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Ⅶ
のんびりと歩いていた速度を速めて、パタパタと上靴の不格好な足音を鳴らし、消えて行った後を追いかける。
渡りきったその先を見ても、もう真冬の姿は何処にも無かった。けれど、この廊下に並ぶのは二人の学年の教室。全部で4つのクラスがある内、1組の真冬はこの一番奥にある突き当りの教室。
今度はゆっくり、足音をなるべく鳴らさない様に歩く。何でこんなに実の弟から隠れるかの如く追いかけているのかは、本人にも分からなかった。
一番手前にある自分の教室を横目に、静かな廊下を真っ直ぐ歩く。
1組の教室はもう目の前。後ろ側の引き戸から窓越しに中をそっと覗き込む。
椅子と机がキッチリと並ぶ生徒の座る場所に人は居ない。
目線を教卓に移すとそこには揺れる2つの影があった。その一つは紛れもなく、瓜ふたつの弟だ。
「……んっ。っ、せんせ……。っ。」
「こら。…… "あき" だろ。」
(間違いなく真冬なのに……真冬じゃない。)
今まで一緒に過して見た事の無い弟の姿に、目の前が真っ暗になる。
心がズキンと傷んだ事で我に帰り、すぐにその場を去った。
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