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第43話 力哉

久遠医師に診察をされ…退院しても問題ないと言われ、康太は病室を後にした 佐伯は、康太の入院費を清算して会社に帰って行った 康太は…力哉の病室の前で…誰かを待っていた 「遅せぇぞ!」と天を向いて…嗤う 暫くすると…弥勒と紫雲がやって来た 弥勒は「やはり伴侶殿の血が入れば太古の血が甦り…総てを思い出すのだな…」と呟いた 「オレは愛されてるからな… そしてオレは心底、愛してるからな…蒼い龍を!」と康太が言う その姿は生命力に満ち…メラメラ燃え上がっていた 「オレは…蒼い龍がいれば生きて行ける」 ノロケ…なのだ 康太の顔を見れば…それは解った… 弥勒は…康太の頭をデコピンした 「痛てぇな!怪我人なんだぞオレは!」 「ノロケは要らぬ!誠…憎いな…お主は…」 弥勒が…溢す 康太は力哉の個室に…弥勒と紫雲を引き連れ入って来る 「弥勒、力哉の深淵を覗きに行ったんだろ?」 教えやがれ!と言う態度で弥勒を見る 「この子の深淵は、お前しかおらぬ… お前がいるから…生きていると言っても過言ではない…そして時々…一生や聡一郎、隼人や慎一や飛鳥井の家族が出て来る… この子の中にはお前や仲間…飛鳥井の人間しかおらぬ! お前が呼べば…意識は引き上がるだろ… 蒼いのと紅いのとに協力してもらえば…五人でなんとかなるだろ?」 弥勒はそう言い…スーツの上着を脱いだ ネクタイを外し…戦闘体制に入る 紫雲も着物を紐で結わえ…戦闘体制に入る 「慎一、聡一郎と隼人を展望室に連れて行け!」 と、康太が告げると…慎一は聡一郎と隼人を連れて部屋を出て行った 「蒼いのは、康太を送り込め…そしたら康太が力哉の意識を…掴んで引き出す そしたら、紅いのは、その力哉を掴んで…この世の意識の中へ戻せ! 紅いのは一番大変だが…お前等はデキてんだろ? 力哉の深淵の片隅には…一生を愛してやまない想いもある… 康太を一番愛しているがその意識の片隅に、一生を愛する想いもある…だから、お前が一番大変な役目になる… 俺と龍騎は…サポートしか出来ぬ… ならば、やるとするぞ!」 弥勒は…力哉の回りに結界を結んだ 紫雲は…この世に結んだ糸を…康太に渡した その糸を手繰り寄せ…康太は力哉の深淵に降りて行く 紫雲はその糸を…管理して…離さないように…管理する 誰か…一人でも欠けたら…このバランスは崩れ…永久に力哉を戻せなくなる! そればかりか…力哉の中へ行く康太も危ない… 榊原は静かに…その時を待っていた 意識を集中して…康太を導く… 力哉の深淵まで…康太を送り込む 榊原の瞳が…金色に変わり…光ると…榊原は力哉の深淵に…降り立った そして…力哉を探す… 力哉を見付けると…康太を呼ぶ… 二人は魂を結んでいるから…出来る…至難の技だった 魂をシンクロして…1つのモノを見る そして…シンクロして…康太の魂を呼ぶ… 榊原の手によって…引き寄せられ…… 力哉の深淵に入る… 康太は叫んだ… 力哉! 力哉!帰ろう! 迎えに来た…力哉! 必死に語りかける… 蹲って…小さくなってた力哉が顔を上げ… 康太を見た 「康太…」 呟いたら…涙が止まらなかった… 康太!康太! 貴方が死んでしまったと…想った! 貴方のいない世界に…僕は生きる気にもなれませんでした… 力哉が叫ぶ! 血塗れの…康太に…死んだと想ったのだ… 「力哉!その耳をかっじって聞きやがれ! オレは死んじゃいねぇ!帰るぞ!」 「康太…君の所へ…帰れるの?」 「オレの手を取りやがれ!」 康太が言うと…力哉は康太の手を取った 「伊織!帰るぜ!」 「はい。一生…力哉を受け取りなさい!」 榊原は紅い龍に力哉を渡す そして康太を抱くと…手繰り寄せ…この世に帰る 一生は力哉を掴むと…体に…引き戻す作業をしていた 体の中に帰った康太が 「力哉!還れ!」と叫んだ 一生は、一気に力哉の体の中に…力哉を戻した 「帰りやがれ!力哉!」と叫び…一生は最後の力を振り絞り…力哉を戻した 康太と榊原が一生の体を支える 弥勒が…体に戻った力哉を確認して…印を結んだ 「康太…」と一生が叫んだ 「あんだよ?」 「お前は…大丈夫なのかよ?」 「オレか?オレは伊織がいれば大丈夫なんだよ!」と笑って言う 康太は弥勒と紫雲に向き直ると… 「ありがとう…力哉を助けてくれて…本当にありがとう…」と礼を述べた 紫雲は康太を抱き締めた 「お前が生きていてくれれば…それで良い…」と泣きながら…言葉にする 弥勒も康太を抱き締め 「お前が生きていなければ…この世は退屈過ぎて眠りに落ちる…」と冗談めかして言う 「この埋め合わせに…今度仕事する時には、弾むかんな!」 「ならば、ぼったくってやろう!」と康太に言う 「ぼったくるのかよ!オレのキス1つで許してくれよ…って泣くからよぉ!」 「狡い…泣かれたら…本当にキス1つで仕事をやってしまうではないか!」 「そうか!弥勒は安くつきそうだ!」 「俺には女房と子供もいるんだぞ! 踏み倒すな…康太…」と弥勒が康太に泣きつく 「仕方ねぇな…なら払ってやるよ 今は持ち合わせがねぇかんな!」 「今度の仕事で良い!」 「本当にありがとう!サービスでキスしてやんよ!」と康太は弥勒の唇にキスをした 紫雲の唇にも……キスを送り…不敵に嗤った 「ならな!」と弥勒が断ち切るように言う 「またな康太…」と紫雲も断ち切るように言う 康太は片手をあげると…二人に別れを告げた 二人は…病室を後にした 康太は力哉の個室のソファーに座る、榊原の膝の上に向い合わせに乗り…甘えていた 「伊織、愛してる!」 「僕も愛してますよ」 言われ…榊原の胸に擦り寄る 榊原は胸の康太を大切に抱き…離さなかった 力哉が…意識を取り戻しても…こんな状況で…目のやり場に困った 「おい!康太!お前等、帰りやがれ!」 「邪魔か?」 「目のやり場に困る…」と一生が、溢す 康太は立ち上がると…力哉の側に行き、力哉を抱き締めた 「また来る!良い子して寝てろ!」と唇をペロッと舐めた 「康太…君は大丈夫何ですか?」 「オレか?大丈夫だ!また来るからな!」 と康太は言い、康太は榊原と共に…病室を後にした

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