4 / 12
4
その日はそんなに時間がかからず、やってきた。
「…………はぁ……兄……さん……」
性欲の強い思春期、Ωのフェロモンに抗えないαの本能。伊織の部屋から聞こえてきた声に、やっとか……と笑う。
ノックもせずに、入ってやった。
乱れた服装。僅かな性の匂い。赤く染まった目元と頬。伊織は驚いて布団で隠したけど、何をしていたのかは、誤魔化しようがなかった。
「……………俺の名前、呼んでた?」
俺の言葉に伊織は絶望の表情を見せた。
「き……気持ち悪いことしてごめん。俺━━」
シャツを軽く引っ張り、話してる 伊織の唇を奪う。
━━━━αのフェロモンが香る。
聞いたことはあったけど━━
αのキスって、本当に甘いんだ……
「に、兄さん、何を」、動揺する伊織をそっと見上げる。ジッと目を合わせ、視線は外さない。
「俺の片想いだと思ってた……」、そう伝えたら、伊織は息を飲んだ。
「それって━━」
「伊織……」
キスをしながら、中途半端だった伊織のに手を伸ばす。熱が伝わり、ゴクリと息を飲んだ。
「ぅ、ア!に、兄さ……」
「シー。俺が手伝ってあげる」
小さい子をなだめるみたいに、反対の手で頬を撫でる。
「駄目……!俺達、兄弟なのに!」
「…………伊織が好き」
騒ぐ伊織を嘘の告白とキスで黙らせる。口の中に舌を忍び込ませると、伊織は目を潤ませた。
「ん、兄……さん……」
「伊織……」
甘い匂いを振りまいて、仕掛けたキス。主導権はいつの間にか、変わっていて、気付いたら、押し倒されてた。
「本当にいいの……?」
掠れた声で伊織が俺に問いかけた。優しく見えても、コイツもαなんだな。熱っぽい目で見られて、体が勝手に熱くなる。
「………………俺のこと、抱いて」
指を絡ませて、伊織の目を見ながら囁く。
その晩、俺達は一線を越えた。
あとは坂を転がり落ちるように、なし崩しに落ちていく。逆らうことの出来ない重力のように。
それは復讐だった。俺の家族を崩壊させ、平穏を奪い、壊した義母と父への復讐。
ともだちにシェアしよう!