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第53話 1週間 ①

康太は正面玄関から…会社に入る…と言うから、車は一生に運転してもらい、榊原は会社の前で、車を降りる事にした 受付嬢も変わり、会社の雰囲気も変わって来た筈だ 康太は自分の目で確かめるつもりだった そして……昨夜の会見で…どう出るかは解らない… 株価の動向も気になる… だから、会社にいるしかなかった 一生は会社の前で、車を止めた 「地下駐車場に車を停めて、最上階で待ってるな!」 「おう!頼むな!」 康太は一生に片手をあげ、車から降りた 榊原も車から降り…揃って会社の中へ… 入って行った 自動ドアが…開くと 「おはようございます!」 と、受付嬢が頭を下げた 受け付けカウンターにいる受付嬢は、美人だった 「おはよう!仕事には慣れた?」と康太が声をかけると 受付嬢は、微笑み「はい。」と返した 康太は、階段を使い上へと上がって行く 二階に行くと保母が外に出て…やった来る子供を待っていた そして康太と榊原に気付き…笑顔で挨拶した 「おはようございます!」 元気に挨拶され康太と榊原も「おはよう」と返した 「どう?順調?困ってる事はない?」 「ないですよ!子供も増えて来てますが、面倒見れない数ではないですから。」 「今、30人いるんだっけ?」 「はい。一般の方が10人預からさせてもらってます!」 「困った事があったら言ってきて!」 「はい。何かあったら、直ぐに話に行きます!」 康太と榊原は階段を上がって行った 階段から…壁が取っ払われた各部署が一望出来る 蒼太が手腕を奮ってると聞くと…矢野と離して良かったと思える 「どうなさったのですか?」 康太の姿を見つけて…蒼太がやって来る 「視察。昨夜の事もあるしな…」 蒼太は康太の前に立つと頭を下げた 「立派な記者会見でした! 今朝のテレビは…昨夜の会見で持ちきりです」 「だからな…社員の様子を…な」 見に来たと…言うのか? 「君が…気にせずとも飛鳥井建設の社員なら…君を誇りに思います!」 康太は嬉しそうに微笑むと…蒼太の肩を叩いた 「会社に戻って…矢野と上手くいってるか?」 「康太…やはり僕が宙夢の足を引っ張ってたんですね… 会社に出て見ると…二人の時間が…大切になって来ました! 一緒にいた時は…あんなにも余裕がなくて…イライラしてたのに…今の方が上手くいってます 僕はやはり、会社に出て仕事していた方が精神的にも安定します…」 康太は笑って「仲良くしろよ…またな」と片手をあげて…階段を上って行った 四階に行くと…栗田が目敏く康太を見つける 「貴方…会社に出て…大丈夫なんですか?」 「栗田…気にするな。オレは大丈夫だ。」 康太は栗田に手を伸ばすと…栗田は康太を抱き締めた 「最近は、しっくり行ってるか?」 「ええ。縄張り意識もなくなり、結構どの部署も関係がなくなりました そんな社内で…いがみ合っている場合ではない…でしょ? 会社の為に働く イコール 自分達の生活の安定に繋がる 社員はバカではないですからね スキルを伸ばして上に行こうとすれば、この会社は行ける可能性があるなら、社員は燃えますよ 従って…やる気のない社員は弾かれます 良い傾向に向かっていってます」 「そうか。」 「それより、師匠に…電話して下さい 昨夜の会見以降…貴方の電話が繋がらず…電話攻撃にあってます…」 「解った…脇田には後で電話する」 栗田は…康太を離して…頭を下げた そして、自分の持ち部署へと…帰っていった 五階に上がると陣内博司が階段出ていた 「何で解った?」 「会社の前でお前を見た。 俺は地下に行ったけどな、お前は会社の前で降りたから、そろそろかなと想ってな待っててやった」 「陣内、手腕を奮ってるって聞くとな、俺も鼻が高けぇぞ!」 「遣り甲斐ありまくりだからな! やっとこさ俺を使いこなせてくれて俺は喜んでるとこだ!」 「社員に手をつけるのはよせ!」 「手綱を握ってくれる奴を…くれればな」 「やし!やる!特上の美人をな!」 「なら、頑張ろう♪康太、また飯を食いに行こうな♪ 俺はお前の言うことなら何でも聞く! お前の想いを寸分違わず…やってるだろ?」 「おう!違わずやってる。」 陣内は康太に甘えて抱き着いた 「俺を生かしてるのはお前だよ! 俺の生きてる場所は…お前が作ってる… 俺を拾った、あの日から…俺はお前の為に生きてきた… この先も…それは変わらない!変わらないんだ!康太!」 康太は…陣内の背中を撫でた 飄々と人を食う奴なのに…康太にかかれば…彼もまた…子供の様だ 「陣内、改革は始まったばかりだぜ! この先も…お前はオレの眼となり手となり… 動いてくれ!」 「解ってる…少し甘えてるだけだ…」 「お前は本当に可愛いな」 「俺にそんなことを言うのはお前だけだ」 「今日も綺麗だぞ陣内!そして可愛い」 「康太!」 フロアにいる社員が…陣内の康太を見る 陣内の甘える姿なんて…初めて目にする 陣内は康太から離れると…皮肉に笑った 「康太が不足してた…すまない…取り乱した」 「気にするな。今度補給の為、飯に行こうぜ」 陣内は頷き…仕事に帰って行った 最上階まで階段で上がると一生が待っていた 「伊織、オレの部屋は直ったらしいな」 「ええ。僕の部屋と…繋がるドアを着けました」 「そうか。一生、抱っこしろ…オレは…怠いんだよ」 一生は、康太を抱き上げ苦笑した 「旦那、俺が着いてる。」 「ええ。一生が一番…康太と共に行くので…不安なんですがね…」 榊原に言われ…一生は情けない顔を榊原に向けた 「え!俺って…信用ねぇの?」 「違います!君は康太が動けば…止めないでしょ… だからですよ…君は…康太優先ですからね」 「あぁ…そう言うこと…許せ…旦那… オレの優先順位は…康太が絶対!他はねぇんだよ!」 「良いですよ…昨日はメールくれましたからね」 榊原は笑って…副社長室へと入って行った 一生は康太を抱き上げたまま…真贋の役員室に入って行った 部屋に入ると、慎一が仕事をしていた 力哉も仕事をして忙しそうだった 「慎一、夜には神野が来る。用意は出来てるか?」 「出来てますよ。」 「なら、良い。一生、株の動向を捉えてくれ」 一生は「了解!」と言いPCを立ち上げた 「聡一郎は?」 「聡一郎は今日は家だよ。 隼人が熱出して寝てるから…付き添いだ」と一生が、答えると… 「熱?ひでぇのか?」と康太は知らなくて…慌てた 「聡一郎が病院に連れて行ってる」 「なら、暫くしたら帰るか…熱出てたのかよ… 気付いてやれなかったなオレ…」 「お前が手が回らねぇ時の為に俺等はいる! 気にするな…手分けすればできねぇ事はねぇだろ?」 康太は頷いた 一生は「株価の変動はねぇな…安定だ」と調べあげて康太に報告する 慎一は「帰られたら…どうですか?」と声をかけた 「貴方は気になると…何も手に着かないでしょ? 夜までに映像の方は用意しときます! 貴方の仕事は俺等が片付けます…伊織に言って一生と、帰ると良い」 「伊織は仕事中だろ?邪魔したくねぇな…」 「そこから顔を出して言うだけでしょ! あの方は…貴方が絡むと…手が付けられません…何とかして行きなさい!」と康太を隣に続くドアを開け…押し込んだ 慎一に押し込まれ…榊原の部屋に入れられ… 「康太?どうしましたか?」と榊原は嬉しそうに聞いた 「オレ…帰るわ」 「何か有りましたか?」 「隼人が熱出してるって…帰って隼人に着いててやりてぇ」 「一生とタクシーで帰りなさい」 そう言い榊原は1万円康太に渡した 「伊織…家まで1万円は多いだろ…」 「お釣りは…落としますかね?君は…」 「なら、一生に渡します。これで何か買って帰りなさい」 「解った…ならな。」 「帰ったら…電話を下さい…」 榊原は康太の胸ポケットに携帯を入れた 「それ無理だわ… 脇田に電話しねぇといけねぇし」 「そうでしたね…なら一生に電話します」 「なら、帰るな!」 康太は榊原の腕から抜けると…ドアを開けた 榊原も着いて来て、一生に1万円手渡し…頼む 一生は、それを受け取り、帰ったら電話すると約束した 康太は役員室を出ると…一生と共に… エレベーターで一階まで降りた 受付嬢に挨拶して…会社の外に出る 一生がタクシーを、拾ってる間に…康太は会社を見上げた… 「康太!乗るぜ!」 一生が声をかけると、康太はタクシーに乗り込んだ そして、飛鳥井の家へと…帰って行った 飛鳥井の家に帰ると…真っ赤な顔してるのに…自分の部屋に戻らず…応接間に隼人はいた 「隼人…熱だしたんだって?」 「朝起きたら…熱いのだ…」 「気付いてやれなくて…すまなかったな」 「だって…昨夜は力哉とエッチしてたからな…声も掛けられなかったのだ…」 「見たのかよ?」 「ドアが開いていたのだ…覗いたら… 力哉は康太に挿入されて泣いてたのだ…」 隼人の言葉に…聡一郎は唖然となった… 「康太…力哉を抱いたのですか… しかも…力哉の中に…挿れたんですか?」 聡一郎が康太に問い掛ける 「おう!抱いたぜ。力哉の中に挿れた」 「伊織は?許したんですか…」 「オレは伊織に中を擦られねぇと勃起しねぇからな…伊織に中を擦ってもらって…に決まってるじゃねぇかよ」 「嘘…何で…」 「力哉を抱いたのは…一生に妬かせる為 まぁ…一生は妬かねぇけどな…」 「康太は何時も一生ばっかで…ズルい…」 「聡一郎…拗ねるな…」 「ごめんなさい…」 「聡一郎は可愛いな…チューしてやるから機嫌を直せ」 康太はそう言い聡一郎にチューとした 聡一郎を離すと、康太は重大な事に気が付いた 「あ!オレ…寝室に入れねぇじゃん…」 鍵は…榊原が持ってる… 「仕方ねぇ…隼人の部屋で添い寝するわ 隼人…来い。一緒に寝てやるからな」 「嬉しいのだ…康太…」 康太は隼人を、一生に部屋まで連れて来させた 康太が隼人を連れて行くのは……至難の技だから… 隼人は…モデル体型 康太は…中学生位の体型… 一生は隼人の部屋に連れて行くと床に布団を敷いた ベッドだと…狭くて康太が落ちるからだ… 康太は下着一枚になると、隼人の横に寝る事にした… 優しく抱いて…腕に抱えると…隼人は…眠りに落ちた 「一生、電話取ってくれ…」 康太が言うと一生は康太の服から電話を取った 脇田誠一に電話をすると…脇田は号泣だった… 落ち着くまで待ってると…脇田は静かに話し…そしてまた逢ってくれ…と言い、会う約束して…電話を切った 「一生…オレは寝る…ならな」 康太はそう言うと…一生は康太の枕元に座った 康太の髪を撫で…「寝ろ!」と告げた 康太は…一生に髪を撫でられる…感触に… 瞳を閉じた… そして眠りに落ちた 康太が目を醒ますと…目の前に…榊原がいた 「伊織…何時帰った?」 「少し前に帰りました。 君が隼人の部屋にいると、聡一郎が教えてくれました」 「オレ…部屋には入れねぇじゃん…」 「……そうでしたね…後で気がつきました でも一生が何とかすると、仕事をして来ました」 「…寝ちまったのか…」 「疲れてましたからね君…丁度良かったでしょ?」 「まぁな。隼人も熱が下がったしな」 榊原は隼人の額に手を置いた 「ええ。引きましたね…」 「何時だよ?」 「お昼は過ぎてますよ?」 「道理で腹が減ってる」 「隼人を起こして昼にしましょう!」 榊原は康太に服を着せた そして、隼人を起こすと…キッチンへと向かった その夜、神野と小鳥遊が、笙を連れて飛鳥井へやって来た 「よぉ!悪かったな…来させて」 康太が声をかけると、神野は笑って 「構いませんよ…」と返した 康太は私服で、ラフな格好をしていた 慎一が、映像の用意をして…神野達に見せる映像をセットしていた 「康太、見れますよ?どうしますか?」 「なら、先に見るか!」 康太が言うと榊原が部屋の照明を落とした 今回のコンセプトは高層マンションだった 高層マンションなのに…風が吹き付けても… 快適な生活…を如何に視聴者に解らせるか… 映像では笙と隼人が床に座って笑っていた 素足で…自由に寛ぐ姿が…自然で…インパクトがあった 何か話してるのに…会話は入って来なかった 笙は「こんな映像…何時撮ったんですか?」と首をかしげた 隼人は「あれは…仕事だったのか…?笙と楽しく話して…凄く楽しかったのだ…」と仕事と気付いていなかった 「神野、どうだ?良いだろ?素の顔を引き出してやった。」 「凄い…また、康太が撮ったのですか?」 「オレ以外がカメラを向ければ…隼人は装うだろ?笙は…自然な顔しねぇだろ?」 神野と小鳥遊は…成る程…と頷いた 小鳥遊が…「康太…頼みが有ります…」と康太に深々と頭を下げた 「あんだよ?二人の写真集用の写真を撮ってくれ…って言うのなら…断るぞ オレには今は暇はねぇ…大学も行けてねぇ…」 先に言われて…小鳥遊は…押し黙った 「でも急がねぇなら…暇を見つけて…やってやる… それか…オレの所に…笙を寄越せば良い 一緒に行動すれば…そのうち撮れるんじゃねぇのか?」 小鳥遊は…瞳を輝かして 「宜しいですか?」と尋ねた 「なら笙、飛鳥井で当分過ごすか? 部屋なら好きな所で寝ろ…オレの部屋でも良いけどな…毎日は…伊織が欲求不満になるからな…止めとけ…」 康太が言うと…一聡一郎も 「伊織の欲求不満は…そりゃあもう…皆が…ビビりますからね…遠慮したいです」 と溢した 「そんなに…欲求不満の伊織は…手が着けられないの?」 「………体験しますか?」 笙は首をふった… 仕方がなく一生が口を開いた 「康太が行方不明になった時の伊織は…無表情だったろ? 欲求不満になると…伊織は鬼になる… 回りを巻き込んで…恐怖に陥れる…大魔人…と呼ばれてたよな! 桜林の合同祭では…鬼炸裂でとうとう大魔人だったよな…」 と、爆笑した 榊原は嫌な顔をした 「伊織はオレに優しければ良いんだよ! 他の奴に優しくすると誤解するもんよー」 康太はケロケロ笑った 「笙、取り敢えず…1週間…オレと過ごすか?」 「ええ。君さえ良ければ…ご一緒させて戴きます。」 康太は真顔で笙を見て… 「乱世だ…笙。オレの行く先は…楽じゃねぇ… 目の当たりにした時に…お前はどんな顔をするのか… 明日を生きるのは…命を削って…歩んで行くんだ… その歩みは止まらねぇ…着いて来いよ!」 康太は果てを見つめて…話した 神野と小鳥遊は…CMの映像を貰って…帰って行った 笙は…その日から…取り敢えず、飛鳥井で暮らす事となった 笙は当面客間で過ごす事となった 朝起きてキッチンに行くと…康太は沢庵を食べていた 「笙、今日は須賀に逢う。スーツを数着もって来とけ!」 「伊織も行くのですか?」 「伊織は会社。別行動だ! 最近は別行動が多い! 須賀に逢った後は、三木と合う 明日は戸浪と安曇に逢う その前に…脇田に行かねぇとな…」 康太が言うと、一生が、 「脇田と、須賀…どっちが先よ?」と問い掛けた 「須賀行って、脇田だな… その後、会社に行く そして、明後日は山に行く…山で一泊する これには、伊織は行かねぇからな…」 予定が…ビッシリだった 食事が終わると…笙は家へ帰りスーツを取りに行った スーツに着替えて…スーツと着替えを荷造りする ボストンバックに詰めて…玄関へと向かった 家を出る前に清四郎が笙に 「何処へ行くのですか?」と問い掛けた 笙は取り敢えず…康太に何日か着いて歩く事になった… と、話した 「飛鳥井で…お世話になるのですか… ならば、逢いに行くので…伊織の邪魔はダメですよ…」と釘を指した 「父さん…邪魔などしません…」 清四郎は笑って「いってらっしゃい」と見送ってくれた 慌てて飛鳥井に行くと…康太は支度を済ませ応接間にいた 笙は荷物を客間に置いて…康太の側へと行った 康太は立ち上がり、玄関に行き外へと出て…駐車場へと行く 前に使っていた軽自動車は廃車にして、国産のグレードの高い車を三台、買って、用の有る者が乗っていた 康太は後部座席に笙と、共に乗り込むと、PCを出して忙しそうだった 窓の外を眺めて…過ごす 康太はPCを駆使しながら…笙をカメラに捉える そして胸ポケットから携帯を取り出すと…須賀直人に電話した 「須賀か?オレだ。これから行くからな、事務所で良いのかよ?」 『はい!お待ちしてます!』 須賀と簡単に電話を終わらせると…携帯が鳴る 「伊織かよ?須賀の事務所に行くとこ… ………解ってるよ何かあったら電話する 愛してる伊織…お前だけだ…安心しろ」 電話をの向こうで…僕も愛してます…君だけを愛してます…と熱烈な言葉が…漏れて来て…笙は……目眩を覚えた 車は須賀の事務所に着き、康太は笙を伴い事務所を訪れた 須賀は康太に抱きつき熱烈歓迎…だった 奥の社長室に康太を運び込み…笙と一生は秘書に案内された 「康太、これが卒業祝です!」と書類を手渡した 中を見ると…須賀の事務所の株券が…入っていた それと…万年筆… 康太は須賀を見た 「須賀…株券は……ダメだろ… この量を見ると…オレは筆頭株主の仲間入りだろ?」 「ええ。君に筆頭株主になって貰って配当金を払えるように…頑張ります」 康太は…断る事も出来なくて…有り難く貰うことにした そして手厚い持て成しを受け…お茶やケーキだと出してもらい… 楽しく過ごし、昼過ぎには帰る事にした 帰り際…須賀は康太を抱き締め…離さなかった 「またな…須賀…」 「また逢って下さいよ。」 「待てねぇなら、力哉に電話して予定を組み込まさせろ!」 「解りました。ではまた。」 康太は…屈んだ須賀にキスしてやり…帰る事にした 須賀の事務所を出ると…車に乗り… WAKITAの事務所に向かった 携帯を取り出し 「誠一か?これから行くから…」 電話の向こうでは騒いでた… 康太は聞くことなく電話を切った 一生はWAKITAの事務所の前で、車を停めた 康太は携帯を一生に渡した そして笙を伴い事務所の中へ入って行く 事務所の中に入ると悠太がいた 康太は悠太には、見向きもせず事務所の奥へと行く すると奥の部屋から脇田誠一が飛び出して来た 妻の麗奈も…飛び出して来て、康太に抱きつく 「康太ちゃん…立派な記者会見でした… あ!この方は…伴侶さんのお兄様…!! 康太ちゃんがお世話になってます! 私、康太ちゃんの心の恋人、脇田誠一の妻の麗奈です!」 麗奈は…丁寧に挨拶した 「榊原伊織の兄の笙です!宜しく…」 笙は丁寧な挨拶を交わした 「誠一、お茶もケーキも要らねぇよ… この後、用事があるかんな。」 「ゆっくり出来ないの?」 「記者会見の後だからな…出てくれた人達へ…お礼の意味を込めて…挨拶に回ってる 食事してぇなら力哉に電話して予定に組み込ませろよ!」 麗奈は…解った!と言い引いた 「力哉ちゃんに予定を入れさせとく! だから逢ってね!今度はゆっくりとね 康太ちゃんに逢えなくて…誠一は元気なかったの… 私も…ずっと逢いたかったのよ…卒業祝は…今度食事する時に渡すわね」 康太は頷いた 「何も要らねぇよ…お前達二人が元気で一緒にいるなら…オレはそれで良い…」 脇田誠一は康太に抱き着き…号泣した 一頻り話をして…康太は事務所を後にする 帰り際…悠太の肩を叩いて…片手をあげた 悠太は…康太を見送り…深々と頭を下げた 兄弟なのに…悠太は…康太の役目を知って…声すらかけない この兄弟も…刹那に生きる…間柄なのだと知ると…刹那くなった 車に戻ると…一生が無言で携帯を渡して来た 「伊織か?誠一まで終わった…後は三木だ… 夜は遅くなるぞ…」 『解ってます…三木が相手だと…早くは帰りませんものね』 「心配するな…オレは消えねぇし…」 『解ってます…。愛してます』 「愛してるかんな…伊織」 と言い電話を切ると…笙は 「まるで…ストーカーだわ… ウザくないですか…我が弟は…」 「あんなに愛しい男はねぇぞ! オレが別れ話出したり…刺されたりしたろ? 伊織は不安なんだよ! でも…そんな不安を…押し殺して伊織はオレを出す! 飛鳥井家の真贋だからな…送り出してくれるんだ… 多少の連絡位…なぁ一生、許せるよな?」 「俺にフルかよ?伊織の想いを思えば…許すしかねぇだろ?」 一生は言い放った 康太は三木に電話して、これから行くと告げた 三木は康太と共にいる笙に驚いた… 「これはまぁ…榊原笙…ではないですか 何故に?」 一生は事情を話して…当分…いると話した 三木は料亭に康太を連れて行った 一生は笙を連れて後に続いた 部屋に通されると、一生と笙は座った 三木の膝の上に乗せられ…康太は食事を待っていた 「三木…血の誓いをして欲しいか?」 「スーツが汚れるでしょ?」 「一度交わしてるからな…唇をカッ切って…出せば…良い…」 「なら、お任せします」 「食う前に…な。食後がお前の血…は嫌だ」 「この子は…我が儘ばかり…」 「良いんだよ!お前はオレのだからな!」 「そうですよ。俺はお前の所有物でしょ?」 「だから甘えんだよ…」 康太は三木の頭を引き寄せた… 貪る…接吻をして…舌を搦めた そして……自分の唇をカッ切ると…三木の口腔に…流し込んだ そして…三木の唇をカッ切って…血を交え…互いに味わい飲む 康太は三木の唇をペロペロ…と舐めると…傷はなくなった 接吻が終わると…康太は三木の膝から降りた 料理が運び込まれ…記者会見の余波を康太に話す 康太は三木からの報告を黙って聞き…頷いた 食事が終わると…三木と別れて…車に乗り込んだ 午後7時過ぎになっていた 康太は胸から携帯を取り出すと…榊原に電話した 「これから帰るな!」 『駐車場で待ってます』 康太が電話を終えると… 笙は……眠っていた 1日中…スーツで暮らすのが…こんなに苦痛だとは思わなかった… ドラマでサラリーマンが仕事が終わるとネクタイを緩めるシーンが理解出来た… 笙はヘトヘトだった 車に揺られると…自然と瞼は閉じて…眠りに落ちた… 康太はその寝顔を…カメラに納めた 飛鳥井に着くと…笙は弟に起こされた 「兄さん…家に着きましたよ…」と言われ 車を降りた 康太は車から降りると…スタスタと歩いて行く 康太の動きには澱みがない 笙は…クタクタになり…飛鳥井の家に帰って行った… 家の中に入ると…瑛太が、出迎えていた 弟を腕に抱き…瑛太は笑っていた 「笙、康太と共に動いていたんですって?」 「はい…。」笙は疲れきっていた… 「当分康太はお礼参りで…忙しい…大変な時に一緒は大変でしょ…」 当分…嘘…マジで? 笙は苦笑した 「瑛兄、明日は…今日より遅い…」 「若旦那でしたね…」 「でも…礼を言わねば…飛鳥井が廃る」 「解ってますよ。無理なさらないで…下さいね。」 康太は頷いた 瑛太の腕から降りると、康太は須賀から貰った書類を榊原に渡した 「株…ですか?」 榊原が中を見て…問い掛ける 「須賀の事務所の株だ…筆頭株主の権利を持ってる発言権付きだぜ…」 「万年筆?」 「これで仕事をしろと言う事だ…」 瑛太は康太の頭を撫で、部屋へと帰って行った 笙も早々に部屋へと帰ると、ベッドにダイブして寝た 翌朝、康太はまた違ったスーツを着ていた 「康太、今日は僕が送って行きます 仕事は昨日片付けて来ましたから、ずっと夜まで一緒にいます。」 「伊織…」 康太が榊原の首に腕を回し…抱き着いた 榊原に甘える康太は可愛かった ゆっくり朝食を取り…寛いで…家を出た 榊原の車に乗り込むと…榊原は車を走らせた 康太は榊原の胸ポケットから携帯を取ると 「勝也…オレだ。総理官邸以外の場所で…逢う時間は有るのかよ?」 安曇に、『国会の正面玄関まで来て下さい』と言われ榊原は国会の正面玄関まで…車を走らせた 安曇の第一秘書が…正面玄関まで行くと待ち構えていた お辞儀をして車に近寄ると 「車の後ろを着いてきて下さい」と言い…車から離れた 車は…国会の近くの料亭まで行き、車を停めた 康太は車を降りると不敵に笑った 「勝也、今日は伴侶の兄もいる…良いか?」 「構いませんよ。此処の茶碗蒸しは絶品なんですよ。」と康太を抱き上げ、安曇は料亭の中へ入って行く 女将が…出迎えてくれ頭を下げられた 「この方が…旦さんの溺愛の息子さんですか?」と女将が問い掛ける 「そうです。私の息子です。」 安曇は笑って康太を座敷まで連れて行くと、そのまま膝の上に抱いて座った 料理が運び込まれ、榊原が康太の料理を食べやすく用意すると、康太は安曇の膝から降りて食事を食べた 安曇は笑って楽しそうに話をした 康太も笑って…甘えて話す 三時間使って、康太は安曇と会食をした 帰り際に安曇は康太にお土産を渡した そして康太を抱き締め…頭を撫でると… 国会に帰って行った 康太は車に乗り込むと…榊原の膝に頭を置いて眠った 「伊織、若旦那の所へ電話してくれ」 康太に言われ…榊原は戸浪に電話を入れた 「はい。康太、若旦那ですよ」 康太に渡すと… 「若旦那、会食には早いので会社にお邪魔します」 戸浪は『待ってます』と言い…電話を切った 康太は、榊原の膝に頭を置いたまま…瞳を閉じた 榊原の指が…康太の髪を…掻き上げる… トナミ海運に着くまで…康太は榊原の膝の上に頭を置いていた トナミの駐車場へ車が入って行くと…康太は起き上がった 車が停まると康太は車を降りた 風を切って…康太が歩くと…榊原は少し後ろを歩いて行く 会社の中へ入って行くと受付嬢の所へ行った 「今回はアポあり。」 と、康太が気さくに話すと受付嬢は笑って 「伺ってます。どうぞ!」と返してくれた 「髪型変えたんだね。その髪型の方が似合ってるよ。可愛い。」と声をかけて康太は片手をあげて 最上階まで行くエレベーターに乗り込んだ エレベーターを降りると田代が待ち構えていた 「今日は伊織のお兄様もご一緒ですか? 社長がお待ちかねです」 康太は社長室めがけて歩いて行くと、ドアが開いた 「康太、少し早くないですか?」 「話もあったからな…」 戸浪は、どうぞ!と言い部屋へ招き入れた 康太はソファーに座ると足を組んだ 「この会社は派閥と言う熾烈な勢力が有るのを知ってるか?」 「派閥?知りません…」 「足の引っ張り合いしてるんだと…」 「だとしたら…聞き捨てなりませんね… 貴方に…派閥を壊して貰ったのに…またですか?」 「あの時の台風の目は…力哉だった… でも今度はタチが悪い…足の引き摺り合いだ そのうち…それが仕事の上でやりだしたら…相手を蹴落とす為に会社に損害を出しかねない… 実際…上手く誤魔化してるが…損害は出てるんだぜ… 一生が慎一と、この会社に…入り込んでる… 明日の朝にでも…報告が入るぜ」 「え?何時…入りました?」 「それは内緒…調べるなよ!絶対にだ!」 「それは解っております…」 「後、聡一郎に会社内のデーターを全部洗わせてる…絶対に…足の引っ張り合いの証拠は上がるだろ?」 「ならば…改善せねばなりませんね…」 「改善じゃ…甘いな…改革だ! トナミも大幅リストラを強行して…社員を入れ換えねぇとな…」 「そうしたいのですが…望む社員はそう簡単には入っては来ませんからね…」 「嫌…大丈夫だ!100人位なら…何とか都合つけてやる… 力哉がリストを持ってる…連絡取って持って来させると良い」 「解りました!後で力哉に電話を入れます!」 「トナミも引き摺ってる…悪習はあるかんな 正していかねぇと…そのうち中から膿んで、気付いたら…全部腐ってました…は避けねぇとな」 「では……腹を括ります!」 「改革を進めると…色んな事が出るぜ… オレは殺されかけた…セキュリティとSPを着けて万全にしとかねぇとな…命…取られるぜ」 「解っております…」 康太は具体的な話をして…戸浪は静かに聞いていた 康太は…世界に数個の腕時計を見ると…話題を変えた 「さてと、今回はどんな料理を食わしてくれるんだよ?」 「もうじき妻が来ます。 今回のセッティングは妻がします。」 戸浪は康太に妻の訪問を知らせた 暫くして戸浪の妻の沙羅がやって来た 「康太さん…先日は…大変失礼致しました…」 沙羅は康太に謝った 康太は沙羅の手を取ると…手の甲にキスを落とした 「この前より美しくなられた。 若旦那は愛してくれてますか?」 康太が問うと…沙羅は顔を少し赤くして… 「はい。愛してくれます…」と答えた 康太は沙羅の頬に手をかけ 「そうして笑ってろ!そう言う優しい顔が子供も夫も好きなんだからな。」と優しく語りかけた 沙羅は何度も頷いた そして、やっと、笙の存在に気が付き… 慌てて…笙に挨拶をした 「榊原 笙さんですね…初めまして…えっと?何故…こんな凄い役者さんが?」 沙羅には解らなかったのだ… 「伴侶の兄だ。榊原笙。伴侶の父親は榊 清四郎 母親は榊原真矢だ!」 沙羅は…それでやっと…納得した そう言えば…あの日…榊原伊織…と紹介された…と思い出した 「大変失礼を申し訳ありません。 戸浪海里の妻の沙羅です。宜しくお願いします!」 と、沙羅は挨拶した 「榊原伊織の兄の笙です。宜しくお願いします」と笙も挨拶を交わした 沙羅は榊原と笙を見て… 「仲の良いご兄弟なんですね。 うちの息子達も…こんな風に育って欲しいです…」と羨ましいそうに呟いた 笙は優しく微笑んだ 「お食事の席を用意致しました! あの日…失礼をしてしまいました食事会を…やり直させて下さい…」 「構わねぇぜ!一人増えてるが…良いか?」 「構いません。」 「今日は伴侶もいる…オレと伊織が…一緒だから…目立つぜ… オレと伊織と歩くのは…覚悟がいるかもな」 「構いません!我が夫は…貴方を守る為に記者会見に出た! 私は妻として…夫の守るべきモノは…この命に変えても守ります! さぁ、どうぞ!一緒に車で着いてきて下さい」 沙羅に促され…康太はトナミを後にした そしてホテルの一室へと招かれた 康太は戸浪にエスコートされ…あの日の…やり直しをしていた 会食は…楽しく会話に花が咲き 時間はあっという間に過ぎた 5時間近くホテルで食事やお茶楽しみ、 「今日は楽しかった。若旦那…ありがとう」 「いいえ。私も妻も久し振りに楽しい時間を過ごせました。 こちらの方こそお礼を申し上げます」 「若旦那、またな。」 「はい。また御願いします。」 「一生と慎一が情報を持って帰って来るからな…それを見てからな…また連絡する」 「お待ちしております。」 康太は沙羅の所へ行くと、その手を取り…口付けた 「またお逢いしましょう! 次に逢う時は懐妊の報告ですね。 病院に行きなさい…おめでたですよ!」と康太は言葉を送った 「え…嘘…」 「体に気を付けて…下さいね。ではまた」 康太は紳士的に礼をして…部屋を出て行く 戸浪達より早く部屋を出て、ホテルの駐車場に行き…車に乗り込んだ 康太は…榊原の膝の上に頭を乗せ…寝息を立てていた 榊原は静かに走らせ…帰路に着いた 翌日は…康太は一歩も外へは出なかった 榊原を会社に送り出し…玄関で…激しい接吻を交わし…名残惜しく…榊原は大学と会社へ向かった 康太は榊原を送り出したら…怠そうに…部屋へ帰って行った 「笙、疲れてねぇか?一緒に寝るかよ?」 康太に誘われて…笙は寝室へと向かうと 康太はさっさとベッドに入った 笙も康太の横で添い寝をすると…知らないうちに眠りについていた 康太はその顔をカメラに納めた 服を脱がし…パシャパシャ撮って…眠りに着いた 次に笙が目を醒ますと…榊原が枕元に座り… 康太の髪を優しく撫でていた キッチリとスーツに身を包み…ベッドに腰を下ろして康太を撫でていた その顔は誰よりも優しく…愛に満ちていた 「伊織…腹減った…」 「もう、お昼過ぎです。何も食べてないんですか?」 「寝てた…お尻痛てぇし…」 「まだ痛みますか?」 「少しは良くなった…」 康太は榊原に擦り寄り…甘えた 榊原は兄に声をかけた 「兄さん…昼を食べますよ」 「伊織…仕事は?」 「終えて来ました…あれからずっと寝てるんですか?」 笙は頷いた 「疲れましたか?」 「慣れないですからね…撮影の方が楽です… 康太も疲れてましたよ?」 「兄さん…康太は別の意味で…疲れてるので…兄さんと一緒ではありません」 …………あぁ。そう言うことね… 笙は呆れて…ベッドから降りた 榊原は康太を抱き上げて…キッチンへと向かった 昼を食べてると…一生と慎一が帰ってきた 一緒に昼を食うと…食後は…一生の背負われ…誰もいない所へ行く こんな時の…康太は…追わない 何かをやらせて…その報告を受けているのだから… そして、その日の夜、康太は飛鳥井の菩提寺から山へと向かった 榊原は留守番 康太自ら運転して飛鳥井の菩提寺に向かう 国産の車を駆使して…笙を乗せて…菩提寺に向かう 康太は住職代理に笙を預けると…山を上った 康太は夜中だと言うのに…山を上り始めた 笙は精神修業の一貫として…座禅を組み…書庫で本を読んで過ごした 康太は道なき道を進み…岩を上り…進んで行く 夜が明ける前に…頂上まで上り…紫雲龍騎のところへ向かった 「よぉ!龍騎…待たせたな!」 康太が言うと御簾から紫雲が飛び出し康太に抱き着いた 「泣くな…龍騎…」 「逢いたかったんですよ…」 「許せ…」 紫雲は涙を拭いて…康太に向き直った 「今日…おみえになったのは…唯逢いに来た訳ではないのでしょ?」 「嫌…お前に逢いに来たんだぜ」 「本当に?」 「昼前には帰るけどな…それまではいてやる」 紫雲は康太…康太…と抱き着き… 康太を抱き締めた… 紫雲は康太に色んな話をして…聞いてもらい 抱き締めてもらい…キスして貰った そして…満足した頃…康太は紫雲の体を離した 「また来るな!」 「今日は本当に…ありがとうございました… 淋しくて…壊れそうでした…」 「だと思った…」 康太は笑った 「またな龍騎」 「はい。」 紫雲は深々と頭を下げ……康太を見送った 康太は紫雲に片手をあげて別れを告げ… 山を降りた 寺に行くと笙が康太を待っていた 「どうだったよ?楽しめたか?」 康太は笑って笙に声をかけた 「修行僧…と言う、すごい世界を少しだけ味わえました… 足が…痺れて…大変でした… 後、書庫で…色々と読書に耽れました… 貴重な時間でした…。」 康太は…微笑み…車に乗り込んだ 康太は…飛鳥井へと車を走らせた 山を降りた翌日は朝早くから…支度をしていた 会社に向かい…蔵持善之助から貰った車に乗り…蔵持邸へ向かった 笙を乗せて…蔵持邸へ向かう インターフォンを押すと…メイドが対応した 「飛鳥井家 真贋 飛鳥井康太です!」 そう告げると…お通り下さい…と、告げられ門が開いた 康太は車を走らせた門を潜る すると駐車場には…善之助が待ち構えていた 「善之助…伴侶の兄を預かってる… 邪魔はしない…良いか?」 「構いませんよ…康太…お待ちしてました」 善之助は康太を抱き上げると…屋敷の中へと入って行った 笙は、執事が…此方へ…と案内してくれ屋敷の中へと入って行った 善之助の屋敷の応接室は…半端なかった 笙は唖然としてると…康太が善之助の膝の上で…康太よりも年上の善之助に甘えられていて…唖然となった だが…笙は見ないでおいた… そして、自分は…空気の様な存在になる… 笙を気遣い…執事が世話を焼く… 笙は自分の目の前に…高級なお茶や洋菓子が並べられ…お金持ちの持て成しを受けて感嘆していた 本当の執事のいる様な家と言うのを…笙は知らなかった 執事がいて…主に仕える姿を…笙は目の当たりにしたのだ 立ち姿は美しく…年を取られてもなお…洗練さと優雅さを蓄え…主の為に生きる… 瞳は…主を追い…見守り続ける… 本当の執事の姿を…見たのかも知れない 康太を時々垣間見ると…紳士に懐かれて…甘えられ…ていた テレビで良く見る…経団連の…総裁もしてる人じゃなかったっけ? ………と思い浮かべる 康太は甘える…紳士を懐柔しながら…笑っていた ここ数日…康太と共にいて想ったのは… 康太は…人を引き付けて止まない だから…康太に心の拠り所を求めるのだ… 心底…さらけ出せる相手…それが飛鳥井康太なのかも知れない 笙はお茶をしながら…優雅な時間か流れるのを感じた 昔の…日本の貴族ってこんな優雅な時間を味わっていたのか? 「善之助、乗り心地は最高だ!ありがとうな」 康太が礼を言い…善之助にキスしていた 康太の腕には…ド高い腕時計が…嵌まっていた 「また逢おうな善之助。」 「はい。今度はお食事に誘います。 その時は伴侶殿もご一緒に…。」 「良いのかよ?」 「はい。構いません。先日…安曇さんとお食事をしました。 すごく楽しくて…康太と出逢った時の話をお聞きしました」 「そうか。」 「相賀さんとも親しくなりましたよ」 康太は、うんうん。と聞いていた そして執事が…時間を確認すると… 「旦那様、お時間です。秘書がお迎えに参ります。」 と告げた 「嫌だ!」善之助は…駄々っ子みたいに…言った 「善之助、仕事しねぇとオレにプレゼントも買えねぇぜ!」 「そうでした。成人式には…頑張らないといけませんね!」 康太は奮起する善之助にチュッとキスをしてやった 「善之助、またな。」 「はい。またお電話致します!」 康太は善之助の膝の上から降りると…笑った 「見送りは良い。またな!」 「はい…また電話下さいね…康太…」 「するからな…お前は仕事しろ!」 善之助は、はい!と諦めた 康太は笙を伴い…応接室を後にした 執事が、康太を駐車場まで案内して行く 「康太様、最近の旦那様は…色んな方と会食したり歓談したりと…楽しそうで御座います」 「そりゃ良かった。善之助は少し臆病だった…でも人を知れば…変わる だから、人を吟味してやれば…善之助は変われる…。」 「康太様…」執事は深々と頭を下げた 「康太様…娘に逢わせて戴いて…ありがとうございました」 「執事をお役御免になったら…側にいてやれ…」 「はい…はい…康太様…」 執事は目頭を押さえ…姿勢を正した 「またな!」 康太は運転席に乗り込み…笙は助手席に乗り込んだ エンジンをかけ…走り出す車を…執事は頭を下げて…ずっと見送っていた… 車は飛鳥井建設まで行き…康太の駐車スペースに車を停め…康太は息を吐いた 「あぁ緊張した…」 康太は呟き…携帯を取り出した 「オレ…迎えに来い」と誰かに電話すると…車を降りた 「あ…尻が痛てぇ…クソ伊織…」と康太が悪態をつくのを笙は苦笑して見ていた 康太はkeyでロックをし車から離れエレベーターの前に行く すると…最上階から降りて来たエレベーターのドアが開いた 中から榊原が現れ…康太を抱き締めた 「伊織…オレを連れて行け…お尻が痛くて限界だ…」 「止まれませんでしたからね…」 榊原は康太を抱き上げ…エレベーターの中へと入った 笙が乗り込むのを待って、ドアを閉めると…最上階まで直通のボタンを押した 「康太…君の運転は…心配でした…」 「約束だから仕方ねぇし、家に帰れば…あれは乗るぞ…」 「解ってます…君の無事を確かめさせて…」 と、榊原は兄がいるのに…目の前で…濃厚な接吻を…康太にしていた 狭い空間に…湿った音が響く… ドアが開くと…笙は、ゲッソリとしてエレベーターを降りた そして副社長室に…連れ込み…康太を膝の上に乗せた 「伊織…」 「何ですか?」 「お尻が痛てぇ…」 「………すみません…大きいまま…挿れちゃいましたからね…」 「お前の暴走は…んとに疲れる…」 「待ってて…あと少ししたら…帰るから…ねっ」 目の前で…繰り広げられる…甘い睦言に、笙は呆れていた… 「ねぇ伊織…兄の存在…忘れてない?」 「忘れてません…」 知っててやってるのだ…本当に…この弟は性格が悪い 「兄さんの仕事の役に立ちましたか?」 「え?……」 「執事…知りたかったんでしょ? 蔵持の執事はバトラーと呼ばれる、英国の執事の称号を持ってるんでしたよね?」 「おう!あれは一級の執事だかんな!」 康太が言うと笙は…… 「僕の仕事…知ってたの?」 「って言うか…見えるからな…お前は…」 「え?」 「お前の命を握ってるのはオレだ。 お前の気持ちも…悩みも総て解る… 自分で解決出来るのは…捨てておく… でも解らねぇならな…見せてやらねぇとな」 康太はそう言い…笑った 「康太…」笙は泣きそうになった… 「伊織…今だ…撮れ…」 康太が言うと…榊原はシャッターを切った 「良い顔撮れたか?」 康太が聞くとデジカメを康太に渡した チェックすると…康太は微笑んだ 「おっ!良い顔だ…」 「ねぇ、ずっと撮ってたの?」笙が聞く 「撮らねぇと、お前を連れて歩く意味がねぇだろよ」 「僕は知らなかったよ…」 笙は…子供の様に…康太に聞いてきた 榊原はそれを微笑んで見ていた 「取り合えず1週間の約束だろ? 今日で5日目だ、あと2日…一緒に過ごせ… 明日は伊織と皆と…ドライブだ♪ そして、最終日は…相賀和成…との会食だ まぁ、その前に明日は楽しもうなドライブだしな」 「ドライブぅ?」 「そう。すっかり拗ねて子供みてぇになったな。」 康太は笙の顎を撫で… シャッターを切った 「あっ!こんな顔は嫌です…」 「可愛いぞ。やっぱ兄弟だな…拗ねた顔は似てる…」 康太が言うと榊原は、僕の方が男前ですってば…と言い 笙が、嫌…僕だよ!と言い合いになり、兄弟喧嘩を始めた 康太はパシャパシャ…それを撮っていた それに気付き…二人は…気まずい顔をして… 「「 撮らないで下さい! 」」 と、ハモった 榊原と笙は…顔を見合わせ…笑った こんな風に…自然に兄弟なのが… 笙は堪らなく嬉しかった こんな風に…堪らなく…他愛なく過ごせるなんて… 笙は…笑いながら…泣き出した… 榊原は兄を抱き締めた 「兄さん…泣かないで下さい…」 「だって…僕のずっと願っていた…当たり前の兄弟喧嘩をしたり…笑ったり…ってのが出来てるんだもん…」 康太は…兄弟の映像を…カメラに納めた 「笙、涙を拭いて…笑え! 兄弟の写真を撮ってやる!」 笙は涙を拭いて…笑った そして榊原と並んで…写真に収まった 至極自然な…二人の姿だった

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