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第42話 喪失
目を醒ました康太は…
榊原の顔を見て…………「誰?」と聞いた
脅えた瞳で…榊原を見て…
「誰?」と聞く
「僕は…榊原伊織…」
「何で…オレの側にいんだよ?」
「僕は君の恋人です…」
康太は…驚愕の瞳で…榊原を見た
「君の名前は?言えますか?」
「名前…??あったんかよ…んなの?」
そりゃあ…有るでしょ?無きゃ困る
記憶をなくしていても…飛鳥井康太…だった
「飛鳥井…康太…それが君の名前ですよ?」
「普通の名前で安心した…ジョージとかリチャードだったら…嫌だな…って思ってた」
普通…外人じゃあるまいし…そんな名前の筈はないでしょ…
榊原はため息を着いた
「本当に……記憶がないの?
僕をからかってるの?」
康太は…榊原を睨んだ
「からかって…オレが得するのかよ!
オレは…何も覚えてねぇ…思い出そうとすると…頭が痛てぇ…吐きそう…になる」
榊原は一生に「久遠医師を呼んで来て下さい」と頼んだ
久遠医師が来ると…康太が記憶をなくしてる事を告げた…
久遠は…康太を検査に連れて行った
検査に…康太が行くと…榊原はベッドに突っ伏した
一生が…榊原の肩に手をやる
「旦那…」
「記憶をなくすかも…って解っていても…
誰?……何て言われると…辛いものがあります」
「当たり前じゃねぇかよ…恋人に…誰?なんて聞かれた日には…泣きたくなるのは当たり前だ!」
「記憶が戻らないのなら…また、僕を愛させて…見せます…
何度でも…僕を愛して…貰います」
簡単にはいかないのは解っていた
でも、未来永劫…愛するのは…炎帝…唯一人と決めたのだ…
炎帝の魂が入ってる…飛鳥井康太を…愛して…生涯を終えると決めたのだ…
悠太の入学式が終わって…
飛鳥井の家族も…榊原の家族も…
三木も兵藤も…安曇も戸浪も…
やって来た時に…
康太の記憶喪失を知る事となる…
皆…脅えて…一生に隠れる…康太の姿に…唖然となった
記憶をなくした康太は…榊原が近寄ると怖がる…
そして一生の側に隠れるのだ…
榊原は傷付いた瞳で…康太を見詰め…
康太は…脅えた瞳で…皆を見ていた
全員…そんな二人を見ていられる訳もなく…
帰ることにした
1日も早く記憶が戻ります様に…と、祈り…
帰宅の徒に着いた
康太は…3日経っても…記憶が戻らなかった
榊原が近寄ると怖がるのはなくなったが…
訳解らなくて…榊原の手を…取るのに戸惑っていた
「康太…」
榊原が名前を呼ぶと…榊原を見上げた
その瞳は…前と変わりないのに…
キスしようとすると…嫌がった
「僕達は…恋人同士なんですよ?」
「お前みたいな男前と?信じられねぇもんよー」
「僕にキスされるの…嫌ですか?」
康太は…顔を赤くして…俯いた…
「嫌じゃねぇ…けど、恥ずかしい…
多分…恋人なのは…触られると…嬉しいから解る…」
「僕達は…恋人同士なんですよ?」
榊原は康太を抱き寄せた…
激しい…息も着かない…接吻をして…
康太を怖がらせた
「嫌だ…止めて…」
泣かれたら…離すしか…出来ない
榊原は掴んでた…康太の手を…離した
そして…病室を出て行った
康太は…その背を見送りながら…
行くな!と叫びたかった…
行かないで…!
行くな!
オレを置いて行くな!
康太は…気絶した
力哉の病室にいた一生が、康太の所に行こうと外に出ると…
病室を飛び出す榊原の姿があった
…何があったのか…
一生は聞くが…榊原は足を止めず…去っていった
一生は康太の病室を覗くと…康太は気絶をしていた
ベッドに寝かせ…布団を掛けると…
弥勒高徳が…やって来た
「康太の記憶は…戻らぬか?」
声がして…振り返ると…弥勒が立っていた
「康太は…旦那を怖がる…旦那も限界に来ている」
「でも、康太の記憶を戻すのは…伴侶殿しかない…
抱かれれば…体が思い出す…
伴侶殿に抱かせて…思い出させるしかない
一生…ホテルを取れ…
康太に思い出させるしかねぇんだよ!
俺が術を使おうとも…それは…一時的なもんにしかならねぇ…
康太を目覚めさせるには…蒼い龍の…愛しかねぇんだよ
康太を抱かせて…記憶を取り戻させる
それしかねぇな…伴侶殿を、呼び戻せ
展望室にいる…連れてこい!」
弥勒に言われ一生は飛び出して行く
展望室に行くと、頭を冷やす榊原の姿があった…
「旦那、弥勒が呼んでる…」
「弥勒が?」
榊原は立ち上がり…一生と共に…
出てきた病室に戻った
病室に行くと、弥勒が榊原を、待ち構えていた
「伴侶殿、康太を抱きなさい!
抱いて…思い出させるまで…戻らなくて良い…」
「弥勒?」
「一生、部屋は取ったか?」
「瑛太さんに電話して今、ホテルニューグランドを取ってもらった!」
「ならば、連れて行くが良い…
お主の愛が…本物なら…康太は思い出す…
愛する男の血を受け…康太は思い出す
抱いて…愛してやると良い」
榊原は弥勒に言われ覚悟を決めた
怖がられても…嫌がられても…康太を抱く!
愛する康太をその手に抱き…榊原は点滴を引き抜いた
そして康太にコートを着せると抱き上げて…病室を…出て行った
駐車場に、出ると…榊原は康太を助手席に乗せた
そして、運転席に…乗り込むと…ホテルニューグランドへと向かった
フロントに行くと…瑛太から予約が入っていて…部屋へと案内された
部屋に入ると…榊原は康太をベッドへ寝かせた
連れて来たが…強引に抱いて…嫌われたら…
生きては行けない…
嫌われたくはないのだ…
榊原は…自問自答する
このまま…康太が記憶をなくしたら…?
果てしない闇に囚われる…
弥勒…強引に抱いたら…レイプと変らないじゃないですか…
強引になど…抱ける筈など…ないのだ…
榊原は…康太が目を醒ますのを待った
ずっと…
ずっと…
愛する人の顔を見ていた
康太は…今世の榊原の記憶を封印した
君は…僕をどんな想いで…見ていたのですか?
僕が君を愛さないと…不安にはならなかったのですか…
嫌…不安だった筈だ…
流生を引き取った日……康太は
『オレは…今世は…諦めた…。お前の側に行くのは…諦めた…時もある。』
そう話してくれた
僕は君に言いましたよね
君が記憶を無くしても…君は必ず…僕を愛しますよ…と言った事がある
でも、脅えた瞳で…見られたら…
自信喪失…だ
触りたいのに…触れれば怯えられたら…
触れなくなる…
「愛してます…康太…」
榊原はそう言い…ベッドに突っ伏した…
強引に抱いたら…思い出すと言われても…
軽蔑された瞳で…見られたら…抱けませんよ…弥勒
康太は…目を醒ますと、見慣れない部屋に…榊原を、見た
「気が付きましたか?」
「此処は?」
「環境が…変われば…と連れて来ましたが…
無理みたいですね…暫くしたら帰りましょう…」
榊原はそう言い…背を向けた
「何処に行くんだ!」
慌てて康太が問い掛ける…
「一緒にいると…怖いでしょ?
隣の部屋にいます…」
榊原は…康太の答えも聞かず…部屋を出て行った
恋人同士なんだろ?
康太は…信じられない想いで一杯だった
触られると…怖いのは……ある
榊原に触られると…股間が反応するのだ…
あの手に触られると…訳が解らなくなる…
だから、怖くて…脅えた…
でも…こんな風に…無視されるのは…
胸が痛くて…嫌だ…
こっちを向いて欲しい…
見て…
オレを見て…
頼むから…オレを見て…
康太は…ベッドから降りると…部屋を出た
素足には…アンクレットが光っていた
「伊織…」
康太が名を呼ぶ…
リビングの窓際に佇み…窓の外を見ていた榊原は、驚いて…康太を見た
「康太…?どうしましたか?帰りますか?」
康太は…想いを振り絞って…
榊原の胸に飛び込んだ…
「何で…抱かねぇんだよ…」
「怖いんでしょ?無理しなくて良いんですよ?」
「オレは恋人なんだろ?恋人なら…抱けよ!」
榊原は…康太を引き剥がした
「怖がり…怯える君を…無理矢理抱いたら…強姦じゃないですか…僕にしろと?」
「我慢出来る…」
「我慢してするもんじゃないですよ…」
「やっぱり…お前はオレを揶揄してたんだな…」
「康太…?」
「お前みたいな…男前と…恋人同士だと言う方が…信じられねぇ…かんな」
康太は…諦めの瞳で笑った
榊原は…我慢してきたのに…康太の一言で…キレた
康太を抱き上げると…ベッドに放り投げた
「恋人同士ですからね…抱いてあげます
君が所望したんですよ?」
榊原が…康太に重なり…息も着かぬ接吻をする
康太は…体が喜ぶのを…感じていた
この手で…触って欲しい…と
体が…喜んでいた
だが…榊原は冷たく触り…康太を蹂躙するだけだった
何度もイカされるが…榊原は息一つ…乱していなかった
康太の瞳から…涙が溢れた…
榊原は…「ほら…嫌なら嫌って…」と康太を離した
「これが恋人同士の…行為なら…オレは愛されてねぇんだな…」と康太は…瞳を閉じて…吐き出した
「康太…」
「オレは愛されてる気がしねぇ…」
「康太…愛してます…君だけを…」
「なら、どうして…愛してくれねぇ?」
記憶を無くしても…飛鳥井康太だった
「もう…1週間…君としてません…
壊れてしまいますよ…こんな僕を挿れたら…」
榊原はそう言い…股間を康太に押し付けた
「壊れても良い…お前が欲しい…」
康太に言われたら…榊原はもう止まらなかった
「なら…君のお口で…一度飲んで…」
榊原は服を脱ぎ…全裸になると…聳える股間を康太に見せ付けた
康太が怯えるなら…止めるつもりで…敢えて見せた…
康太は…榊原の肉棒に唇を寄せ…
舌で舐めて手で触った
「ちょっ…康太…嫌でしょ?」
康太は…答えず…舐め続けた…
榊原の精液が…顔に飛ぶと…唇で…それを飲んだ
榊原は…ティシュの箱を取ると…康太の顔を拭いた
「無理しなくて良いのに…」
「無理じゃねぇ…」
「君の中に…挿れますよ?」
康太は…頷いた
「その前に…解さないとね…我慢出来ますか?」
康太は…頷いた
榊原は康太を押し倒し…足を開くと…奥に眠る…康太の穴に…ふれた
ビクッ…と康太の体が…跳ねた
それでも…榊原は指を止めず…舌を挿れて…唾液を垂らした…
濡れた音か…する
ぐちゆ…ぬちゃ…と言う音に…
康太は…顔を赤らめた
柔らかく…榊原を受け入れれる様になるまで、丹念に舐めて…解す…
康太の足を抱えると…榊原は「挿れますよ?」と声をかけた
康太は…頷いた
榊原の燃え滾る肉棒が…康太の中に挿れると康太は仰け反った…
「あぁっ…イッちゃう…ぁん…」
体が…榊原に抱かれるのを…覚えているのだ
そして歓喜して穴が戦慄く…
「キツくないですか?」
「ん…あぁっ…大丈夫…やぁ…そこ…」
「君は…僕のカリでココを引っ掛かれるのが…大好きなんですよ…」
「イイッ…ゃん…あぁっ…イッちゃう…」
「イケば良いですよ?」
「あぁ…ぁ…」
康太は…榊原の腹を濡らしていた…
榊原は康太の中に…射精していた…
「康太…愛してます…」
引かない熱と…愛の言葉を康太に惜しみ無く捧げ…榊原は康太を抱いた
お預け…だった日々が…榊原を翻弄する…
熱が引くまで…康太を離せずに…抱き続けた…
康太は…意識を手放した…
意識をなくした康太を抱き上げ、榊原は浴室に向かった
中に吐き出した精液を掻き出して…体を洗う
榊原は康太に触れたら止まらなかった…
欲望の限りを尽くして…抱き潰した
どれ程…康太が不足してたか…触れて解った…
触れたら…止まらない
欲しくて…欲しくて…止まれなかった…
無理させてるのは解った…
体を洗って…浴室から出ても…康太は気がつかなかった…
榊原は…体を拭いて…ベッドに寝かせた康太に接吻した…
「康太…目を醒ましなさい…
何時まで…眠ってるんですか!」
榊原は…康太に囁き…その体を抱き締めた
疲れた体に…康太の温もりが伝わり…
榊原は瞳を閉じた…
愛する…康太を抱き締め…
榊原は康太のつむじに…顔を埋めた
康太は…夢を見ていた
秩序と規律と…法律を織り成した鎧を着て…
白い風馬と言う馬に乗り駆けて行く青龍の姿を…見ていた
がっしりとした体躯に…似合う鎧が…蒼白い妖炎を放ち…凛々しさを醸し出していた
恋して……愛して…不可能だと…知っていた
あの腕に…抱かれたら…信じられなくて…死んでしまいそうになる…
だから、青龍の気紛れが信じられなかった
キスをしてくれた…唇が…言葉を放つ
触ってくれた指が…馬の鞭を…握る
誰よりも…凛々しくて…愛しい男
「青龍…」
その冷たい瞳に…熱が籠ると…優しい色になる…
その瞳は…オレだけに向けられてる訳じゃない…
だから……自惚れちゃダメだ…って心に言い聞かす…
ねぇ…オレだけを…見て…
オレだけを…愛して…
オレだけを…愛してるって言って……
ねぇ…愛してるって言っても良い…?
愛してる…
愛してる…
愛してるんだ…青龍…
でも……お前は知らない…
オレの心を知らせたら…終わりだ
康太は…目を醒ました時に…泣いていた
起き上がろうとして…力強い腕に…抱かれてるのに気付いた
「あぁ…昨夜…伊織と……」
愛する男を…悩ませて苦しませた
愛してる…
愛しい…唯一無二の男
青龍しか要らない…
青龍だけ愛して来た…
「青龍…オレの蒼い龍……愛してる…青龍」
康太はそう呟き…榊原の胸に顔を埋めた
榊原は…飛び起きて…康太を凝視した
「康太?」
「伊織…愛してる…」
康太は…怪訝な顔をする榊原の唇に…キスをした
「康太…思い出したんですか…」
「お前の血を受ければ…太古の血が甦る…
決して離れねぇと…契った…血が甦る…
だから弥勒は…お前にオレを抱かせたんだよ」
「康太…誰?って言われた時…この心臓を貫いて殺して欲しいと…想いました
君を失う…恐怖が…僕を動けなくさせてました」
「伊織…ごめん…」
「康太…」
榊原は康太を抱き締めた
その体が震えていた
「伊織…オレの蒼い龍…」
「康太!」
「お前の夢を見ていた…青龍の夢だ
秩序と規律と法律で織り成した鎧を着て…風馬を駆けて走る姿を見ていた…」
「……僕の夢でも…妬けます…」
「お前の夢なのに?」
「君は本当に…蒼い龍が好きですね…」
「お前じゃねぇかよ?」
「でも、今は人ですから…君の蒼い龍にはなれませんよ…
人の世で…姿を変えると…赤龍が怒りますからね…」
「お前を愛してる…青龍の魂を秘めた…お前を…愛してる…」
康太…と呟き…榊原は康太の体を抱き締めた…
そして…全身に…キスの雨を降らせた
「ゃ…伊織…昨夜も…あん…ゃあ…」
「僕の…康太…止まりませんよ?」
乳首を弄られ康太は仰け反った…
抱き合った…体の間に…榊原の熱が主張していた…
榊原は濡れた肉棒を康太の穴に…塗り付けた…
亀頭の口から溢れる愛液を康太の穴に塗り付け…出入りをする…
「あっ…あぁっ…やぁ…伊織…欲しい…」
榊原の背中を掻き抱く…
榊原は康太を俯せに…腰を突き出させると…
肉棒で貫いた…
「ゃあ…伊織…あぁ…ぅん…」
榊原は重なった康太の背中を吸った…
康太は頭をふって…快感に堪えていた
腰を引いて…胡座の上に乗せて…足を抱える
「ゃあ…伊織…深くなる…嫌だ…」
深く奥を犯される…体位は…意識を失う…
感じ過ぎると…触られると…感じ過ぎて…訳が解らなくなる…
榊原は…記憶を取り戻した康太を抱いた
「伊織!!!……っう…」
康太は…榊原の手で…イカされ…榊原も康太の中にすべてを吐き出した…
「伊織…お尻…痛い…」
康太が文句を言うと…
「うわぁ~ダメだってば…」
榊原は康太の足を掴み…足を開いた
お尻の穴を…まじまじ見られて…康太は慌てて…手で隠す…
その手も…呆気なく掴まれ…
皺を伸ばされ…尻の穴を…見られる…
康太は赤面した
「少し…赤くなってます…軟膏を塗りますか?」
「良い…我慢出来る…。
それより、弥勒がオレをこの世に戻したと言う事は…力哉はまだ…意識がねぇのかよ?」
「はい。眠ったままです…」
「なら、行くか!伊織電話貸して!」
榊原は枕元に置いた…携帯を康太に渡した
「瑛兄かよ?オレに朝飯を奢れ…そして、ホテル代を清算に来いよ!」
『康太!本当に康太ですか!』
「オレしか…こんな電話しねぇだろ?
瑛兄、腹減った…甘えてんだよ…弟に奢りやがれ!」
『直ぐに行きます!』
電話は切れた…
康太は電話を切り榊原に笑って
「支度すんぜ!ホテル代は瑛兄に支払わせねぇとな…力哉の入院代が…幾ら行くか解んねぇかんな」
「康太…セコくないですか…」
康太は笑って…そうか?と聞いた
「オレは昔からセコいんだよ!」
浴室で体を洗い…支度をする
榊原は慎一に電話を入れた
「慎一…康太の服を…持ってきて下さい…」
『病院に…有るので良いですか?』
「構いません…後下着もね」
『解りました。直ぐに行きます!』
榊原は慎一にホテルの部屋番を告げて電話を切った
電話を切って…榊原は康太の包帯の巻かれた頭に触れた
「痛みませんか?」
「大丈夫だ!でも、また毛が薄くなったら…
伊織に嫌われるな…」と康太は違う心配をした
「君の頭に毛が無くなったって…僕は君を愛せますよ!」
「お前に愛されるオレは…可愛くいてぇんだよ!」
榊原は康太を抱き締めた
「可愛いですよ…君は。総て僕のです」
「伊織のもんだよ!オレはよぉ!」
康太が不敵に嗤う
紅い妖炎をメラメラ燃え上がらせる炎帝
さながらの生命力を魅せ…人々を魅了する
ドアがノックされ開けると…瑛太が立っていた
その後ろに慎一が立っていた
榊原は慎一に康太の服を貰うと…
康太に服を着せ始めた
全裸の…榊原に愛された体躯を惜しみ無く魅せ…下着を履かせ…服を着せる
支度が出来るまで…瑛太も慎一も…後ろを向いていた
直視するには…余りにも…昨夜の情交が生々しすぎて…
康太に服を着せると、榊原も支度をして、伴侶の腕時計を着けて…身なりを整えた
荷物を袋の中に入れて片付けると…確認をして榊原は瑛太と慎一の側に向かった
「お待たせしました」
榊原が言うと瑛太は振り返った
「瑛兄、悪かったな!」
瑛太は…目の前の康太を見た
記憶をなくす前の…康太だった
皮肉に口の端を吊り上げる…その顔は…康太にしか出来なかった
「亭主に抱いてもらったかんな!
総て思い出したぜ!オレを生かすのは榊原伊織、唯一人!
伊織がいるならオレは何度でも生き返るぜ」
瑛太は…康太を抱き締めた
「力哉の入院代がかかるからな…このホテルは瑛兄、払ってくれ!」
「解ってますよ…ホテル代くらい払いますよ
兄にたかる康太がいないと…働く意欲がわきません…
でも仕事をせねば…康太にたかられたら困りますね!頑張ります」
「瑛兄…飯!」
「解ってます」
「慎一、悪かったな…」
慎一は首をふった
「貴方は必ず……記憶を取り戻してくれると…信じておりました…」
「さてと、サクサクやんぜ!」
康太は部屋を出て行く
風を切って歩くその姿に…弱さも脆さもない
榊原が、康太の少し後ろを歩く…
慎一がその少し後ろを歩く…
それが…康太を守る人間の…定位置だったのだろ…
瑛太は…餓えた弟に…ご飯を食べさせるべく…走った
朝食を取っている時に…
康太は瑛太に個室を引き払えと…告げた
「退院して良いと…言われてないでしょ?」
「検査の結果は…問題ねぇよ!
オレは力哉をこの世に取り戻す!
ベッドの上に寝てる暇はねぇんだよ!
ベッドに寝るのは亭主と愛し合う時で充分なんだよ!」
康太は笑った
瑛太は…ため息をついて…聞くしかなかった
「解りました…久遠先生が許可したら…引き払う様に…佐伯を寄越します!」
「また、金を使わせて…すまねぇな瑛兄」
「お前が生きていてくれるなら…兄は…それだけで良い…お金はまた働けば…手に入ります…君は…無くしたら…もう二度と手に入りませんからね…」
「瑛兄、サクサク仕事しやがれ!
車庫を建て直さねぇといけねぇんだよ!」
「……、本当にお前は…人使いが荒い…
はいはい。働きますよ…此処の清算したら…会社へ行きます!」
「瑛兄…」
「何ですか?」
「仕事ためやがったろ?」
瑛太は…康太が心配で…仕事に手が着かなくて…ためていた
「う!…サクサク片付けます!」
「瑛兄、誕生日には…チューしてやるからな!」
「ケチ…何か下さい!」
「オレに言うのかよ?伊織に言えよ
オレはプレゼントとか買い物は苦手なんだよ!
瑛兄がオレを甘やかしたかんな!
買い物1つも行けねぇ…大学生にしちまったんじゃねぇのかよ!」
藪蛇…とはこう言うのか…瑛太は…やるせなかった
瑛太は康太に尻を叩かれて…仕事に出掛けた
康太は榊原の車に乗り込み…病院へと向かった
病室に戻ってきた康太を…心配して一生が飛び付いてきた
聡一郎も隼人も…康太に飛び付いて…泣いた
「泣くな!そんな暇ねぇんだよ!
オレが意識を戻したからって喜んでられねぇだろ!力哉が戻らねぇとな!」
康太が叫ぶ!
全員…康太から離れ…頷いた
暫くして佐伯がやって来た
「悪いな佐伯。この前…お前の親父に逢ったぜ!」
「それは良かった!もう何年も逢ってねぇからな…」と佐伯は毒舌を吐いた
「佐伯…」
「何だよ?」
「お前は…親父に似てるな!」
佐伯は…康太を睨み付けた
「アイツに似てたら…不幸になるわ…」
主に仕え…主と共に生きる人間を親とは言わない…佐伯は…本音を吐露して…仕事にかかった
「佐伯…お前の本当の主を解ってんのかよ!」
邪険にあしらわれ…康太はボヤいた
「おめぇだろ?親父から…お前の所にドナドナされたんじゃねえかよ!」
「ドナドナじゃねぇぜ!お前は自由だ…
好きな奴見付けたら…出て行っても良いぜ!」
「んなのいるかよ!お前の兄貴が腑抜けだからよぉ!私は忙しくて仕方がねぇんだよ!」
佐伯の怒りは…かなり来ていた
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