊原は首をふった… 「弥勒と…龍騎が…康太を守っていました… だから…挿入は…されてません ですが…不本意な…行為はされました… 康太は…潔癖症な所が有りますからね……気が付いたら…それが…怖いです…」 考えるだけで…それは怖い… 康太は…潔癖症な所がある… 榊原以外の男に抱かれれば…悩んで苦しむだろう… 「弥勒は…泣いていました… 咄嗟に…何が起こったか解らず… 出遅れた…と詫びを…言ってくれました… 龍騎も…異変に気付いた時には…康太の意識が無くなっていた…と言い泣いていました 飛鳥井に警察を呼んだので… 若旦那や安曇さんや…貴史が三木を連れてやって来ました… 蔵持善之助さんの…プレゼントした車ですからね…執事の方が…飛んできてます」 一生は……あの執事の様な方は…あの車をプレゼントした…人間の使用人か…と納得した 「康太の傷は…?」 「……頭の傷は…縫いました… 体躯には…ナイフで切り裂かれた…傷が着きました… …………それより…強姦未遂が…」 「何されてた?」 「…アイツ等は康太の服を…脱がす為に… ナイフで皮膚ごと切り裂いたのです! 切り裂かれ…全裸にされ…康太は…血塗れでした そして…犯人の…精液まみれでした…… 潔癖症な所が有りますからね…康太は…」 康太の手には…点滴が…繋がれていた 「多分…康太は…触られたくないと…暴れるでしょうから…抱き締めてます… 精液も…久遠医師に頼んで流してもらいました… そしてアルコール除菌も…してやりました 目を醒ました時に…嫌がりますからね…」 康太の体躯には…包帯が巻き付けてあった 「力哉を…見舞ってあげて下さいね」 「解ってる…」 「康太が…目を醒ますまで…誰も…いて欲しくないです」 「解ってる…も少ししたら…俺も慎一も出る…」 「……康太を…守れませんでした…」 「…お前が悪い訳じゃねぇ! ならば、俺は…康太の側にすらいなかった…」 一生は悔しそうに…言葉にした 「…一生…」 榊原は一生の胸に…顔を埋め…泣いた 一生は榊原を胸に抱き締めた 「一生…二人きりにして下さい」 「何かあったら…言え…良いな!」 榊原は頷いた 一生は慎一と共に…病室を後にした 榊原は康太を抱き締めていた… 「……ぅ……嫌だ……」 魘された…康太が…痛々しかった 「離せ!離せ!………伊織…伊織!」 康太は…叫んでいた きっと…ずっと…榊原の名前を叫び続けていたのだ… 「康太…!康太!僕はいますよ!」 「伊織…伊織…助けて…伊織…!」 榊原は康太を揺すった 暴れると…怪我が開いてしまうから… 「康太!康太!僕はここにいます!」 康太が…瞳を…開くと…涙が溢れた 「伊織…伊織…オレ…穢れた…もう伊織に愛してもらえない…」 「穢れてなんていません!君を愛してます!」 「伊織…だって…オレ…汚れてる…」 「汚れてなんていませんよ!」 「だって…精液で…汚された…」 「僕が消毒してあげました…だから汚くないです!」 「伊織…触るな…汚ない…」 「嫌です!君は僕のです!触ります!」 「伊織しか…触られたくないのに…」 「もう…僕しか触りません…忘れなさい」 「伊織…」 榊原は康太に…優しくキスを落とした 「僕の愛する康太です…」 榊原は康太の体躯を舐めた… 「伊織…汚ない…ってば…」 「久遠医師に頼んでアルコール除菌して貰いました! 次は…僕の…キスで消毒してあげます」 榊原は康太の体に…キスの雨を降らした… 「君は誰のモノですか?」 「…………」 「君は誰のモノですか?答えなさい!康太」 康太は…俯いた… 「康太、顔を上げて、僕を見て」 康太は…顔を上げて……榊原を見た 「君は誰のモノですか?」 「…伊織のモノではいられねぇ…」 「君の総ては誰のモノですか?」 榊原は、何度も康太に問い掛けた 榊原の舌が…康太の体躯を舐め…榊原のモノにする 「……榊原伊織のモノでいたい…」 無くしたら…生きてはいけない… 無くしたくなど…ないのだ 榊原は「僕のモノでいたい…ではダメです!」と叫んだ 「伊織のモノでは…いられねぇのか…」 康太は…泣いた… 「君は…僕だけのモノなんですよ! 榊原伊織のモノなんですよ! 違いますか?ならば、言いなさい!」 榊原はビシッと言い、康太を見詰めた 「榊原伊織…だけのモノだ…」 「そうですよ!君は僕だけのモノです! 抱いてあげます…康太。 僕だけの…モノだと教えてあげます!」 榊原はそう言い…康太に愛撫を施した 「伊織…んっ…伊織…」 康太は…自由の効く手で…榊原を抱き締めた 「傷が…開かないかな…」 「開いても良い…伊織に消毒して欲しい…」 「そんな可愛い事を言うと…止まれませんよ?」 榊原の指が…康太の穴を…解す… 榊原は柔らかな穴を解し…康太を抱き上げた 肉棒の上に…座らせ…挿入した 「康太、この中は守ったんですよ!君は! 僕だけの…この中には誰にも許してない だから、悩まなくて良い。 精液なんて流せば…跡形もない! 消毒して…僕が触れば…愛する康太のままです!」 康太の中の…榊原が存在を主張する 「君は…誰のモノですか?」 榊原が肉棒で貫き…腰を動かしながら…同じ質問を康太へと投げ掛けた 「ぁっ…あぁん…伊織の…オレの総ては…榊原伊織のモノだ!」 康太は答えた 愛する男のモノでいたいと…願いを込めて… 動くと…痛みに…襲われ… 榊原が動くと…快感に襲われる… 榊原のモノになる 汚ないと…触られなかったら…どうしよう… そう考えると…死にたくなった でも…触ってくれた 舐めて…触って…消毒してくれた 「伊織…伊織…愛してる…」 「僕も愛してます…僕の妻は未来永劫…唯一人… 変わりは…いないんですよ!」 「うん。うん。ぁん…イイ…伊織… お前のモノにして…全部…綺麗に消毒してくれ…」 榊原は康太を抱いた… 病室だと解っていても… 康太には…必要な行為なのだ… これで時間をおけば…康太は頑なになる 榊原は…康太の欲しがるだけ…抱いた… そしてキスして…榊原の舌と指で…消毒した 榊原は…康太の中から抜き…処理をして、身支度を整えてから、一生に電話を掛け……来てくれ…と頼んだ 「一生…誰も連れず…来てくれませんか?」 「慎一は?ダメか…」 「慎一なら良いですが…他は…連れて来ないで…下さい」 一生は解った…と言い電話を切った 電話を切って…慌てて康太の病室に入ると…… 病室に…夥しい…精液の臭いが充満していて、一生は足を止めた 榊原は、そんな一生に、声を掛けた 「一生…シーツを貰って来てくれませんか? 慎一…体を拭くのを…手伝って下さい」 一生はシーツを貰いに行き…慎一はナースセンターに…タオルを貰いに行った そして、戻って来ると、タオルを洗面所のお湯で濡らし…榊原に渡した 榊原が康太を拭く… 榊原の手で…清められて行く 丁寧に康太の体を拭いていると…一生がシーツを持ってやって来た 榊原は…全裸の康太を…綺麗に拭き…中から精液を掻き出した シーツを剥ぎ取り…康太を座らせると…下着を履かせ、パジャマのズボンを履かせた シーツを変えている時は康太を椅子に座らせ…慎一に支えさせた シーツを変えて、部屋の換気をした そして、バッグの中から香水を取り出すと…部屋中に香水を吹き掛けた 「一生…匂いませんか?」 「大丈夫だ旦那!」 榊原は康太をベッドに寝かせた 着替えさせて…寝かせたけど… 流石と…包帯に…精液が掛かっているのは…勝手には触れず… 久遠医師に頼み変えて貰った 「怪我人を抱く奴なんざ初めて見たぜ!」と嫌みを言われ 榊原は苦笑した 傷口は開いてなく…消毒をして…包帯を変えて貰った 榊原はベッドに腰掛け、寝そべる康太の髪を撫でた… 康太は…その手に擦り寄り…甘えた 「伊織…側にいて…」 康太の腕が…榊原の腕を掴む 「離れませんよ…眠りなさい…」 康太は首をふった 「これが…夢だったら…生きていけねぇ…」 「夢じゃありませんよ…」 康太は起き上がると…ベッドに腰かける、榊原の膝の上に座り…胸に顔を埋めた 「飛鳥井の家族も…他の方も…展望室にいます…呼んでらっしゃい」 榊原が言うと一生が 「大丈夫…なんかよ?」 と心配して声を掛けた 「大丈夫ですよ!康太は僕がいれば生きて行けます!」 榊原は、キッパリ言い捨てた 一生は、病室を出て…展望室に向かった 暫くして…一生がゾロゾロ連れてやって来た 康太は…榊原に、縋り着き…震えていた 「……伊織…」 「康太、皆さん君を心配して来て下さってるんですよ?」 「伊織…伊織…」 康太は…首をふって…榊原に抱き着いた 誰も…康太には…近寄れなかった 康太の受けた…精神状態を考えれば…当たり前なのだが… 「君は誰のモノですか?」 「榊原伊織…お前のモノだ…」 「なら、生きて行けるでしょ? 僕は…ずっと側にいますから!」 康太は…震える…指で榊原を掴み…頷いた 康太は…飛鳥井の家族や、榊原の家族、戸浪、安曇、三木、兵藤を見据えて… 「オレは…大丈夫だから……」 と…言葉にした 康太は…榊原の胸に顔を埋め… 「瑛兄…」と声を掛けた 瑛太は…康太へは近寄らず… 「何ですか?」 「悠太の入学式…オレは行けねぇ…」 康太は…悔しそうに泣いた 「悠太の入学式には、私が出ます! 母も父も…出てくれます! お前は…心配せず…治す事だけ考えなさい」 「悠太の入学式…行きたかった… 兄として…最高の…入学式を迎えさせてやりたかった…」 康太が…呟くと…三木が 「ならば、私が君の代わりに、出ます! 私は君の持ち物です…君の為になるのなら、悠太君の入学式には出るとします!」と康太に言葉を掛けた 戸浪も「私も…出席します…君の代わりにはなれません!でも君の思いを…抱いて…参加は出来ます!」と康太に…伝えた 安曇も「私も…出て悠太君の…姿をビデオに納め君に持ってきます!」と叫んでいた 蔵持善之助の執事は「康太様が望むなら…この佐伯…何としてでも…望みは…総て叶えて差し上げます!私も…入学式には参加させて戴きます!」と康太に…必死に…伝えていた 兵藤貴史は「俺も出るぜ!お前の名代として出てやる!皆が…お前を心配している! だから、治しやがれ康太!」と叫んだ 康太は…「貴史らしいな…」と笑った 清四郎も真矢も笙も 「康太、君の代わりに…私達も悠太君を…見届けに行きます!だから、君はなにも心配しなくて良い…」と言葉を送った 康太は…泣きながら… 「ありがとう…」と答えた 榊原は腕の中の康太を撫でた 「伊織…少し疲れた…」 康太が言うと…榊原は 「申し訳ありません…また、康太に逢いに来て下さい」と言い、面会の方に…終わりを告げた 康太は…ベッドに寝かされ瞳を閉じた 面会の…方々は…康太に未練を残し…この夜は…帰宅することにした 康太は…飛鳥井の家族や榊原の家族…見舞いの方々が帰ると…天を仰いだ 「弥勒…力哉は?」 『……頭を少し強く打ち衝撃を与え過ぎた…』 「力哉の命…尽きそうなのか?」 『嫌…尽きはせぬ。だか…意識が戻らねば…時間の問題であろう…』 「ならば、オレが治してやるしかねぇな」 『…お前は…まだ無理をするな…』 「それでもだ!弥勒!オレの為に生きてくれてる奴が死にそうなら…オレは出る しかも力哉はオレが拾って来た責任もある! 安西力哉にしたのは、オレだ! アイツを生かしているのは…オレだ ならば、オレが責任を取らねぇでどうするよ?」 『お前らしい…ならば、俺も出るしかねぇな! …今は少し…様子を見て必ず動いてやる!』 「解った…弥勒…助けてくれてありがとな! お前と龍騎が守ってくれたから…オレは総て犯されなくてすんだ…」 『康太!お前を愛して触って良いのは…伴侶殿一人! 戯れに…お前に触るなら…俺は…許してはおかねぇ! お前は潔癖症な部分がある…その命…… 惜しみもなく投げ出して愛を貫くのであろうて… そしたら永遠に…お前との別れだ… そんなの!俺に堪えれる訳ねぇだろ!』 弥勒は…吠えた… 康太への想いを…堪えきれなくなって…吠えた 「弥勒…」 弥勒の想いの総ては康太へ向かう… 唯一無二の康太の幸せを…願う… 「弥勒!オレは伊織がいるなら生きて行ける… 伊織が愛してくれるなら…この世に留まれる この愛を…無くさなきゃ…オレは生きて行ける」 『伴侶殿…康太を頼みます…』 弥勒の…声は震えていた… 榊原は「弥勒、僕もこの命を懸けて…康太を愛し抜きます…ですから、安心して下さい」と言葉を送った 『…力哉の命…龍騎がこの世に結んだ… 変化が有れば…お前に教える 変化がない時も…お前に教える… これより…力哉の深淵に入り…状況を龍騎が見て参る…待っててくれ』 「ありがとう…弥勒」 『…康太…明日…本体で見舞いに行く…』 「待ってるよ…」 『ではな…』 弥勒の気配は消えた 「伊織…」 「はい。」 「この個室の横は…空いてんのか?」 「個室なんて1日で何万もしますからね… そうそう…入らないんじゃないんですか? 一生に確認に行かせます。一生頼めますか?」 榊原に言われ一生は病室を飛び出し…ナースセンターに飛び込んだ そして状況を聞いて舞い戻って来た 「空いてる…」 「伊織、久遠医師を呼んで来て、力哉を器具ごと…横へ運べ!」 「解りました。一生、聡一郎、慎一、お願いします。 僕は康太の横を離れたくはないのです!」 康太を抱き締め…榊原は言う 一生は康太に深々と頭を下げた 「あんだよ?一生?」 「色々…お前には礼を言わねぇといけねぇからな…」 「一生、お前は誰の為に生きてるよ? オレの為に生きてくれてる奴ならば…オレは動くのはあたりめぇなんだよ! さくさく動け一生!そしてお前は力哉に着いていろ!」 「力哉には……若旦那が着いている…」 「若旦那が?……そうか…あの人の愛か…」 一生は、聡一郎と慎一を連れて病室を出て行った 康太は…息を吐き…ベッドに…寝そべった 「無理はしてはダメだと…夫としては言っておきます」 榊原は笑って、康太にキスを落とした 「伊織…」 「何ですか?」 「ありがとう…」 「??……お礼を言われる様な事しましたか?」 「オレを愛してくれて…ありがとう」 「それは、お礼は要りません! 愛してる…だけ、言いなさい! 君を愛した…青龍に失礼ですよ? 遥か昔から君だけを愛してきたのに…お礼なんて言われたら…青龍は悲しくて泣いてしまいますよ…」 「泣くのは…困る…」 「なら、愛してる…って言いなさい」 「…愛してる」 「僕も愛してますよ…奥さん」 「お前が…オレを生かしてるんだな… 愛して…オレを支えて…作り直してくれる 壊れても…バラバラになっても…必ず…お前が…オレを愛して…生かしてくれる…」 「君が生きなきゃ…僕は死ぬんですよ… 君と僕は…一蓮托生…共に在るんですからね」 「伊織…」 「君は…僕だけの君に戻りました なにも怖がる必要などありません! 前を向いて…立ち向かって行きなさい! 怯むことなく…行けば良い… 必ず…君の後ろには僕がいます! だから、君は…迷う事なく…信じる道を突き進めば…良いんですよ!」 康太は…頷いた 暫くして一生が病室に戻って来た 「力哉を隣の部屋に移した… 器具も総て…運び込み…完了した」 「そうか…ならば、お前は…力哉に着いてろ」 「康太…」 「手を取った…責任は取れ一生! お前が…付き添うのはオレの所じゃねぇ」 「解ってんよ…でも…お前の側にも…いたいと言うのは…許されねぇのか?」 康太は…手を伸ばし一生を呼んだ 「一生…来い…」 本当は…怖いだろうに… 康太は一生へと、手を差し出す 一生は康太の手に導かれ…近寄ると… グイッと腕を掴まれた 「バカだな…一生は。 オレの側にいてぇならいれば良い 来るな…とは言ってねぇだろ?」 康太の優しい指が…一生を撫でる… 「康太…」 一生は泣いた… …怯えてる康太を見れば……触れない… 遠くから康太を見ているしかないと思っていた… 見守るしかないと…思っていたから… 一生は驚き…そして康太の傷を労るように…抱き締めた 榊原がいたからこそ…康太は前へ進めるのだ… 榊原伊織と言う、康太の愛する男が…康太を愛して…組み立てた そして、前を向いて…歩けるように…その愛で支え…見守る 榊原伊織にしか出来ない…愛と言う…特効薬だった 一生が力哉の病室に行くと…入れ替わりに戸浪が現れた 「若旦那…」 姿を見つけ…康太は…笑った 「あんな君の姿を見たら…帰れなくてね…」 「全員、帰ってねぇだろ? 展望室に…まだ全員残っていやがるし…」 「帰れないでしょ?」 「オレは…伴侶が男だと言う事を恥じない 恥じてはいないが…世間は…男なら誰でも良いのかよ…と、誤解する ホモだから…犯してやるよ…って言われ… 蹂躙されるとな…心は折れる… 若旦那…オレは…伴侶を無くしては…生きられはしない人間なんですよ…」 「解ってますよ!誰よりも…君を側で見て来た人間ならば…君の強さも弱さも…伴侶の愛で支えられ…乗り越えている事を! 榊原伊織は静かで寡黙な男で、君の後ろに控えているが…誰よりも君を愛して生かしている… 君を知れば…総ては…見えて来ますよ! 私も…君を恥じたりはしません! トナミ海運は今後も飛鳥井と共に在る 私は、君の果てを見届ける者です! それに変わりなど…有りはしないのです!」 「若旦那…」 「君を抱き締めて…あげたいのですが…無理でしょ?」 「構いませんよ…愛する男の手で…消毒してもらいましたから。 本当に…アルコール除菌もされましたがね」 康太は…笑った 榊原は潔癖症な康太の為に…愛を注いで…作り直したのだ 戸浪はそれを承知して…康太の側に寄って…そっと手を差し出した 頬に触れると…ビクッと体は動くが…逃げなかった 細心の注意を払い…康太を胸に抱く 優しく抱き締めると…康太は…息を吐いた 「若旦那…オレは…大丈夫です でも、本当に…悠太の入学式に出れないのは堪えます…あの子はオレが育てた子です 子供の悠太を貰い…オレが育てた… 悠太の行事は総てオレが出ました 皆の所は親が出るのにな…悠太の行事はオレが出る… それで冷やかされ…虐められても…悠太は兄を庇うんです… 俺は兄がいればそれで良い!と、言い捨てるんです… そんな悠太の…行事は…オレが……」 後は…言葉にならなかった… 小さな肩が…震えていた 「君の想いを抱いて…私は悠太の入学式に出るよ 万里は妻に出させます 私は…悠太を君の代わりに見届けて…出ます!」 「若旦那…」 「君の子供も同然の子ですよ…きっと立派に…君の思いに応えてくれますよ」 康太は何度も頷いた 「君を抱き締められて…安心しました やっと、帰る気になりました。 また顔を出します…無理なしいで…下さいね」 康太は頷いた 戸浪は康太の頬にキスをして…帰っていった 榊原は慎一に… 「慎一、頼まれてくれますか?」と声を掛けた 「はい。良いですよ」 「寝室のクローゼットに…悠太にあげる筈の制服が出ています! 一着だけ出ているので、直ぐに解ります それを持って、悠太を連れて来て下さい」 寝室の鍵を慎一に渡し…榊原は頼んだ 慎一は鍵を受け取り 「解りました。貴方の頼み…聞いて連れて参ります!」と慎一は応えて…病室を後にした 「伊織…頼みがある…」 「何ですか?」 「蔵持の執事を呼んでくれ… そして蔵持善之助が来たら…執事と、共に…病室を出てくれ このまま…執事を引き留めてもおけねぇし、泣き暮れてる暇なんか…ねぇのに、使えねぇだろ?頼めるか?」 「…頼まれたくないですけどね…良いですよ 聞いてあげます。その変わり…キスして」 康太は榊原の唇に…唇を寄せ…キスした 榊原は康太の頭を抱え…貪る接吻をかわした トロン…とした瞳になるまで…貪り…唇を離した そして、展望室に執事を呼びに向かった 執事は…榊原に康太が呼んでます…と告げられ…康太の病室に向かった 執事は、康太に頭を下げると 「康太様…お呼びだとか…何なりとお申し付け下さい」 「善之助を呼べ」 「え…大丈夫…なのですか?」 「善之助が来たら…伊織は部屋を出る…」 「宜しいのですか?伴侶様…?」 「病室に来る前に…隣の部屋に行ってます 何かあれば呼びに来て下さい」 執事は深々と榊原に頭を下げた 「申し訳ありません…泣き暮れて…嘆く主を…正してくれるのは康太様しかいません」 執事は主に連絡を入れてくると…病室を出た行った 榊原は…康太を抱き締め…背中を撫でた 暫くすると…榊原は力哉の病室へと…向かった 病室には康太だけとなった 榊原がいなくなって…ドアがノックされ…開かれると…蔵持善之助が現れた 「康太…康太…」 泣きながら…康太のベッドに向かい…泣き崩れた ベッドに突っ伏して泣く…善之助の頭を撫でた 「私の…プレゼントした車のせい…なのですね」と善之助は罪悪感に苛まれていた 「善之助…頼みがある」 「何ですか?」 「飛鳥井の駐車場に、最新鋭のセキュリティを備えた車庫を作るのに協力してくれ… …駐車場を建て替える 会社の方は今日からお前の警備会社の社員が常駐してくれるんだろ? ならば安心だし! …後は家の駐車場だな…」 「協力しますよ!!飛鳥井建設と全面的に話し合い、彼等を動かして…最新鋭のセキュリティの入った駐車場を作りますよ! そしたらマンションとか…ビルとか…共同して開発しませんか…なんて君が言いそうだ…」 「解ったか…流石だ善之助 建築と警備会社の連携はよく在るけどな 総てのセキュリティシステムを構築させた建物を…オレは目指す!」 「惜しみ無く協力します…ですから…君を抱き締めさせて…下さい」 「協力しなくても…抱き締めれば良いじゃんか? 強力しなきゃダメってオレは…言ったのかよ?」 「君は…そんな打算的な事は言いません… でも……君は…潔癖症な所があるから…」 「大丈夫だ!無くせねぇ…伴侶が…オレをこの世に繋ぎ止めてる だからな…オレは…生きていけんだよ!」 善之助は、康太…と言い…優しく抱き締めた 「康太…一目…伴侶殿に逢いたいと…言ったら?どうしますか?」 康太の命を支える存在ならば… 見たい…気持ちも… 見たくない…気持ちもあった そして……心を決める… 康太を無くしたくはない… ならば、康太の唯一無二を… この目で…見なければ… と、心に決めた 「康太…伴侶殿に逢わせて…下さい」 「無理しなくて…良いぞ?」 「君の…唯一無二の存在ならば…見ておきたい… 話は…出来ませんが…見たいんです…」 「オレの伴侶は…寡黙な男だ…ベラベラ喋る奴じゃねぇ…お前が…黙ってれば何も言わねぇよ…。そう言う男じゃなきゃ…オレの横には置いておけねぇかんな!」 「ならば…お逢いしたい…」 「執事さん、隣の病室に…伊織を呼びに行ってくれ…伊織だけ来いと…言ってくれ」 解りました…お連れします…と執事は頭を下げて…部屋を後にした 執事に連れられ榊原は部屋に入ると…康太の側には行かず… 離れた場所で…佇んでいた 「流石ですね…君の選んだ男は…弁えてらっしゃる… 蔵持 善之助です!榊原伊織さんですね。」 榊原は静かに…礼をして 「初めまして…榊原伊織です。」と答えた 優しく康太を見守り…決して目立ちはしない 蔵持善之助は榊原に手を差し出した 榊原は、その手を握り締め…握手をした 静かな雰囲気の…男は…仕種も…動作も… 持っている総ての気質が…穏やかで…寡黙だ 空気の様に気配を消して…その場の邪魔にならぬ様に…要られる存在… 弁えて…康太を動かす そして…康太から目を離さず…何かあれば… 瞬時に動く… 機敏さと…瞬発力を秘めた…強さを垣間見る 強靭な精神力で、康太を支える 康太は…この男に支えられ…生きているのだ 善之助は… 「榊原伊織さん…御目にかかれて…良かった また、康太に逢うのを…許してください…」 と、榊原に話し掛けた 「康太に好きな時に逢ってやって下さい 康太に逢うのに、僕の許可など要りません 康太が逢うと言うのなら、康太は逢いに行きます。 それが、飛鳥井康太なのですから。」 榊原の言葉に…誰よりも…飛鳥井康太を理解して… 飛鳥井康太の立場を解っているのを知った 善之助は康太の側に行くと 「君の伴侶は…素晴らしい方だ。 私は…やっと安心して仕事が出来ますよ」と笑って康太に伝えた 「また、逢おうな善之助」 「はい。でも君は…隣の秘書の方が…意識を取り戻さないと…逢ってはくれないでしょ?」 「力哉が…意識が戻らねば…オレは退院しねぇしな…入院中だ! 無理は禁物だかんな」としれっと言った 「脳外科のスペシャリストを御呼びします その方に…依頼をかけます! 一度見て貰って下さい…君を命を懸けて守ろうとした…勇敢な秘書だ…治してあげたい」 「……すまねぇな…善之助」 「また来ます…無理なさらないで…ねっ!」 「なるべく聞いてやんよ!」と言い康太は善之助にチュッとキスした 「康太…」 榊原は顔色1つ変えていなかった… 善之助は微笑み…康太の頬にキスした 「また来ます!」と言い…善之助は帰って行った 善之助が帰って暫くすると、慎一が悠太を連れてやって来た 「伊織、貴方の以来は完遂しました!」と榊原に鍵を渡し…頭を下げた 「慎一、ご苦労様でした。」 榊原は鍵を返してもらい…制服を受け取った 「悠太、君の入学式に…康太は出れません…」 「解っています…義兄さん。 俺の入学式には、誰も出なくて結構です!」 悠太は言い切った 自分は…飛鳥井康太の弟だから… 康太の持ち物だから… 子供の時から…悠太を見守り…守ってくれたのは兄だけだった 入学式や卒業式に…必ず兄は出てくれた 冷やかされたが…悠太には誇らしかった 兄の弟である事が…誇らしくて…苦しかった 康太は…悠太を見詰めていた 「悠太…兄はお前の入学式には…行けそうもねぇ…」 「康兄…解ってるから…苦しまなくて良い」 「お前の…晴れ舞台には…兄が顔を出す そうしてお前を育てて来たのにな…」 康太は…本当に残念そうに…呟いた 悠太は…泣き出した 兄の想いが…解るから… 「康兄…」 泣きじゃくる悠太を呼ぶ 手を差し出して…悠太を呼んだ 悠太は榊原に促され…康太の側に行った そして…兄の手を取った 「康兄…」と手を取り…悠太は泣いた 榊原は悠太に 「明日は、この制服を着て入学式に出なさい この制服は…僕が着ていた…桜林の秩序です!君が引き継ぎ…僕の後を行きなさい!」 と悠太に渡した 慎一は悠太に着てみますか?と聞いた 悠太は頷き…制服に袖を通した 服を脱いで、制服に袖を通す ネクタイも…総て…締めて…悠太に制服を着せた 康太は…懐かしそうに…その制服を見て 「似合うじゃん…」と呟いた 榊原は「明日は…僕と康太は…君の入学式には…出れません…!でも慎一や一生が…出てくれます。貴史も出てくれます。 兄の変わりの人達が…君を見守ってくれます 高校入学おめでとう。君らしく行きなさい」と言葉を送った 康太も「お前はお前の道を行け!後悔しなきゃ…それで良い。オレは…お前が幸せなら…それで良いかんな!」と笑った 悠太は一頻り泣いた 泣いて泣いて…兄を想った 「康兄…義兄さん…本当にありがとう… 俺は、俺の高校生活を送ろうと想います… 叶わないからな…自分らしく行きます!」と言い頭を下げた 「それで良い…おめぇらしく生きりゃぁ良いじゃんか! その制服……似合うじゃん… 伊織と言うより……やっぱお前は瑛兄似だな そうして見ると…良く解る…親父に似てんだよ…お前は。」 康太は…しみじみ言葉にした 榊原は、「悠太は悠太にしかなれません。気負わず行きなさい…」とエールを送った 悠太は制服を脱いで…キチンと畳むと…紙袋を手にして 康太と榊原に頭を下げ、病室を後にした 「伊織…」 「何ですか?」 「瑛兄を呼んでくれ…その後、榊原の家の方を…帰らせねぇとな…」 「……飛鳥井は…瑛太さん以外は…帰られたのですか?」 「残ってる…まずは瑛兄に逢ってから…家族に会う…伊織の親は…後回しになるがすまねぇ…」 「構いませんよ…まずは瑛太さんだけ…お連れしますよ。」 榊原はそう言い…病室を後にした 暫くして…榊原は瑛太と共に戻ってきた 「瑛兄…帰れって言ったのに…」 「帰れる…筈など…ないでしょ!」 あんな康太を残して…瑛太には帰れなかった 目を離したら…死んでしまうかも…知れないから そして今も…傷付いて脅える…康太に近寄れなかった… 康太は…瑛太に手を伸ばした 「瑛兄…」 瑛太はやっと康太に近寄った… そしてその手を取り…握り締めた 「瑛兄…オレは伊織がいれば…生きて行ける」 瑛太は…康太の手を握り締め… 「解ってます…」と答えた 「でも…兄は…お前がいないと…生きていく気がしません…」 「オレは死なねぇ…瑛兄も生きてくしかねぇんだよ!」と康太はクスッと笑った 「解ってますよ…お前が生きててくれば…兄は生きていけます」 康太は瑛太に抱き締められ… 「瑛兄…やっぱし…悠太の入学式には出てぇな…」と、呟いた 「無理でしょ…頭の方の精密検査が…明日から入ってます…無理ですよ… 打ち所によっては今後…どうなるか解りません…力哉も目醒めません… 無理はしないで…康太…頼むから…」 瑛太に泣かれれば…無理など出来なかった 「泣くな…瑛兄…」 「君が…意地悪だから……何で…無理ばかり…」 「瑛兄…寝てるし…。だから、明日は頼むな…悠太を恥ずかしくないように送り出してくれ…」 「解ってますよ…君はなにも心配しなくて良いです」 「なら瑛兄…母ちゃんや父ちゃん…家族全員呼んでくれ。 んでもって、帰って悠太の入学式に備えてくれ!」 「解りました…慎一、飛鳥井の家族を…読んで下さい…」 慎一は、解りました…と、病室を出て、飛鳥井の家族を呼びに行った

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