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第47話 想い‥願い
キッチンには京香が食事を作っていた
玲香と清隆と瑛太が…食事をしていた
康太は榊原に椅子に座らせてもらうと…
父 清隆を睨み付けていた
清隆は…どう見ても悪意がある眼差しに…
「康太…父は何かしましたか?」と問い掛けた
「した!」即答で返され…清隆は困り果てた
玲香が康太に「詳しく話さねぇば解らぬ」とたしなめた
「オレの伊織は、男前だ!女が放っておかないのも解る!だがな!伊織はオレのもんだ!」
康太は…言い捨てた
「そんな事は百も承知じゃ…」
「ならば、何故!伊織は襲われた!
秘書に襲われて…伊織は壊れそうだった!
何故だ?何故伊織を盗ろうとする?」
玲香も…清隆も…言葉を無くした
「康太…兄にも詳しく話して下さい…康太…頼むから…」瑛太が涙を浮かべる康太に哀願した
康太は父親をキツイ瞳で見ていた
「父ちゃんは伊織に着けた秘書に…パンツを脱いで…誘惑されなかったのかよ?」
清隆は…驚愕の瞳で…康太を見た…
「康太……私には玲香がいます!
誘惑などされはしませんよ?」
「あの女…オレの伊織を…誘惑したんだ
パンツを脱いで…伊織の手を取って…
あそこに触らせて…触っても良い…って誘惑したんだ!
股間が反応しねぇと…乳を見せて誘惑して……
無理矢理襲われて…触らさせられて…
伊織は帰ってくるなり倒れたんだ!
そして胃液も出ねぇのに吐いたんだぞ!
伊織はオレにしか勃起しねぇよ!
オレも伊織にしか勃起しねぇよ!
誰でも良い訳じゃねぇ!
何で…伊織が…」
康太は……泣いた
哀しそうに…泣くから…
榊原は抱き上げて…膝の上に乗せた
清隆は「康太…康太…父を許して…」と情けなく哀願した
玲香は…怪訝な顔をして…眉を顰めた
瑛太は…怒っていた…
「伊織…大丈夫ですか?」
瑛太が心配して問い掛ける
「昨夜は…気持ち悪くて…逃げ出して吐きました…
僕は…康太しか…反応しません…
触れと言われても…吐きました…」
「秘書としての…資質すらない…
伊織が独身だから…狙われたのですね」
「戸籍では…結婚出来ませんからね…」
と、榊原が哀しく呟いた
「伊織、結婚は出来ねぇけどな…オレ等は恵まれてるって…お前の口癖だろ?」
「そうでした!僕達は…認められて…一緒にいられる…そうでしたね!」
榊原は、胸の中の康太を抱き締めた
玲香が「清隆…飛鳥井にはそんな秘書など要らぬ!」と言い捨てた
そして榊原に向き直り…深々と頭を下げた
「会社の社員の躾が出来てないのは会社のトップの責任!
我が夫は目が届かなかった…許して下さい」
瑛太も清隆も…榊原に頭を下げた
「止めて下さい……」
榊原は困って……康太ぁ…と、助けを求めた
康太は…榊原を抱き締め…
「飛鳥井家 真贋の伴侶を誘惑なんてしたら、昔なら死罪だ…
真贋の伴侶は生涯一人…
オレは伊織を伴侶として公表して…伴侶の腕時計を送ってる…
伊織をなくせば…この先…オレは生涯一人だ…まぁその前に…伊織はオレと魂を結びつけてるから…盗られるなら…オレは死ぬけどな!」
言い捨てて…嗤った
京香が怒り狂って…
「その女…私が殺る!康太の幸せを奪う奴は…許さない!」と興奮して叫んだ
「京香!落ち着け!お前が殺したら飛鳥井の名に傷が付く…止めとけ!」と康太がたしなめると…京香は泣いた
「瑛兄、オレは動かねぇ…処分は…そっちでやってくれ!
オレが動けば…無…にするぜ!
夫を寝取られそうになって…黙ってる程…人間は出来てねぇんだよ!
オレはやるぜ!
体も…魂さえ…無にオレは出来る
オレが昇華すれば…跡形もなく…なくなる
破壊神と呼ばれたオレだからな…
本当の…無…にしてやんよ!
炎帝と呼ばれ…畏れられた…力はそのままだ
オレの焔に…焼かれれば…何も残らねぇぜ」
一生は「それ以上…言うな…」と、康太を抱き着いた
全身で…康太を守ろうとする一生の体に重なり慎一も聡一郎も隼人も…重なる…
誰もが…康太を守り…
二人を…守っているのだ…
瑛太は「処分は社長の私がやります!」と康太に言い切った
康太は何も言わず…頷いた
「今日は会社には行かねぇ!
オレも伊織も…今日は家にいる!」
「解っています…康太…ご機嫌を直して…ねっ」
瑛太が…康太に話し掛ける…
康太は…そっぽを向いた
「康太…私に…このまま会社に行けと…」
瑛太は…情けなく…康太に声をかけた
康太は…一生や仲間の腕の中から抜け出し…
立ち上がると…瑛太に腕を伸ばした
「オレの伊織なのに…」と康太が哀しそうに言うと…
瑛太は…康太を抱き締め…頭を撫でた
「私は…お前と伊織を守ると決めたのに…
お前の幸せを奪う者は…許しません!
許したくはないのです…!」
瑛太は…幸せに笑う…弟を見ていたい…
康太が幸せなら…生きて行ける…
命に変えても守ると…心に決めた
それを揺るがす存在は許してはおけぬ!
「瑛兄…あの女はな、あわよくば伊織を自分のモノに…
出来なくば、会社の情報を…手にして他社へ…行く算段たった…
朝、会社に顔を出したら警備室に顔を出すと良い…
多分…聡一郎の張り巡らした…トラップに引っ掛かり…身柄を拘束されてる」
そこまで…見えてて…泳がせたのか…?
瑛太は…こんな時の…康太の容赦のない手腕に畏れを、抱く
「命が有っただけ…良かったと思え!と、伝えといてくれ!
飛鳥井の真贋は…お前ごときに惑わされたりは…しない!とな」
「解った…一字一句違わず…伝えとく」
「飛鳥井は…飛鳥井康太がいる限り…揺らがねぇ!
そのうち…狙ってる愚かな奴等に…想い知らしてやるけどな…
と、言うことで…やっぱオレ大学行ってる暇はねぇよ!
一生も聡一郎も…伊織も…慎一も…聞いたら考えは同じだった
隼人ははなから大学には行かねぇ…
瑛兄…悠長に大学なんぞ行っていたら…
飛鳥井は好き勝手されるぜ…
見通しが着かねぇ今、わざわざ大学なんぞに行ってる暇なんかねぇよ!」
康太の言葉に…家族は驚愕の瞳で…言葉を無くした
瑛太が…康太…と呟くと
「明日の飛鳥井はオレが作る!
その為に…伴侶がいて仲間がいる
今揺るがねぇモノにしねぇと、果てへと続かねぇ
オレの代で終わらせる為に…百年の時を…越えて来た訳じゃねぇ!
先へ続けてこそ真贋だろ!
歩みを止めてどうするよ?
今は…飛鳥井の正念場だ!
オレは進む…誰もオレの歩みを止めるな!」
それを言う為に……?
どの道…康太の歩むべき道は…果てしなく険しい…
道なき道を切り開いて…明日へと続ける
瑛太は…
「飛鳥井が安定したら…大学に行きなさい…」と言葉をかけた
「瑛兄は…そう言っても…大学の入学の手続きをすんだよな…
榊原の家族だってそうだ…
行かねぇって解ってて…手続きはすんだよな
解ってるからな…悩む…」
瑛太は…康太を抱き締めた
「お前に…普通の生活を…送らせたいと…想うのは…兄の願いです…」
「瑛兄…」
「飛鳥井の為…お前の総ては…飛鳥井の為…
そうでない…生活も送って欲しい…
普通の大学の生活を送って欲しい…
お前はまだ18…背負わなくて良い荷物まで背負って…お前は闘う…
すみません…兄のエゴです……」
清隆は…「今夜、話し合いましょう」と言い会社へと向かったら
瑛太も…「榊原のご両親も呼んで…話し合いましょう…」と言い…会社へ向かった
玲香と京香も「一人で…結論を出すでない」と言い、半分ずつ子供を持ち…会社へ向かった
皆、会社に出向き…康太は…自室へと向かった
リビングに寝そべっていると…一生に上に座られた
「苦しいてばよぉ!一生!」
「んなにデブじゃねぇよ!」
一生は康太の上から降りて…横に座った
「内臓破裂するかと思った…」
「……本当に乗ってやろうか?」
「潰れるってばよぉ!」
「……お前…あの女が…無理矢理旦那と繋がったとしても…泳がせれたか?」
康太は…キツイ瞳で一生を睨んだ
「証拠を掴むためなら…オレは泳がすぜ…
証拠がねぇとな好き勝手言いやがる…
オレは…伊織を信じてる!
しかも伊織は…オレしか勃起しねぇよ…
女は…オレにはねぇパーツだろ?
勃つかよ!」と言い捨てた
「なら…お前に…そっくりの…女がいて…その女が…妊娠したら…お前は許すのか?」
「一生…オレが伊織をみすみす渡すと思うか?
伊織が…オレに似た女に…真剣に触るなら…
その瞬間…オレは命を断つ気だ…
許すとか…許さねぇの…次元じゃねぇ…
許すか…許さねぇかで…言えば…許さねぇよ
誰かを抱くのなら…オレはこの命を落とす
伊織は…共に逝くしかねぇ…
オレは…伊織を離さねぇ…
伊織も…俺を離さねぇ…そうだろ?一生」
康太の愛は激しい…
盗られるなら…殺す
自分を殺して…相手の命を奪う…
命懸けの愛だった
「…かずき!今日はどうしたよ?
オレに意地悪な質問ばかりしてよぉ…」
「すまん…力哉が…別れようと言い出してな…
オレは…どうしたら良いか…解らなくなって…少しお前と色んな話をしちまった」
「戸浪亜沙美が…日本に帰って来てるからな…
想うことがあるんだろ?」
「………あの人が…日本にいるだけで…心が騒ぐ…」
「……お前は…迷ってる…んだろ?
力哉は…それを知ってて、お前を自由にしてやる気なんだ…
そんな力哉の気持ちも解らねぇなら行けよ…
赤龍の頃の様に愛するのか?
それとも緑川一生として愛して行くのか?
逢いてぇなら…オレを捨てて…行けば良い」
「康太…」
「お前の道は…お前が決めて進むしかねぇんだからよぉ…
お前が決めろ…そして動け…解ったな?」
一生は頷いた
「離したくねぇならな…地球の裏側に逃げたって…貫けた筈だ…
もう一度…考えろ…!オレは…少し寝る…
お前は自分の部屋に行きやがれ!」
一生は立ち上がった
そしてドアへ向かって歩いた…
「…康太…すまなかった…」
「悔いのない道を進め…自分の道を進め…」
「解ってる…」
一生はリビングを出て行った
榊原はソファーの後ろから…康太を抱き締めた…
「康太…幾ら君にそっくりでも…君に着いてないパーツは…触る気もないですよ?」
「知ってる…でも、それは一生の欲しい答えじゃねぇ…」
「アレは迷ってるんですか?」
「だろ?…」
「今更…でしょ?」
「一生の中では…今更じゃなぇんだな…」
「赤龍は……自分の罪を…知ってるんですかね?」
「知らねぇだろ?
茗は…閻魔の娘だが…女神が…産み落とした…龍の子だ…
そして……流生は…龍の血を…受け継ぐ…女神の…力を秘めた子供…
普通の子供には…なれねぇからな…
閻魔に…封印にさせた…
人の世で…龍にはなれねぇ…
下手したら…今の赤龍を越す力を…消したくはなかった
封印するしかなかった…」
「茗は…閻魔以上の力を秘めてるんでしょ?」
「でもな…閻魔にはなれねぇ…定めだ
閻魔は…代々…太古の神々の血を引いた者がなる…
龍の血を引いた子供は…閻魔にはなれぬ」
「………そうでしたね…」
「閻魔は…子を成した…それが次代の閻魔になる…
女神が歪めた…定めは…軌道修正され…受け継がれる…」
「直したのは…君でしょ?」
「オレは人の子だ…無理だ…」
康太は…そう言い笑った
「茗は…その命尽きるまで…黄泉の泉から…出ないと約束してくれた
閻魔は…娘を不憫に思っていたが…
あの力…魔界の調和を崩す…
果ては…魔界の勢力争いに利用されねぇ可能性も捨てれねぇ…
そんなものに茗は…利用されたら…本当に不幸だろ?
だから…魔界と…黄泉に…境界線を張ってやった…
オレが戻るまでは…魔界の者が勝手に手出しはは出来ねぇ様にな!」
時々…本当に…怖くなる…
何処まで…見えてて…解っているのか…
その力…閻魔を越す…
一目瞭然だった
榊原は康太を抱き締めた
「伊織、プリン食いてぇ…」
話は終わりだとばかりに康太が…プリンを榊原にねだる
「…すみません…君が入院してたりで…期限切れで捨ててしまいました…買いに行きますか?」
「おう!ついでに昼も食って帰ろ♪」
「良いですね…二人で行きますか?」
「応接間に一生以外はいるかんな
連れて行く…帰って来たら…一生は消える…
オレは追う気はねぇ…行かせてやる」
康太の愛だった…
その手で…行く道を…決めさせる
人生の指針を…自分の手で向けさせる…
「まだ寒いですから…上着を着ないとね」
榊原は、寝室から康太の薄手の上着を持って…寝室に鍵をかけた
康太は…天を仰ぎ…
「弥勒…目を瞑れ…」と行く先を見るなと…告げた
『……瞑ってやる…それで…お前は…許せるのか…』
「許してる…それで良い…」
弥勒は…何も言わず…気配を消した
「伊織…お前も…探すな…」
「解ってますよ…でも…一生は…君の側でないと生きられませんよ?」
「それを決めるのは…一生だ…
自分の手で…決めさせる…三木のように…」
榊原は息を飲んだ
三木繁雄は…自らの手で…過去を葬った
そして…生きるべき世界で…三木は生きている…
自分の手で…選んだ…それが三木の生きるべき場所だった
康太と榊原は応接間に顔を出した
「力哉、飯食いに行くぞ!」
力哉は康太を見て…飛び付いてきた
「どうしたよ?腹一杯食って…仕事に復帰出来るようにしねぇとな!」
力哉は…切り替え…背筋を正した
「そうですね!貴方の役に立ちたいと…思っています」
康太は…力哉の背中を撫でた
「力哉、そこら辺に停まってる車で良いから聡一郎と隼人を乗せて…何時ものファミレスに行くぜ…
慎一、主を労れ…オレを…車に連れて行け」
「一生は?部屋にいませんでしたか?」
「………慎一…早くプリンを食いに行くぞ」
慎一は…何かを推し量り…康太を抱き上げて…応接間を出た
外に出て…榊原の車に…康太は慎一と共に後部座席に乗った
「慎一、一生の…話はしたよな?
戸浪の妹と愛し合い…子供を成した…話をしたよな?」
「はい。」
「ならば…オレの話を聞け…」
康太は…慎一に一生は…赤龍…で…四龍の1人だと話した
赤龍は弟が気になって…黄泉の泉に…何度も出向いて…弟と炎帝の姿を見に行った
その時…女神と…恋に落ち…子供を授かった
だが不義の子供だ…女神は命と引き換えに…子供産み…円魔の手によって…人の世に落とされた…
女神は…女神としての記憶を封印された
閻魔の…情けであり…愛だった
そして女神は…未来永劫…人として生きる…
赤龍は…愛する女を想いながら…弟たちを見ていた
弟の…側で…生きてみたい…
炎帝と青龍の次の転生に合わせて…人の世に落としてくれ
弟と炎帝の…所縁の血に…落としてくれ…
赤龍は…次の女神に頼み…
人の世に落ち…緑川一生として生まれた
そして…また、女神と出逢い…恋に落ちた
今度も…同じ罪を…一生は作った…
その一生が…今、迷ってる…
好きな場所に…行かせてやる気だ…
探すな…目を瞑れ…と慎一に言った
慎一は静かに頷いた…
「貴方には…一生の…果ては見えてますか?」
「一生の…果ては視えねでよ‥‥
アイツの果ては自分で作らせる…
オレは、結末の解らない…果てを一生にくれてやった
アイツの果ては…自分で掴み取るしかねぇんだよ
自分の指針は…自分で…決めるしかねぇ…
迷ってるなら…オレは送り出してやると決めている
行く道は…自分で探して掴むしかない…」
慎一は涙ぐみ…康太…と呟いた
「一生の迷いは…あの時…手放した…後悔を…引き摺っている…
その後悔を…越えねぇとな…一生は過去を断ち切れねぇ…」
「過去を断ち切らねば…先には進めないのですか?」
「想いは過去で…体は…現在
その歪みは…心を歪ませる…日々歪んで…
アイツは…現実さえ見ねぇ奴になる…」
過去を…受け入れて…断ち切らねばならぬのか?
「一生の想いは…康太にないのですか?」
「オレへの想いと…過去に囚われる…想いの種類が違う……
オレと生きたいと願っているのと…
今世位は…愛する女の側にいたいと言う…想いは…違う…
刹那に生きる一生の願いであり…想いだ
オレは送り出してやる…」
康太はそう言い…遥か…果てを見つめた…
康太は…皆とファミレスに行き、昼を取り…
スーパーでプリンやら、美味しそうなものを…買って帰った
飛鳥井の家から…一生の気配が消えて…
緑川 一生は…出ていった
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