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意外と使えるワンコ 4
夕暮れ時の校舎はまた静まりを戻しつつあった。
さっきまであんなに騒がしかったのに、次々に部活が終わると静寂の闇に呑み込まれ夜へと向かっているようで、この廊下も昼とは打って変わって不気味なくらい静かに感じる。
暗くなると気味が悪くなってくるので、早く帰ろうと、歩き出すと。
遠くで、――タンッという乾いた音が耳に入ってきた。
その音は、間隔をあけ規則正しく聞こえて来て、何の音なのか興味をそそられた。
そして、気になったその音の方へと足を進めれば……弓道場に辿り着いていた。
「弓道場……さっきのは矢が的に刺さる音だったのか」
すると、また ――タンッと音が響いた。
しかし、ここからでは中がよく見えなかったので、弓道場に繋がっている渡り廊下の方に移動して中を覗いてみると……。
そこには袴を身に付けている津田の姿があった。
そういえば、あいつ弓道部だって言ってたっけ。
初対面のときの自己紹介を思い出していると、また津田はまた構えに入ったようで足を開き弓を構えて真っ直ぐ鋭い眼差しで的を狙った。
一瞬にして周りの空気がピンと張り詰め、流れるような導線で弓を押し弦を引く。
その横顔は凛としていて俺も息をのんで見守っていると津田はその静寂の中、静かに的を見つめ。
次の瞬間……放つ。
ハッと息をのめば、ヒュンっと矢が空を切り、――タンッと的に矢が刺さったことがわかった。
そして津田を見れば、一呼吸置いてそっと構えを解いた。
初めて見た弓を射る姿とその真剣な眼差し。
その姿はいつもの津田とはまろで別人のように思えるくらい落ち着きを放っていて、……信じられないけど、目が離せなかった。
でも前から思っていたことだが、よくみれば津田は整った顔をしている。
鼻筋も通ってるし、目とかしゅっとしてて綺麗だし、背だって高いし……。
って俺!! 何考えたんだ!!
なんか、これじゃ俺が津田に憧れてるみてぇじゃねぇか!!
……確かに、さっきのはちょっとかっこよかったかもとか思ったけど。
でも、それはいつもの変態よりはマシってことで!!
自分の焦り具合に更に焦り、もう帰ろうと来た方向へ勢いよく振り返れば、勢いあまって持っていた鞄を渡り廊下の手すりにぶつけてしまった。
運悪く、その手すりは鉄製でしかもぶつけた鞄の中には水筒が入っていて、寺の鐘か!!ってくらいゴーンっと音を響かせてしまった。
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