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「…………兄……さん」
欲望で濡れたお互いの手。こうして関係を持つのは何度目だろう。カーテンを閉めて、狭いベッドで二人きり。真っ昼間から欲に溺れる。長すぎるキスから、何が生まれるのか━━?
「兄さん。おはよう」
洗面台に伊織が来た。
「おはよ……」
キスされそうになって、慌てて肩を押して距離を置く。
「馬鹿!親に見られたら、どうするんだ」
「…………ふふ。ごめんね」
関係を持ったことによって、親密さが増す。俺の思惑通り、伊織は少しずつ、俺にのめり込んでいった。
「幹んち、久し振りだな」
今日は試験勉強の為、友人の賢人 が家に来た。
「あぁ、離婚したり、色々あったから」
「なんか、匂いが違う」
「…………そりゃ、他人が住んでるわけだし」
「他人って、お前なぁ…… やっぱり上手くいってないの?」
賢人は幼馴染のβで、離婚のゴタゴタも相談してた。さすがに伊織と寝たことは話してないけど……
「表面上は仲良くしてるよ。 悔しいけど、まだ、自活できないし。 それより、親戚、クラスメート、近所の人に頻繁に離婚の原因を聞かれてて…… 何が面白いんだか、『新しい継母はどう?』とか、根掘り葉掘り…… すげーウザいんだけど」
俺のストレスは増すばかり。
「ただいまー」
話してると、伊織が帰ってきた。伊織はリビングに入ってきて、賢人がいたことに驚いてる。
「お邪魔してまーす。俺は幹の親友の賢人。よろしく」
「…………どうも。伊織です」
明るく砕けて話す賢人に対して、伊織は淡々とし、素っ気ない。
「確か、一学年下だよね? 伊織くん、イケメン! 幹はこう見えて、デリケートだから、優しくしてやってね。 突然の離婚、再婚でやさぐれてるから」
「やさぐれてねーし。っていうか、お前は俺のお父さんか!バカ賢人」
「よしよし。反抗期か。幹」
ドヤ顔で賢人が俺の頭を撫でてくる。
「ウザっ!」
笑いながら、手を払いのけた。
「賢人さんと仲良いんだね……」
帰った後、伊織がポツリと話した。
「彼はβみたいだけど、二人きりだなんて危ないんじゃ……」
思わず、ドキッとする。ヤキモチか……?
垣間見えるαの独占欲。
「アイツは幼稚園からの友達だから、心配いらないよ」
伊織の制服のネクタイを外す。
「こういうこと、したいと思うのはお前とだけ」
その日、初めてリビングでヤッた。見つかるかもしれないというスリルと背徳的な関係。後ろめたい気持ちが更に劣情を煽る。
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