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第62話 我は逝く

「伊織…」 「何ですか?」 「明日から大学に出席する! 取り合えず入学の手続きして…授業の選択を入れて来ねぇとな…」 榊原は…驚愕の瞳で康太を見た 「本気ですか?」 「至極…本気だぜ!」 「解りました!ならば、僕は君と共に行きます!」 「一生、聡一郎、慎一、 遅れながら、大学生活を送ろうぜ!」 康太の事だから…ただ単に…大学生活を楽しむつもりはないだろう… 何かの戦略や思惑があってこその…… 決断なんだろう… 一生は不敵に受けて立 「お前が行くなら行くに決まってる! まぁ大学位出とかねぇとな…って言うか…ネットで単位は取れる分は取ってる… 出席しねぇとダメな授業とかはまだだが…造作もねぇだろ?」 と言い笑った 聡一郎と 「ネットで単位は…ダルくて…飽きてました ならば、僕も君と行きます!」 と言い、大学へと行く気充分だった 慎一は 「康太、俺は適度に大学には通ってます… 伊織に着いて…行ってるので…」 と恐縮した 康太は「なら、今度は皆で行くかんな!」 と言い笑った 翌朝、康太は大学に行く準備をしていた カジュアルな服を着せてもらい、肩から…リュックも掛けた 榊原も着替えて、キッチンへと降りて行く 瑛太や玲香、清隆はカジュアルな服装の康太に…何処へ行くのですか?と尋ねた 康太は笑って「大学に行くんだよ」と答えた 瑛太が「行くのですか!」と楽しそうに言う 玲香が「行くが良い…学んで参れ」と言葉にした 清隆は「力哉を連れて行きますか?手続きとか有るでしょ?」と康太に問いただした 「手続きは瑛兄がしてるに決まってるじゃん 瑛兄はオレに大学に行けと言ってるだかんな! って事は…手続きしてあんだよ だからオレは事務に行って教科の選択とか入れて来るだけだ…力哉は会社に行け」 康太の言葉に家族は納得した 瑛太なら…絶対にやるだろう… 康太は飛鳥井の家族に… 「瑛兄、父ちゃん、母ちゃん、陵介は知ってるよな? うちで暮らしていた事あるしな…」 と問い掛けた 瑛太は「知っておりますよ」と返した 玲香も「変わらぬからな知っておる」言い 清隆は「陵介も帰って来たか…」と康太のブレーンが集まりつつある現実に…顔を引き締めた 「そう…陵介も還った… あと一人…オレに還れば…オレは打って出る!」 康太は口の端を吊り上げて…笑った 榊原は「あと一人?」と康太に問い掛けた 「そう。あと一人、オレへと還る…奴がいる」 一生が「誰だよ?」と問い質した 康太は笑って「その時が来れば解る」と答えなかった そう言われると…もぉ何も言えない 康太はキッチンを後にすると応接間へと向かい…ソファーに座った その横に隼人が座り…康太に抱きついた ギュー…っと抱き着く隼人に、康太は笑って、頭を撫でてやった 「どうしたんだよ?隼人?」 「オレ様も大学に行きたいのだ! 留守番は嫌なのだ…やはり大学に行くのだ!」 突拍子もない隼人の言葉に…康太は…苦笑した 「一生、神野を呼べ」 康太が言うと、一生は神野に電話を入れ…呼び出した 「康太、直ぐ来るってよ!」 「一生…予想出来たか?」 康太がソファーに背を着け…一生を見上げた 「隼人は淋しがり屋だからな…行きたがるかも…とは思った」 一生が答えると…康太の後ろに榊原が立ち 見上げる康太の唇に…キスした 暫くすると…神野が来て、応接間へ通された 「悪かったな神野…」 「いえ…構いません。用件は?」 「隼人が大学に行きたいと言ってるんだけど…」 康太の言葉に…神野は苦笑した 大学には行かない…と、自分で言ったのに… 「手続きはしてあります! 貴方が…気が変わるから…手続きはしておけと言いましたよね? ですから、手続きはしてあります…… もぉ…この子は…淋しがり屋なんですから!」 神野に言われ…隼人は康太の胸に隠れた 「神野…」 「はい。」 「オレも大学に行く! 当分…飛鳥井には近付くな…笙にも言っておいてくれ」 「……それは、命令ですか?」 「そうだ!飛鳥井はこれより戦国の世に突入する… 近寄られて…人質にされたら迷惑だ! だから、一切…来るな!解ったな!」 人質にされたら…康太の台詞に…神野はただならぬ…状況を感じていた 「解りました…来いと…呼ばれるまでは来ません! 総てカタが着きましたら…お声をかけて下さい!」 「当然だろ?お前を呼ばずして誰を呼ぶよ?」 康太は…隼人を離すと…神野の腕を掴んだ 神野を引き寄せ…抱き締めると、神野は康太の胸に顔を埋めた 「総てカタが着いたら…お前を呼ぶ!約束する!」 「……っ!康太!」 神野は一頻り…康太を抱き締めると、体を離し立ち上がった 「貴方の…明日が…飛鳥井の果てへと続きます様に…この神野…祈っております!」 康太は優しく笑うと 「…神野…呼んだら酒を持ってやって来い!そしたら宴会だ!」と言葉を投げ掛けた その言葉を受け…神野は背を向け…応接間を出て行った 康太は神野を見送り…立ち上がった 「……頃合いか…弥勒…釼持陽人は大学にいるか?」 康太は天を仰ぎ…問い掛けた 『お前を待っておる…お前に還る定めだからな…行くがよい!』 弥勒が導き…道を作る… 康太はその先を見詰め…嗤った 「伊織…定めの軌道に総て乗った! オレは仕掛ける!行くぜ伊織…」 榊原に向けて手を差し出すと…榊原は康太の手を取った 「何処まででも…お供します!」 榊原は康太を見詰めたまま…手の甲に接吻を落とした 手を離すと…康太は背を向けた 乱世の世に行くために…我は進む… 悔いなど残したりするものか… 例え…命を落とそうとも…悔いなど残しはしない… 康太は「我…一片の後悔なし……」と呟いた やらずに悔いなど遺すものか… 我は行く… 信じる道を行く… この道が…信じるに値するのなら… 我は行く… 立ち止まる事なく…我は進む… この道が…明日へと繋がれ! 明日へ繋がる…道になれ! 「行くぜ!」 康太は…髪を風に靡かせ…明日を見据えた… 大学に行くと…学生駐車場に車を停めた 榊原と慎一は国産の車に乗って大学に来た 榊原の車に康太と一生と陵介を、慎一が運転する車に聡一郎と隼人が乗り込み、車を走らせた 大学に着くと、まずは、キャンパスを横切り…事務所へ向かう その途中で…兵藤に出会し…見付かった 兵藤は康太目掛けて…飛び掛かった 「おめぇは…遅せぇんだよ! 何時まで待たせんだよ!」 康太は笑って 「仕方ねぇだろ…陵介から避けてたんだからよぉ…」 康太の言葉に…兵藤は眉を顰めた 「樋口…陵介?」 「やっぱ知ってたか…そう。後ろにいる」 兵藤は陵介を見て……その秀才ぶりに苦笑した 変わっていなかった… 構内で何度か見掛けた もしかしたら…とは、想ったが…声はかけられなかった…確信がなかったから… まじっと見れば…面影はある 鼻持ちならない…秀才ぶってた…この頃に比べたら…やはり、少しは変わっていたのかも知れない 「久しぶり…構内で…見掛けた時に…ひょっとしたら…と思ったら…やっぱし陵介か」 兵藤を見て、陵介は笑った 昔と違う…人懐っこい顔で…笑って兵藤に手を出した 「見てるのに声を掛けて来ねぇからな… 近寄れねぇ存在なのかと思ったぜ」 兵藤は陵介の手を取り 「声掛けて来いよ!んとによぉ!」 と、怒った 康太は兵藤に 「釼持は構内にいる?」 と問い掛けた 兵藤は怪訝な顔で… 「釼持陽人…?」と問い掛けた 「そう。」 「第6講義室、釼持ゼミの真っ只中だぜ!」 「案内しろよ!貴史!」 言われ…兵藤は仕方なさそうに…肩を竦めた 「仕方ねぇ…来いよ!連れて行ってやる!」 兵藤が康太を連れて構内を歩くと…殆どの人間が振り返り…近寄ろうとするが… 回りの人間を見て……断念した 兵藤は軽快な足取りで構内を歩き… 講義室の前で足を止めた 「ここだぜ!釼持ゼミの教室は!」 兵藤は「釼持ゼミ」と書かれたプレートを指差した 第6講義室は…まだ講義の真っ只中だった なのに…康太は講義室のドアを… 教授の立つ…教壇の方のドアの方を…開け 教壇に上がる教授に向かって…歩いた 怯む事なく歩んで 足を止めなかった 教授は…最初は訳が解らなくて…驚愕するが 相手が康太だと解ると… 唇の端を吊り上げ嗤った 「こんな傍若無人な登場人物は…やはり貴方でしたか…」 背が高く…俳優でも通りそうな… 大学教授…釼持陽人… 「時は満ちた…迎えに来た! それだけだ…行くも行かぬも…お前次第だ」 「その台詞を……今更吐きますか?」 「ならば来い陽人!」 康太が呼ぶと…釼持陽人は康太を抱き上げた 抱き上げて…抱き締めた 生徒は唖然としていた あの気難しい教授が、満面の笑みで…康太を抱き締めて…いたから… そして…優しい顔で笑った 「私は貴方の持ち物…持ち主に還るのは…当然でしょ? 還りますよ…貴方へ…私はずっと待っていたんですから!」 康太も微笑んだ そして…キツい瞳で…釼持を射抜いた! 「乱世の世に引きずり込むために…呼びに来た オレは行くぜ!オレと共に来い!」 釼持は康太をキツく抱き締めた! 「貴方となら何処へでも! この命…見事に散らせて…みせましょう!」 釼持は…晴れ晴れと嗤った 釼持の顔を見て、康太は頷いた 「陽人、オレはまだ、構内をうろついてる! 話がしたいなら、この番号に電話して来い!ならな」 康太は電話番号を書き記した紙を渡した 釼持はその紙を受け取った 「陽人、下ろせ…」 康太が言うと、釼持は康太を下ろした 釼持の腕から…離れると 康太は釼持の胸を軽く叩いた そしてニカッと嗤うと… 背を向けた… 何事もなかったかの様に、スタスタと歩いて行く康太の背に… 「康太!」声を掛けた 康太は振り向くと…片手をあげた クスッと笑って…そのまま講義室から出て行った 康太の出て行った方を見て…釼持陽人は 背筋を正して…深々と頭を下げた 生徒が初めて目にする…釼持陽人…教授の姿だった そして…何事もなかったかの様に、マイクの前に立つと… 冷たい冷徹な瞳で…生徒を見据えた 何処から見ても…隙のない…教授の姿だった 皮肉屋で…血も涙もない…コンピューターよりも容赦のない… 氷の…彫刻…とまで生徒に謂わしめた男 それが、釼持陽人だった その見目の良さから…憧れる生徒は多い だが…隙のない…何処までも冷徹な態度に…生徒は怯え…側に寄るのは諦めた… でも人気は絶大だった 無駄なことさえ言わなければ…彼は…誰よりも有能な教授だったから… 教えるのは…誰よりも的確で…解りやすい 釼持ゼミは大学では一番人気の…ゼミだった ゼミの講義室を出た康太は、事務所へと向かった 事務所で簡単な手続きと、選択授業と必須授業の枠を取り…提出した 隼人も康太の横で…慎一に手伝ってもらって書き上げて提出した 事務所で手続きが終わりカフェに行こうかと、向かってると… 駆けて来る姿があった… 一目散に康太に飛び着こうとして…一生に阻まれ…撃沈した 小暮一也や仁科友紀の二人だった… 康太の1つ上の先輩で…康太に執心だった…先輩達だ… 「飛鳥井康太に近寄るな!」 一生が怒鳴ると…仁科が 「やはり…お前等は…一緒にいるのかよ…」と愚痴った 小暮も「人数…増えてるし…恋人もいて…へんな事するかよ!」とボヤいた 一生は「榊原の事はご存知でしたか」と笑った 小暮が「桜林OBのネットワークは完璧…って事で」と笑った そして仁科が表情を引き締め 「桜林OBは、この先も…飛鳥井康太を応援して行くことを決めた! お前に…何かあれば…我等は駆け付け…仇を取る!それだけだ…それだけ伝えたかった」 康太は笑って「ありがとう…」と礼を述べた 小暮と仁科は…それだけ言うと、その場を離れた 康太は気を取り直してカフェまで行き… 空いてる席に座った 慎一と榊原が注文をしに行く 飲み物をトレーに乗せて席に着くと 榊原は康太に、慎一は一生や聡一郎、隼人に珈琲を配った 飲んでると…携帯電話が鳴った 康太は携帯を掴むと電話をに出た 「カフェにいる…あぁ…来い…」 電話を切ると… 「陽人だ!」と教えた 「何処で知り合ったか…教えて貰えませんか?」 「飛鳥井に帰ったらな…すぐに来る」 康太が言うと釼持が走ってカフェにいる康太の元へと駆け寄ってきた 康太の横の席を開けてもらうと…そこに座った 「康太、私は大学は辞めて飛鳥井へ向かった方が良いですか?」 「…………それは無理だろ?」 「いえ!貴方のたっての申し出なら…この釼持、何を引き換えにしようとも…貴方の側へ行きます!」 「陽人…お前の生徒に悪いだろ… それに側にいなくても…お前は寸分違わず動くだろ?」 康太は釼持を見上げ嗤った 「はい…側にいられなくても…貴方の想いのまま…動くのは可能です!」 「ならば、それで良い! お前はオレに還った…オレは負けねぇ為に、打って出るぜ! その為に…オレは大学に通うんだからよぉ!」 不敵に嗤う康太の意図が…やっと解った ブレーンを手に入れ…仕掛ける 総ての…放ってあるブレーンをかき集め… 戦国の世に…飛鳥井を引きずり込む そして…熾烈な…闘いをする気なのだ… 「陽人、オレは戦国の世を行く」 「貴方の進む道が…戦国だとて構いはしません! 勝ち残る為に……闘う…それ以外ない! やっと!貴方に還れる時が来て…私は嬉しく思っております!」 「陽人…」 「これからは本領発揮せねばなりませんね! 私は何時でも動ける様に…実戦体制に入ります! 生徒は…着いてこれますかね…」 釼持は…悪魔の様な嗤いを顔に張り付け… 「我も…行きます…貴方と共に…」と康太の瞳を貫いた 「陽人、オレと来い! その為の…期間を与えた…その力総てでオレに還れ!」 釼持は不敵に笑うと…頭を下げ…康太の横を通りすぎていった… 康太の瞳は…釼持を見送り…果てへと向いた 「さてと、飛鳥井へ帰るか… 何か買って帰らねぇと、腹が減ったら話さねぇぞ!」 康太が笑って…席を立つと…一生は後を追った 「ちょ!待てよ康太…このぉ!」 一生が康太の肩に腕を掛けると…康太は笑った 康太と一生がじゃれてるのを見て、榊原も立ち上がった 椅子を閉じ…トレーを片付けに行くと… カフェにいた女の子が…榊原に近寄った 近寄る女の子を榊原は無視して…慎一を盾にする… 榊原は敏感に…近寄る人間を…避けて距離を保つ 榊原は康太の側に行くと…肩を抱き寄せて…促して歩いた 榊原の腕に収まる康太の姿を…女の子達は…見て……そっぽを向いた 康太が…見ていたから……だ 飛鳥井家真贋… それは大学構内でも有名な存在だった その瞳の…驚異と…聞き知ってあるからだ… 康太は…前を見据えて…歩き出した 風を切って歩くその姿に…近寄ろうとする人間はいない… また近寄っても…康太の前まで…行ける確率は…少ない 康太を取り巻き歩く…その姿は… 大学構内のキャンパスでも異色に映っていた 学生駐車場へ出向き、榊原は助手席のドアを開けた 当然の様に康太は乗り込み…ドアを閉めた その光景を、女性徒も男子生徒も眺めていた 声すら掛けれずに…眺めるしか出来ない… 榊原の車は…駐車場から出て行き走り去って行く… その後に慎一の運転する車が走り去る… 飛鳥井康太の…大学への登校は… 瞬時にして…構内や…OBの元へ情報として上がる… しかも登校初日に…釼持ゼミに…乗り込み… 釼持が康太を抱き上げて…抱き締めたのは… 噂となり…駆け抜けた 飛鳥井康太を知らぬ生徒も…康太の登校に… 何かしら不穏な空気を感じずに入られなかった 飛鳥井の家の新しく出来た駐車場のシャッターを…リモコンで操作して…開けると 榊原は車を停めた 慎一の車も少し遅れて駐車場に停まると、シャッターを閉めた 途中で…ファミレスでデリバリーをチョイスして帰宅すると… 康太は応接間のドアを開け、何時もの席に座った 足を組むと…全員が座るのを待ち… 口を開いた 「釼持陽人は、脇田誠一の弟だ 離婚して…離れ離れになって育った弟だ オレと出会った時…グレて…誠一が引き取っていた 何かにつけて突っ掛かってくるかんな、少しお灸を据えて…叩き直してやったんだ… アメリカに…留学する時に…何時か…飛鳥井康太へ還るから!絶対に還るから…待っててくれ…!と、約束して…陽人は留学に出た そして、3年前に日本に帰って来た オレが大学に上がる時…陽人はオレに還る…と、約束して…その約束が今年だ! 総てが起動に乗り…オレへと帰って来た 釼持陽人の得意分野は…心理学、犯罪心理学のスペシャリストとしてTVにも出てる 人の心理を巧みに利用して…動かすのは…右に出る者はいない オレの参謀に…据える奴だ 樋口陵介の得意分野は戦略だ… 情報戦略の第一人者だ 一生と聡一郎を使って…仕掛けて行く戦術を練るのが陵介だ! 今まではオレが纏めて…絵図を書いていた…それを今後は陵介がやる! オレの想いのまま寸分違わず…陵介が絵図を引く その分…オレは動いて…情報を掻き回す! 仕掛けるために…策士と参謀は必要だろ? 陵介なら…一生も聡一郎も上手く動かせる 社内にもな、オレの駒は放ってある 社内に留まらず…駒は放ってある… ブレーンをかけ集め…打って出る その駒は揃った…オレは戦を仕掛ける!」 康太は…言い切った その覚悟は…半端なものではない! 数々の布石を打ってきて… 総ての満が持したのだ 総ての軌道が載った… 核心の顔だった 不敵に嗤い…一生達を見据えて…瞳を貫いた 康太の言葉に異存などある筈もない その時が来たのだと… 告げられ…覚悟を決めた 康太は…クスッと笑って 「と、言っても…直ぐにどうこうする訳じゃなぇけどな!」 と笑った 戦略は一朝一夕で出来るものではない 戦略を練って仕掛けるまでには… 下拵えも…準備も…必要なのだ まぁ…取りあえずは… このまま…と、行きたいが… 「今…やらねぇといけねぇーのは… 陵介の子供の親族だな…来てんぜ…日本に… んでもって…狙ってるぜ…」 やはり…平穏な日々は無理か…と 一生は肩を落とした… 「飛鳥井に何かするなら…迎え撃つ… それだけだ…」 康太は言い切った 一生は「そりゃそうだ…」とため息混じりに答えた 榊原は「それしか…有りませんよな…」と呟いた 聡一郎も「退屈しませんね…この家は…」と呆れ… 隼人は「オレ様も闘うのだ…」と闘志を燃やした… 慎一は「………金に目が眩むと…タチが悪いですからね…」と双子の親族の時を思い出した 「まぁ…気を付けて…過ごせ でねぇと…人質だぜ…」 康太は…現実を突きつけた 「さてと、伊織は会社か…オレは少し寝る」 「ええ。君が起きるまで…会社に顔を出して来ます」 「ん。待ってるかんな!」 榊原は康太を抱き上げた 「スーツに着替えるので…寝室に連れていってあげます」 康太は榊原の首に腕を回した 出て行く…康太と榊原に…誰も声を掛けるものはいなかった

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