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年明け

「佐久間さん、ちょっと太りました?」  結城さんにいきなり言われてぽかんとした。思わず頬を撫でる。 「そう…見えます?餅の食べすぎかな?」  じっと見られてなんとなくたじたじとなった。 「お肌もすべすべだし。手料理ですかね?」  いきなりなに言ってるんですか。当たってるけど。 「え?あ?ち、違うよ?」  俺はちょっとうろたえてしまって、慌てて逃げた。狭い支店の中だからみんなに筒抜けだった。 「正月ボケが約一名いるがミーティングを始めるぞ。」  支店長が朝のミーティングの開始を告げて、新年の営業開始となったのだった。  年始の挨拶回りを終えて支店の席に戻るとメールが届いていた。  会社の俺用の個人メールだ。  暮れに来店した岩永さんだ。物件を見たいとの連絡だった。  スケジュールを確認して返信した。  明日、10時に案内だ。よーし、頑張ろう。  今日は定刻に終わって部屋に帰ってきた。冷えている。暖房をつけてもう、シャワーを浴びてしまう。  あ。キスマークだ。胸と腹に残る敬の痕跡に胸がちりっと痛んだ。  敬は最初はキスマークなど付けなかったが、年越ししてから、あとが残るようになった。  ああいうところで出会った行きずりの行為にはつけないのがマナーだって叔父が言っていた。  でも今はセフレだ。敬といつでもやれるのに他の奴とやる必要はない。だから、敬も残したんだろうか。  もっとつけて欲しい。  昨日別れたばかりなのにもう会いたい。  会ってどろどろに溶けあいたい。  キスがしたい。思い切り突き上げて欲しい。  なにもわからなくなるまで抱きつぶされたい。 いつの間にか自分の手が、ペニスに伸びていた。 「あ…んッ…」  シャワーを出したまま、バスタブの底に座り込む。  前を弄るだけでは物足りなくて、指を後ろに入れた。足を広げて指を抜き差しする。敬の手を思い出す。吐息を、肌の感触も。肌を流れるお湯が気持ちいい。 『ここがいいんだろう?』 『いやらしい顔だ。』 『もっと強請ってみろ。』  声だけでイけそうな、低音の囁き。ぞくりと背筋が震えた。 「…敬…敬…」  指じゃ足りない。敬の太いのがいい。  突っ込まれているのを想像して俺は果てた。お湯に吐き出したモノが流されていった。  だめだ。本気で俺、敬がいなくちゃダメになりそうだ。  さっと洗って浴室を出た。はあ、俺ってほんといやらしい奴だ。 ”敬をおかずにしちゃった。ごめん”  メールを送ってしまった。  すぐに返ってきた。 ”今度会った時に俺の前でオナニーしたら許してやる。” ”堪忍して。いけず~” ”関西弁で喘ぐなら許してやる”  え。何これ。 ”いつ行っていい?” ” 俺は3連休が休みだが、隆史は平日休みなんだろう?それとも会社帰りによっていくか?” ”行く行く!!”  俺に尻尾があったならきっとちぎれんばかりに振っていたんだろうと思う。  翌日。  浮かれてる俺はそのテンションのまま客と会った。岩永さんだ。待ち合わせ場所で待っている岩永さんを見つけた。女の人と一緒だった。紹介されて挨拶する。経理の事務員さんだった。書類のことと金銭に関しては彼女とやり取りするということだった。名刺を交わして彼女は先に帰っていった。  年末に紹介した2件の物件を案内して感触を確かめる。 「いかがでしたか?」 「そうですね。最初に見た物件が第一候補ですね。持ち帰ってから決定したいと思いますが、いかがでしょうか?」 「もちろんかまいません。良いお返事お待ちしております。」  そのまま見送って戻ろうと思った。 「佐久間さん。貴方のような方とお会いできて嬉しい限りです。今回決まらなくてもいろいろ相談に乗っていただきたいと思っています。では、また。」 「あ、はい。よろしくお願いします。」  ぺこりと頭を下げて、見送った。仕事の滑り出しとしては上々だ。  早速支店に帰って感触を記録した。  返事は多分連休明けだろう。  敬から正式に誘いが来た。  3連休は家にいるから遊びに来てもいい。そこから出勤もOKだ。  家に一度戻って支度して敬のうちに行った。  鍋だった。つみれが手作りだった。  絶対太る。幸せ太りだ!  風呂に一緒に入る。もうそこから前戯だ。 「ん…敬…」  お互いに手で泡まみれにする。肌を這う手が気持ちいい。お互いの性器を擦りあう。キスはいつも舌を絡ませる深いものでそれだけでペニスが勃ち上がる。 「…あ。ふ…ッ…」  乳首を弄られて背筋を震わせた。敬の手に擦りつけるように腰を押しつけた。 「隆史は我慢が出来ないタイプだな。」  ちょっと恨めしげに見上げる。俺たちはお互いにシャワーの真下で向き合ってお互いを擦っている。俺が壁に背を向けている。背を押しつけられて冷たさにびくりと震えた。  強請るほど、わざとゆっくり焦らすような動きをしてくる。基本的に敬は意地悪だ。恥ずかしがらせるし、言葉責めもする。そのうち道具とか使われるのかな。ありそうで怖いな。でも俺も喜んでそうでちょっと怖い。 「隆史?何か別のことを考えてるだろう?」  キュッと根元を喰い締められる。びくっと震えて涙目になった。 「敬…な、何も考えてないってば…考えてたのは敬の事だよ…」 「俺のことか?」 「…あー。ヤル時意地悪だなーとか、道具使いそうだなーとか…」 「………。」  あ。 「隆史。リクエストにこたえる準備はできているぞ。今度一緒に大人のおもちゃを選ぼう。今はネットで取り寄せられるぞ。」  敬が殊更笑顔だ!!怖いーーー!! 「まったく。面白い奴だな。」  優しく抱きしめられて優しいキスをもらった。それがちょっと意外で、胸が締め付けられた。  優しくされると誤解しちゃうよ、敬。  だから意地悪な敬でいい。  お互い吐き出した後、ベッドへ運ばれた。 「さて、ここからは関西弁で過ごしてもらおう…」 「あー…本気やったんや。」  ちょっとイントネーションが関東に寄っちゃうけど、俺はこっちに来て長いから、仕方ないんだよな。そこは許してもらおう。向こうに帰ったらすぐ直るんだけど。 「もちろん本気だ。」 「かんにんして…あ。」  ベッドに押し倒されてキスをする。俺と敬はキスが好きで、最中何度もしてしまう。  敬の唇が、俺の身体を余すことなく吸い上げていく。体中に火がついて熱くなる。 「…ぃやや、ぁ…かんにん…してぇ…もう…はよ、して…」  肝心のペニスや尻の穴には手を出さずに俺を追い詰めていく。じれったさに身体を捩る。 「何を?何をやめて欲しいんだ?」  ちゅっと乳首を音を立てて吸い上げると、にやにやと笑いながら言ってくる。本当に意地悪なんだよな! 「敬の…いけずぅ…も、はよう、敬のごっついの…中に…入れて欲しいんや…」  ごくり、と喉を鳴らす音が聞こえた。俺の関西弁、敬を煽ってる? 「けいぃ…はよ、してぇ…」  ローションを垂らされてさほど慣らさないで押し当てられた。浅く亀頭だけをゆるゆると抜き差しして入り込む。  そのままずずっと中に突きこんできた。 「あっ…あっ…敬のごついの、入ってくる…熱くて中が蕩けそうや…あ…ああっ…」  根元まで入ってくると俺を抱き込んだ。 「隆史…色っぽいな…今日は一段と…」  顔を間近でのぞきこまれてきょとんとする。 「いややなあ…色っぽいわけあらへん…」  敬はふっと笑ってチュッと口付けた。 「たまに、関西弁もいいかもしれないな…動くぞ?」  引き抜かれて勢いよく奥を突かれた。びくっと背を仰け反らせて俺も腰を揺らす。 「ああっ…あっ…敬、敬っ…ああ、アカン…気持ち、ええ…あんっ…あっ…」  思う存分揺さぶられてすぐ、俺は達してしまいそうになる。 「あっ…イく、…イってまう…あっ…ああっ…あああーっ」  思い切り強く突き上げられて俺と敬は同時に達した。  その晩はそれで終わって関西弁は寝るまで続けさせられた。  なんだろう。関西のお笑いとか意外に好きなんだろうか。  今度一緒に大阪の方へ遊びに行けたらいいなあ。  そして俺は3日間敬の元から仕事場に通ったのだった。

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