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第44話 布石

「伊織、トナミ海運に行ってくれ」 車に乗り込み…康太が行き先を告げる そして、手を差し出して携帯を要求した 携帯を康太に渡し…榊原はトナミ海運に向かう 「三木か…オレだ!」 康太は三木に電話を入れると…電話に出た三木は興奮して叫んだ 『康太!!!!!!』 「うるさい!お前…切るかんな!」 康太が怒ると…三木は謝った 『すまん…康太…切らないで…』 「一応…オレは元気だと…言う事だ…ならな、また電話する」 『解りました…また俺も電話します』と言い三木との会話を終えた その後、兵藤に電話を入れた 「よぉ!貴史!」 康太からの電話で…康太の声がして… 兵藤は驚いていた 『本人かよ?』 「あたりめぇじゃねぇかよ! オレの変わりなんざ誰にも出来ねぇだろ?」 と康太は喉の奥をクッと震わせ嗤った 『もう大丈夫なんかよ?』 「オレの伴侶がな…オレを離さねぇかんな この世に戻って来たよ!」 『あたりめぇじゃねぇかよ!青龍の気持ちになりやがれ!』 「これから動かねぇといけねぇんだよ!またな!」 『おう!また飛鳥井に行く!ならな!』 兵藤は安心して電話を切った トナミに着くまで康太は電話を掛けまくった 安曇や蔵持善之助の所へ… そして清四郎の所へ… 「清四郎さん、ご心配かけて…申し訳ありません…」と康太が言うと 清四郎は『康太?本当に…康太ですか?』と、問い掛けた 「そう。本人です。今夜伺いますね」 『えええええ!!退院したのですか…』 「そうです。退院しました!これからトナミへ行くんで…それが終わったら寄ります…良いですか?」 『待ってます!ずっと待ってます!』と清四郎は泣いて答えた 康太は一通り電話をすると、榊原に携帯を渡した 「改革は…また途中だ…こんなんで、くたばってたら…飛鳥井の、明日は来ねぇ…」 康太は榊原を見詰め言葉にした 「君が動くなら…飛鳥井は…軌道に乗るでしょ……? 進むしかないんです…進むしか…道はない 突き進めば良い!君を生かすのは…僕の愛です…注ぎ込んであげますから…君は動きを止めずに進めば良い!」 康太は榊原を見て不敵に嗤った 「伊織がいればオレは生きていける… 愛してるぜ…伊織!」 「僕も君が生きていれば生きていけます 愛してますよ…康太」 榊原は康太の手を握りしめた… 康太はその手を握り返した トナミ海運に到着すると…康太はつかつかと社屋に入って行った 受付を通さず…つかつかと進む… 突然の事で…受付嬢は慌てる… 康太は…唇の端を吊り上げ…皮肉に嗤い、無視して通りすぎて行く エレベーターじゃなく階段を使って上がって行く 警備員に…連絡が行き…警備員が後を追う… 「お待ち下さい!幾ら何でも…無礼では有りませんか?」と康太に声を掛ける 「無礼にどれ程の対処が出来るか…見てんだよ! 飛鳥井は…鉄壁な警備が出来なくて…オレは殺されかけた… 暴漢を通すも通さねぇも…会社の意識にある 飛鳥井は意識が低くて暴漢を役員室に入れた しかも手引きしてたのが…警備員だ! だから、試してみたんだよ!」 警備員の前には…暴行の後が…痛々しい飛鳥井康太が立っていた 「お怪我は…良くなられたのですか…ニュースで見て心配しておりましたが… 一介の警備員に見舞いに行ける筈もなく…心配しておりましたが…」と警備員は康太に頭を下げた 康太が初めてトナミに行った時に…取り押さえて…康太が唇を切った…時の警備員だった 「怪我は…まだ完治してねぇがな…戸浪に逢いに来たんだよ。 このまま上に上がる…着いてこい! 連絡するな…このまま来い!」 「了解しました!」 警備員は、康太に着いて…上がって行った 「警備員、おめぇから見たトナミってどうだよ?」 「何故…、私に聞かれますか?」 「オレはな掃除のおばちゃんや警備の人間に会社の事を聞くんだよ… 社内に入っていて、社員を見る機会の多い人間じゃねぇかよ? 社員より詳しいのは、そう言う会社を支えている奴の意見だろうが!」 康太の言葉に警備員は、重い口を開いた 「この会社は…派閥が酷い… 派閥って言うのですか?有るんですよ 部長派、課長派、社長派…専務派とか… そして、その学歴で…振り分けられ…競ってるんです…足の引っ張り合いです… 見ていてエグい時もあります…」と隈無く答えてくれた 康太は「収穫だわ!サンキュー」と警備員に手をふった 「オレはこのまま上に行く。捨てておけ!」と言い階段を上って行った そして、最上階に到着して…戸浪に電話した 「よぉ!若旦那!これから逢わねぇか?」と康太は電話をした 『康太?本当に…本人ですか?』 やはり戸浪も…同じ事を言った 「若旦那、今お前んの会社の最上階にいんだよ!」 『え…連絡は入りませんでした…』 「ダメなら帰る。用はねぇからな!」 『待って…今出ます!』 と戸浪は社長室から飛び出した そして廊下に立っている康太を見つけ…携帯を切った 「康太!もう宜しいんですか?」 と、康太に近寄り…社長室に促す 社長室のソファーに座り、紅茶とケーキを出してもらい…康太はケーキを食べていた 「若旦那、悠太の入学式に…出てくれて…礼もまだだったな!本当にありがとう!」 「いいえ!康太…私は…君の役に立てただけで…満足なんですよ?」 「今日はそれを言いに来ただけ 後、会社を見てやるって言って中々実現しなかったかんな…見に来た!」 それで…アポなしで…上まで来たのか…と、やっと納得が出来た 「アポなしで…強引に突っ切って上がった 止めに来た警備員は一人……… 飛鳥井は最上階の役員室のオレの部屋に押し込んだ…。 飛鳥井は警備体制の不備だ…警備員が…手引きした… 此処だって…安全じゃねぇぜ それを見る為に…やって来た…ってのもある」 戸浪は言葉もなかった 「トナミは…甘いですか?」 「完璧なセキュリティーシステムを完備していても…中の…奴に手引きされたら、アウトだ…。 それが今回…オレが味わった感想だ! 階段にも…監視カメラを着けねぇとな… 要所要所に…監視カメラの導入を…考えている… オレも殺されかかったしな… 後…力哉、目を醒ましたぜ! 深淵まで迎えに行って……目醒めさせた」 戸浪は…康太を顔を見て…深々と頭を下げた 「ならな、若旦那。こんな頭で長居をすると…伴侶に怒られるかんな、帰るとするな!」 戸浪は立ち上がった 「本当に…ありがとうございました…」 「若旦那、それオレの台詞!」 康太は悪戯っ子みたいに笑った 「力哉の退院も…近いですかね…?」 「意識が戻ったからな…明日また見に行く」 「そうですか。本当に…」 「ありがとう…は、もう要らねぇぜ! ならな、若旦那、また食事でもしょうぜ!」 「はい。またお誘いします。」 戸浪は康太に頭を下げた 康太は笑って…背を向け片手をあげた 社長室から出て、今度はエレベーターに乗り…一階まで降りる エレベーターを降り…受付嬢に手をあげ 康太はトナミ海運を後にした 車に乗り込むと…康太はシートを倒した 「疲れましたか?」 「階段を上がんじゃなかった…」 「傷が…痛みますか?」 「傷じゃねぇ!」 「……?ならドコ?あっ!…痛いですか?」 「階段を上がるとズキズキした まだ伊織が挟まってるみてぇだしな…」 「止まりませんでしたからね… 記憶をなくした君に触ると…怖がられて…嫌がられて…触れなかったので…止まれませんでした…」 「あれな、嫌じゃなくて…恥ずかしかったんだよ!」 「え?恥ずかしい?」 「お前に触られると…体が反応すんだよ… 股間が…反応しちまうからな…触られたくなかったんだよ!」 「康太…僕は嫌われたかと…」 「後な…お前が男前過ぎてな…こんな男前が恋人だなんて…と、信じられないのもある お前の顔が…記憶をなくしても…好みなんだな…オレって… お前の顔を見るたびにドキドキしてよぉ… 触られると…解っちまうから…一生の影に隠れて逃げた」 「僕は…死ぬほど辛かったんですけど…」 「許せ…やっぱオレは記憶をなくしても…お前に惚れるわ… 意識を取り戻しても…初めて見たお前の顔に……一目惚れだ」 そう言い康太はケロケロ笑った 榊原は笑えなかった 「初めて顔を見た時に…君は…誰?だったじゃありませんか! それで一目惚れだ…と言われても…」 ショックで…少し疑り深くなるのは…仕方がなかった 「伊織…幾度生まれ変わろうとも… 記憶をなくそうとも…オレが惚れるのは…お前…唯一人…… お前を愛して…お前しか愛せねぇ…」 「康太…」 「しかし…毎日当たり前に…見てたけど… 記憶をなくすと…男前だな…伊織… んとに、オレの恋人だって…信じられねぇ…思いだったぜ!」 「康太…ベッドに直行したいのですか?」 「………壊れるから…嫌だ…」 「なら、これ以上…口説かないで下さい」 「口説いてんのか?オレ?」 「口説いてます!このままだと…道路沿いのラブホに車を突っ込みますよ!」 「伊織…」 「何ですか?」 「座ってても…お前が挟まってる感じがすんだよ…」 「………!」 「榊原の家に、大人しくオレを連れて行け」 「解ってますよ…君は…無意識に人を口説くいて…その気にさせるんですよね…」 「オレは…小悪魔かよ?」 小悪魔…と言うより…破壊神でしょ… 榊原は心の中で…呟く 「小悪魔ニョロリ…位ですかね…」 「あんだよ?ニョロリって!」 「小悪魔と言う程…育ってませんからね」 「あ!それを言う!」 康太は…怒って…そっぽを向いた 「康太…こっちを向いて…」 「嫌だ…」 「康太…」 榊原が名を呼ぶ… すると拗ねた瞳で…榊原を見た 「愛してますよ…僕の康太…」 「狡い…オレも愛してるかんな!」 「後少して…榊原の家ですよ」 「ん。挨拶したら…帰ろう…眠い…」 「無理出来ないのに…無理し過ぎです…」 榊原は榊原の家の前に車を停めると…車から降りインターフォンを鳴らした 『伊織ですか?入ってらっしゃい』と言う清四郎の声がして、榊原は康太を車から下ろして…抱き上げた そして、解錠された門を開け…中庭を通り玄関の前に立つと…清四郎がドアを開けて待っていた 「康太…伊織…よく来てくれました 康太は…大丈夫なのですか?」 玄関を上がり…応接間に通され…ソファーに座る 清四郎も真矢も…笙も…心配した瞳で…康太を見ていた 康太は…怠そうに…榊原の膝の上で…抱き締められて…座っていた 真矢が「退院なんてして…大丈夫何ですか?」と、問い掛けた 榊原は「……消毒に…毎日いきます…」と答えた 笙が「…康太は怪我してるんだよ……連れ回して…ダメじゃないか…」と、弟をたしなめた 「康太は…少し眠くなっているんです… 昨夜から…抱き続けて…寝かしてないので… しかも朝から…動いてましたからね…」 「…また…抱いたの?」と、笙は唖然と呟いた 真矢は…「…無理したら…ダメなのに…」と、息子を…恨みがましい目で見た 清四郎は「伊織…康太の怪我した時位は…我慢しましょう…」と、息子を…怒った そんな人の…想いも知らず…康太は…寝息を立てていた 榊原の胸で…幸せそうな顔して…眠っていた 真矢は「こんな幸せそうな顔で寝られたら…文句も言えないわ…」と、ボヤいた 笙も苦笑した 清四郎は「本当に…康太は…お前が好きなのですね…」と、しみじみ呟いた 榊原は「飛鳥井の家に帰ります!今夜は…康太が顔を見せると言うんで連れて来ました」と告げた 真矢は「泊まっては…行けないの?」と問い掛けた 「康太は…まだ、飛鳥井の家族に逢ってません…。 他の方には…電話を入れたり…戸浪に行ったりしましたが…飛鳥井は…康太の退院も知りません…。 ですから…連れて帰ります」 清四郎も真矢も納得した 「それでは、父さん、母さん、兄さん、また来ます!」と康太を抱き上げ、立ち上がる 康太を離す事なく…榊原は立ち上がり…榊原の家を後にした 車に乗り込み…飛鳥井の家に向かう 飛鳥井の駐車場に車を停める、車を降り康太を抱き上げる keyで車をロックし、飛鳥井の家に向かう 玄関の鍵を開けようとしたら…玄関のドアが開いた 「悠太…ありがとう」 ドアを開けたのは悠太だった 「康兄…寝ちゃったの?」 「無茶しますからね…この子は」 抱き上げ、靴を脱ぎ…家へと上がると 悠太は応接間のドアを開けた すると、中には…家族全員揃っていた そして、戸浪と秘書の田代までいた しかも……力哉までいた 「力哉!入院してなくて良いんですか?」 と、榊原が叫ぶと康太は…目を醒ました 「力哉?退院の金はどうしたよ?」 榊原は康太をソファーに座らせた 「兄さんが…支払ってくれました…」 それで戸浪が…いるのに…納得がいった 力哉が…兄さんが…って言ったのを聞き逃さなかった 「若旦那、力哉の入院の費用はオレが支払うつもりでした…」 康太が言うと…戸浪は笑って 「私が病院に行くと、力哉は退院の支度してました… 退院して良いんですか…って聞いたら… こんな高い所に入ってたら…気になって寝てられませんよ!って言うから… 兄が…支払ってあげます…と言ったんですよ すると…この子は…ちゃっかり、頼みます…康太に支払わせるのは嫌なんです…って言いますからね…清算しました」と少し嬉しそうに…戸浪は康太に報告した 康太は…手を広げ 「力哉、お帰り!」と言うと 力哉は康太の胸の中に…飛び込んだ… 「貴方が…いないと、僕は生きられません!」 力哉は…泣いて康太に訴えた 康太は何も言わず…力哉を撫でた 「力哉、腹減った、皆は食ったのかよ?」 康太が言うと力哉は 「皆は知りません!康太のご飯は僕が持ってきます!」と言い走っていった 戸浪は「なんて現金な子なんだ…」とボヤいた 田代は「社長…あれが力哉は地に近いんでしょうね…」としみじみと呟いた 康太は笑って 「田代、今夜は瑛兄と飲み明かせ! 神野も呼べば良いかんな! 泊まって行けば良い! 若旦那はオレと伊織と寝ましょう…」 と言い…戸浪は泊まりの覚悟を決めた 夜更けまで…家族は飲み明かし… 康太は戸浪と榊原と寝室に行き…早々に寝ることにした… 戸浪は康太と榊原に挟まれ…眠りに着いた 少し眠って…目を醒ますと…康太に 「眠れねぇのかよ?」と聞かれた 「…?目が醒めてしまったんです…」 「最近、寝てるのかよ?」 「…………寝てません…」 「最近、エッチした?」 「……!してません…」 「……ストイック過ぎんだよ…若旦那は…」 「…そうでもないです…」 「最後にしたの…何時…?」 「…?解りません…」 「妻とは?しねぇの?」 「してませんね…」 「何で?」 「何で…ですかね…」 戸浪は…困り果てていた 「若旦那…妻を愛さなくてどうするよ? それとも…男の方が…しっくり来るとか?」 「男も、女も…あまり抱きませんよ… 藍崎が言ってませんでしたか? 私とはあまり…やることはなかった…と」 「言ってたな…何で…そんなに頑な…なんだよ?」 「解りません…性欲を…何処かへ忘れたのかな…」 「今度、若旦那の妻に…逢わせて…」 「良いですよ?今夜でも…逢いますか?」 「ん。逢わせて…」 康太はそう言うと戸浪な向き直った 「その前にな…まだ夜中の2時だしな 寝かせてやんよ…伊織…」 「やりますか?」 康太と榊原は体を起こした 「若旦那…時には心も体も…解放してやらねぇと…ストレスが貯まりまくるぜ…」 「康太…何を?」 康太は答えず…戸浪に…接吻した 口腔を…犯され…頭が朦朧となる… 背後から…榊原に、抱き締められ…愛撫を受ける… 「伊織…止め…」 戸浪は抗うが…榊原は聞かなかった 「若旦那…自分を解放するんです…心を楽にして…快感を受け入れなさい」 榊原が言うと…戸浪は…無理…と抵抗した 榊原が首筋を舐める… 康太が…胸を舐めた… 前からは…康太に 後ろからは…榊原に… 弄られ…快感を…受け入れさせる… 「アッ…イッてしまう…」 康太は…トナミの肉棒を擦り…射精を促した 戸浪は…康太の手の中で…イッた… イッたはがりの…敏感になった…亀頭の先を舐められて… 戸浪は…仰け反った… 訳が解らず…康太と榊原に翻弄され…体は…快感に…幾度も射精させられ… 疲れきっていた もう…勃起すらしなくなるまで…舐められ… 愛撫され… イカされた 榊原に支えられ…浴室で…体を洗い…ベッドに戻って…気絶したように寝た 朝まで…泥の様に…眠った 何も考えず… 何も思わず… 何にも囚われず… 眠る… 戸浪は…朝、起こされても…頭が着いていかなかった… 「若旦那…若旦那…」 揺すって…起こされる… 「ん?…康太???」 戸浪は…訳が解らなかった… 「若旦那、起きれるか?」 「はい。起きれ…」 頭が働いて来ると…昨夜の事を思い出す… 「康太…酷いじゃないですか…」 「眠れたろ?」 「はい。そりゃあ…もぉ…」 「あれは、お前を眠らせる運動だ! セックスじゃねぇ… オレは若旦那とはセックスしねぇ!」 「解ってますよ!君の唯一は伴侶ですものね」 「頭も体も…解放されねぇと…壊れるぞ… 若旦那は…家でも外にも…捌け口がねぇ…」 「…………言われる事は…解ってます… ですが…そう簡単に…心を許せる人間など…現れません… 君程に…側にいて…安心出来る人も…」 「若旦那、今夜…お前の妻に逢わせてくれんだろ?」 「ええ。逢わせます。我が家におみえになりますか?」 「オレは何処でも構わねぇぜ…でもな子供はいねぇ方が良いからな…部屋を取れ」 「解りました。」 「部屋を取ったら…オレをエスコートしろ!」 「解りました…」 「と、言うことで…風呂に入って…支度をするか!」 康太と榊原と戸浪は風呂に入り…念入りに体を洗った そして出ると…榊原に戸浪も康太も…髪を乾かして貰い…支度をした キッチンに降りて行き…朝食を取ると… 戸浪は田代と共に帰って行った 食事を終え…康太は自室に榊原と共に引き上げた 榊原は康太に外出用の服を着せ… 「何をする気ですか?」と、問い掛けた 「若旦那の妻の想いを…少し見ようかな…とな」 「やはり、そう来ますか。」 「カタチと繋がりは違う… 妻と言うカタチに…愛される…と言う 繋がりがないとな…妻は悲しい生き物にしかならねぇかんな…」 「若旦那は不器用ですからね…」 「オレの伊織みたいに…愛してくれれば…妻は幸せなのによぉ!」 「僕は君しか愛せません! 僕の愛で…君を幸せに出来るのなら… 僕は努力を惜しみません!」 「伊織…愛してる…」 「康太…」 その時…ドアが…けたたましくノックされた 「ベッドに行きそうな勢いですやん!」 一生が呆れて呟いた 「一生、夫婦の時間を邪魔すんな!」 「邪魔はしねぇけどよぉ…病院に行く時間だ しかも、下に貴史が来てんぜ!」 「貴史が…?あんだろ?」 康太は榊原に、腕を伸ばした 榊原は康太を抱き上げ…寝室を出る 応接間に行くと…兵藤がソファーに座っていた 「よぉ!貴史!どうしたんだよ!」 康太は笑いかけてソファーに下ろしてもらった 「怪我の様子見に…どうなんだよ?」 康太は兵藤の見てる前で…服を脱ぎ捨てた 体躯には…榊原の愛撫の跡と…切り裂かれた…刃物傷を止めるテープで…止めてあった 傷は生々しかった… 榊原は脱ぎ捨てた康太の服を拾うと…康太に着せた 「頭はな…陥没したかんな…記憶を無くしてるのもあるかもしんねぇ」 「脳に…傷がいってるのか?」 「陥没だかんな…オレより酷いのは…力哉だ… オレを守って…盾になったかんな…」 「………何で…今回…そんな事になったんだよ?」 「飛鳥井は…今、改革の真っ只中だ… 強引に改革を進めれば…反旗を翻す奴も出る そんな犠牲の上に…改革は…成り立つ…」 兵藤は…言葉もなかった 「真贋は…自分の事は…見えねぇからな… 突然…暴漢に襲われたら…どうしょうも出来ねぇって…解ったな…」 「……康太!……言うな…んな辛いこと…言わなくて良い…」 「貴史…それでも、オレは動きを止められねぇんだよ!」 「………解ってるよ!」 「何時もの康太になってんじゃねぇかよ!」 兵藤は言い捨てた 康太は笑った 「またな、貴史…オレは病院行かねぇとな」 「解ってるよ!またな!」 兵藤は…ソファーから立ち上がって…帰って行った 康太は一生と力哉と共に、榊原の車で、病院に行く… 消毒をして貰い…薬を貰い…2日に一度、見せに行き、数ヵ月に一度脳波も図る… 事になった 病院が、終わり…康太は飛鳥井に帰った 榊原は康太と一生と力哉を下ろして…会社へと出勤した 「一生、仕事を片付けて来るので…康太を見ていて下さい!」と、念を押して… 榊原は仕事へと向かった 榊原は早目に帰って来て、康太を風呂に入れた 頭の包帯は取れた 傷口をコーティングして固めて貰ったから、髪を洗って貰った そして、体も洗って貰って… 榊原が作ってくれた、可愛いドレスコードを着せた ビロードで…作られた…そのスーツは… 康太に似合っていた 「伊織、オレって可愛い?」 「可愛いですよ!僕の康太は誰よりも可愛いです」 康太は……きっと一生なら眼科に行きなはれ…と言うだろうなぁ…と想いつつ苦笑した 「伊織、プレジデントホテルに…行くもんよー」 「解っています!行きますか?」 榊原もドレスコードに身を包み… 康太は…トロンと魅取れた 戸浪から電話があり…プレジデントホテルに部屋を取りました…と連絡があった フロアに田代が待ってますから…貴方は来てくれれば…良いです…と戸浪が言った 榊原は、康太と共に玄関に行き…外へと出た 「伊織…月が綺麗だぞ!」 康太が…空を見上げて言う 榊原も空を見上げ… 「康太、行きますよ!」と、告げた 康太は車に乗り込み…エンジンをかけた プレジデントホテルに向けて…車は走り出した プレジデントホテルの車寄せに…車を停めると…keyを預けて…ホテルの中に入った ホテルの中に入って行くと、田代が待ち受けていた 「御待ちしておりました!此方へ」 田代が頭を下げ…康太と榊原を部屋へと案内する かなりグレードの高い部屋の前に立つと… 田代はノックした 戸浪がドアを開けると…康太に手を差し出した 戸浪が…エスコートして部屋へと招き入れる 戸浪の妻は…驚愕の瞳で…康太を見ていた 夫が…誰にも向けぬ…顔をして…笑っていた 優しい瞳で…エスコートして部屋へと招き入れる姿は…妻として一度も見た事のない瞳だった… 康太は、椅子を引かれ…腰かけると…戸浪が椅子を戻して…完璧なエスコート振りだった 戸浪は妻も座るように促した 榊原も、椅子に座ると…田代が料理を運ばせた 食事を初める前に…戸浪が康太を紹介した 「沙羅、飛鳥井康太さんだ!そして、榊原伊織さん。 康太、伊織、妻の沙羅です!」 互いに紹介され…沙羅は…頭を下げた 康太は…不敵に嗤い…食事を始めた 康太は申し分のないマナー作法で食事を始めた 「若旦那、プリンが食いたい」 康太が甘えて…戸浪に声をかける 戸浪の妻は…眉を顰めた 「田代、康太にプリンを頼んで下さい」 すかさず戸浪が田代に頼む 「社長、直ぐに持って来て下さいます」 田代が言うと、戸浪は康太に 「少し待てますか?」と、心配そうに…話し掛ける… 康太は「待っても良いけど…それを食べさせて…」と、お肉を指差すと…戸浪は康太の口に…お肉を入れた 「康太、お口が…汚れてしまいましたね」 肉を入れた時に…康太の口に肉汁が垂れると…戸浪は慌てて拭いた 康太の口を拭く戸浪は…康太を愛しげに見ていた 妻は…いたたまれず…席を立った 戸浪は「沙羅、失礼ですよ?座りなさい」と、たしなめた 「その方は…貴方の新しい愛人ですか? 私に見せ付けて…どういう気なのですか!」と、妻は叫んだ 「沙羅……何を?」 「私が…知らないと思ってるのですか? 藍崎…とも寝てたでしょ…次は…この方ですか? この方は…藍崎よりはマシですね… 貴方に…そんな顔をさせるんですから…」 戸浪の妻は…止まらなかった 「藍崎は…遊びでしたでしょ? でも……その方は…遊びは無理でしょ? 貴方は…そんなに真剣に…我が儘さえ…聞いてやってる… 私と…別れますか? その為に…見せ付けているのですか!」 泣きながら…妻は…今までの想いを吐き出した 康太は戸浪に 「若旦那、妻に…こんな想いをさせて… お前は…知らねぇ顔をするのかよ?」 とボヤいた 「康太……」 「そんな情けねぇ顔をするな!」 康太は立ち上がると…田代を退かせ戸浪の妻の横に座った 「飛鳥井康太だ! オレの伴侶はこの世で一人! お前の亭主ではねぇよ! だから、泣くな…美人が台無しだぞ」 「貴方は…? 戸浪の…愛人ではないのですか?」 康太は榊原に腕を伸ばした… すると榊原は康太を抱き上げた 「オレの伴侶は榊原伊織! オレの伴侶は男だが…恥じはしねぇ!」 戸浪の妻の目の前に…対の存在のカップルが…立っていた 「でも、戸浪は…貴方の前では無防備で… そんな顔は…私達家族ですら…見た事ない」 康太は榊原の腕から降りると…妻の顎をあげた 「戸浪海里は…オレにしか…総てを晒さねぇかんな! でもな…それを続けさせるのは…万里や千里の為にはならねぇ… 家族や妻の在り方を変えねぇとな! オレは適材適所…配置する為に在るんだよ! お前に逢ったのはな…戸浪海里の婚姻は間違いじゃないか…確かめる為だ!」 康太が…死を狩る…死神に見える…… 妻は康太を見つめ 「私は…戸浪海里の妻として…不合格ですか?」 と、問い掛けた 「沙羅!戸浪海里を、愛してるか?」 康太は総てを見透かす様な…キツい瞳で…妻を貫いた 妻は…康太から目を離す事なく 「愛しております!」と、答えた 「ならば、何で愛人を許すんだよ!」 「……嫌ですが、戸浪は…私の言う事など…聞きません…」 「どうしょもねぇ暴君かよ?」 「暴君と言うのとは…違います… 見ないんですよ…私を…家族を…。 それが…1年程前から…子供に…向き直り… 父親として…生きてくれるのを…知りました その頃…藍崎とも別れたと…田代に聞きました」 「愛人と別れたから…気紛れで…子供に向き直ったと?」 「いいえ…貴方に…子供を見ろと…言われたからだと…田代に聞きました… 何時か…貴方に逢う日が来たら…負けてしまうと…思ってました 万里の卒業式の日、戸浪は貴方を見つけ…走って行きました… 見た事もない顔で笑っていた戸浪を…見れば…嫉妬で…おかしくなりそうでした しかも…貴方には…子供もなついている! 貴方の存在こそが…私には驚異でした…」 「合格!若旦那への愛は…溢れてる 沙羅、若旦那と寝ろ! 甘えて…ねだって…時には…押し倒せ 待ってても…この男は…くれねぇなら… 襲え!襲って…三人目を作る…気心で…エッチしろ! 解ったな!」 「解りました!私には…無くすものなんて…何もない! 戸浪を襲って…子供を作る覚悟で…押し倒します!」 「良い子だ!」 康太は沙羅の唇をペロッと舐めた 「お前も…頑なな女になるな… 男を掌で遊ばせて…操縦してる様では愛は手に入らねぇぞ」 妻は頷いた 「キスは…何時したきりだよ?」 妻は…思案して…首を傾げた 康太は妻の顎を持ち上げ…唇を舐め… 舌を入れた… 口腔を…搦め…吸われる… 巧みな接吻に…妻は…体が…熱くなるのを感じて…暴れた それでも、康太は唇を離さず…口腔を蹂躙する… 戸浪の妻は、体の力が抜けると…熱い液体が…下着を濡らすのを感じた 「感度は良いじゃん!濡れてるだろ?」 康太が聞くと 妻は…顔を赤くした 「可愛いじゃん…オレの愛人にならねぇかよ?」 康太が言うと…榊原から「康太!」と怒声が…かかる 「オレの伴侶は嫉妬深い…愛人はなしでな!」と、笑った 康太の指が…妻の唇をなぞる… 「若旦那に抱いてもらえ…良いな?」 妻は…トロンした瞳を康太に向け頷いた 「若旦那、オレは女も抱ける…気を付けねぇと…取っちまうぜ!」 「え!嘘!女も…抱けるのですか?」 「オレが触れば…女は濡れるぜ! 濡れねぇ女はいねぇ…濡れまくり…で喘がせる自信はある 嘘だと思うなら…妻の下着の中に指を入れて…確かめてみろ」 「解りました!この後…確かめてみます!」 「なら、もう少し…濡らせとくか…」 康太は…妻を膝の上に乗せると…首筋を舐めた そして耳元で…囁くと…妻は…真っ赤な顔をした 「若旦那…ベッドに行け! オレは帰る!田代も帰るよな?」 康太に聞かれ…田代は 「社長、私も帰ります!ではこれで失礼します!」と、挨拶をして帰り支度をする 「ならな、若旦那! 今度は沙羅も交えて食事のやり直しをな!」 解りました…と、戸浪は康太に頭を下げた 康太は榊原と田代を伴え…部屋を後にした 田代は…下のレストランで食事を奢りますよ…と康太に言うと、ハンバーグが食いてぇ…と田代に言った レストランに行き、康太にハンバーグ、榊原にパスタ…田代は和食定食を頼み…食事を始めた 「飛鳥井康太マジックですね。 あんな少女の様な奥様は初めて見ました」 康太は笑っていた 榊原は「康太が触れば…触られた方は…夢中になりますからね…」と淡々と語った 「伊織さんは、妬けませんか?」 「妬けますよ!康太はすぐ愛人にならねぇか…って言いますからね… 相手が本気になったら…どうするんですか!と、怒るんですがね…」と、ため息をついた 「伊織、妬くな!オレはお前だけだ!」 康太は可愛らしく笑った 田代は…目の当たりにしたら…夢中になるのは理解できた… 田代は「康太さんは、何故…社長と奥様を?」と問い掛ける 「若旦那は…四六時中…戸浪海里だ…気を抜く場所もねぇ… そのうち若旦那の内面から壊れてくんだよ! 若旦那がオレに甘えのはな、心のバランスを知らず知らず…取ってんだよ! せめて…妻位はな…戸浪の側に置いとかねぇとな…これで、あの二人の…関係は変わる 沙羅は若旦那を支えて上手く行く!」 田代は…言葉もなかった… 「後な…千里は…トナミに残らねぇ… その時…万里じゃ荷が重い… だからな、もう一人要るんだよ! しかも濃い血を受け継いで出て来るぜ! 戸浪の台風の目になる!そんな子供がな!」 田代は…目の前で…トナミ海運の未来を語られていた… 康太は淡々と語る… 田代と色々話をして… 食後の珈琲まで飲むと…田代と別れて… 康太は飛鳥井の家へ帰って行った

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