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第7話※

どうしてこうなったのか。 何処でこうなったのか。 分からないままに、菊之丞と芳次郎は蝋燭の灯る部屋で男女のようにその行為に及んでいた。 『俺に惚れているからか』 その言葉を聞いた途端、菊之丞の身体が熱くなった。 驚いて目を見開いた菊之丞に芳次郎は今迄に見たことのないような歪んだ笑顔を見せた。 「首筋に触れられて身体が反応しただろう?アンタは耳朶も弱いもんな。あんなのされて逃げないなんてアンタもしょせんこっち側の人間だ」 「何を…」 掴まれていた胸元の手を払いのけて、芳次郎はソッと菊之丞の股間に手をやる。 「…!」 「コレ使って、めちゃくちゃにしていいんだぜ、旦那さん」 その笑顔が淫美に見えて思わずノドを鳴らした。 「好きなんだろう?」 次々と挑発してくる芳次郎に、もう菊之丞は抗えなかった。 *** 「ん、あ…ッ!」 芳次郎の声が室内に響いた。 白濁したそれを勢いよく飛び散らす。 菊之丞が身体で芳次郎を攻めて、芳次郎は卑猥(ひわい)な言葉で菊之丞を攻める。 紐か切れて垂れた髪を菊之丞は掴み、己の方へ引っ張る。 「ってえ!痛えよ」 馬乗りのような形となった二人。菊之丞の膨張した其れが内股に当たり芳次郎はゾクリとした。 「あ…」 もう十分に其処(そこ)は指で慣らした筈だ。 あとは其れをねじ込むだけ。 「…どうした、怖じけずいたのか」 「…」 躊躇(ちゅうちょ)していた菊之丞にまたしても芳次郎が挑発する。 「良いから入れろよ。早くっ…」 それは何か、懇願するようにすら聞こえた。 菊之丞はゆっくりと己を芳次郎の中へとねじ込んでゆく。 「う、あ、あっ…」 「ッ…くう」 指で慣らしたとはいえキツイ入り口に二人は思わず声を出す。 それでもどうにか入れて、腰を動かし始めるとその声は甘くなってゆく。 「あ、ああ、ッ…、あ…」 動きに合わせて芳次郎の声が止まらなくなる。 どんどん快楽の波に揺られて菊之丞も、芳次郎もたまらなくなっていた。 不意に菊之丞が芳次郎の背中に口付けた。 「やめ、っ…」 「背中、弱いんだな」 菊之丞がふっと笑いながら腰を動かす。 「あ、あああッ…、も、あ…あ」 「もう、限界ッ…!」 大きく突き上げて、思い切り其れを芳次郎の中へと放出し。 「あああッ…!」 ドロリ、とした感触がした。 その夜、二人は何度も何度も絶倒に達した。 そして 翌日から芳次郎は姿を見せなくなった。

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