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第60話 見届け

榊原の家の外に出ると…康太の髪は靡いていた 天を仰ぐと…康太は… 「我…行かん道を共に行け…若旦那… オレの声を聞け…そして瞳を閉じろ…」 康太は…天に手を伸ばし… 何かを掴むと…不敵に唇の端を吊り上げた 康太の手の中には…小さな水晶玉が握られていた 掌を開くと…水晶玉は…康太の掌に…吸い込まれて行った そして榊原の車の助手席に乗り込んだ 一生達は力哉の車に乗り込み…飛鳥井の家へ向かった 飛鳥井の家へ着くと、来客用の駐車場にベンツが停まっていた 康太は…目の端でそれを捉え…車から降り飛鳥井の家へ入って行った 玄関に康太の気配があると、応接間から瑛太が姿を現した 康太は…何も言わず、応接間に入って行くと… 戸浪沙羅が…ソファーに座っていた 「沙羅…若旦那が倒れたから…オレに何とかしろと…頼みに来たか?」 図星を刺され…沙羅は言葉煮詰まった… 「………頼めはしませんか?」 「無理だ!オレは忙しい!」 沙羅は…ガタッと肩を落とした 康太はソファーに座り足を組むと 「沙羅」名を呼んだ 「はい…」 「お前は戸浪の女だよ! 戸浪海里の名代は… 沙羅、お前が務めろ…!」 「………私ですか…」 「そうだ!」 「……何をすれば良いか…ご指示下さいますか?」 「大丈夫だ沙羅!お前はオレなどなくても名代は務まる… お前は誰よりも…戸浪海里を側で見て支えて来たんじゃねぇのかよ?」 「康太…」 「オレは…何もせず…見ていてやんよ その後は…お前一人で大丈夫だ!」 沙羅は康太に深々と頭を下げた 「ならば…明日一日…着いていて下さいますか?」 「良いだろう…明日の朝戸浪へ行く その後、若旦那を見舞うとしよう」 沙羅は頷くと…キリッと前を見据え…顔を上げた 「ずっと…不安でした…」 「不安に思う事はねぇ…お前は行くしかねぇんだ その為に…お前を絶対的な若旦那の妻にしたんじゃねぇのかよ?」 見えていたと言うのか…? あの時点で…戸浪が倒れるのを知っていたと言うのか…? そして……倒れた後は… 妻である自分を据える気だった……と言うのか? 総ては…飛鳥井康太の知る所となるのか… ならば、自分は行くしかない… 用意された道を…行くしかない 「明日より…名代を務めます 明日一日…私に時間を下さい お願い致します…」 「明日、行くと言ったろ?」 「はい。」 「明日、社長室でお待ちしております!」 「おう!気を抜くなよ! 気を抜けば…乱世だ斬り着けられる! この戦が…戸浪を絶対のものにする それを掴むか…掴めねぇかは… オレの知った所じゃねぇ! 掴むのはお前達だからな!オレじゃねぇ!」 沙羅は「はい!」と覚悟の返事をした! 「沙羅、行くしかねぇ道ならば…命を懸けろ その命…明日の戸浪の礎にしろ!」 「とうに覚悟は出来ております!」 「やっぱお前は戸浪の女だよ!」 康太の最大の賛辞だった 沙羅は嬉しそうに微笑み…頭を下げた 「それでは、お邪魔致します!」 そう言い…応接間を出て帰っていった その姿を見送り… 「海神を宿したか…乱世は続くな…」と呟いた その言葉に…榊原と一生達も…ギョッとなった 榊原が「海神…ですか?」と康太に問い掛けた 「おう!誰よりも戸浪の血が出ると思ったら…海神じゃぁな…先祖帰りの万里よりタチが悪いかもな…」 一生が「あんで、そんな強い血が出るんだよ?」と聞く 「交わりには…太古の血からを受け継ぐ時もある… 戸浪はオレの血を交えた…それで太古の血が甦った…だからだろうな…」 一生は納得した 「太古の血と…他所の血とを…入れて戸浪は新しい風を受ける… 腹の子が出る頃…同じ定めで生まれる子供を貰い受け…戸浪を作る それまでが…オレの定め… それからは…海神の血を受け継ぎ生まれし子供が作って行く! と、言う事だ…解ったか?若旦那?」 康太は掌の水晶玉に語りかけた 榊原は「それは?」と問い質した 「これは戸浪海里の体内から持ち出した意識の一部だ…」 「意識の一部…?」 「若旦那は…オレと血を交わした! オレの血は戸浪海里の中で…太古の血と結び付いた… だからな…取り出すのも可能なんだよ… 戸浪海里は、寝ながらにして総てを知ると言うことだ…」 あの時…戸浪海里と血を交えたと言うのは…そう言う意味があったのかと… 今更ながらに…思った 総ては…繋がって…意味を成している! 康太の口癖だった それを目の当たりに見せ付けられた瞬間だった 総ては意味があって…康太は動いていた 総て…無駄なことはない… 強いては…明日の飛鳥井を築く為… 「明日…沙羅を見届ける…」 康太は果てを見つめ…言葉にした 榊原や一生達は…覚悟を決め…康太の果てを一緒に見つめた… 翌朝早く康太はスーツに身を包んでいた 榊原もスーツに着替え…身なりを整えた 康太は榊原を、愛しい瞳で見ていた その視線に気付き…榊原は康太を見た 「伊織…オレを離すな…」 「離しませんよ…絶対に!」 榊原は康太に…手を伸ばした 康太はその手を取り…掌に口付けた 「オレの行く道は…嵐を呼ぶ…乱世になって行く それが定めだ…オレは行かねばならい オレは歩みを止めねぇ…誰もオレの歩みを止めさせねぇ…オレは行く!」 榊原の手を握りしめ康太は榊原を見上げた 榊原は康太を抱き締めた 「僕は君と共に在ります…君の行く所へ 僕は行く…離れません…絶対に!」 「伊織…」 康太は愛する男の胸に顔を埋めた そして、離れると…振り切るように…背を向けた スタスタ歩く…その足取りに躊躇はない キッチンまで行き…朝食を取ると… 一生や聡一郎、隼人、慎一がスーツを着てキッチンに現れた 何も語らず…黙々と…朝食を取る… 食事が済むと康太はキッチンを後にした 応接間へ行き…瞳を閉じて…康太は静かに時間が来るのを待った 榊原が応接にやって来て、一生達が現れても… 康太は瞳を開けなかった 一頻り…瞳を閉じていたかと思ったら…立ち上がり…姿勢を正した 「行くぞ!」 康太は言い…歩き出す 応接間を出て玄関に行くと…出勤前の瑛太と出会した 戦闘体勢にある康太の姿に…瑛太は声を掛けなかった… 康太を見送る様に姿勢を正すと…深々と頭を下げた 康太は一瞥し…背を向けた 家の外に出て、駐車場へ向かう 榊原の車の助手席に乗り込むと… 康太は瞳を閉じた… 「伊織…」 「何ですか?」 「若旦那の見舞いしたら…戸浪の事は…一段落だ… そしたら、少しは大学に通うと良い…」 「君は…大学……行かないのですか?」 「オレの事は気にするな…行けねぇ…訳があんだよ…」 「あの、前に話してた先輩がいるから?」 「違う…もっとタチの悪いのがいる… 捕まったら…オレは…ソイツと共に逝かねばならなくなる…」 「…………っ!…君は僕と共に逝くんじないのですか!」 「オレが共に逝くのはお前だが‥‥ オレは長い年月をかけて駒を放ってあるんだよ オレが…配置した駒が揃う‥‥‥ 駒が揃う時‥‥完全な円卓の騎士は揃う そうすれば乱世は更に激化する」 「じゃ…その人が…卒業しないと…君は大学に行かないのですか?」 「………そりゃあ無理だな…同級生だからよぉ…」 「誰ですか?」 「樋口陵介…後で一生にでも聞け…」 康太はそう言うと…もう何も喋らなかった 榊原はトナミ海運に車を走らせた 社員が出迎える中、康太は悠然とした足取りで…堂々と歩く 康太が通ると…社員は頭を下げた その後ろに榊原を伴え…一生達が続く 産まれながらに…人の上に立つ存在 絶対的にそこに在る…存在 それが、飛鳥井康太だった 田代が出迎え、エレベーターの扉を開ける それに乗り込み…扉が閉まる瞬間… 康太は片手をあげ、微笑んだ エレベーターは最上階の社長室へと向かう 社長室に入ると、康太はソファーに座った ソファーに座り足を組むと…何も言わず不敵に笑っていた 戸浪沙羅は社長の椅子に座ると…亜沙美は 「義姉さん、私は隣の副社長室にいますので…」と頭を下げ…出て行こうとした 「亜沙美 」 背を向けた亜沙美に康太は声を掛けた 「振り向くな!お前に…これだけ…渡してやる…」 康太は榊原に手を差し出すと… 榊原は鞄の中から…封筒を取り出した 康太はそれを手にすると… 背を向けた亜沙美に渡した 中身が解ってる亜沙美の背中が…震えていた 康太から封筒を受け取ると…亜沙美は…社長室を出て行った 康太はソファーに座ると… 「さぁ、始めようぜ!戸浪沙羅!」と声を掛けた 戸浪沙羅が社長室の椅子に座る そして康太の目の前で仕事を始めた 戸浪海里に遜色ない手腕だった それもその筈…沙羅は元々は商家の出で、帝王学を叩き込まれて育ったのだ 沙羅の不幸は跡取りが、後から産まれた事だろう 沙羅が継がなくても…跡取りが出来た 「沙羅」 「はい!」 「トップに立つ人間はな常に下に、目を配らせて…人を束ねる 若旦那はトップに立ち…先を進む! 沙羅、お前は人を束ねろ! 常に配下に気を配り目を配り…人を束ねろ 一人じゃ…重荷なら妻のお前が…持ってやれ」 まさに…康太の言う事は…真髄を突いていた 「沙羅、手を出せ」 康太に言われ、沙羅は立ち上がり康太の側に行った そして…康太に向けて手を差し出した 康太は沙羅の手の上に…水晶玉を乗せた 沙羅は…不思議な顔をして… 「これは?」と康太に問いただした 「戸浪海里の…想いだ…」 「え?……これが?」 「オレと若旦那は血を交わしてる 血を交わせば…相手の想いを…球体に込める事が…オレには出来るんだ… これは呼び寄せた戸浪海里の想いだ… 戸浪海里はベッドで寝ながらにして…総てを見ている…知る事が出来る… お前にやろう…若旦那が帰ってこれば…自然と破壊する… 当たり前だ…本人が戻れば…水晶玉は本人に還るんだからな… 戻るその日まで…お前が持っていろ」 沙羅は…掌の水晶玉を大切に握り…胸に抱き締めた 「沙羅、もう一度…開け」 沙羅は掌を開いて…康太に見せた すると…水晶玉が沙羅の掌に吸い込まれて行った 「お前の血となり肉となり同化させてやんよ 愛する男の…想いだ…欲しいだろ?」 沙羅は…驚愕の瞳で…康太を見た そして…その瞳を…涙で溢れさせた 「ありがとう…ございました…」 「オレは若旦那を見舞う! そしてそのまま帰る もう大丈夫だ…沙羅と亜沙美でトナミは乗りきれる… だが、油断するなよ… まぁ油断しても…その腹の子が…お前を守る その腹の子は…海神…そのものだ… トナミは始祖に還る…此処から始まる… トナミの果てを築くは、お前の腹の子だ! そして戸浪万里が受け継いで行く だがな…千里は戸浪から出してやれ その代わり…新しい血を入れねば…戸浪は滅ぶ… 沙羅…お前は血の繋がらぬ子供を育てられるか?」 「それが……定めなのですか?」 「そうだ!始祖の血を受ける時… 他所の血を取り入れる それはな、血に固執すれば…滅ぶからだ… だから、新しい血を取り入れ、始祖の子供と万里で…戸浪の明日の礎になる! もう…決められし事だ…違えれば…明日の戸浪は終焉に向かう…」 沙羅は康太を見据え… 「それが定めなら、戸浪沙羅…我が子と変わることなく…その子を育てて見せましょう! 我が子も、明日の戸浪を担う子も…愛してみせます! この命と引き換えに…違える事なく完遂してみせます!」 「なら……良い…」 康太は沙羅を抱き締めた 「お前の行く道は…乱世だ… この先…トナミも戦い抜かねば…明日へと続きはしない 乱世だ…会社と言う戦場は、人の血を吸い…大きく育つ… だがな…血を流し倒れた奴を忘れるなよ そんな人の犠牲の上に…トナミ海運は成り立つと言うことをな!」 「はい!決して忘れは致しません! 心に刻み…明日へと続きさせます! 戸浪沙羅…明日のトナミの礎になり…見事に散って見せましょう!」 康太は何も言わず…沙羅を抱き締めると… 離した そして優しい顔で…微笑むと… 「沙羅、菩薩になれ…慈悲でもって…人を愛せ」 「はい!心しておきます」 「ならな、沙羅」 沙羅は深々と康太に頭を下げた 康太は「帰るぞ!」と榊原に告げると… 榊原は立ち上がった 一生や聡一郎、慎一も立ち上がると、社長室を後にした エレベーターのボタンを押すと…ドアが開き 康太はそれに乗り込んだ そしてドアの前に一生を立たせると… 一生は不思議な顔をして…そして… 息を飲み込んだ… 副社長室のドアを開け…戸浪亜沙美が立っていたからだ… 亜沙美は微笑み…一生に手をふった 一生は……その姿を見て…涙を流し… 亜沙美へと… 思いを込めて…手を上げた… 一生の目の前を… エレベーターのドアが閉まる… 天を仰いで…一生は瞳を閉じた その体を…慎一が優しく抱き締めた 一階に着くと康太はエレベーターを降りた 一階の広いフロアを康太が悠然と歩く 康太は受付嬢に手をあげると…社外へと出て行った 駐車場へ行くと、康太は 「伊織、船舶記念病院へ行ってくれ…」 「若旦那が?」 「そうだ…顔を見て…帰る」 榊原は納得して…車に乗ろうとして… 一生の所へ…走った 「君には聞きたい事があります! 僕の車に乗って下さい!」 一生は、良いぜ!と笑い…後部座席に乗り込んだ 榊原が、車を走らせると、一生は 「旦那、あんだよ?聞きたい事って?」 「樋口陵介…って誰ですか?」 榊原が一生に問い掛けると…一生は慌てて前の座席に飛び付いた 「樋口陵介…康太…あの樋口陵介かよ?」 「そう…あの、樋口陵介…」 一生は頭を抱えた… 榊原は「一生?」と心配して声を掛けた 「旦那は…樋口は知らねぇよ…桜林の生徒じゃねぇからな…」 「……説明してくれませんか?」 「……中学の頃な…天才がいたんだよ… 科学者も…脱帽の天才がな… その天才がな…怖いもの知らずで…口説いたのが…飛鳥井康太… その当時は…俺達は…康太とは疎遠だった だから詳しい出逢いは知らねぇ だけど…康太と共に行くと…決めた時には… 樋口陵介は康太といたよな?」 「いたな…そしてアイツ…桜林の大学に… ちゃっかりいるぜ!」 康太が言うと……一生は叫んだ 「ええええええ!あんな天才…桜林に…反則でんがな…」 「オレが大学に来るのを…首を長くして待ってる…行けばオレは捕まる…それは避けたい…アイツに捕まると…離してくれねぇかんな……それは避けたい…」 康太が言うと…榊原は心配して 「康太を奪う気なんですか?」と問い掛けた 一生は「そう言うのとは違う…康太を抱きたいとか…とは違うも思う…」と榊原を宥めた 「伊織…心配するな…愛じゃねぇ… アイツはオレと共に行く…果ての道連れだ だから帰って来たんだよ… だがな…オレがまだ…アイツとは行けねぇ… アイツと重なる果ては…まだ見えて来ねぇ」 「僕は康太を手放す気は有りませんよ」 「アイツはオレと寝てぇ訳じゃねぇ… とにかく…もう少し…大学は行かねぇ…」 「康太…」 「あ!でも…そろそろ…頃合いなのか?」 康太は思案していた 船舶記念病院の駐車場に車を停めると 康太は車から降り…歩いて行く 「慎一、戸浪海里の面会の要請取ってこい!」 康太が言うと慎一は走って院内に入っていった 康太が院内のフロアに来る頃には…戸浪海里への面会を取り付けて、慎一は立っていた 「沙羅さんから若旦那の方に連絡が入ってました」 「なら行くか」 康太は迷う事なく歩いて行く 最上階の…個室へ向かうと… 田代が待ち構えていた 康太の姿を見ると…田代がドアを開けた 康太は病室の中へ入ると、戸浪は起きていた 「起きてて良いんかよ?」 笑って康太が近寄ると…田代が椅子を差し出した 康太はそれに座り… 「総て…見えてたろ?」と嗤った 戸浪は康太に深々と頭を下げた 「本当に…何と言って良いか…面目ない」 「良い…若旦那が倒れるのは…承知だ… だから、沙羅を使える様に仕向ける必要があった…使えるだろ?沙羅は?」 「はい!沙羅が…あんなに使えるとは…私も解ってはおりませんでした」 「若旦那!オレは適材適所配置する為に、この世にいる…オレの存在意味だ… 違えれば…そこにはいられねぇんだよ!」 その言葉の重みに…戸浪は言葉を失う 「若旦那、腹の子は…海神そのものだ これで、戸浪は明日へと続けられる! 海神と…先祖返りの万里 千里は…戸浪を継げねぇ…定めだ! 戸浪から出してやれ…その代わり…他の血を入れろ…戸浪が変わる為に…戸浪以外の血を入れろ… 強い血は濁る…濁った血は終焉を呼び込む… 即ち…戸浪の家の終わりだ… そうなりたくねぇなら、血を入れ換えろ 海神と先祖返りの万里…そして全く血の繋がらぬ…跡取りを…育てろ!」 戸浪は言葉を失った 「血の繋がらぬ…跡取り……ですか?」 「そうだ!始祖返りの子供は指揮をさせろ 万里は手綱を握って舵取りをさせろ 血の繋がらぬ子供は、トナミ海運の跡を取らせろ! それで、血を守りながら…新しい風を吹き込めれる… やるか…やらねぇかは…お前逹次第だ… オレは言葉しかくれてやらねぇ その言葉を聞くも聞かぬも…お前逹で決めれば良い」 「………いえ…心して…育てて行きます で…その…子供と言うのは…?」 「聞くな!時が来れば…オレが定めに添って連れて行く! 万里には総て話せ!千里にも話せ! 総て話して聞かせて…万里や千里にも自分の運命を受け入れさせろ… 今度はオレは…動かねぇ… お前は親として…精一杯やってみろ! 二人は解ってくれて…自分の定めを受け入れる…」 戸浪は……静かに目を瞑り… 「はい!解りました…」と了承した 「戸浪海里……乱世に背を向けるな! その背を斬り着けられたら…お前は死しかないぞ!」 戸浪は……うっ!と息を飲んだ! 康太は意地悪く嗤うと…戸浪を抱き締めた 「血ヘドを吐いたって…オレ逹は行かねぇと行けねぇんだ! もう……引き戻す道なんて…ねぇんだよ! オレもお前も…行く道は…この道しかねぇんだ! 行くしかねぇんだ!迷うな!絶対に迷うな!」 「はい!…引き返せぬ道ならば…振り返らずに進むしか有りません! 我が道が…どんなに辛くても…明日のトナミの礎になるのであれば…私は行きます! 康太…君が用意してくれた道を…この戸浪海里…命を懸けて貫き通します!」 「若旦那……共に行こう! 我も行く…乱世の世を…共に行かんことを願う…」 戸浪は…康太を抱き締めた 「共に…共に…行って下さい…」 康太を抱き締める肩が震えていた 康太は笑って 「若旦那…その台詞は少し…エッチいかもな…」と、若旦那の背中を撫でた… 「康太!私はエッチな意味で…」 「解ってんよ若旦那。」 康太は戸浪を離すと… 「今回のオレの仕事は終わった…後は沙羅がやる!」と仕事の終わりを告げた 「はい!本当に有り難う御座いました!」 「ならな、若旦那…またな」 「はい!また逢って下さいね」 康太は戸浪に背を向けると…病室を後にした

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