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ホテルでの一夜2

「んっ…」  思わず息を詰めるとその指を締め付けてしまう。  そうすると前を握りしめられた。  その刺激にびくっと震えて後ろへの意識が薄れた。  そこをぐっと入り込んできた。くるくると指一本入ったところでそれが回される。  入口を広げている感じだ。異物感に眉が寄る。 「は…」  前への刺激が強くなる。そうすると俺はそっちに気を取られて腰が揺らいだ。 「あんッ…気持ち、イイっ…」  ぬるぬるとするお湯の中での扱きは快感を増す効果があった。    ましてや、好みど真ん中のケイの手によるものだ。頭の中が真っ白になる。 「あ…イく…イく…あっ…あああああーーっ」  ばしゃっと湯面を揺らして仰け反って達した。吐き出した精液は湯に溶けていく。  思わずケイの方に縋るように倒れ込んだ。 「…はあ…はあ…」 「色っぽかったぞ?」  耳元で囁かれて不意打ちにびっくりして真っ赤になった。  咥えこんでいる指をキュッと締め付けてしまった。いつの間にか指は根元まで中に入っていた。  その指がゆるゆると中をかき回す。背筋をぞくりと震えが走る。  奥にある何かに当たって変な感じがして萎えていたペニスがまた熱を持った。 「ここか。」  変な感じがしたところを指が刺激を続けた。湧き上がる快感に戸惑ってケイを見る。 「や、やだ…なんか変だ…そこ、やだ…」  泣きそうになった。子供のようにいやいやと首を横に振った。 「変じゃない。誰でも感じるところだ。感じすぎて怖いのか?」  俺を見つめているケイの顔は男の色気に溢れていて、そして欲情の色を目に浮かべていた。 「誰でも感じるところ?ケイ、も?」  俺は首を傾げた。ケイは頷いて唇を寄せてくる。 「もちろん。だが俺はここを誰にも触らせるつもりがないから、本当に感じるかは実証できないがな。」  唇に吐息がかかる。吐息混じりに、前立腺だと囁かれて、そのまま口付けられた。労わるようなキスだった。何度も何度も口付けられて力が抜ける。後孔に入ったままの指がゆっくりと抜き差しされている。  ケイのペニスはまだ堅くなったままで俺のペニスとぶつかりあった。その刺激が俺のを更に堅くしていく。  ケイが腰を少し浮かしては腰を落とすようにして体を揺らす。ゆっくりしたそれは逆に俺の緊張を解いていった。  唇を解放される頃には俺はもう熱にとろとろに蕩かされていた。  指は二本に増えていた。 「…んッ…ケイぃ…どうしよう、すごく気持ち、イイ…」  腰を擦りつけるようにして、更に快感を強請った。この熱い身体が、お湯にのぼせたのか、煽られたからなのかわからない。 「もっと、気持ちよくして…ケイ…」  もどかしい、このじれったい、長く続く、いけそうでいけない快感に焦れてしまっていた。解放されたかったから、貪るように口付けを求めた。ケイの身体に回してる腕を掻き抱くように彷徨わせてしがみつく。快感が欲しくてペニスをケイの腹に押し付けて擦り上げた。  指は入ったままで、それを咥える粘膜は熱くうねって締め付けを繰り返していた。 「どうして欲しい?」  耳元に囁かれる、ケイの低音。背筋を震わせて腰に甘い痺れが走る。頭がぼうっとして何も考えられなくなる。 「気持ちよくして欲しい…」 「どういう風に?」  耳元で水音が聞こえる。耳朶をしゃぶられてそこに吐息を吹きこまれる。 「俺の、ペニス、扱いて…イかせて…」 「それだけか?…ここは?」  コリっと前立腺を擦られた。ケイの滾ったペニスを下腹部に感じた。 「あっ…気持ち、イイ…気持ち、よくしてッ…」  上擦って自分の声じゃない、甘えた声で強請る。 「それだけか?」 「だって、初めてだからそこ、どうされるのがいいかわかんないっ…なんか変なのにっ」  ケイが息を飲んだ気がした。  やっぱりかと呟いた気がしたが、俺の意識には聞こえてこなかった。 「泣くな。気持ちよくしてやるから。」  いつの間にか俺は泣いていたようだった。ケイが涙を舐めとった。  指が抜かれて俺を抱いたままケイが立ち上がった。お湯が抜かれてバスタブの上にあったシャワーでお互いの泡を流した。  ケイが俺を支えるようにして浴室を出る。備え付けのバスタオルで水気をふき取ってくれ、洗面所に置いてあった何かを手にもって、ベッドへ俺を抱えあげて連れていってくれた。  ベッドに仰向けに降ろされた。ケイが俺に覆いかぶさるようにベッドに乗ってきた。俺の脚の間に入ってくる。大きく脚を開かされて上から見つめられた。 「ケイ?」  俺の頬に手が添えられて、優しいキスをくれた。俺は目を閉じてケイの頭を抱えるようにした。 「んっ…んんっ」  キスに夢中になった。後孔へ何かが垂らされた。くちゅくちゅと音がして、指が入ってきた。先ほどの行為で最初よりはすんなりとその指を受け入れる。内部はそれを喜んだかのように絡めとった。液体がさらに足される。内部を満たすようにそれが指の出し入れとともに注がれる。指がなじませるようにかき混ぜる。体温で蕩けて水音を立てた。 「…ッ…」  指が抜き差しを繰り返して中を広げる。また前立腺を刺激されると腰が跳ねて指を締め付けた。  唇が離されてはっと息を吐く。ケイの唇は首筋を通って鎖骨に。鎖骨から下がって胸のあちこちを吸い上げる。  乳首を吸い上げられるとぞくぞくとした快感が背筋を這い上った。 「…そこ、イイ…気持ちイイ…もっと吸って…」  俺の言葉にこたえるようにきつく吸い上げて、色を濃くした。体温が上がってお互い汗に肌が湿る。  後孔を抜き差しする指に、腰が揺れた。またあのもどかしさが俺をいたたまれない気分にした。 「ケイ、ケイ…なんとかして…早く、イかせて…」  胸や、腹やわき腹へキスを落としていたケイに強請ってしまう。  三本入っていた指が引き抜かれた。足を抱えあげられて、後孔にケイのペニスが宛がわれた。 「…熱い…」 「タカシの中に入るぞ?息を吐いて力を抜いていろ。」 「ん…」  頷いて息を吐く。その瞬間にぐぐっと先端が入ってきた。指とは比べ物にならない圧迫感に身体が強張った。 「あっ…あ…」  ヒクっと喉が鳴る。苦しい。きゅうきゅうと内部は絡みついて締め付ける。ゆっくりと腰を押し進めて中に入ってくる。気を逸らすようにペニスを握られた。びくりと身体が震えて後孔から力が抜けた。その隙にぐぐっと中に入ってきた。根元まで入った頃だろうか。 「全部入ったぞ?」  チュッと顎先にキスをされて、腰を掲げられた。俺からも交接部が見えた。思わずキュッと締め付けてしまった。 「う、うん…」  今まで快感に霧がかかった頭が一瞬晴れた気がした。耳まで真っ赤になった。ケイがにやにやと笑った。 「タカシはなんというか、擦れてないな。」  腰を押しつけたまま、ゆっくりと揺らされる。抜き差しはされてなくても、圧迫されている粘膜がうねってケイのペニスを締め付けた。 「…ッ…」  少し、ケイの顔に余裕がなくなった気がした。 「あ。中、熱い…ケイ…」  唇にキスを落とされた。腰が引かれて、内臓が引き出されるような感覚が沸き起こる。目一杯伸ばされた襞が今度は引っ張られる。括れまで引き抜かれてなんだか、中が寂しい気がした。 「ケ、ケイっ…抜かないで?」  だからつい言った。ケイが嬉しげに笑った気がした。パン、と肉がぶつかり合う音がして奥に突きこまれた。俺は衝撃で仰け反った。最初はゆっくりと引きぬいては突き上げられる。その度に俺は仰け反って、内壁がケイを締め付ける。  抽挿が繰り返されて激しくなる。時折中をかき回すように腰を揺さぶられた。ケイのペニスが前立腺をかすめると頭の中で火花が散るみたいになって次第に快感しかわからなくなっていく。 「あっ…あっ…ケイ、ケイっ…怖いっ…変になる…気持ち、イイっ…もっと、もっと動いて…奥まで…」  自らも腰を揺らした。俺のペニスが動きに合わせて揺れて、先端から溢れる先走りが飛び散る。ケイの腹で擦られるとますます張りつめて血管を浮かばせた。もう、限界だ。 「や…ダメ…イく…あっ…あっ…あっ…ああああーーーーッ…」 「…ッ…」  仰け反る俺のペニスをケイが扱いてくれた。その瞬間、俺は達して精を吐きだして果てた。後孔がきゅっと締まって、ケイを締め付けるとケイも達して、中に精を叩きつけたように感じた。 「…はっ…はあ…はあ…」 「…はっ…」  お互い息を乱して脱力した。ケイは腰を押しつけたまま何度か緩く腰を揺らして残滓を吐きだした。  乱れた髪をケイの手が優しく直してくれた。引き抜かれて腰を降ろされる。とろりと精液が流れた感覚があった。足を開いたままで、ケイからは丸見えだった。 「いい眺めだな。俺の形にまだ開いているぞ。精液とローションが流れて、えらく扇情的だ。穴がヒクヒクと動いて淫らに誘っているぞ?」 「ケ、ケイっ…」  俺は真っ赤になって起き上がって抗議しようとした。動いたせいで流れる感覚が気持ち悪くて一瞬固まった。  あ。生でやっちゃった。どうしよう。 「どうした?」 「ゴム、つけてなかった…」  ケイが片眉をあげた。 「すまなかったな?変な病気は持ってないぞ?」  言いながらティッシュで汚れたところをふき取ってくれた。 「あとはどうする?出来る限り掻きだすが、念のためにトイレかシャワーで流した方がいいぞ?」  ケイが指で精液を掻きだす俺は恥ずかしさに死にそうだった。  指が、前立腺に時々あたってまた、変な気分になった。 「ケイ…わざと?」 「何がだ?」  俺は真っ赤な顔で口ごもった。  にやっと悪い顔でケイが笑う。 「わかった。タカシは善意の俺の指でまた、欲情を催してもう一度突っ込んで欲しいと、そういうわけか?」  にやにやと俺にそう言う。この人、言葉責め好きなんだ。 「…そうだよ。ケイの指がいやらしいせいで。」  悔しくなって口を尖らせて抗議した。ケイが俺の腕を引っ張って自分の胸に抱きこんだ。 「俺の指がいやらしいのが嬉しいくせにそう言うのはどの口だ?」 「この口です。」  と唇にぶつけるようにしてキスをした。くくくっと楽しげに笑うケイの声が聞こえて、それから3回も体位を変えて突っ込まれた。  ちょっと後悔した。ケイの持続力は半端なかった。  翌朝、お互いに交代でシャワーを浴びて(俺は腰がふらふらだったのでバスタブまでは連れていってもらった。)朝食を食べて別れた。カードで最初に済ませたといって宿泊費は受け取ってもらえなかった。  結局本名も連絡先も聞かなかった。  それからしばらくは仕事が忙しくてバーに行けなかった。  勇気を出して聞けばよかったと、ケイを思って自慰をしてしまった後にそう思った。  会いたくて、たまらなかった。

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