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第54話 1週間 ②

翌日は…朝早くから…ドライブ 康太は車の中で…一生特製おにぎりに齧り着いていた 「一生、行く前から…オレは疲れてるんだけど…」 「旦那が…離さないからやろが…また?」 「おう!また…昨夜も…ここ連日だぜ」 「旦那…康太を寝かせてやってくれ…」 榊原は気まずい顔をして… 「すみません…康太が誰かといると思うと…止まりません…」 「誰か……って…自分の兄でっしゃろ?」 一生は呆れて呟いた 「兄さんに…康太を取られたくない…」 笙は慌てて… 「伊織、僕は女性と結婚するつもりなので、男には走りません!安心して下さい…」と叫んだ 「兄さん…桜林で…男を食いまくってたでしょ?」 「うっ…食ってましたね…蒼太と競って…食ってましたね…」 「なら、男も…イケるじゃないですか!」 「伊織…男は…もう無理です… 僕まで男に走れません… 康太の認める子と結婚して父さん達を安心させないとね… 老後を面倒見てくれる子が良いですね…」 榊原は…兄の胸の内を聞き…言葉をなくした 「兄さん…すみません… 僕が康太に走ったから…兄さんは我慢したのですか?」 「違う!そうじゃない…この前の結婚は失敗だった…その時に…両親には心配かけたでしょ? だから…安心させたいんですよ… しかも…学生時代のは…恋愛じゃない… 抱いたけど…心底…惚れた奴は…いなかった ステータス…みたいに楽しんでたけど…それを成人してまで…持ち越す気はなかった 僕は康太に手は出しませんよ?心配ですか?」 一生が榊原の心を代弁してやる 「笙…旦那は誰にでも妬く…康太を盗られたら生きられねぇからな…必死なんだよ 別に笙が心配とかじゃねぇ… 愛する男の焼きもちは…際限ねぇんだよ…」 「………僕は…そこまで心底惚れてなかったのですかね…伊織が羨ましいです」 「笙…俺等も…この恋人同士は羨ましいぜ 絶対!って言葉が使える…からな。 互いを束縛しあって…繋げて…生きてんだからな…。 伊織の度を超すとストーカー紛いの想いだって…仕方がねぇ…と想うしな… 無くせねぇからな伊織も康太も必死だ…」 「……伊織…って束縛するんですね 康太に着いていて解りました… 君のそれは…ストーカーですよ…」 笙が言うと榊原はショックを受け 他は大爆笑していた その中で…黙々と康太は一生特製を食べていた 食べ終わると…榊原に口を拭いてもらい… 不敵に笑い…笙を見た 「笙、束縛してるのは伊織だけじゃねぇ オレは伊織を離さねぇぜ! 離れるなら…その息の根を、オレは確実に止めてやる! オレは榊原伊織のモノで、いてぇんだ! 他の誰かじゃ意味がねぇ…そうだろ?伊織?」 榊原は康太を抱き締めた 一生は「真夏に見ると腹が立つんだよな… 唯でさえ熱ちぃのによぉ…一年中…これだからな…回りは堪らねぇんだよ…」と愚痴った 康太は一生の首に…懐くと 「来週…頭に仕掛けるぜ!」と耳元で囁いた 「ならば、俺等も動くとするか! 聡一郎…お仕事だぜ!慎一、腕が鳴るな!」 一生は嬉しそうに…仲間に語りかけた 康太は果てを見つめ 「掃除をしねぇとな…」と嗤った こうして遊んでいても…計画は着実に動いていた… 康太は一生から離れると…榊原の膝の上をよじ登った 向かえ合わせに…抱き着くと…胸に顔を埋めた 「伊織…愛してる」 「僕も愛してますよ」 「伊織、撫でて…」 「良いですよ…」 榊原が康太を撫でると…康太は眠った 寝息を立てて…康太は眠る… まるで子供が母親に抱きついて眠るように… 康太は…愛する男の胸に顔を埋め…眠るのだ ドライブは湘南まで走り…まだ早すぎる季節の海岸へと出向いた 笙は潮風に髪を靡かせ…水平線の果てを…眺めた… 絵になる一枚を…パシャ… 音無のサイレントで撮る 犬のコオを砂浜で放す 康太はフリスビーを笙に渡した フリスビーを投げると、コオは必死に短い足で取りに行く 横を見れば…康太が駆け回っていた コオにフリスビーを投げる……コオが取りに行く… 康太が…砂浜を駆け回っていた… 走る姿が…一緒で…笙は笑った 一生が笙の横に来て 「その犬…康太に似てるだろ? その犬の元…飼い主は兵藤貴史… 貴史の想いが詰まった…犬だからな… 似てねぇ訳がねぇんだよ…」と説明した 笙は「何だか…刹那い…」と呟くと 「だろ?俺も…それを見るたびに刹那ないんだ…」 「一生!早く来いよ!」 康太に呼ばれ…一生も駆け付ける 「君も…コオの事は言えないじゃん…」 飛鳥井康太の番犬… 双児の番犬…は常に…飛鳥井康太の影になり…いざとなったら…その身をもって盾となる 康太の行く所へ…必ず着いて行き、その命惜しみもなく…擲って…康太を守る 慎一の瞳は…常に康太を見ていた 何かあれば…動けるように…その動作に澱みはない 聡一郎や隼人は…康太の後ろに控えて…目立たないが…この二人も…康太の為なら…その命惜しみもなく投げ出す 絶対の関係が…そこに在った 康太を頂点に…守る為に…普段いる立ち位置さえ…計算され尽くされていた 「康太!海に入っては行けません!」 「仕方ねぇだろ!フリスビーを飛ばし過ぎたかんな!」 康太がフリスビーを追い掛けて海に入ると…一生がその前に行き…フリスビーを掴む それを聡一郎に飛ばし…慎一は康太を回収して…戻って行く 海の中に…躊躇する事なく入り…的確に動く 慎一は榊原に康太を渡した 「慎一、康太の足を拭いて下さい…… そして、君達も…拭かないと風邪引きますよ」 力哉の車のドアを開けて腰掛けて康太の足を出すと…慎一は綺麗に拭いて…トランクに積んでおいた草履を履かせた 「伊織…靴は、トランクに入れときます」 榊原は頷く 慎一と一生も、靴を脱ぎ捨て…草履を履いた 「ひでぇ目に合った…草履を積んどいて良かったぜ…」 一生が愚痴ると…康太は謝った 「すまねぇ…」 「気にすんな…昼食って帰るかよ?」 「おう!今夜は清四郎さんの家に…お礼に行かねぇとな!」 「草履で…許してくれる店…あるんかよ?」 「う!………伊織ぃ…」 うるうるの瞳を向けられ…榊原は、可愛さが込み上げるのを誤魔化し…平静を装った 「……飛鳥井へ帰りますか?」 「仕方ねぇな…帰るか…」 康太が…残念に言うと… 笙が「榊原の家で…食べればどうですか?」と提案した 「どうせ今夜行くんでしょう? ならば、昼から行って、食事を奢らせれば…良いんですよ」 笙は父親に早速電話して…行くのを告げた 清四郎は快く、待ってます…と笙に告げた 康太達は車に乗り込んで… 「伊織…コオは飛鳥井の家に入れて来てくれ それから、靴下と靴を履かねぇとな…」 「なら、一旦…飛鳥井へ行きましょう」 康太は頷いた 力哉は飛鳥井の家に向けて走った 飛鳥井の家に着くと…一生はコオを家の中へと連れて行った 玄関で足を拭いてやり…小屋へと返すと、靴下を取りに…部屋へと向かった 慎一も自分の部屋に靴下を取りに行き支度をすると…外へと出て来た 康太は玄関で待ってると…榊原が靴下を持ってきてくれた 履かして貰い靴を履いて…榊原の実家へと向かった 榊原の家に着くと…清四郎が出迎えて待っていた 「康太、良く来てくれました。 皆も…さぁ、どうぞ!」 清四郎に招かれ応接室に入ると…真矢がソファーに座って 「康太良く来てくれましたね。 一生達も、ゆっくりして行ってね」 と、優しく微笑んだ 康太はソファーに座ろうとして…目眩を覚えた… 榊原が支える… 康太は……真矢を見た… 「体調悪いんですか?真矢さん…」 真矢は…ため息を着くと…康太を見た 「隠せないわね…」 「病院には?」 「………まだ…」 「これから行きますか?オレが付き添います」 「康太…」 「怖がらないで…」 清四郎は…康太に 「真矢は…病気なんですか…」と慌てて問いかけた 「吐血したでしょ?何時から?」 「記者会見の後から…少し怠くて…」 「仕事で…何か有りましたか? それ……胃潰瘍ですよ?ストレス有りましたか? オレの事で…何か言われましたか?」 「違うのよ…違うの…康太…そんなんじゃないの…」 「話してください…」 「康太…貴方を…紹介して…って人が増えたの…毎日毎日…人の顔を見れば…言うの 貴方と知り合いになりたいとか… 貴方の事を…使いたいと言う監督が…私に康太を紹介して…って言うの 康太を自分のモノにするとか…って言う人もいたりして…断ってるのに… 凄いのよ…何だか…困ってね…そしたら胃が痛いのよ…」 「やはり……オレの所為ですか… 飛鳥井家の真贋は客を選びますからね… 逢いたいと言って……簡単には逢えません… また気に要らなかったら…逢いません… 予約は何年も待たねばなりません… 逢えるコネが有れば逢いたがるのは…仕方ないと思っていました…」 「康太が悪い訳じゃないのよ…」 「飛鳥井家 真贋は…客を選ぶ! 代価に似合う金額を払わねば…果ては見ません! その代価…1億積まれても…動かぬ時もある… 金ではないが…代価はもらう… 1億払えますか?と聞いてやると良い 飛鳥井家 真贋はタダでは見ないと…」 「そうね…知り合いだからと見てたら… お金を払う人が…バカを見るものね…」 「そうなんですよ…ですからね今度からは、1億が相場ですよ? 知り合いでも真贋は見るのはお金取りますよ!と言うと良いです… 後…監督とカメラマンは…隼人の絡みでしょう…結婚してくれ…と言われてますからね… オレは…伊織以外は…御免です!」 「康太…」 「明日、相賀に逢うので手を打ちます! 真矢さんは…たぶん入院ですよ? 支度をしてくると良い…清四郎さん真矢さんを…」 清四郎は康太に 「君はすぐに気にします… 気にしなくて良いですからね… 気にして…伊織に別れ話なんか止めて下さいね! 伊織は…君をなくしたら廃人です… いえ…生きてはいないでしょ… それは困りますからね…約束して下さい!」 と、訴えた! 「約束する…だから支度を。」 「康太…」 清四郎は涙ぐみながら… 真矢を支度に連れて行った 真矢と清四郎が行くと、康太はため息着いた 「どうしました?康太…」 「……映画監督…ってオレに…自分の股間押し付けて来てさ…オレの体も撫で回すんだぜ…もう二度と…御免だ… カメラマンは…オレを監禁しようとした… 一生が奪回してくれなきゃ…オレは犬のように…首輪で繋がれ…そいつのペットで犯されるんだ…伊織…吐きそう…」 榊原は康太を抱き寄せると…背中を撫でた 「吐きますか?」 康太は榊原の胸に顔を埋め…深呼吸をした 「伊織がいるなら…大丈夫だ…」 康太は榊原に縋り着いてた… 一生が変わりに…口を開いた 「隼人の撮影に…着いて行くと必ず… いるんだよな…監督か…カメラマン…か… どっちかが現れて…隙有らば…と狙ってる 最近康太が隼人の撮影に行かねぇのは…そう言う訳だ… 後…俳優の…嫌…止めとこ…名前あげたらキリがねぇ… 真矢さんは…そんな奴等の…餌食になったんですよ… 真贋に逢いたいと言う奴と… 飛鳥井康太に逢いたいと言う奴に… 別れてるんだろうな…逢うチャンスがあれば…拉致って持って行けるもんな…」 笙は……あまりの酷さに…目眩を覚えた… 康太を性欲の対象にしていると言うのか… 榊原は兄を見詰め…嗤った 「でも今はそう簡単に康太には近付けませんよ? 芸能界で生きて行きたいなら…堂々と康太を拉致れません… 相賀和成と須賀直人を敵に回して…生きられる程…甘くはないでしょ? 政治家なら…致命的ですよ… 番犬 三木を始めとして…安曇勝也を敵に回せますかね… 経団連会長も…着いてますしね… 公には…康太には近付けない… 近付くなら…永遠に闇に葬り去ってやる…」 榊原は……誰よりも腹黒く…嗤う 笙は…知っててやってるからな…この弟は… と、呆れ返った… 「でも油断は禁物…母さんを使って…狙ってる奴は…少なくないでしょう… 飛鳥井康太を手に入れた時… すべてを手に入れられる…と誤解してるんですかね? そんな奴もいましたね…一生…」 「いたな…そんな奴が… だから最近は…隼人の撮影にも行かねぇし… 距離を持ってるのにな…何でこうなるんだ?」 一生も唸った 隼人が…重い口を開いた 「神野の所には…毎日の様に…康太に逢わせろ…と電話が入ってるらしい… オレ様も…康太に逢わせてくれ…と言って… 家まで来られそうになって困る時もある」 「隼人…すまねぇな」 康太は隼人の頭を引き寄せ…撫でてやった 「康太の所為じゃないのだ… 康太を持てば…世界を掴めると…誤解してる奴がいるだけだ… ドラゴンボールを集めて願いが叶う…アレみたいに…康太を手に入れれば…世界は自分のモノになる…と思ってる奴が多すぎるのだ その癖…康太の瞳を見る事も出来ずに…罵る そう言うバカなら…沢山いたよな… 康太の瞳を…そのうち恐怖に思うのだ… そして……見るな!と康太を責める… そんな身勝手な…奴に康太は傷付けられて… 生きてきたのだ!」 隼人は興奮して…叫んだ… 「隼人…もう良い…泣くな…」 「だぁって康太が…泣くから…」 一生は、お前が泣いてるな…と想いながら…隼人を抱き締めてやった 清四郎と真矢は……支度が終わって応接室に入って来て… その話を唖然と聞いていた 康太はそんな目に合いながらも…隼人を守ったのか…と改めて…思った そして…康太を欲しがる人の…多さに瞠目した 飛鳥井康太を手に入れれば…世界に手中に収めれる… そんな筈ないのに…欲しがるのか? そして…康太の瞳に…恐れ戦くのか…? 康太は言った… 『オレの瞳は…怪異ですから…人は知ると恐れを抱きます…そして奇異な瞳で見るのです』…と 果てまで見れる瞳は…人にとって… 恐怖なのか…? 戦慄なのか…? 希望なのか? それを決めるのも…… また人なのか… 康太と榊原は見詰め合っていた… 清四郎と真矢に解るのは… 康太の瞳は…息子にとって… 恐れでも…戦慄でも…希望でもなく 愛する人の瞳なのは解る それだけで…良いと…二人は思う 息子が…愛する人を手にして幸せなら… それで良いと…清四郎と真矢は願う… 康太は二人を見付けて…笑った 子供の様な笑顔に…康太の素を知る その顔は…極限られた人にしか向けない顔だと…知っていた 外で目にする康太は……人を食った様に皮肉に嗤う 唇の端を吊り上げて…挑発的な顔をする 素の康太は…こんなにも幼いのに… 自分奮い立たせて…駆り立てて…康太は歩く その歩みは澱みなく…果てに向かう… 恋人の腕の中でだけは…安らかな…時を過ごさせてあげたい… 康太を見詰め…清四郎と真矢は思った 「真矢さん、オレ等も行くかんな!」 と康太は真矢に抱き着いた 優しい…顔をしていた 甘えん坊の様で…それでいて優しい…顔で真矢を見ていた 「真矢さん、明日相賀に逢うので、何か手を打ちます そしたら少しは…止まるでしょう… でも、諦めねぇ奴は…貴方をチャンスと思い…近寄るでしょう… そう言う奴は…相手にしないで! そう言う時は…絶対に一人にならないで! まぁ貴方に手を出せば…オレは黙ってはいない…けどね!」 「康太…気にしなくて良いのよ… 貴方は…本当に色んな想いをして来たのね… 本当に…」 後はもう…言葉にならなかった… 清四郎が優しく妻を抱き締め… 「病院に行きましょうか…」と告げた 一生は「俺等は…飛鳥井の帰るわ…皆で行けば…迷惑になる…」と申し出た 清四郎は「真矢に着いててあげて下さい 君達は家族も同然…迷惑になんてなりません!」と一生に返した 笙は一生に肩を回し…「行きますよ!僕はまだ康太に着いてないといけないんです…」と仕事だと…言いたげに一生を促した 康太は…「今度、役者 榊 清四郎を撮らせて貰えますか?本にするとかじゃなく…個人的に…貴方の時代劇姿は残しておきたい」と申し出た 「構いませんよ…来月から時代劇の仕事が入ります…そしたら撮って下さいね」 と清四郎は嬉しそうに…答えた 笙は「父さん、康太の写真は…人の内面を撮ります…一度撮って貰うと…解りますよ…」と父親に嬉しそうに話した 「それは、楽しみですね…マネージャーに話をしときますから…好きな時に来て下さいね」 楽しく会話をした後に…清四郎は妻を支え…病院へと向かう 清四郎の車を笙が運転して清四郎と真矢を見ていた乗せる 康太達は、力哉の車に乗り…後を着いていった

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