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7.秘事

何杯目かのシャンパンを飲み干し、光は恍惚とした吐息を漏らす。 「……少し、酔ってしまいました」 いつもは陶器のように白い光の頬が、ほんのり赤く染まっている。 久しぶりに水入らずのデートをして、アルコールに強い光も、少し興奮しているようだ。 少し潤んだ瞳や、艶やかに濡れた唇が色っぽい。 優人の視線に気付いた光は、形の良い唇で小さくフフッと笑った。 「良い夜ですね……」 呟いた光は、スッと立ち上がり、展望デッキを囲む柵に歩み寄る。 その足取りはどこか弾んでいるようで、けれど危なげ無く、滑らかに運ばれていた。 銀の柵を両手で掴んだ光は、横から来る海風に長い髪を遊ばせ、通り過ぎて行く波紋を見送る。 ランプの灯りを纏った光は、夜の女神を思わせる妖艶さと、儚さを兼ね備えていて美しい。 静かに歩み寄った優人は、光を閉じ込めるように背後から柵に触れ、そっと右手で光の腰を抱き寄せた。 「あ……優人……」 さりげなさを装って、お尻に優人の高ぶりを押し付けられ、光が甘い吐息を漏らす。 そして『自分も同じだ』と知らせるように、優人の右手に触れた光が、その手を自身の膨らみへと導く。 優人はクスリと笑った。 「光、こっち向いて」 「ゆぅ……ん……」 振り返った光の口を、優人がしっとりと唇で塞ぐ。 左手で光の頭を支えた優人は、するりと舌を口腔に滑り込ませ、唾液を混ぜ合わせた。 光の身体がゾクゾクと震える。 優人の手が光の後頭部をなぞり、首の後ろで髪を括っていたゴムを外した。 光の白いうなじを、漆黒の細い髪が撫でる。 それでも二人の口付けは離れない。 クチュ……チュプ…… 互いの舌を擦り合わせ、唾液を混ぜ合う水音が、潮騒(シオサイ)に消えていく。 「んん……ふぅ……」 息継ぎの間さえ惜しい深い口付けに、飲み切れない唾液が、光の口端から零れ落ちる。 そしてついに唇を離した優人の舌と光の舌を、銀の糸が繋ぎ、名残惜し気にプツンと切れた。 「綺麗だよ、光……」 もう一度、触れるだけのキスを落とした優人は、手をゆっくりと光のスラックスに差し入れる。 ベルトはいつの間にか外されて、優人の手を邪魔するモノは何も無い。 「あん……」 ほんのりと頬を染めた光が、甘い声を漏らす。 優人の手は下着越しに光の自身をなぞり、掌全体でヤワヤワと揉み始めた。 「あぁ、ん……ふあ……あんん……」 光の肩がピクピクと震え、快感に喜ぶ自身は次第に熱と硬度を増していく。 目の前に曝された首筋にそっと舌を這わせ、優人の左手が光の胸元を隠すボタンを、ゆっくりと外した。 懐に忍び込んだ手が、光の胸を撫で回し、乳首を摘まんでコリコリと転がす。 上も下も刺激され、首を仰け反らせてよがった光が、尻に押し付けられた優人の自身を揺さぶった。 優人の熱塊が硬さを増し、狭いスラックスの中で締め付けられる。 「クゥ……今日は、いつになく積極的だね、光」 「あんっ……ゆぅ……うふん……」 光の自身は快感に先走りを溢し始め、グチュグチュと音が鳴るほど、パンツを濡らしていく。 「やん……ゆ、と……」 その感触が不快な光は、イヤイヤと言うように首を振る。 小さくクスッと漏らした優人は、左手を光の懐から抜き取り、スラックスとパンツを下ろしてあげた。 腹に付きそうなほど反り返った光のモノが、生暖かい外気に触れて、ブルリと震える。 先端から溢れ出る雫が、ランプの灯りを受けてテラテラと光っていた。 その光景に欲情した優人の熱塊は、まだスラックスの中に隠されたまま、光の中に潜り込もうと震える。 「あぁ……ゆぅ……も、ほし……」 切羽詰まった声を出した光が、煽るように優人の膨らみに尻を擦り付けた。 光の首筋に唇で触れた優人は、一度その場にしゃがみ込み、光の桃尻を両手で割り開く。 灯りが届かず陰になった入口に、優人はそっと舌を伸ばした。 「ふわ……あん……」 甘い声を漏らした光は、腰を突き出したまま柵に寄り掛かり、小鹿のようにプルプルと下肢を震わせる。 優人はたっぷりと舌に唾液を乗せ、狭い秘部を丁寧に濡らしていく。 もう何年も、繰り返し身体を繋げたその穴は、すでに優人の形を覚え、奥の方は染み出る腸液に濡れているだろう。 けれども、さらに光を煽るために指を差し込み、やんわりと解していった。 「あぁ……あふっ……」 光が甘く荒く息を乱して、恥肉をヒクヒクと振るわせる。 唾液と腸液で隅々まで濡らしてやり、あえて光の感じる所には触れず、優人は限界まで焦らした。 光の自身がタラタラと透明な蜜を溢し、優人は片手でその蜜を絡め取りながら、また光の鈴口や竿に塗り込めてやる。 「ゆぅ……も……ダメぇ……っ!」 快感の涙をポロポロと溢しながら、イヤイヤと言うように首を振る光に、優人はゴクリと喉を鳴らした。 すぐさま下を脱いだ優人は、逸る気持ちを抑えつつ、ゆっくりと光の中に自身を埋めていく。 「あ、あぁん……!」 やっと入れてもらえた熱塊に感じて、天を仰いだ光が、白い喉を曝す。 男にしては細いその首筋に、優人はしっとりと唇を落とした。 「美しいよ、光……」 「ゆ……とぉ……」 光の身体がゾクリと震え、優人の自身を呑み込んだ恥肉が、奥へ奥へと誘って蠢く。 快感の吐息を漏らした優人は、もっと互いに貪ろうと、光の腰を掴んだ。 「いくよ、光」 優人が煽るように限界まで腰を突き上げると、一瞬息を飲んだ光は、言葉もなくコクコクと頷いた。 一度光の後頭部に唇を押し付けた優人は、抜けるギリギリまで、ズルリと自身を抜き、また最奥まで突き上げる。 「ふあぁっ!」 甲高い嬌声を上げた光の身体が、ゾクゾクと小刻みに震えて、艶やかな黒髪が生き物のように波打つ。 イく寸前まで、達したらしい。 光の呼気が落ち着くまで待ち、今度はゆっくりと光の中を刺激していく。 「んん……ふぅっ……」 抽挿が緩やかになった分、少しだけ余裕が出てきた光は、甘い吐息を漏らす。 しかし、余裕があったのも最初だけ。 「ふっ……んく……」 じっくりと恥肉を割りながら、絶頂へ達するのに必要な、直接的な刺激は与えられない。 息が詰まるほど焦らされ、ビクビクと震える光の自身は、解放を求めて止めどない蜜を垂れ流している。 「あぁ……ゆぅ……ん……も、もっとぉ………」 刺激を渇望する光の内肉が、優人の雄をキュウキュウと締め付けた。 「くっ……光……」 限界が近いのは、優人も同じ…… 改めて光の腰を掴み直した優人は、少しずつ抽挿のスピードを上げて、これでもかと言うほど光を突き上げた。 「あぁん……っ! ゆうとぉ……ゆうとぉ……!」 激しさを増す抽挿に全身を震わせ、光は快感の涙を溢す。 優人も更なる高みへと登り詰めるため、光の最奥に向けて、深く深く自身を突き挿す。 「あぁっ……もう、イくぅ……!」 天上を振り仰ぐ光の髪が、一瞬で白く変わった。 「あっ、あ、ああああぁぁぁぁぁ!!!」 優人が熱を注ぎ込むと同時に、光の放った飛沫が月明かりに煌めき、大海に散っていく。 柵を離した勢いで優人に寄り掛かった光は、胸元を上下に揺らし、熱く荒い呼吸を繰り返した。 光の身体が快感にピクピクと震える度、優人の注ぎ込んだ白濁が溢れ、白い太股を伝い落ちていく。 充足感に息を止めていた優人は、恍惚とした甘い吐息で、光の前髪を揺らす。 「あぁ、どうしようか、光……もっともっと、君が欲しくて、堪らない……」 「優人……」 ゆっくりと振り返った光が、真っ直ぐに優人を見詰めて、しっとりとしたキスで唇を塞いだ。 そのまま貪るように二人で舌を絡め、クチュ……チュプ……と、卑猥な水音を奏でる。 やっと光が口を離した時、二人の舌を繋いで、透明な糸が引かれた。 もう一度合わせられた光の瞳は、優人の――いや、全ての男共の理性を奪うだろう、妖艶な輝きを宿している。 吐息のように淡く、光の唇が開かれた。 「私も……もっと、優人が欲しい……」 あぁ、この世界の誰が、この魅惑的な願いを断れるだろう。 いや、例え全治全能の神であったとしても、断るなんて事はできない。 その――神さえも魅了する光を抱いている事に、優人はこの上無い至福と、背徳的な興奮に打ち震える。 「愛しているよ、光」 どうしても告げずにはいられなくなった優人に、光は天使のような微笑みを浮かべた。 「私も……優人を愛しています」 またどちらからともなく、唇を重ねる。   ☆  ★  ☆ 一方その頃。 徹達はと言うと―― 「あったぁっ!!」 何件目かの玩具屋で、徹が歓声を上げた。 「そんなに騒ぐな。他の客に迷惑だろ」 冷静に毒を吐きながら、世流もやっと見付けられた安堵感に、「ほぅ……」と息を吐く。 他の面々も、一筋の光明を見付けた思いで、ホッと胸を撫で下ろした。 しかし、喜んだのもつかの間―― 「……兄さん、お金、足りますか?」 「足りる訳ねぇだろ!」 ボトルシップの値段は、思いの他高額だった。   ☆  ★  ☆ 徹達が奔走しているなどと知らない優人と光は―― さっきまで愛し合っていた柵の所から、展望デッキの中心に敷いたシーツに戻り、未だ溢れ出す情熱と愛欲に身体を繋げていた。 「あっ、くぅ……はゎ……あぁん……」 優人と抱き合うようにして膝に跨がった光は、優人に突き上げられるまま、身体を揺する。 光の蜜壺の中に注がれた精液が、優人の熱棒に掻き回されて、グポグポと卑猥な水音を響かせた。 「美しいよ……光……」 「あん………ゆぅ、と……あふぅ……」 感じ入った光が首を仰け反らせると、はだけただけのワイシャツの隙間から、赤く熟れた頂きが覗く。 その色香に魅せられた優人は、光の腰を抱き寄せ、見え隠れする粒に舌を這わせた。 「あん……あぁん………も……もっとぉ………」 貪欲に悦楽を求める光の身体が、ビクビクと震え、優人のモノを内肉でギュッと締め付ける。 優人はクスリと笑った。 「光……」 そっと声を掛けた優人は、優しく光の両膝に手を滑らせ、おもむろに持ち上げてやる。 「えっ!? あっ……あぁんっっ!!!」 身体が倒れたせいで、気持ち良いポイントを抉られ、光が甘い悲鳴を上げる。 それでも光は、かろうじて後ろ手を突き、自分の上体を支えた。 突然与えられた快感に、光の下肢が痙攣する。 「動くよ?」 優人が腰を突き上げると、光は簡単に息を乱して、口の端からツゥーっと唾液を溢した。 「あぁん……ゆぅ……」 「気持ち良いかい?」 「も……もっとぉ……もっと、欲し……あんっ!」 光に求められるまま、優人は腰を突き上げる。 すでに腹に付きそうなほど反り返った光のモノから、ダラダラと蜜が溢れ、結合部をさらに濡らした。 「あっく……はぅ……イく……イく、ぅん……!」 悦楽の涙をポロポロと溢す光が、白い首を仰け反らせて、優人のモノをキュウキュウと締め付ける。 「くっ……」と息を詰めた優人は、ラストスパートと言わんばかりに、光の蜜壺を掻き回した。 「あっ、あっ、ああああぁぁぁ……っ!!!」 一際甲高い嬌声を上げた光が、熱い飛沫を噴き上げ、優人の欲望を呑み込むように受動する。 そして優人も、溜め込んでいた熱を、光の中に解放した。 絶頂に達した二人は、快感に身体を震わせながら、乱れた息を繰り返す。 改めて光の膝を支え持った優人が、光の中からズルリと自身を引き抜く。 「あっ……ふぅ……」 抜かれた優人のモノを追うように、光の蜜壺に注ぎ込まれた白濁が溢れ、シーツに水溜まりを作る。 自分の性欲に呆れて苦笑した優人は、光の入口に指を二本ずつ差し込んだ。 「優人……?」 不思議そうな顔で小首を傾げる光に、優人はニッと笑い、おもむろに入口を広げた。 内側に溜まっていた大量の粘液が、ドロリと外に流れ出し、水溜まりの上にビシャビシャと降り注ぐ。 「あっ……! やぁ、んっ……!」 イヤイヤと首を振る光に、優人はいたずらっ子のような顔をして、クスクスと笑う。 「嫌がってもダメだよ、光? 事後処理は、ちゃんとしないとね」 もちろん、それは光だって分かっている。 ただ優人に任せると、わざと気持ち良いポイントを刺激して、また光の性欲を煽るのだ。 優人の指が、光の秘部から白濁を掻き出して、容赦無く肉壁を擦る。 「あふ……んん……」 快感に耐えようとする光は天を仰ぎ、プルプルと震える腕で、健気に上体を支え続けた。 イったばかりで敏感な恥肉を指先で抉られ、もっとも感じるシコリを、クリクリと捏ね回される。 二回分の白濁をほとんど掻き出しても、優人は指の動きを止めない。 「あふぅ……ゆぅと……んん……」 喘ぎ声を漏らす光は、また熱を集め始めた自身から、トロリと蜜を溢した。 優人がクスクスと笑う。 「可愛いよ、光……」 「ゆぅと……もぅ……」 性欲を煽られた光が、強請(ネダ)るように優人の指を、キュウキュウと締め付けた。 「分かってる」と言うように頷いた優人は、光の手を引いて、熱く火照った身体を抱き止める。 そのまま光の身体を引き寄せ、事後処理をした後の水溜まりの上で、四つん這いにさせた。 そして光の後ろに回った優人は、光の腰を支えて、太股に熱塊を擦り付ける。 「光、足を閉じてくれるかい?」 その一言で了解した光は、少し不満に思いながらも足を閉じ、優人の肉棒をキュッと股間に挟む。 怒張した優人のモノがピクピク震えて、光の下肢に興奮を伝えた。 「動くよ……?」 コックリと頷く光の頭を撫で、優人は腰を激しく前後する。 「あっ……んふぅ……」 優人の亀頭が光の玉袋を引っ掛け、先端に裏筋を刺激されて、光が甘い声を漏らした。 肩をヒクヒクと震わせて、気持ち良さそうに鈴口から雫を垂らす。 優人は光の自身に片手を伸ばし、腰の動きに合わせて擦った。 「くぁっ……イ、イくぅ……っ!」 快感に背中を反らせた光が、恍惚とした顔で夜空を振り仰ぐ。 光の髪が高ぶる神力に反応して、まばゆいほど白く輝き、海風に遊ばれなびいていた。   ☆   ★   ☆

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