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意外と使えるワンコ 3
俺が落ち込まなくて一番喜んでいるのは親友の朝倉かもしれない。
いや、絶対にそうだと思う。
キュキュキュとバッシュが床に擦れる音が響き、ボールを追いかけながらいつも行う基本フォーメーションの練習。
体育館の半コートはバレー部が使うから、その反対側を女バスとさらに半分ずつ。
1/4しか使えないからグループに分かれて体力トレーニングとパス練習に取り組んでいた。
俺と朝倉はバスケ部に入っていた。とにかくこういった基礎的なトレーニングを積み重ねて、最後はミニゲームで練習が終わる。これがいつもの部活風景。
「ありがとうございました!!」
練習が終わり、モップがけをしていたら朝倉がいきなり俺の背中を叩いてくる。
「痛ぇよ! なんだよ!」
「やっぱ俺は津田っちに感謝だなぁ」
「は? 何言ってんの?」
「だって今までは彼女に振られるたびに日常生活に支障が出るくらい落ち込んでたじゃん。今だから言うけど、あれって実はすごーく、面倒だったんだよねー」
ケラケラと笑って言う姿にムカついた俺はモップをかけながら朝倉のケツを一蹴りしてやった。
「いってーな! 何すんだよ!」
「俺だってな好きで落ち込んでたんじゃねぇっつーの」
「でも、今回は津田っちのおかげでいつも通りじゃん。俺としては気を使わなくていいから楽ー」
「お前なぁ……」
まぁ……確かに今までにも色々迷惑かけてすまなかった気持ちはあるけど、やっぱそんな言い方ってないと思い、一応もう一蹴りいれてやる。
すると思いのほか朝倉がバランスを崩してモップに突っ込んだ。
見事なこけっぷりに吹き出すと朝倉も「ひでー」とか言いながら笑う。
そんな感じでふざけながらモップがけを終わらせてふと時計を見たら、朝倉がハッとした顔をして焦りながら駆け出した。
「今日、約束があるんだった。やべ、俺先に帰るな」
そう言って走り去っていくので、用具入れの鍵を閉めて体育館に一礼し更衣室へと戻る。
朝倉の彼女はバレー部だ。こうやって練習終わりにたびたび一緒に帰っている。
前なら理香ちゃんが俺のことを待っていてくれたんだけど……。
そんなことを思い出しながら更衣室に戻ると朝倉と入れ違いになる。そして俺も着替えて職員室に用具入れの鍵を返しに行った。
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