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Ⅹ
――
先生と食事を済ませた後、送ってもらう事もせずにあっさりとお別れして真冬は家に帰る。玄関を開けると家の中は真っ暗でお出迎えは誰も来ない。
そのままお風呂に入り、鏡に映る自分の身体を見る。
先生からのキスの跡が沢山身体につけられて、赤い華が咲いていた。所々は既に青紫になっていて、痛々しいと思うよりも愛おしさが勝っていた。
自分の身体をぎゅっと抱きしめて、頬を緩ませる。
「幸せ……。」
シャワーの音にかき消されて、真冬の言葉は流れていった。
お風呂から上がり、タオルで髪の毛を拭きながら双子の部屋に入ると部屋の中も真っ暗だった。二段ベッドの上にはスマホの明かりゆらゆらと見えた。
「おかえり。」
静かな部屋に朝冬の声が響く。
「ただいま。……起きてたんだ。」
「ん。もう寝るけどな。」
朝冬の事だからきっと心配してたんだろう。と兄の優しさに少し嬉しくなる。
ベッドの布団に潜って、目を閉じる。
「僕も……。おやすみ。」
「おやすみ。」
上から声が降ってきた。
「なぁ、真冬。」
もちろんだけどお互いに表情は見えないし分からない。
「何?」
少しの沈黙の後、朝冬は聞いた。
「……立木先生と…どういう関係なんだ?」
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