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Ⅴ
教室の引き戸をスライドさせて中へと入れば、次々に挨拶を交していく。
「朝冬、おはよー。」
「おう。」
「あっ、朝冬じゃん、おっはー。」
「はよー。」
教室の中央寄りの一番後ろにある自分の席へ座り、スッカラカンのリュックを下ろす。机の中に手を入れると、教科書でもノートでも無い何かが手に当たる。
(……ん?)
屈んで覗いてみると四つ折りにされた一枚の紙切れが見えた。手に取って開いてみると、文字が書かれていた。
朝冬くんへ
放課後、話があるので食堂で待ってます。
「いわゆるラブレターって奴ー?」
「……っおおぅ!」
唐突に覗き込んで来た相手に驚いて身体が少し飛び跳ねる。
「おいっ!勝手に覗くなよ……!」
「えー。見えちゃったんだから仕方無いじゃん?」
クラス内で一番仲良く吊るんでいる彼は、朝冬の前の席に座る。
「何?今度こそOKするのか?」
「……そんなの、俺の勝手だからどうだっていいだろ。」
手紙を折りたたんでズボンのポケットに入れる。「相変わらずモテるなぁ。朝冬くんは。」と羨ましいさと少量の妬みも込めながら、足を組んで取り出した携帯を操作し始める。
面倒なだけだろ。と心の中に留めておく。
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