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Ⅲ
「ほんと、似てんなぁ…。」
真冬のほっぺたを軽く人差し指で突っついて、お互いの顔をマジマジと見る。
一卵性の双子な彼らは、一見すればどちらがどっちとは判断しきれない程、とても似ている。身長も背丈も同じで顔の特徴の違いもこれと言って無い。
話す声のトーンも似ていて、唯一違うのは声の高さ位。兄の朝冬は、弟の真冬よりも声が低い。そうは言っても、何も意識しなければそっくりなのに変わりは無かった。
髪の毛をセットする朝冬は、一人鏡の前に立って自分とにらめっこする。何も髪の毛をイジらない真冬は、自分達の部屋へ戻って学校に行く支度済ませて鞄を持って再びリビングへ戻ってきた。
「朝冬ー。もう僕、行くよー。」
もう一つ違いがあった。
一人称の呼び方だ。
真冬に声を掛けた後、肩にリュックを背負い玄関へと向かい、スニーカーを履き始める。
「ちょ…!ちょっとぐらい待てって!」
両手にワックスをついたままひょっこりと洗面台から顔を出して、先に外に出ようとする真冬を必死に声を掛けて止める。
「じゃあ、10秒ねー。」
真冬は、ゆっくり数をカウントし始める。
「じゅー、きゅー、はーちー、なーなー…。」
大急ぎで手についたワックスを落とし、自室へ駆け上がる。今日の授業の用意なんてしている所を見た事が無い、一体何が入っているのか分からないお揃いのリュックを手に持って真冬の前に立つ。
「ぜろぉ!!」
「ぜろ。」
全く同じタイミングで同じ言葉を発する。一方は面白がって微笑み、一方はゼーゼーと息を切らして苦笑い。
「はい、行くよ。」
休憩の余地も与えないまま、真冬は玄関の扉を開ければ、外からの眩しい朝日が二人を歓迎する。
「ホント。真冬は意地悪!」
朝冬は靴を履いて立ち上がり、二人で家を出る。
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