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Ⅳ
――
特に会話をする事無く学校に無事到着し、それぞれのクラスに別れる。
「じゃーな。帰り気をつけろよ。」
「あ、うん。」
真冬に手を振って朝冬は背を向ければ、自分のクラスへと歩いていく。
「……聞いてたんだ。」
朝の母さんとの会話をしっかり聞いていて、更に 心配しているから、とは言わないけれどそう含ませる兄からの捨て言葉に微笑む。
「真冬。おはよ。」
背後から掛けられた声に振り向いた先に、真冬よりも背が高く、スーツを着た男性が立っていた。
「立木 先生……。おはようございます。」
頬を薄らピンクに染めて、背負っているリュックの肩紐から垂れる、余ったベルトをキュッと握り締める。
真冬のクラスの担任である立木 章 先生は、20代後半ながらにして学年のエリート主任で女子生徒からの人気も絶大で、その理由はモデルや俳優にいても可笑しくないレベルで顔も性格もイケメンだからだ。
「今日、放課後な。」
耳元で囁き無言で頷いた真冬を確認した後、先生は、サラリと下りた前髪を揺らしながら足音を鳴らして去っていく。
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