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第51話 宣戦布告
清四郎が「康太、記者会見に出るなら支度をしなさい!行きますよ!」と覚悟を決めた瞳で康太に告げた
康太は…榊原の膝の上から降りた
そして姿勢を正すと…深々と頭を下げた
そして、榊原と共に寝室に入って行った
清四郎達は…リビングを出て…応接間で待つことにした
康太は寝室に入ると…榊原に正装用の純白のスーツを着せて貰った
榊原も正装用の漆黒のスーツを着た
「伊織、オレ、可愛い?」
「可愛いですよ!」
やはり榊原は、一生なら眼科に行きなはれ!と言われそうな事を惜しみもなくくれた
「頭…薄くねぇ?」
最近気になる…頭皮事情…
二度も…頭を縫えば…ヤバイよ…と心配になる
「薄くないですよ?気になるなら…植毛しますか?」
うるうるの瞳を…榊原に向ける…
榊原は…うっ!と可愛さにクラクラになった
「伊織…植毛のオレでも愛してくれる?」
「愛してますよ!」
榊原はチュッと康太の唇にキスを落とした
「ごめん…伊織…」
「何ですか?」
「別れるって言って……お前を苦しめた…」
「あれは…堪えました…
でも僕は絶対に別れません!
君が逃げるなら…息の根を止めると…言ったでしょ?」
康太は何度も頷いた
「伊織…愛してる」
「僕も愛してますよ」
二人は見詰め合い…互いの瞳を…射抜いた
そして…そっと口づけを交わし…離れた
康太は榊原と共に…応接間に行く
皆は…康太が来ると立ち上がった
「行きますか!」
戸浪が…皆に声を掛ける
康太は、榊原に促され…駐車場の方へ出向いた
康太の髪を…風が揺らす…
風もないのに…康太の髪は…靡いていた
「東矢…城之内…お前らもか…」
康太は……天を仰いで嗤った
『康太…特大の勝機だ…東矢と城之内も…お前に勝機を送り続けている!
お前は負けぬ…だから立ち止まるな…!』
「弥勒、ありがとう!オレは負けねぇぜ!
伊織を離して守ろうとした…でも…伊織は共に行ってくれると言った
オレは闘う…絶対に負けねぇ!」
『それで良い…星を…お前の頭上に…詠んでやろう…』
康太は…果てを見つめて…嗤う
「伊織…行くぞ!」
「ええ。何処までも…君と共に!」
力哉の車に…一生達を乗せ
瑛太の車に清四郎、真矢、笙が乗り込んだ
そして、榊原の車に…戸浪と三木が乗り込んだ
清四郎は榊原に「赤坂プリンスホテルです」と告げた
康太は…ナビを触り行き先を打ち込んだ
そして車を走らせる…
「若旦那…本当に…迷惑を掛けた…」と康太は謝った
「あんな子供の様な君に逢えたので…良いですよ…」と戸浪は康太を許した
榊原に抱っこされてリビングに連れて来られた康太は…子供の様な顔をしていた
幼い…子供の様な顔で…榊原だけを見ていた
あんな顔を見てしまえば…どんな事だって…許すしかないだろう…と戸浪は苦笑した
我が子よりも…幼い…顔で…戸浪を見た時は…胸が締め付けられた…
これが素なら…この子は…どれ程の精神力で自分を奮い立たせてるのだろう…
背負う荷物に押し潰される事なく…淡々と生きてる…と思っていた…
だけど…康太を知れば知る程…良く解る…
血ヘドを吐きながらも…康太は立ち上がる
その精神力だけで…己を立たせ…歩みを止めない…
それを支えるは榊原伊織…
二人は…失えない存在なのに…
榊原に縋り着く…康太は…子供みたいだった
泣き腫らした瞳をして…
儚くて…崩れ落ちそうで……戸浪は胸が痛かった
「三木も悪かった…今夜食わしてくれる筈だったのは?」
「割烹料理。春の季節の限定メニュー」
「う~食いたかったな…」
「また誘います」
「悪かった…三木。」
「良いですよ…また探してお連れしますから」
「何か…昼…食ってねぇし…夜も…食ってねぇし…腹減っちまった…」
康太が言うと……榊原が
「そう言えば…食べてませんね…
君を食べれば…僕は満足なんですがね」と冗談めかして笑った
「伊織、コンビニに止まれ…三木、オニギリ買ってきてくれ…」
「良いですよ」
康太は榊原の胸ポケットから財布を取り出すと…三木に渡した
「………康太…それは元に戻しときましょう…」と三木に言われ…康太は戻した
「なら三木の奢りな…」
「良いですよ…プリンもお付けしますよ。
控え室で食べるんでしょ?」
「違う!今食う!腹減ってんだよぉ!」
「解りました…買ってきます!」と言い、車がコンビニの前で停まると…コンビニに走った
三木は…取り敢えず…総てのオニギリを買い占めして…プリンもスィーツも買って…
オニギリに合うお茶も数本入れて…康太の好きな紅茶も入れて
目ぼしい商品は入れまくって…康太に届けた
戸浪は…その量の多さに…目を丸くした
康太は…三木にオニギリを渡した
戸浪は三木が食べるのかな?と、思ってると…三木は…オニギリの包装を剥いて…康太に渡した
戸浪の視線に気が付くと…三木は…苦笑した
「この子は…オニギリの包装が剥けないんですよ…
上手く剥けないと…投げ付けますからね…
剥いてやるようにしてるんです…」と説明した
榊原も「お椀の蓋が取れないと…振り回しますからね…」と三木に同調して言う
「康太の不器用な一面を見てしまいました」
「オレは…雑いからな…細かい事は苦痛だ…
でもオニギリの包装が剥けなくても…全部破けば…食べれるしな…細かい事は気にしねぇ…」
戸浪は……康太の不器用な一面を見て笑っていた
その後も…康太は…三木に剥かせて…オニギリを食べ続けた
「プリンはダメですよ!走ってる車の中ではスーツが汚れますからね!」と榊原にピシャッと言われ…プリンは諦めた
ホテルの駐車場に着くと、一足早く着いてる一生が康太を待っていた
康太はコンビニの袋を一生に渡した
「すげぇな…三木に買わせたのかよ?」
一生が……溢したら
「オレ、昼も夜も食ってねぇかんな…
後で伊織も食うし…お前等も食え…」
「旦那…康太の口…海苔が着いてる…」
榊原は康太の顎を上げると…口の端に…海苔が着いていた
「後で…顔を拭いてあげます…」と言い海苔を摘まんだ
康太は地面に両足を開き構えると…天を仰いだ
「来るぜ…伊織…勝機が大挙して…オレに注がれる…解るか?」
「解りますよ」
康太は不敵に嗤う…
「この勝機は…オレへの想いだ…
それを受けて…オレは奮い立つ!
負けねぇかんな!オレが勝つ!」
康太は地面に向かって拳を握り…立っていた
メラメラと紅い妖炎に包まれ…康太は自分を立て直して行く
「行くぜ!伊織!」
もう何時もの…康太だった
戸浪は…ずっと康太を見ていた…
そうして貴方は…自分を奮い立たせて…駆り立てて…歩いて行くのですね
もう…儚さなど微塵もなく…
その瞳は…果てを見つめていた…
私は…君を見届けるよ…
君の果てを…見届けると決めたのだから!
だから……君と共に行く
康太……君の明日を…見せてくれ…
私は…命が尽きる瞬間まで…君から目を離さないよ…
控え室に行くと、安曇勝也と蔵持善之助が、康太を待っていた
康太は善之助に声を掛けた
「善之助…こんな場所に出て…大丈夫なのかよ?」
善之助は康太に飛び付いた
「君の一大事に駆け付けずに…どうするのですか?
君の回りの方は…皆優しい…私は…気負わずにいられます
不思議ですね…あんなに嫌でしたのに…君の回りの方が…今は心地好い…
若旦那とは時々…お食事に付き合ってもらってます
私も変わって来てるのですかね…
君が…私を変えて行くのですね…」としみじみ呟いた
康太は何も言わず…善之助の肩を叩き…離れると…安曇の方へ向かった
「勝也…すまない…」
安曇の今の立場を考えたら…出るべきではないのだ…
「私は…君の父親として…お前を守る…
お前を苦しめるモノは…許さない!
それで立場を無くしても…後悔なんてしません」
「勝也…」
父親の抱擁で…康太を抱き締める…
善之助は安曇は康太の父親なのだ…と理解した
血は繋がらなくても…確かに親子の絆は築かれていた
神野が…康太を心配そうな顔で…見ていた
「神野…そんな顔すんな!」
「……無理ですよ…貴方が…伴侶に別れを告げたと聞きました…」
「それなら大丈夫だ…別れねぇかんな」
「貴方は…無茶しすぎなんですよ…」
「来い…神野!」
康太が言うと…神野は康太の側まで来た
康太は神野の手を掴むと…引き寄せた
康太は神野を抱き締めてやった
「心配すんな…オレは負けねぇ!」
康太の腕に…強く抱かれ…神野は息を吐き出した…
康太の肩に…顔を埋め…神野はやっと落ち着いた
体を離すと…康太は笑った
「小鳥遊に…妬かれるからな…」と神野を小鳥遊の方に押しやった
康太の側に…須賀直人が…立った
「須賀…お前も…んな顔すんな!」
心配して…強張った顔をして…康太を見る須賀を…康太は抱き締めた
そして唇に…チュッとしてやる
須賀は…慣れてるのか動じなかった
「今年に入って…卒業祝を…渡すと言ってるのに…貴方は逢ってもくれなかった…」
「その頃は死にかけてた…」
「聞きました!なんでそんな無茶ばかり…」
「悪かった…怒るな」
「怒ってません…拗ねてるんです…
今度時間を作って下さいね!
その時に…遅れた祝いを渡します!」
「今度時間を作るけど…ありがとな須賀…」
「貴方にはこの先も払い続けなければならない、利益の還元が有りますからね」
「要らねぇよ…」
「貴方が言ったんでしょ?売れたら還せ…って」
「……なら、更に働かねぇとな!」
と、康太は笑った
須賀が離れた康太の前に…
柘植恭二が相賀と姿を現した
「柘植…マネージャーとして手腕を奮ってるらしいな…
入院してる時に相賀に聞いた」
「貴方が…あの時…私の軌道修正を行ってくれたから…私は…道を外れる事なく…今日まで来れました
今思うと…あの頃の私は有頂天だったんです
足元も見えずに…突き進んで…限界も感じてるのに…それを酒とバカ騒ぎで誤魔化して…
貴方にトナミへ行かされ…物流の仕組みを勉強させられました
人の流れと…物流の流れは…良く似ていて…勉強になりました
貴方のくれた道を…私は進みます
相賀を助け…事務所をもり立てて行きます」と柘植は頭を深々と下げた
「礼は要らねぇよ…
オレは適材適所…配置する為に在る
お前は…この先も…育てて行け…」
柘植は…何度も頷いた
康太は、控え室に…知らん顔して座っている…
兵藤の頭を殴った
「痛てぇな!殴んじゃねぇよ!」
「あんで、おめぇがいんだよ?」
「美緒が来たからな…送ってきた」
「美緒は貴史の車は御免じゃ…と言ってたぜ!」
「うっ!…気になったから来たんじゃねぇかよ!」
康太は榊原に顔を拭いてもらって…身なりを整えて貰った
「いーっとして下さい。歯に海苔が着いてたら笑い者ですよ?」
康太は歯を食い縛り…いーっとした
榊原は確認して…
「良いですよ…」とチェックした
力哉が…記者会見の準備と…記者の配置に動き回っていた
まだ無理は出来ないと…田代も手伝い…準備をする
佐伯も駆り出され…佐伯は…父親と対面した
「康太…これを狙ったとしたら…笑えねぇぞ…」と佐伯は溢した
執事は…娘の姿を…眩しそうに…見詰めた
「佐伯、在るがままに…受け入れろ…
そしたらお前の迎える明日は違うものになるぜ
違う明日を迎えてぇなら…立ち向かえ!
オレも負けぇぜ佐伯!お前も負けんな!
解ったな…目を逸らすな…」
佐伯は康太の言葉を噛み締めた
そして康太から瞳を逸らさず…
「なら闘うしかねぇわな」と笑った
佐伯は…父親の側に…歩いた
「飛鳥井康太の伴侶と兄の秘書をしてます佐伯明日菜です
以後 …お見知り置きを。」
と、頭を下げて…執事に手を差し伸べた
執事は…その手を取り…
「貴女の…立派になられた姿を…拝見出来て…
胸が一杯です…
康太様にお仕えした後は…幸せな結婚を…
父は…願っております」と執事は佐伯の手を握り返した
この人も…人の親なのだと…佐伯は…知った
子供の顔など…覚えては…いまいと思っていたのに…
「私の伴侶は…康太が見つける…
私は結婚には向いてはいないらしいからな…
でも何時か…貴方に…孫を見せてやる!」
佐伯は笑った
艶然と…艷やかに誇らしく笑った
そして一礼すると…仕事に戻った
康太は執事を見て笑った
娘は…飛鳥井康太に生かされているのだと…感謝して頭を下げた
力哉が「康太、席順は…僕の指示で座って貰います!構いませんか?」と問い掛ける
「構わねぇぜ!オレは雛壇の雛の様に…座ってやるからな!」
「御内裏…ですか?ならば笑ってなさい!
誰よりも…艶やかに笑ってなさい!」と力哉は返した
一生は……それは無理やろ…と心で呟く…
そして……力哉を見て胸を痛める…
力哉は普通に一生にも接する…
まるで…何もなかったかの様に…装う
「康太!貴方は絶対に負けない!」
「あたりめぇだろ?オレは飛鳥井康太!
負けるもんかよ!」
康太はそう言い…不敵に笑った
「時間です!」
田代が時間を告げると、全員が立ち上がって控え室を後にした
康太と榊原が中心に座り
康太の横に戸浪海里が座り、神野、安曇、蔵持、三木、そして兵藤美緒、一条隼人が座った
榊原の方に相賀和成が座り、須賀直人、飛鳥井瑛太、清四郎、真矢、笙が座った
そうそうたる顔触れに…詰め掛けたマスコミや記者は…どよめいた
康太は記者の中に…今枝浩二を見付けると笑った
「今枝…久し振りだな…畑違いじゃねぇのかよ?」
今枝は今、報道デスクの編集長と聞いた
「貴方に貰った報道魂…です!
ですから私は…真実を伝える義務があります!」と言い切った
康太は優しく笑って…後はなにも言わなかった
相賀和成がマイクを持ち…記者会見を始めを告げる
「これより、飛鳥井家 真贋、飛鳥井康太に着きまして記者会見を始めます!
皆様、わざわざご足労ありがとうございました!
真実を語り…真実の飛鳥井康太を見せる!
それが我等の想いである!」
堂々とした相賀に一斉にフラッシュがたかれた
マイクは須賀直人に回る
「我等は連名で記者会見をした意味は…
悪意を持った…スキャンダルが出ると聞いたから!
悪意を持った記事で、社会的信用も…無くそうと言う制裁を許す訳にはいきません!
ならば自ら真実を全国に訴えて…見る側に訴えて行くしかない!
それがこの記者会見の発起人の相賀和成の…想いであり…我等の想いである」
マイクは神野晟雅に回る
「飛鳥井康太は…特別な人間ではない!
彼は血を吐き…倒れても家の為に…生きている!
定めに生きる彼は…奇異な存在ではない!
我等は彼等を守る!
何者にも…穢させはしない!
飛鳥井康太は我が指針…大切な方です」
マイクは戸浪海里へ回る
「我等は…絶対に…飛鳥井康太を…貶めさせはしない!
彼の伴侶は同性だ…だからと言って…それを悪意の記事で捏造されたくはない!
伴侶の写真と…適当な記事を着ければ…悪意を持った記事を信じる人間は少なくないでしょう!
ならば彼等を身近で見ている我等が真実を語るしかない!
飛鳥井康太は戸浪海里の誇りであり…大切な友です!」
マイクは蔵持善之助へ回る
「飛鳥井康太の伴侶は同性だが…それが好き勝手に…騒がれて書き立てられねばならぬ事なのか…考えて下さい
彼は芸能人ではない!彼は一般人だ
飛鳥井家と言う定めを違えない為に…生きている人間を…好き勝手に書き立てられて良い筈などない!
社会的に飛鳥井康太を葬るなら…逆に…
潰そうとする奴を葬る!
覚えておくと良い!
飛鳥井康太に仇成す者は…容赦はしない!」
マイクを安曇勝也に回した
「今日は私は安曇勝也個人として、この席に座っています!
私は飛鳥井康太を我が子のように想っているので、今日はこの席に参席させて戴きました
飛鳥井康太を潰すのなら…私は持てる限りを駆使して…阻止します!
この記者会見を見たら…賛同する人間は…もっと増えるでしょう!
今日、この日を持って…飛鳥井康太は伴侶を公表する
好き勝手には書き立てさせはしない!
彼の顔を…出すも出さぬも…あなた方報道機関に任せます!
真実以外を捏造するのなら…それなりの覚悟を持ちなさい!」
マイクを兵藤美緒に渡した
「飛鳥井家真贋は、軽んじられて良い存在ではない!
何故…今更…真実でないスキャンダルが出る?
悪意を感じずにはいられはせん!
飛鳥井家真贋が邪魔な者の…陰謀であろうて!それにマスコミが乗ったら真実など…皆無だ…
マスコミのあり方を問うべき事となる」
マイクは飛鳥井瑛太に回った
「我が弟は、飛鳥井家真贋として重責を担っている!
家の為に…日々の生活を犠牲にして…彼は生きている
それを支えるのが…伴侶である!
好き勝手に書き立てられて良い存在ではない!
彼は普通の大学生だ!
スキャンダル1つで…彼の生活は…変わるでしょう…
弟は彼と別れて…守るつもりだった…
伴侶を晒さないですむなら、別れを選んだ!
彼は好き勝手に書かれる前に…姿を現した
その意味を考えて欲しいと思います」
三木がマイクを貰い持った
「飛鳥井康太に生かされ議員をしている三木繁雄です!
飛鳥井康太は、怪異ではない!
この世の中に同性の恋人を持っている人間は彼だけではない筈だ
なのに、彼だけスキャンダルを作り上げられ…潰されなければないのは…何故か!
悪意を感じずに入られません!
偏見や差別のない情報を持って…報道されたいと思います!」
マイクは榊 清四郎に回った
「飛鳥井家真贋 飛鳥井康太の伴侶は私の息子です!
私は息子を誇りに思います!
恥べき息子など持ってはおらぬ!
私は二人を見守り…応援しております!
我が息子が選んだ人生を…曲がったものにされるなら…公の場に…公表した方が良い!」
清四郎は涙ながらに…言い…目頭を押さえ
真矢が…あなた…と言いマイクを持った
「私は、息子が選んだのが康太で良かった
彼の生きる道は重責です
肋骨を折ったり…死にかけたり…刺されたり…
殺されかかったのも一度や二度ではない…
でも彼は歩みを止めない…
歩みを止めると…明日へは続かないと…康太は血ヘドを吐いても…進んで行く
誰にも真似など出来ない…修羅の道を…
彼は弱音を吐かず…進んで行く…
そんな康太を支えるのが…我が息子で良かった!
私は…息子を誇りに思います!
恥ずべき事など…ない!
彼等の性は同じだが…私は…恥などしない!
私達は…康太と息子を守り抜くと…決めています!」
真矢はマイクを笙に渡した
「榊原伊織は僕の弟です!
僕は康太と弟を…見守っています!
何故…康太のスキャンダルを出す必要が有るのか…僕には解りません…
弟と飛鳥井康太が……何をしましたか?
偽りの記事を書き立てられねばならぬ事をしたのですか?
考えも見て下さい!二人はまだ18なんですよ…
18の子供に…大人が寄って集って…潰そうと言うのですか…
何故ですか?何故…そんな事をされねばならぬですか?
同性の恋人を持っていたとしても…それは互いが決めた事……
双方の親は許している…そして二人は一緒にいる…
それさえ…飛鳥井家の真贋は…邪魔されるべき存在なのですか?
暴漢に教われ…死にそうになり…それでも家の為に…彼は生きる
家の為に血を吐きながらも…彼は歩みを止めない…
僕は…弟を恥じたりはしない…!
榊原伊織、彼は僕の大切な弟です!」
そう言い…笙は隼人にマイクを渡した
隼人は何か喋ろうとして…涙で…言葉が出なかった
「隼人…来い…」
康太が言うと…隼人は…康太を後ろから抱き締め…肩に顔を埋め泣いた
康太はマイクを掴むと…
「飛鳥井康太です!飛鳥井家の真贋をしてます!」と挨拶をした
「オレの伴侶は男だが…恥じはしてねぇ
男が好きなのか?と聞かれたらオレは、いいえ!と答えます
オレは伴侶以外の男は要りません!
伴侶以外の…人間は欲望の対象にすらならない!
誰でも言い訳ではない!榊原伊織だから…共に…生きたいのです!
面白おかしく…誰でも良いかの様に書かれるのは侵害です!
それは我が伴侶も同じでしょう!」
康太はマイクを榊原に渡した
「榊原伊織です!
僕は飛鳥井康太の伴侶として飛鳥井の家で生活をしてます!
僕の恋人は…同性ですが…誰でも良い訳ではない!
僕は他の誰かでは…なく、飛鳥井康太だから…共に行くのです
僕達は…互いを…愛して一緒にいます
好き勝手に書かれて晒されると言うのなら…自分の口で…言う為に出てきました!
同性だから…偏見の目で見られるのは仕方がないでしょう…
ですが…捏造され…晒され…潰されねばならぬのなら、僕は闘います!
僕達は…こうして支えて下さる人がいる限り…闘います…!」
榊原はそう言い…マイクを置いた
一通り喋ると質疑応答へ変わった
一番に手を上げたのは今枝浩二だった
「飛鳥井家真贋を取材した時…貴方は吐血して…倒れました
真贋として飲んでた毒が…体を蝕んでいると…言ってましたね?
私は…何故…吐血してまでも…貴方は歩みを止めないのか…不思議でした
先日…暴漢に…命を狙われたと言うのに…
貴方は…何もなかったかの様に…その動きを止めない
暴漢に襲われた怪我は…治ったのですか?」
「嫌…深い部分は…まだ治っていねぇ…
暴漢はオレの服を皮膚ごと切り裂き…強姦しょうとした…
伴侶が同性だと言うだけで…男が好きなんだろ?……と、暴漢も言った!
オレが幾ら伴侶しか要らねぇと言ってもな
解ってくれる人間など…僅かだ…」
「それでも…貴方は歩みを止めないのですか?」
「止めねぇぜ!オレは歩み続ける!
オレを伴侶が支えてくれる限り…オレは動きを止めねぇ!
明日の…飛鳥井を作るのは…オレしかいねぇからな!」
「ありがとうございました!」と言い今枝浩二は頭を下げて…質問を終えた
こんな今枝の後に…質疑応答など…出来る雰囲気ではなかった
それを解っていて…今枝浩二は敢えて、質問をしたのだ
下世話な質問などさせない為に…今枝は出て来たと言うかの様に…
女性記者が
「今回のスキャンダルが出ると言う情報を…何処で知りましたか?」と問い掛けた
「弥勒院高徳が教えてくれました」
康太が言うと…会場はざわめいた…
知ってる記者は…その稀代の呪術師を知っていた…
その力も…その呪術師の使い道も…
「どう言った関係なのですか?」
この女性記者は…名を知らない側に入っていた
「飛鳥井家真贋の為に生きている人間だ!」
「その方と…何かあるのですか?」
康太は不敵に笑って女性記者に問い掛けた
「逆に聞きます!何か?とは何を指しているのですか?」
康太の回りの人間が、一斉に険しい顔をする
戸浪が「ゲスな勘繰りはおよしなさい!
弥勒は共に生きる存在…呪術師としては随一の腕前を持つ彼は…姿はなくとも…総てを見ている!
下手な発言は命取りになる!気を付けられよ!」と言い放った
戸浪の言葉を受け…回りの記者が女性記者を押し止めていた
そして回りの記者から…弥勒の本当の意味を知ると…女性記者は青褪めた…
その後の…質疑応答は…誰も出ず…
カメラは康太を目掛けて映していた
康太はカメラを射抜き…
「周防、お前の敗けだ!オレはお前ごときに負けはせぬ!」
不敵に嗤った
「他に意見がなくば…これで記者会見を終わりたいと思います!」
誰も何も言う事が出来ず…記者会見は終わった
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