48 / 72
第48話 邂逅①
桜の花を…康太は見上げたいた
「流生…桜だぞ…」
康太は…流生を抱き上げ…笑った
「康太!お弁当食べないと…桜の花弁だらけになりますよ!」
「今行く!」
康太は…天を見上げ笑った
「バカ一生…また桜の花の頃に…お前は消えるんだな…」
去年の桜の頃も…一生は消えた
学園から…何も言わず…消えた
一生が…飛鳥井の家から消えて…1ヶ月経った
元気のなくなった康太の為に…
榊原や聡一郎達は…飛鳥井の家族や榊原の家族を巻き込んで…
花見に行く旅行を提案した
桜前線を追っ掛けて…
榊原は…康太に…
今年の春は…花見に行く約束でしたよね?
と、約束を…思い出させ…連れ出した
でないと康太は…応接間の住人のままでいるから…
一生が帰って来たら…一番に飛び出せるように…
応接間で過ごしていた…
そんな康太を……見ていられなかったから…
1ヶ月遅れの花見をする為…北海道まで来ていた
GWを利用して…まだ桜の咲いてる…北海道まで花見に来ていた
大学は…一応、行ける時に行く…と言う事で話がついた
榊原の秘書は…佐伯が…兼任する事となった…
康太は…流生を…瑛太に渡した
そして花弁が舞い落ちた弁当を…花弁を出す事なく…康太は…ガツガツ食べた
聡一郎が「あのバカ…この桜を…今年も見てないんですかね?」と呟いた
隼人が「戸浪の妹は…アメリカに帰ったのに…アイツは…何処へ行ったのか…オレ様には解らないのだ…」とボヤいた
慎一が…「康太……アレは生きてますか?」と問い掛ける
榊原が「生きてるでしょ…簡単には死なないでしょ?」と楽観して答えた
康太は…父親の背中に甘えて…
「父ちゃん…北海道に来たんだしよぉ
カニやエビや…イカや…海鮮モノだろが!」と催促した
やはり康太は…花より食い物だった……
でも、その前に…
「伊織、桜アイス…買ってくれよ!」
桜の咲く時期だけの!
期間限定!
個数限定!
売ってる場所限定!
の、限定アイスだった…
その頃…一生は…飛鳥井の家の前に立っていた
ドキドキしながら…インターフォンを押す…
でも……誰も…出なかった
駐車場は工事で…車は一台もなかった
駐車場を建てると聞いていたが…まさか今やってるとは…
一生は…焦っていた
何で…誰もいないのよ?
康太に何か有った?
心配してると
「あ!家出人発見…」と声が聞こえた
振り返ると…兵藤貴史が…立っていた
「貴史…康太は…?何処にいるんだよ?」
「飛鳥井は…家族全員、北海道旅行だろ?」とさらっと答えた
「ほっ~かい~どぉぉぉぉぉ!」
一生は…大声を出した
兵藤は五月蝿そうに…眉を顰め…顔を反らした
「一生、俺んちに来い」
と、兵藤は一生の腕を掴んだ
兵藤の家に招き入れられ…初めて…貴史の部屋に通された
兵藤はソファーに座り…一生を見た
一生は兵藤に食ってかかった
「貴史…あんで北海道なんだよ!」
「何でもな…桜の頃になると…」
兵藤が言うのを…一生は真剣に聞いてた
「なると…何だよ?続きは?」
「家出する奴がいんだと…」
身に覚えがあり…一生は気まずい顔をした
「でな、康太は…去年、家出捜索で花見出来なかったから…今年は…花見に行くと…旦那と約束したらしくてな…
花見の季節は…過ぎたからな…北海道まで見に行くって…言ってた」
「……北海道には桜は咲いてるのかよ?」
「らしいぜ!元気のなくなった康太の為に…伊織や聡一郎と慎一が必死になって探してた
瑛太さんや両親も…伊織の両親も…加わっての大移動だ…」と兵藤は詳しく教えてやった
「おい!一生!」
「あんだよ!」
「戸浪に…康太が頼んでやったんだぞ…
もし…一生が亜沙美を奪回するのなら…くれてやってくれ…と。
なのに、お前は…何処へ行ってたんだよ?
話してやったんだから…聞く権利はあると思うけど?」
「戸浪から……奪って…何処か知らねぇ街で暮らそうと思ったんだけどな…
奪えなかった…罪は…もう作れねぇからな…
俺は…魔界に渡っていた…
黒龍に…総て聞いた…
現世に帰ってからは…考えを纏める為に…
知らない街で…過ごしてみた…
康太のいない世界
康太のいない場所
康太の…存在のない…所で…過ごしてみると解る
俺は…康太に守られて生きてたんだなって
そう思ったら…帰りたくてな…
康太の側に…行きたくて…
帰りたくて…涙が…止まらなくなった
アイツのいない場所では生きられねぇ…
貴史…俺を…康太の側に連れていってくれ…」
「仕方がねぇな…美緒に頼んでくる」
兵藤は部屋を出て行った
兵藤の部屋の窓を見ると…康太の部屋が見えた
机には……康太の写真が…飾ってあった
笑顔で笑いかける康太の姿が…引き伸ばしてあった
「やっぱ…刹那すぎやん…」と一生は…呟いた
暫くすると…兵藤がやって来た
「来いよ!一生!俺が…アイツの側に連れていってやる!」
一生は…立ち上がり…頷いた…
康太…
お前が優しすぎて…
普段は…忘れちまうんだ…
離れるとな…良く解る…
お前の愛で包まれてると…
解らねぇのにな…
離れてみると…寒いんだ…
お前がいない…現実が…
悲しくて…
寒くて…
逢いたくなるんだ…
お前へと…続く場所に…
いられない事が悲しくて…辛くて…
生きていけないんだ…
康太…お前の側にいさせてくれ…
「伊織!早く行かねぇと…なくなる」
康太は…桜の木の回りを…駆け回り…
榊原を急かした
「転びますよ…」
「伊織!桜のアイスぅ~買ってくれよ!」
「買ってあげます…康太…転びますよ!」
康太は…公園の芝生の上を走る…
榊原の方を振り返り…走って行く
「伊織…ギャァー…」
康太は…転びそうになって…目を閉じた
べしゃ…と転ぶと…そろそろ痛みが…
ん?…中々…来ねぇぞ?
康太は…目を開けた
目の前には…
兵藤貴史が…康太を抱き上げて…
皮肉に笑っていた
「よぉ!貴史…どうしたよ?」
「あのまま転けてたら…顔面から擦りむいてたぞ…」とクスッと笑う
「どうして…此処が解ったんだよ?」
「美緒がお前のお袋に聞いた」
「下ろせ…貴史…」
「なら。目を閉じろ…」
「目?あんでだよ?」
「閉じねぇと…下ろさねぇ」
「わぁったよ!」
康太は…瞳を閉じた…
兵藤は……康太を手渡した
すると…胸に大切に…抱き…抱き締めた
「貴史…何処で拾って来た?」
「あんだよ?解ったか…残念」
「一生の腕を…オレが忘れる訳ねぇかんな!」
康太は…そう言い…一生の頭を殴った
「下ろせ!一生!」
康太が怒るけど…一生は…下ろせなかった
「康太…」
名を呼ぶなり…涙が溢れ…喋れなくなった…
「貴史…何処で拾ったよ?」
「飛鳥井の家の前に…落ちてた」
「家の前に…?やっぱ、桜が散ると帰るのか?
桜の花の咲く頃…家出すんからよぉ…
今年も…横浜で…花見は出来なかった…し」
康太は…嘆いた
一生は…ごめん…ごめん…康太と…泣いて謝った
「伊織!桜アイス…売り切れるぅ!」
榊原は一生の腕の中から…康太を取り出した
すると康太は…走り出した
「一生…桜アイス…買うまで待って下さい」
榊原は走り出した
「だから…今度こそ転びますよ!」
と榊原は後を追う…
兵藤は苦笑して「忙しい奴…」と呟いた
一生は…康太の後を追った…
途中…転びそうになって…榊原に捕獲され…
売店まで行くと…
………………桜アイスは売り切れだった
う~
う~
う~
康太が悔しそうに…唸る
家族の座ってる場所に戻っても…康太は…
桜アイスが…買えなかった事で唸る
仕方なく…清四郎が…康太を抱き上げ
「康太、北海道なら、海鮮ですよ!
アイスより、海鮮ですよ!
一生も貴史が拾って連れて来てくれましたからね…食べに行きますよ」
康太は…キラキラの瞳を…清四郎に向けた
清四郎は…苦笑した
息子が…直ぐに康太に…好きなのを食べさせてしまうのは…この瞳の所為か…と納得した
こんな瞳で見られたら…餌付け…してしまうじゃないですか…
清四郎は息子に…康太を渡した
すると横から…笙が…康太を奪う
「康太、北海道まで、わざわざ桜を見に来たのに…食べ物に行くとは…
さぁ桜を見なさい…」と抱き上げて…桜の木の下に…連れて行った
「綺麗だな…笙…」
「ええ…九州から咲き始めた桜が…最先端の地で…咲き終えます…」
「毎年…変わらず桜は咲くけどな…
オレは…去年は…家出捜索で見てねぇ…
今年も…か・ず・き・…は家出だかんな…
桜は…見れなかったな…
桜が咲くと家出する奴がいるからな…」と康太は…じとっと一生を見た
一生は……背中に…冷たいものが流れて行くのを感じていた…
「伊織の誕生日の日に…来年の春は…花見に行きましょう…と約束して…抱いてもらったのによぉ…
見れねぇなんてよぉ…オレは…不幸すぎると…想わねぇか?」
笙は苦笑して…榊原に康太を渡した
榊原は…康太を受け取り…家族の座ってる場所に戻ってきた
康太を膝に抱き上げ
「全裸でリボンを結んだ…康太と…約束したんですよね…
春は…桜の下で…花見をしましょう…って。
今、してるでしょ?許してあげなさい…」
全裸でリボンを結んだ…家族は言葉をなくした
一生達は…苦笑した
「一生…今夜はオレの部屋に泊めてやんよ
貴史は…どうするよ?」
「俺?誰かの部屋に転がり込む…俺のバイト代が…家出人の…飛行機代に消えちまったぜ」と笑った
「なら、隼人と聡一郎と慎一と…雑魚寝しとけ」
「良いぜ!お前程に…寝相は悪くねぇからな」
「貴史…喧嘩売ってる?
売ってるなら、買うぜ!」と康太は不敵に笑った
「売ってねぇよ…俺も…一生と一緒におめぇの部屋に邪魔してやる!」
「良いぜ!四人で…寝るか?」
兵藤は何も言わず笑った
花見を終え…市場の中の海鮮料理の上手い店へと行く
カニ食べ放題を回りを…
吐きそうになり…ホテルへと戻って行った
ホテルの部屋に戻ると…康太は服を脱いだ
ポイポイと服を脱ぎ…榊原が、浴衣を持って…追っ掛けた
「一生、貴史、温泉に行くぜ…脱げ!」
強引に…兵藤の服に手を掛け…脱がす
兵藤は慌てて逃げた
追っ掛けて…服を剥ぎ取り…脱がして行く
その慣れた手付きに…兵藤は…唖然と…脱がされた
パンツまで剥ぎ取ろうと…され、兵藤は慌てた
「それは自分でやる!」
「遠慮すんな!」
普通は遠慮するでしょぉぉぉ~と想ってると…
康太に…パンツを剥ぎ取らされそうになり…一生の後ろに逃げた
康太は標的を一生に変えた
康太の手によって…一生の服が脱がされる…
一生は…抵抗する事なく…成すがままだった
康太の手で全裸にされ浴衣を着せられて…キスされた
兵藤は「何で…抵抗しねぇの?」と一生に問い掛けた
「何時もだからな…。康太の脱がし魔は…今始まってねぇよ…
しかも…抵抗すると頑張るしな…
康太と旦那とは…三度寝たしな…慣れた」
「ちょい待て!一回増えてるやん!」
「あぁ…。お袋の亡くなった日にな…康太に抱かれた。
優しく抱かれて泣かされた…から一回増えてんだよ」
兵藤は絶句した
榊原は笑って…兵藤に浴衣を渡した
兵藤は下着を脱いで…浴衣を着た
榊原は…皆の前で気にする事もなく…全裸になり浴衣を着た
「温泉に行くぜ!
この温泉は…お肌ツルツルになるって言うからな♪
ツルツルになった肌を伊織に触って貰うんだもんよー♪」
「楽しみですね♪
でもツルツルの康太を触ったら…止まりませんよ?」
「気にするな…始めたって…野暮は言わねぇだろ?」
康太の言い草に…兵藤は
「気にするだろがぁぁぁぁ~」と叫んだ
「なら、貴史…お前は…慎一の部屋に行け
邪魔だ…一生なら始まっても文句は言わねぇぞ!」
「解ったよ!文句は言わねぇよ!」と兵藤は叫んだ
大浴場へ行き…
康太は泳いだ
バシャバシャ…泳いで…楽しんで…
満足して…榊原に体を洗ってもらい…
一生の体を洗ってやる
一生は…兵藤の体を洗ってやった
「止め…康太…イタズラすんな…」
一生が康太の手から逃れる…
「なら、貴史を洗ってやんよ!」
康太に洗ってもらい…その手は…
怪しい場所にするり…と滑る…
「康太…止め…んとにお前は…危ない…」
と、兵藤は逃げた
お風呂を終え…部屋に戻り…布団にダイブした
康太の部屋は…和室
布団が四枚…敷かれていた
康太は布団に入り…榊原に抱き締められていた…
その横に入るのは…勇気がいる。
兵藤は一生を康太の横に押しやり…一番端に寝た
康太は一生を抱き締めた
「あんで…亜沙美を…連れて逃げなかった?」
「逃げたら…二度と…お前の側には…帰れねぇ…
俺は…お前の側に…帰りたかった…」
「なら、何処へ行ってたんだよ!1ヶ月も!」
「魔界に渡っていた…」
「魔界に…?どうやって…渡った?」
「俺等…龍は…時空を越える…
時に乗って未来にも行けるし…
遡って…行く事も…出来る……
闇夜に紛れて…俺は…魔界に渡った」
「魔界に行って…何かあったか?」
「黒龍に…逢って来た…」
「………!」
康太は押し黙った
「黒龍に逢って…話を聞いた…
黄泉の女神の…産み落とした…子供の話や…
つい最近…康太が赤ん坊を連れて黄泉に来たのも聞いた
流生は…龍の血も…女神の血も…濃く出て…
康太が…閻魔に封印させた事も…聞いた…」
「何故!何故…魔界に行った……」
「……俺は…亜沙美が…女神だと…知らなかった…
流生が…俺を見る時…瞳が蒼く光るんだよ…
まるで…湖の様に…深い…蒼に光る…
まるであの人の…瞳の様で……蒼いんだ
そして…じーっと俺を……見るんだ…
あの人の瞳の様に…優しく見るんだ…
確かめる為に……黒龍に逢いに行った
それで…黒龍に総て…聞いた…
女神は…今…どうしている…と…尋ねた
俺は…知らなかったからな…
そしたら…閻魔に…人に落とされた…と、聞いた…
女神の記憶を総て抜かれ…人へと…落とされ…
未来永劫…人として…生きて行くと…
急に…あの人は姿を消して…女神が代替えしたから…俺は…あの人の消息は解らなかった…
まさか…人になった…あの人と…
俺は…再び…罪を作ったのを…初めて…知ったんだ…」
「お前は…知らなくて…良かったんだ!」
「知らずに!
…これ以上…罪を重ねる事は……
出来ねぇよ…」
康太は…一生を抱き寄せた
「お前が…あの人の所へ行くのなら…それで良いと想った…
オレは…行かせてやりたかった…
せめて…今世位は…愛する女の側で…過ごさせてやりたかった…」
「康太…」
「過去に囚われ…先に行くお前は…歪む…
想いを過去に…縛り付け…先には行けねぇ…
行かせてやりたかった…」
康太の愛だった…
一生を生かす…康太の愛だった…
行きたい場所に行かせてやるつもりだった…
康太…だから吐ける台詞だった…
「行けねぇよ…俺は…お前の側で…
親父の夢を叶える!
…慎一と共に…叶える…たから行かねぇ!」
「バカ一生…魔界から帰って…何してたんだよ!」
「お前のいねぇ場所で…頭を冷やして…
働いていた…
1ヶ月…お前のいねぇ場所にいて…還りたくて…堪らなくなった…
おめぇのいねぇ日々は…涙が…止まらなかった…
寒くてな…震えが止まらねぇんだよ…
そして…想うんだ…この場所は…俺のいる場所じゃねぇと…
お前の側に還りたくて…帰れなくて…
でも…俺は…お前の側じゃねぇと…生きられねぇ…」
「………慰めて…欲しいか?」
「……還って…来たって…実感したい」
「一生…お帰り!」
「ただいま…」
一生は…康太に縋り…泣いた
兵藤は……康太と一生の声を聞きながら…眠りに落ちた
康太は…一生に…接吻した
「お帰り…一生……」
康太は…そう言い…一生に深い接吻をする
「康太…俺…帰りたかった…」
一生は康太を強く抱き締めた
「帰れば良いのによぉ…バカだな一生は…」
「動けねぇんだよ…足が…固まったみてぇに…動けねぇんだ…」
「それでも…動いて来たんだろ?」
「お前の側じゃねぇと…息も出来ねぇよ!
お前の側じゃねぇと…笑えねぇ!
お前の側じゃねぇと…生きている実感もねぇ…
還りたくて…泣けて…泣けて…」
康太を抱く…一生の腕が震えていた
「泣くな…一生…」
「康太…」
康太は…一生を抱き締めた
「泣くな…一生…もう泣くな…」
「ごめん…」
康太は…一生を…見詰め…語り掛ける
「一生…明日を生きろ…
もう…後ろは振り返るな……
オレの所へ…還って来た…と言う事は決めたんだろ?
なら振り返るな…先に進め…良いな!」
一生は何度も頷いた
「お前が…優しいから…俺は…知らなかった
罪を重ねた事に…気付かなかった…
俺は………愚かだ……」
「好きは…止められねぇ…!
お前は…必死に愛した!それで良いじゃねぇか!
後悔すんじゃねぇ!悔やむな!
流生を否定する事なんだぞ!悔やむな!
絶対に…悔やむんじゃねぇ…良いな?」
「康太…ありがとう…」
貪るような…接吻に…一生の体に火が着く…
この1ヶ月…性欲すらなかった…
泣いて…夢も見ない程…気絶して…寝る…
その繰り返しだった
「ぁっ…康太…止め…」
一生が…止める…
隣には…兵藤が寝てるから…
見られたくは…なかった
「お帰りのチューだ!安心しろ!」
「激し過ぎねぇ?」
「そうか?」
康太は…笑った
「寝かしてやんよ!」
康太は…一生の頭を…胸に抱いた…
まるで母の様に優しく……
菩薩の様に慈愛に満ちていて…
熱く…激しい…やはり炎帝の温もりだった
一生は…康太の温もりに…
疲れきった体を預けた…
康太に逢いたくて…耐えた1ヶ月…
その苦しみが…康太の手に触れられた瞬間…沫となる…
この温もりに…守られて生きてきた
暖か過ぎて気付かなかった…
康太…
お前が優しすぎて…
俺は…気付かなかったじゃねぇかよ…
一生は溢れる…涙を…啜り…
康太の胸の中で…瞳を閉じた
ともだちにシェアしよう!