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第1話 ただいま

 出会いは突然だったけど、2人は必然的に交わり番となった。  咲夜の項に残された噛み跡がその証拠だ。  痛々しそうに血が流れていたのは一瞬。消毒をしたり、過剰に心配したりする自分に苦笑いをしたのは一晩だけ。かさぶたとなり、傷跡となると、伸弥は愛しげに自分の番の項を見つめ満足したのだ。 「咲夜???」  定時より少し早めに帰宅できた。  伸弥は休校中で一人で留守番をしているはずの咲夜を驚かそうと、咲夜の大好物であるショートケーキとフルーツサンドをデパ地下で買ってきた。  玄関の扉を開けば華奢な体が飛んで迎え入れてくれるだろうと、想像するだけでニヤニヤと口元を緩めてしまうほどだ。  それなのに、現実は違った。  扉を開けても、愛する番は姿を現さない。耳を澄ませても、どこからも物音さえ聞こえてこないのだ。   「出かけたのか?」  伸弥の帰宅前に出かけることなど、一度もしたことがなかった咲夜だが、それでもまだ学生だ。友人関係だってあるだろうし、誘われてどこかに行った可能性だってある。  それなら、連絡を入れてくれるはずだ。何も言わずに、勝手に出かけるような子ではなかった。 「はぅっ!んっ」  家の一番奥にある寝室へ近づくと何やら音が聞こえる。  音はこもっていて、何かに耐えているようだ。 「ここにいたのか。咲夜、大丈夫か?」  寝室の扉を開いた伸弥を包んだのは甘ったるい匂いだった。  咲夜のフェロモンだ。  窓も扉も締め切られたこの部屋は綿あめの香りが充満している。 「咲夜?」  匂いからして、ここにいるのは分かっている。  けれども見えない。咲夜の代わりに見えるのは山のように盛り上がった掛け布団と、伸弥の洋服だ。しかも、洗濯済みのものではなく、クリーニング用にとかごに入れていたものを、わざわざ引っ張り出してきたようだ。 「んぁっ!」  何かに夢中になっている咲夜は伸弥がこの部屋に入ってきたことに気づいていないようだ。  可愛い啼き声に合わせて厭らしい水音が洗濯の山の中から聞こえる。  何をしているかは一目瞭然だった。   「咲夜、一人でお楽しみか?」 「わぁ!」  掛け布団を捲ると現れたのは頬を真っ赤に染めた番の姿だった。 「し、しんやさんっ?」 「ただいま咲夜。邪魔をしてしまったか?」 「あ、こ、これはっ!」 「我慢ができなかったのか?」  なんて姿だろう。  大きすぎる伸弥のTシャツのみを身にまとう咲夜の姿にくらりと目が回りそうだ。晒された下半身は愛液で濡れ、すらりと伸びる幼い両脚は美味しそうに色づいていた。

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