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「…………暑」  風呂上がり、上半身裸、下だけズボンを穿いてリビングでお茶を飲んでると、伊織が来た。 「に、兄さん。なんて格好してるの……」  慌てて、目を逸らす伊織に違和感。 「別にいいだろ。晴香さんは夜勤で遅いんだし」 「『母さん』って呼んだらいいのに……」  少し、心配そうに伊織が言う。  無神経な奴…… さすが、親子だな。あまり、神経を逆なでするなよ。 あんな奴、誰が母さんなもんか。俺は伊織も嫌いだった。αのくせに優しく、素直で純粋な義理の弟。 「まだ、恥ずかしくて…… そのうちね」  適当な言葉で誤魔化す。  「と……とりあえず、服を着たら?」  伊織の顔は真っ赤だった。  そして、すぐに気が付いた。熱い目線の理由に。  伊織はα。俺はΩ。まぁ、当然といえば当然。αはΩのフェロモンには抗えない。αはΩを自分のものにしたい欲がある。  その日から、家にいる時はΩの抑制剤を飲むのをやめた。βである父と義母は俺の変化に気が付かない。αである伊織だけが俺のフェロモンに翻弄される。 「伊織。すげー体しまってるな。 運動部だから?」  ベタベタと触り、フェロモンを振りまく。 「……に、兄さん」  「なんか良い匂いがする……」  戸惑う伊織に一歩近付き、目を見つめる。 「現役合格おめでとう」  大学の受験も終わり、今日は頼んでもないのに、合格祝いのパーティー。   「一人暮らしなんて、やめたら?ただでさえ、勉強も大変だし、近いんだから、うちから通ったらいいじゃない」  晴香さんが話す。 「そうだよ。せっかく、仲良くなったのに、寂しいじゃん」  伊織も言ってきた。  予定では高校卒業と同時に家を出て、アイツ等と縁を切ってやるつもりだった。でも、計画の為には、このまま、ここで暮らしてた方が良さそうだ。 ━━晴香さん。アンタの息子を落としてやるよ。近親相姦だってバレたら、近所で騒がれるかもな。半年で再婚して、すでに好奇の目で見られてるし、『やっぱり、あそこの息子は……』って言われるに違いない。  人の家庭を壊しておいて、幸せになれると思うなよ。さらし者になればいい。

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